軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33 賢者

「それで、先ほどの答えを教えてください。なぜ、私に挑んだのですか?神の落とし子よ」

「ちょっと待ってください、ひとまず、色々と整理させてください」

あのままあの場所で話すには色々都合が悪いので、情報封鎖も兼ねてあの場にいた全員が防音がしっかりしている神殿のとある一室に移動した。

そこはまるで取調室。

刑事役のクローディアは俺の前に座り、そして俺の後ろにはネルが立つ。

他の神官たちは話の成り行きを見守るつもりなのかクローディアの背後に立って黙っている。

「ひとまず、そのたいそうな呼び方は止めてください。俺にはそんな自覚はありませんし、なので普通に名前でお願いします」

「……わかりました」

ここから始まるのは取り調べなのかと思わせる雰囲気。

そんな中で必死に頭を回して、現状を整理する。

まずは呼び名を何とかしないと、このままその呼び名で通されそうな気がして真っ先にそこを何とかした。

「ええと、まず、神の落とし子っていうところから説明を求めたいのですが」

「あなたのような子供のことを言いますよ。子供だというのに普通ではありえないような力を持ちます。北の部族にはありとあらゆるスキルを駆使する子供がいました。東の地の子供は、あらゆる素材を生み出すダンジョンを操る力を持っていました。西の子には会うことがかないませんでしたが、非常に強力な武具を収める蔵を持っていると聞きました」

そいつら転生者か?

あからさまに異才を放っているというのがわかりやすい。

「それと比べると俺はだいぶ地味だと思いますけど、人違いじゃありません?」

「誰にも教えていない私のスキルを理解している段階で異質です。あなたの力は目に見えるものではありませんが、私から見れば他の三人より間違いなくあなたが一番恐ろしい」

「ボコボコにされたんですけど」

「それは今だからです。少し月日をまたぐだけで今日とは別の結末をあなたは引き出します。それがわかっているだけでもかなりの脅威ですよ」

そんな三人を知っているクローディアからしたら俺が四人目であってもおかしくないということか。

「と、言われても。本当に心当たりがないんですよ?神様から何か貰ったなんて」

だけど、クローディアには申し訳ないが本当に心当たりがないんだよ。

クローディアと全力でぶつかり合って、ある程度鎬を削ることができたのは『前世』のおかげだし。

んー、強いて言えば記憶力が良いことくらいか?

FBOの知識はやり込みにやり込みを重ねて刷り込むレベルで脳に叩き込んだのは間違いないが、ここまで明確に記憶を出し入れできるというのは考えればおかしい。

「強いて言えば記憶力が良いということですかね」

「それは一度見聞きしたことを完全に覚えられるということですか?」

「そういうわけじゃないんですよ。どちらかと言えば過去のことを忘れにくくしてすぐに思い出せるようになっているくらいですよ」

そこが神に与えられた特典だと言えばかなり地味だ。

「それでは、私の攻撃を対処できたのは何故ですか?」

「それは、知っていたからとしか」

「……知ろうとしたら知れる力だというのですか?」

「いや、会う前から知っていたというしか」

「……意味がわかりません」

「俺も、説明していて訳がわからなくなりました」

まさか、FBOを作ったのが神だとでもいうのか?

それだったら、俺の力は知恵の神ケフェリが与えたことになるが、そんなことがあり得るのか?

異世界だぞ。

地球に干渉できるということになるんだぞ?

というか、FBOは普通に企業が運営していたゲームだぞ?

・・・・・いや、小説とか漫画とかアニメの設定だとありえそうだ。

転生者の自覚はあったが、神様転生だとは欠片も思っていなかったから、混乱しているだけか。

「クローディアさん、質問良いですか?」

「ええ、答えられる限りは答えましょう」

「知恵の神、ケフェリ様は異なる世界に干渉できるほどの力があるのでしょうか」

「わかりません。我々に、神の力を推し量る術はありませんので、あり得るとしか」

「ですよね」

その混乱を少しでも改善するために質問をしてみたが、改善するための一歩すら踏めなかった。

「その質問をするということは、あなたが神の落とし子である心当たりがあったということですか?」

「心当たりというか、そういう可能性もあるかなというレベルの妄想というか」

「それは話せることですか?」

「んー、この話を守るためにクローディアさんに挑んだと言っても過言ではないので現状では話せないとしか」

だけど、少しずつ仮説は組みあがってきた。

互いに整理しあい……

そしてもしかしたら鍵となるかもしれない話題に繋がった。

「ここでそれに繋がるのですね。では、まずはそちらの方から片付けましょう」

クローディアに挑んだ理由は、俺たちの保護を願うため。

貴族とのつながり、そして最近起こっている冒険者たちの抗争。

その諸々の事情から後ろ盾が欲しいのだけど、下手な人物だとだめだからと白羽の矢がクローディアに立ったと。

俺の知識に関しては伏せてしまったゆえにかなりあやふやな説明になってしまった。

「大人しく街中で生活すれば問題ないように聞こえますが……先日のスタンピードの件もあります。危機感を持って強くなろうという気持ちもわかります。ですが、保護ですか。それも神殿ではなく私個人に」

それでもかみ砕いて理解してくれるのは正直助かる。

これまでの経緯を端的に話しているから、結論から言えばクローディアの言う通り、静かに街中で生活すればいいだけのこと。

だけど、ネームドたちの所業を知っているから、そこら中に地雷が埋まっていると認識している俺からしたらゆっくりとレベリングをしている暇はないと思ってしまう。

ネームドと言えば聞こえはいいが、奴らはイベント発生機という異名もあるんだ。

そのイベントはのほほんとした穏やかな日常イベントからドン引きするレベルのヤバイ修羅場イベントまで幅広い。

前者ならまだ問題ない。

だけど、後者は一般人を巻き込んでのとんでもない事件になってしまうのだ。

いつ何時真横からバズーカ砲を打ち込まれるかわかったもんではないのを知っていて、弱いままでいるのは勘弁願いたい。

俺の知っている限り、街中で事件を引き起こすやばいキャラは五人。

うち二人は本当にやばいんだ。

ゲームだからクエストクリアというエンディングで話を思い出にすることができるけど、現実世界でそれが引き起こされ巻き込まれたら、レベル不足のステータス不足は致命傷過ぎる。

それを説明したいけど、未来で起こるかどうかわからない事件を説明した途端に痛い人認定を受けるレベルの妄言なんだよな。

起こるかどうかわからない未来だし。

「組織に縛られるのを避けているように聞こえますね」

「その通りなので」

「……リベルタ」

「はい」

「何を恐れているのですか?」

俺の知るネームドの中で比較的まともで、プレイヤー以外には迷惑をかけず、良識があって過去の栄光もあって権力にも対抗できるクローディアという女性は本当に貴重な安全枠なんだよな。

「未来を」

「……あなたは何を知っているのです」

「可能性を」

そんな相手にこんな怪しさ満点な中二病を発症したとしか思えないような説明をするしかないのは正直泣けてくる。

強くなるための情報は切り札だし、未来に起こりえる危険情報を妄言だと思われかねない上に無礼千万で打ち首になりかねない。

どんな言葉を紡いでも致命傷になるんだよ!!

よくよく考えてみろよ、見た目が子供な俺が至極真面目に俺は未来を知っていると言う。

優しい目でそうかと言われるだけだよね!?

でもね、原作を知っている身からすると、組織に属するルートはどれも嫌になるんだよ!!

まずはすぐに思いつく冒険者ルートだけど、庶民からなると庶民が成り上がるのを貴族が嫌って妨害が入ります!!

それに対応しながら冒険者の格を上げていかないといけないの!!

次に貴族ルート、こっちはこっちで派閥争いとかでNPCの好感度管理がクソほど面倒くさい!!

おまけに極めたら王様がプレイヤーに玉座を譲ってくるんだぞ!?

ゲームならまだ頑張るぞってプレイできるけど、リアルでそれやられたら絶対に嫌。

他にも商業ギルドルートとか、神殿ルートもあるけど、どれもこれもイベントが盛りだくさんなんだよ!!

この世界に来て、トラブルを経験してなおのこと思った。

自由気ままに自分を育成するのが一番平穏で、楽しいって。

未来の暗雲のことを思うと、ネルとアミナ、イングリットの育成には手を抜けないのが申し訳ないけど、知っている未来から考える最良の選択は自由気ままに動けるように力をつけることだ。

最終形態になると、国とかの組織すら要らなくなるくらいに自給自足できるし。

「私があなたを保護すると約束すれば、それらを教えてくれるのですか?」

「信じられないような荒唐無稽の話をするとだけ前置きしておきます」

そのお手本が、目の前にいるんだよな。

神殿のトップである大司教まで上り詰めておきながらあっさりと捨てて武者修行の旅にでる。

ここまで好き勝手に動き回っているキャラもそういない。

「真面目に話しているとわかっているので、返答に困りますね」

「俺も、どう話せばいいかわからなくなってきて困っています」

そんなクローディアを困らせているのが俺なんだよな。

話したら大変なことになるのはわかりきっているから話せないし、仮に話したとしても貴重な情報以外のイベント情報は荒唐無稽過ぎて信じてもらえない。

「はぁ」

終いにはため息すら吐かれる始末。

「私の中では、あなたは南の大陸の神の落とし子だと思っています」

「はい」

「あなたもそれらしい心当たりがあるのですね?」

「たぶん」

「ですが、あなたは貴族などの組織には属したくないのですね?」

「はい」

「ずいぶんと都合のいいことを言っている自覚はありますか?」

「はい」

そう言われても仕方ないことを言っていると自覚している。

完璧にわがままな子供だよ今の俺。

だけどさ、面倒ごとになるのがわかりきっているのに、妥協して面倒を受けに行くのも嫌だろ?

ここは俺からすれば譲れない一線というわけで。

「知恵の神、ケフェリ様の落とし子ですからね。こういう子供ができてもしかたありませんが、知りすぎて拗らせている賢者ですか」

そこを守り続けていたら、賢者認定貰いました。

「・・・・・わかりました。色々と納得ができない部分はありますが、このままあなたを放置するというのだけは良くないというのも事実です。あなたたちのことは私が保護します。私の勘ですが、あなたから目を離すととんでもないことをしでかしそうな気がします」

「実際もうしてるわよね」

「ネルさん、ここはお口チャックの時間ですよ?」

「ちゃっく?」

「しまった、この世界にはチャックがなかった!?」

賢者の頭に余計な飾り言葉がついているが、自分の行動と言葉を振り返ってみると否定できる要素の方が少ないので触れないことにした。

妥協に、妥協を重ねて、諦めを含んだわかりましたという言葉から始まり、なぜか原作では成しえなかった、ライバル関係ではなく保護者としての立場で協力してくれることをクローディアさんは約束してくれた。

「あなたたち、ここで見聞きしたことは外には漏らさないようにしてください。彼は曲がりなりにも神の落とし子ですので」

まぁ、プレイヤー時代にはなかった神要素が追加された所為ですね。

さすがのプレイヤーでも神の力で転生する展開は想定外だった。

「どこに神の怒りに触れるようなことが隠れているかわかりません。口をつぐむのが最適です」

「「「かしこまりました」」」

その要素を見抜かれた結果がこれか。

痛い思いをした甲斐があったと言うべきか、それとも素直に転生者であると打ち明ければ協力してもらえたか?

いや、クローディアの性格上言葉だけで説得するのは難しかったはず。

「それと、大司教へしばらく王都に滞在しますが仕事はしないと伝えておいてください」

転生という神要素がフラグになるんて誰が考えるか。

いや、意外とそういう要素でフラグが立つことはあるか。

「クローディア様はどちらに滞在されますか?」

「保護すると約束しました。なので、彼の家に住み……」

前世ではその手の作品はいくらでもあった。

ならこういう展開で。

「監視します」

監視がつくのもあり得ると言えばあり得るよなぁ。

自分で求めていた結果とはいえ、ちょっと想像していたのとは違う着地点に戸惑いつつ。

「お手柔らかにお願いします」

「あなたの話す内容次第ですね」

ひとまずは変な称号のことは無視し、保護者ができたことを喜ぶとしよう。