軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5 装備?現地調達ですが?

さて、いきなりだがステージをクリアしたら次のステージに行くのがゲームの進行としては当たり前の流れだと思うか?

「ふぅ、レベルダウンしているとやっぱり火力が足りないなぁ」

答えは、それが正常だ。

すなわち、普通ならこうやってフォレストイーターという巨大なかば型のモンスターを倒し、黒い灰に変えて宝箱を出現させ、さらに転移ゲートを展開させたのならそのまま次の階層に行くのが常道。

嵐の勢いも収まり、徐々にだが雨も上がりつつある。

この階層のギミックを攻略したという証左だ。

クラス3までのステータスダウンを受けてはいるが、唯一の武器のショートソードは消耗しないようにマジックエッジで保護しているし、相手の動きを封じるように立ち回っているから此方のダメージはゼロ。

フォレストイーターの討伐に掛けた時間はわずか五分。

「ふむふむ、ポーション一つと・・・・・お、鞄が貰えるのはありがたいね」

フォレストイーターを討伐した報酬で出現した木の宝箱から出たのは最低保証のクラス2のポーション。

あった方が当然いいので、ついでに入っていた腰のベルトに装着する小さな鞄に入れてそのまま装備する。

「さてと」

この階層にはもう用がない。

これ以上長居する必要はないだろうと思うかもしれないが、実はここで一つ勘違いしやすいことがある。

「もう一周するか」

普通のゲーマーであれば、クリアしたのならそのまま先に進むことができるのでそのまま進んでしまう。

しかし、このダンジョンのギミックは何度も繰り返し使えることがわかっている俺は、ここで試練のダンジョン攻略に必要なアイテムを一気に確保すべく走り出す。

「いたいた」

しかもフォレストイーターに追い立てられたスピレオンは固まっているケースが多く、効率的に狩ることができるので次のフォレストイーターを発生させるまでの時間が短縮される傾向が強い。

今回もその例に漏れず、逃走して一箇所の木の上に固まっているスピレオンの集団を発見。

ヤクザキックで再びスピレオンを木の上から叩き落とし、倒す作業を再開する。

この試練の挑戦資格としてシステム的にクラス3にレベルを固定されている今の状況では、無茶をしてもレベルが上がる心配はない。

なので、遠慮なしでどんどんスピレオンを乱獲していく。

「出た出た」

そして再び、スピレオンたちの動きが変わり嵐が強くなり始める。

これがフォレストイーターが出現する合図だから、見逃す心配もない。

居場所もスピレオンが逃げ出している方向とは逆方向に走ればいいから、見つけるのも簡単だ。

「みぃつけたぁ!」

そして、今度は木の上から奇襲をかけて再びフォレストイーターの顎の筋肉の筋を切り裂いて顎骨を外し身動きを取れなくする。

「大丈夫、今回もしっかりと仕留めるから!」

ドロップ運の悪さは回数でカバーすると覚悟を決めて、再びマジックエッジで強化したショートソードを振るう。

「カハハハハ!大量大量!」

そうして何度も何度も、スピレオンとフォレストイーターを倒せば自然とアイテムは集まっていく。

貧弱な初期装備から一転、今の俺はクラス4のフォレストイーターの革鎧で身を固められ、武器も初期装備のショートソードではなく、フォレストイーターの牙製の片手剣が三本に増え、珍しく運が良いことに槍も一本手に入った。

「次の階層に行くならこれくらいの準備でいいか」

加えて、干し肉と干しブドウという食料も少しは手に入った。

スピレオンも大量に狩ったおかげで舌骨も大量ゲット。

不壊の効果を付与できていない武器や武具は、使えば使うほど耐久値を下げて、いずれ壊れてしまう。

マジックエッジで保護をしてショートソードの消耗を最小限にしていたが、それでも何度も何度もフォレストイーターを倒し続けた結果、ぽっきりと折れてしまった。

なので今の俺の相棒は牙から作られたこのフォレストイーターの片手剣がメインウエポンだ。

槍は、切り札としてできるだけとっておきたい。

こういう挑戦資格に制限を受ける系統のクエストは、最初に一気に制限をかけるからステージの中身で調達しちゃえばある程度の不足分はカバーできる。

ポーションも大量に手に入れられたし、食料も少しだけど余裕ができた。

「さてさて、次の階層はどれかな?」

そうして散々ボスを狩りまくって、挑む次の階層は。

「運悪すぎじゃね?」

猛吹雪という悪天候に苛まれた山岳地帯エリアだった。

「これ、初期装備だったら詰んでたぞ」

俺の入念な準備計画が功を奏して、時間制限はあるが多少の寒さは防げる装備を手に入れたから、この初見殺しのダンジョンでも活動はできるようになっている。

「さてさて、次はどんなギミック・・・・・ふぅ」

その制限された活動時間を無駄にしないように、この吹雪で視界が悪い空間でどんな試練が待ち受けているかと思い周囲を見渡そうとする前に、山に響く太鼓の音。

いや、もっと正確に言おう。

「ドラミングかぁ、ドラミングしちゃってるかぁ」

楽器よりも生命力にあふれた音、そしてその叩く音に混じって聞こえる『ウホ』っという鳴き声。

「アイスイェティって、なんか作為的な物を感じるな」

この雪中のステージに登場するモンスターの中で、竜種の次に面倒な存在だ。

吹雪の中で目を凝らし耳を澄ませて音源を探れば、雪を纏い身を隠すようにして俺を包囲しようとしているモンスターがちらほらと。

奴らは耳が良い。

ドラミングの反響音を利用して、隠形系スキルを見破ったりもする。

俺の位置もドラミングの反響で見つけてくる。

そして最悪なことに、このドラミングによって雪崩も引き起こすことがあるので、迂闊にアイスイェティを倒すわけにもいかないのだ。

嵐の森から猛吹雪の山と悪天候が続いていることを不運の一言で片づけることもできる。

いや、むしろ今はその原因を探るよりも先に行動を起こした方がいいか。

「積雪は・・・・・結構あるけどまぁ何とかなるか」

前の階層で手に入れたマントのフードをしっかりと被り直し、まずは一歩踏み込みしっかりと足下の雪を踏み固める。

そしてその雪面を足場にして跳躍する。

猛吹雪という視界が不良な環境下の空中戦は本来なら避けるべきだけど。

「確かここに」

この階層の地理を完全把握している俺にとっては、この空中戦は分の悪い勝負ではない。

飛び込んだ先に岩肌の壁面が現れ、そこにマジックエッジで強化した骨剣を突き刺し高さを確保。

俺が移動したことで、アイスイェティ同士でドラミングの交信が始まり俺の位置を共有し始めるけど、それに気を取られずに骨剣を引き抜いて次の場所に移動する。

試練のダンジョンの次の階層へゲートが開く条件は、大まかに分かれて四つ。

前階層のような討伐系、襲われている誰かを助ける救出系、隠れている出入り口を見つける捜索系、そして謎解きを行うリドル系だ。

アイスイェティが出現する雪山に加え、天候が猛吹雪となると、あり得そうな討伐系はまず除外される。

この雪山で、アイスイェティと戦うのは本気で時間のロスにしかつながらないし、ドロップ品も魔石と毛皮しか出ないから、このダンジョンでは荷物が増えるだけのロスしかない。

討伐の場合だと、天気が晴れでないといけないのだ。

次に除外されるのはリドル系。さすがにこんな環境で謎解きはさせないし、ガイドしてくれる存在もいない。

残るのは救出系と捜索系なのだが・・・・・

「可能性が高いのは、救出系か」

俺は今回は救出系だと判断した。

それを判断するための要素を見つけるために、最初の位置からの大ジャンプを敢行した。

「ここにはいない」

それは雪に隠れた洞穴。救出系ならアイスイェティがこの洞穴に隠れていた精霊を探すような動きをする。

雪に埋もれ隠れた洞穴の箇所は、全部で八つ。

本来であればアイスイェティの包囲網の中で探さないといけないから、戦闘をしながら捜索する必要がある。

非常に面倒な展開になる。

されど、俺の頭の中にはこの山のマップがある。

空歩を駆使し、次から次へと吹雪の中を飛び回り、一つ一つ丁寧に洞穴を捜索する。

その間も、アイスイェティはドラミングで互いの位置を知らせ、俺の位置も共有しあっているが。

「影纏い」

この猛吹雪の中、視界が不良になっている最中に影を纏い、反響する音を吸収して音の流れを乱すこのスキルによって、俺の存在を不透明にした。

それによって今のところ戦闘はゼロ。

空歩の歩数と、リキャストタイムを計算しながら最後の救出エリアに踏み込むと。

『・・・・・!?だれ!?』

「助けに来たぞ」

『・・・・・!精霊の気配・・・・・?』

「ああ、うん。ちょっと精霊に知り合いが多くてな。その気配が移ってるのかもな」

そこにはこの吹雪の山には似つかわしくない、火の下級精霊が身を影に必死に隠していた。

しかし、この雪山に火の精霊がいるのは、本来ならあり得ないことだ。

洞穴の中は温かく、踏み込めば気温で一発でわかる。

『そうなの?』

このダンジョンにいる精霊は、本物の精霊ではない。

ダンジョンが作り出した幻と言えるような存在。

意思があり、会話もできるが、契約することは叶わない存在だ。

「ああ、とりあえず腹減ってないか?」

『・・・・・空いてる』

「そうか、干しブドウ食べるか?」

『食べる!』

されど、だからと言って会話をないがしろにしてはいけない。

強引に連れ去ろうとすると、恐怖を感じて同行を拒否することもある。

俺とこの子は初対面だ。

幸い、俺の体から感じられる精霊の気配によって第一印象は悪くないようだ。

このリアクションは本来であれば精霊使いなどがこの試練に挑戦すると発生するものなんだけど、現実だとこういうリアクションをされることもあるのか。

アミナのファンクラブ会長をやっていた恩恵がこんなところで現れるのかと、苦笑してしまう。

ゆっくりと関係を深めるために、周囲を警戒しつつ、そっと掌にさっきの階層で手に入れた干しブドウをのせると、恐る恐る火の精霊が手を伸ばし、頬張り、笑顔になる。

関係が悪化すると、この精霊は救助を拒み、別の場所へ逃げてしまう。

そうなると捜索は一からやり直しだし、尚且つ次の接触も好感度マイナススタートだ。

アイスイェティとの戦闘を避け、隠密行動を維持したのも、追いかけられながらの接触はリスクしかなかったからだ。

「焦らず、ゆっくり食べろよ」

『うん!』

もぐもぐと干しブドウを食べる火の精霊の放つ暖かさのおかげで、冷え切った俺の体も温まる。

その間にも、徐々に遠くから聞こえるドラミングの音が近づいてくる。

壁面を跳躍して、身を吹雪の中に隠しながらここを目指したが、やつらの吹雪の中での捜索能力は高い。

ここもいずれ見つかる。

『ごちそうさま!』

「ああ、腹は膨れたか?」

『うん!』

猶予はまだある。

されど、休めるほど余裕があるわけじゃない。

「よし、仲間のところに移動するぞ」

『本当に!?』

「ああ」

『でも、外には白い大きな化け物が』

「大丈夫だ、リベルタさんに任せなさい」

幸いなことに俺の体力も余裕があるし、ここから先は火の精霊のおかげで寒さもしのげる。

『本当?』

「ああ」

『・・・・・わかった』

小柄な子供くらいの身長の火の精霊を抱き上げ、洞穴を脱出する。

「大丈夫だ、しっかりと捕まっていろよ」

『うん』

洞穴から出ると、さらに近づいて来たドラミングの音が耳に入る。

俺は再度影纏いを発動し、空歩でその場から飛び出す。

精霊と一緒に行動を開始すると、あらかじめ決まっているかのようにアイスイェティたちが一斉に俺を追いかけ始める。

まるで精霊のいる位置がわかるかのような包囲網の狭め方。

だが、残念。

「この程度で、俺を捕まえられると思うなよ!」

その動きも俺は知っているし、包囲網の抜け方も知っている。

猛吹雪は敵が有利になるようなギミックかもしれないが、俺の味方にもなるギミックだ。

背後で俺たちを追いかけるために全力疾走を始めるアイスイェティの気配を感じながら、雪山をダッシュで駆け抜けるのであった。