軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9 経験値テーブル

RPG系のゲームをやっていたら一番なじみのある行動としてレベリングを想像する人は多いのではなかろうか。

強くならなければボスは倒せない。

ならば経験値を得てレベルを上げればボスを倒せる。

そんな流れがRPGではお決まりのパターンだ。

中には低レベルクリアなんて縛りプレイをしている人もいるが、それでも最低限のレベルアップを経験していることが多い。

では、なぜ俺がいきなり、こんなことを言い始めたのか。

「おう、坊主昨夜はお楽しみだったな」

「ええ、楽しい話でしたよ」

「うん!楽しかったよ!」

「……」

それは今日そのレベリングに一つ工夫をするからだ。

どこかで聞いたことのあるようなセリフ、だけど子供同士でそんな汚い大人が考えるようなことが起きるはずもなく、アミナは無邪気に夜の会話を楽しんだと認識してネルはキッとデントさんを睨みつけている。

これによって、アミナとネルの性知識の差が浮き彫りになったわけだが、俺はそこを指摘するほど馬鹿ではない。

そっと触れることなく、マイルさんが朝食の準備をしているのを手伝いに行った。

「デントさん!あとでお父さんに言っておくから」

「げっ、嬢ちゃんそれはないぜ」

「私たちは雇い主よ!私たちもあなたたちには敬意を払うけど、それでも言っていいことと悪いことはあるって理解しなさいよ!!」

「マイルさん、あの二人良いんですか?」

「子供に変なことを言った罰ですよ。私の方からも少し受付に言っておきますね」

「????」

「君はまだ知らなくていい」

背後で少女に怒られる大人という構図が出来上がり、それに関して自業自得だとマイルさんは斬って捨てて、なんでデントさんが怒られているかわからないアミナは首をかしげているがピッドさんが軽く首を振り知らなくていいと言った。

「ほら嬢ちゃん、こっちの方が肉が大きいぜ」

「……この程度で懐柔されると思わないでよ」

朝食の場ですら、デントさんがネルに気を使うなんて光景を見つつ済ませることとなった。

「さて、気を取り直して今日も元気にレベリングをしよう!」

「おおー!」

「……ええ」

そんなこんなで、再び来た埴輪スポット。

そこで昨日と同じ感じでレベリングを始めようとしたが元気なアミナと違って少し様子がおかしいネル。

「デントさんしっかりと謝りました?」

「謝ったよ!!」

てっきりさっきのセクハラ発言を気にして、ご機嫌斜めになっているのかと思ったが肝心のデントさんはしっかりと謝ったという。

「ああ、大人としてどうかと思うが、恥も外聞もなく頭を何度も下げていたな」

「意地張って雇い主に嫌われて評価を落とすくらいなら、素直に反省くらいするわ!!」

ちらっとピッドさんを見れば、頷いて反省はしていると言い。

信用ないな!?と叫びつつデントさんは弁明している。

この態度を見る限り、真剣に謝ったのは間違いない。

となれば、まだ気にしている程度か?

「ネル、大丈夫か?調子が悪いなら」

「大丈夫よ。昨日考え事してて少し寝不足なだけ、むしろ今は思いっきり体を動かしたいから心配しないで」

「そうか?」

心配になり声をかけてみるも問題ないとのこと、一応気に留めておくかとその時はそれ以上触れないこととした。

「んじゃ、二人とも今日はあれを装備して行くぞ」

「わかったわ」

「プラス三十を一つでいいかな?」

「いいや、どうせ後でつけるしレベル差を作らないために最初から二つつけておこう」

体調的には悪くないならと、今度は革袋を探って、弱と書かれたエンブレムを取り出す。

「おい、それって」

「まさかつける気か?」

弱者の証、当然デントさんとピッドさんもそのアイテムの効果は知っている。

レベルを下げるというアイテム。

ステータスもダウンするからそのアイテムを二つもつける俺たちを止めに入る。

「はい、つけますよ?」

「昨日も大丈夫だったわよ。それにあなたの言う通り三人で行動するから心配しないでよ」

「むしろ昨日より、一杯倒しちゃうよ!」

「いや、まぁ、そうだけどよ。せっかくレベルを上げたのにそれでいいのか?」

「雇い主の意向には従う、だが、危ないと判断したら即座に止めに入り今日は帰還するからな」

常識的に考えればその通りだけど、俺の知識的に言えばこれは最適解のレベリング方法なのだ。

修練の腕輪をつけない代わりに、弱者の証プラス三十を二つ装備。

これによって俺たちのステータスは確かにダウンする。

けれどそれによって一つの恩恵を得ることができる。

「さーて!行くぞ!」

「おー!」

「ええ」

今日も元気にスリングショット!

最初の一体目は普通の埴輪。

石礫をぶつけて、こっちに来る。

そして近寄ってきた埴輪をネルもスリングショットで撃ち、最後にアミナがとどめ。

昨日もやったお約束パターン。

その次もドロップしたカタツムリの殻みたいなアイテムを撃ち出して、右肩部分に殻が生えた埴輪を討伐。

さらにその次はベルトのバックルみたいなアイテムがドロップしてそれを射出して変身ベルトのようなものを装着した埴輪を討伐し。

「上がった!!」

「私も上がったわ」

「え、もう上がったのか?」

「昨日の段階で経験値がたまりきっていたのか?」

あっさりとレベルが上がる。

本来であれば昨日の最後でレベルが上がっているから、こんなに早く上がるはずがない。

「よーしこの調子でサクサク行こう!」

「はーい!」

「ええ」

ネルが落ち着いているのはなんだか調子が出ないけど、しっかりと弱者の証装着の恩恵は出ているからこの調子でレベリングをしていく。

「上がった!」

「え?」

「私も上がったわ」

「む?」

「それじゃ次」

弱者の証は本来であれば補正分のレベルを下げ、その下がったレベル分のBPで振ったステータスを下げ、さらに莫大な経験値を得ても一レベルしか上がらないという悪影響しかない欠陥アイテムと思われているが、このアイテムは不壊のスキルを与える以外にもう一つの隠れている恩恵を与える。

それはレベルを下げることによって経験値テーブルを下げるという隠し効果だ。

経験値テーブル。

それは次にレベルを上げるためにいくつの経験値が必要かと測るための水準。

例えばレベル一からレベル二に上がるために十の経験値が必要で、さらに二から三に上がるには三十の経験値がいる。

この次のレベルに上げるために必要な数値はレベルごとに異なって上に行けば行くほど必要数は増える。

これが経験値テーブルだ。

この経験値テーブルを無理やり下げられるアイテムが弱者の証。

本来であれば俺たちは昨日の段階でクラス1/レベル9というステータスだった。

すなわち、今の経験値テーブルはクラス1/レベル9が次のレベルに上がるための経験値テーブルになっているはず。

三体の埴輪でレベルが上がる経験値テーブルはとうに過ぎ去っている。

だけど、あっさりと上がっている。

その理由は今の俺たちは弱者の証を装備したことによって、クラス1/レベルゼロというステータスになっている。

内包的に見れば、クラス1/レベル9(-61)ということになっているからだ。

このカラクリを読み解くと弱者の証のレベルダウン効果は本当にレベルが下がっているということではなく、レベルダウンというバッドステータス扱いになっている。

弱者の証を外せば元に戻るのが証拠だ。

これによって、内実的には俺たちのレベルはそのままということが実証される。

しかしステータス表記はレベルゼロ。

レベルがないことになっている。

そしてさらに言えばレベルが低い埴輪の経験値で上がっているのだ。

ゲーム内でこれを見つけたときは革命的だと誰もが思った。

最初はバグかと思われたが、弱者の証を外すと、しっかりとステータス上のレベルも上がっていれば、BPもEXBPも確保できている。

すなわち弱者の証のレベルダウン効果には経験値テーブルを下げてレベリングができる効果があるということ。

制限として二十四時間外せないというデメリットがあるけど、ボスに挑む際とか重要な時はレベリングよりも討伐を優先しているからそもそも弱者の証なんてアクセサリーを装備なんてしない。

これは間違いなくレベリングに革命をもたらした。

「はい、次!!」

「いっくよー!!」

「いつでもいいわよ!!」

経験値テーブルが低い分どんどん上がっていくレベル。

それによって、少し調子の悪かったネルのテンションも上がっていく。

さらに弱者の証のレベルダウン効果は、一つの影響を及ぼさない範囲がある。

「おい、ピッド。あいつら本当にレベルダウンしてる動きか?」

「……昨日の最初の頃、レベルを上げる前よりも動けているように見える」

「だよな」

それはEXBPだ。

EXBPはあくまでレベルを上げる際に条件を達成して得られる特別なBPだ。

通常のBPはレベルを獲得するから付与されると紐付けされているからレベルがダウンするとそのBPの効力が無くなる。

だけど、EXBPは文字通りエクストラ、余分であり、追加であり、必要以上である。

そのレベルとの紐付けはされていない。

一部の解析班は、レベルごとに獲得クエストが発生していて、条件が達成されることによってEXBPが放出されるようなシステムになっているのではと考察している。

レベルアップによる報酬ではなく、条件達成によるクエスト報酬。

だからこそ弱者の証のレベルダウン効果の影響を受けない。

昨日からこれをやればよかったとも思っているが、ある程度ステータスを確保していた方が狩りもやりやすくなる。

なので昨日は武器と合成した弱者の証だけで済ませたわけだ。

ちなみにゲーム時代では、レベルを下げて再度条件を達成すればもう一度EXBPが得られるかもと試したプレイヤーもいたが、そもそもレベルを確実に下げる方法を使えばすべてのステータスが強制的にリセットされその際にEXBPも没収されてしまう。

なので結果的に言えば、無駄足だったと言える。

無限BPはさすがに確保はできなかったという結果が残った。

その失敗を踏まえ、ある程度レベルを上げてEXBPで補正した体力で埴輪以上のステータスを確保した。

おかげで昨日よりも楽にさらに早く、さらに言えば効率的にレベルアップができる環境が出来上がったわけだ。

サクサクとレベルが上がるから、気分的にも楽。

デントさんとピッドさんが怪しんで俺たちを見ているが、レベル上げを中断してまで確認しようとは思っていないらしく静観していてくれる。

現状俺たちは、埴輪を合計三体倒せばレベルが上がるという経験値テーブルをキープしている。

それは、最終関門である残りレベル十のエリアに踏み込んでも変わらない。

俺のゲームでの経験上、レベル上げはそこまで難しい物ではないと思っている。

むしろ面倒なのはスキルの熟練度上げ。

あっちはこの経験値テーブルを下げられるような手段がないからな。

純粋な根気勝負になる。

なので効率化できるところはとことん効率化していく。

と言っても、このレベリング手段が楽なのもゲーム前半くらいなもので経験値テーブルを最低値に固定してもクラスが上がれば必要な経験値は跳ね上がるし、EXBPの条件に見合う敵を探すとなると手間も増えるわけで、せいぜいできるのはクラス5に上がるまでだろうな。

『レベルが上限値に到達しました。報酬としてスキルスロットが一つ解放されます』

そこからが育成の本番というわけだ。

「終わったぁ!!」

「あー、何とか間に合ったよ」

「ギリギリ目標を達成できたわね」

そんな感じで経験値テーブルの最低値化する裏技を使うことによって、朝から始めて帰還時刻ぎりぎりにレベリングは無事終了。

最後のレベルアップを確認して、無事に報酬のスキルスロット解放を聞きクラス1のレベリングは終了した。

「ウソだろ、本当に終わったのか?」

「にわかに信じがたいが……あの様子では終わったようだな」

「おいおい、それが本当だったら新米たちが見たら泣く光景だぞ。昨日と今日、合わせれば一日しかかかってない。必死こいてゴブリンをボコってるやつらの努力がばからしくなるぞ」

腕を伸ばして体の疲れを少しでも逃し、この後は馬車に揺られて帰るだけだ。

デントさんとピッドさんの視線が怖いけど、教えるかどうかは帰りの交渉次第だな。

これを教えるといろいろと面倒事が舞い込んできそうだし、もうちょっと地力をつけてからの方が助かる。

さてさて、どう誤魔化したものか。

「次はスキル上げかな……モチ巡業が待ってるなぁ」

そしてそれ以外の苦労が俺たちにも待っている。

レベルが上がれば、次はスキル育成。

クラス2に上げるには最低でもパッシブスキルを一つマスターしてからだ。

クラスレベルカンストのおかげでスキルスロットがさらに一つ増え、今のスキルスロットは四つ。

クラス1で獲得できるスロットはクラスアップとスキルマスターとこのレベル上限値到達の三つ。

これを取らずに次のクラスには行けない。

だからお嬢さんたちの喜びに水を差すのは何だけど、次の準備ができるまでは。

「頑張ろうな?」

「「……」」

その虚無を見るような眼が続くと思うぞ?