軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2 おじいちゃん先生

ガトウ、FBOをプレイしていた時はこのキャラに俺は敬意を抱いていた。

数多いるFBOのキャラクターの中でも、尊敬するキャラは?という部門で名前を上げるのなら、真っ先に思い浮かぶくらいの人物だ。

ゲームのキャラに何を言っているのか?というかもしれないが、彼と触れ合ってそう思うプレイヤーは多かった。

そんな人物を呼びつけて勧誘するなんてありえない。

諸葛孔明を勧誘するため劉玄徳は三回も足を運んだという、であるなら俺も行くべきだと、ネームドキャラを迎え入れる準備ができた開拓村を出立してそれなりの時が過ぎた。

向かった先は南大陸の西側にある小さな町。

主産業は農業と畜産、この大陸であればどこにでもありそうな町だ。

「うーん、まだまだ馬車には改造の余地有りか」

「かなり快適でしたが、リベルタはまだ改善の余地があると?これ以上改造すると目立ち過ぎますわ」

初めて行く土地は相も変わらず原始的な方法で移動。

そろそろ移動手段を迅速化させるために、ゴーレムで移動することも考えたが、さすがに目立ちすぎるのでまだ使えない。

「見た目を地味にすれば問題ない」

「決め顔で言ってるけど、この馬車を普通って思う人の方が少なかったわよ。車輪が普通のと違うじゃない。何度か野営したときに商人の人に聞かれたわよ」

なので、見た目を地味にした魔改造馬車で普通の馬で引いてもらい移動した。

けれど、機能上どうしても隠しきれない部分はさすがに隠せない。

そういったところで注目を浴びていたとネルがジト目で言ってくるがスルーする。

本当だったら自力で走れるようにした方が馬に引かせるよりも断然効率的なんだ。

それを自重して馬を使って走行することに抑えた俺を褒めて欲しい。

せめて乗り心地を改善するために、馬車の足回りに手を入れ、さらに重量軽減の魔道具を使うことで馬に負担をかけない技法は使っている。

うちの領地と違って、大陸の他の道路は凸凹悪路と言い換えて良いくらいに馬車が揺れる。

そんな悪路を進んだら車酔いなんて目じゃ無いくらいに気分が悪くなるのは間違いない。

わざわざ不快な旅にする必要もないので、この世界でも一般的な木製車輪に金属を巻いたものではなく、サスペンションを駆使したゴム製のタイヤを使ってその振動を限界まで抑えた。

それでも多少の揺れを感じるのだからこの道その物を改善しないとどうしようもない。

そんな旅の今回の同行者はエスメラルダ嬢とネルの2人に来てもらっている。

というか、おじいちゃん先生ことガトウと相性がいいと俺は踏んでいるのでこの2人にした。

「御屋形様、目的の町が見えてきました」

「ありがとうゲンジロウ」

護衛は御庭番衆が5人ついてきてくれている。

御者席にゲンジロウ、そしてこの馬車をぐるりと囲むように、馬に乗った御庭番衆が護衛している。

見るからに強そうな彼らに護衛された馬車、注目は想像以上でこれならもっと魔改造した馬車を使っても良かったかなと後悔しつつも、長い旅路を経てついた目的地。

「ドゥレの町だ」

馬車の窓から顔をだして、その町を見れば小さい城壁に囲まれた建物が見える。

町の人口は3000人規模、都市部への主要道路から外れているからここに来るのは農産物を仕入れに来る商人くらいだ。

普通の町、ゲームなら何か小さなイベントが起きるかなぁと思うような平和な街並み。

冒険者じゃない、護衛付きの馬車が来れば何事かと門番に止められたが、あらかじめ頼んでおいたエーデルガルド公爵家発行の通行許可証を提示すれば一発で通れる。

まぁ、実際娘であるエスメラルダ嬢が乗っているから間違いではない。

この町の町長に連絡が行ったかもしれないが、俺は貴族ではないし挨拶に行く理由もない。

「へぇ、さすが農業が主体の町ね。野菜もだけど小麦も王都と比べるとだいぶ安いわ。品質も良いし」

「どこの場所でも輸送コストは悩みの種ってね。これが解消されれば商売もしやすくなるんだけどな」

なので、さっそく目的地に向かうかと思えば、まずは宿を取りそこから市場の方に向かった。

商人の娘として、扱っている商品とその品質と値段が気になり目を輝かせて市場を見回るネルの顔は活き活きしている。

「かといって、勝手に物流形態を変えちゃうと護衛の仕事で稼いでいた冒険者みたいな人たちが稼げなくなっちゃうのよね」

「そうそう、物事の変化には良し悪しがあるってね」

そんなネルを先頭にしてその次に俺、さらに貴族らしい装いのエスメラルダ嬢に馬車の警護を残して、ゲンジロウと護衛が2人。

俺たち一行は非常に目立つ。

おそらくエスメラルダ嬢を中心として貴族一行みたいな感じに見られているのは間違いない。

そんな様々な視線にさらされながら、市場に流れているだろうとある物を探す。

「お、あったあった」

それは古本を取り扱っている露店だ。

絵本に始まり、小説、日記とジャンルが多岐にわたり、冊数もそこそこある。

「いらっしゃい」

「ちょっと見てもいいか?」

「ええ、古本しかありませんが是非に」

貴族を引き連れた客を相手に必死に愛想笑いを浮かべる店主に、品物を見ていいかと確認を取ってから、視線を本に移す。

「ガトウという方が書かれている書物はないかな?この町でなら手に入るって聞いたんだけど」

だが、生憎と目的の書物はなかった。

『隠居のガトウ』

このクエストを発生させるフラグを立てるにはこういう古書を扱っている店主からおじいちゃん先生の書籍を購入するのが前提条件になっている。

「ああ、ガトウ先生の本かい。つい、昨日までは一冊だけあったんだけど、売れちゃってね」

「残念だ。取り扱ってそうな店とか心当たりはないかい?」

流石にそのままそっくりフラグが立つとは思っていないので、素直に書籍がおいていそうな場所を聞いておく。

ガトウ先生と敬意を持った呼び方をして、その方の書かれた本と聞き、店主が嬉しそうな顔をする。

「あの人の本はよくできていてね、良く売れるのさ。滅多に出てこないのはあの人の本を大事にしている人がたくさんいるからね。書店を構えている商人も滅多に店頭に出さないよ」

「そいつは困ったな」

うん、間違いない。

ガトウはこの町にいる。

彼は隠居生活をしながら、時々町の子供に教鞭を振るい文字や計算の仕方を教えている。

他にも自分の知識を活かして人助けをしているから住民にも人気だ。

ゆえに、こうやって笑顔を見せて誇らしげに商人がガトウの本は素晴らしいと語るのだが。

「なぁ、あんた。後ろの貴族様の従者か何かかい?」

ちらっと、俺の背後、綺麗に立ち護衛に囲まれたエスメラルダ嬢の姿を見た後に声を潜めて俺に話しかけてきた。

「まぁ、関係者ではある」

「そうか・・・・・」

出てきた質問にゲームで聞き覚えがあり、素直に答え、その答えにどう答えを返すか悩む店主に向かい。

「うちのお嬢様はこの町の町長と関わり合いはないよ」

俺はそっと、静かに告げる。

「そうかい、それならいいんだ」

その答えに商人は一瞬だけど、ホッと安堵したように見えた。

この流れも知っている。

平民の人気を妬むのは貴族の嗜み、というFBOの皮肉な設定がある。

この町の町長は、男爵家の当主だ。

そしてその男爵家の当主は、町で人気のあるガトウに対して嫉妬心を持っている。

貴族であるのだから、敬われ、誰にも低姿勢で接される。

それ自体は問題ないのだが、ある日見た笑顔であいさつされ、町の人から愛されるガトウの姿を見て心の中で対抗心に似た感情を抱いた。

そこから町長による嫌がらせが始まる、というのがクエストのあらすじだ。

「何かあったのか?」

「いや、すまん。あんたには関係ない話だ。忘れてくれ」

野心も何もない、ガトウを完全に逆恨みしているという流れであるが、この町の住人からしたら町を追い出されるリスクもあってか、強く出ることができない。

できることは町長にバレないように、ガトウを助けてやること。

「そうか、ありがとう」

貴族の関係者ということで、警戒心を抱かれてしまったのか、これ以上話を聞くことはできなさそうだ。

そのあらすじを知っている俺は、この世界でも似たような展開になっているのだなとわかり、露店をあとにする。

「すこーし、マズいかも」

露店から離れ、人がまばらになった場所まで来て俺は一旦足を止めた。

「貴族からの嫌がらせ、はぁ、耳が痛いですわ」

その流れに合わせ、今まで黙っていたエスメラルダ嬢が距離を縮め会話に参加した。

さっきの古本屋の店主の様子と、エスメラルダ嬢を見る目。

そこから何をされているか察したようだ。

「・・・・・エスメラルダさんは違うけど、私たちにとっては良くある話ね」

「重ね重ね、耳が痛くなりますわ」

状況はギリギリセーフと言ったところ。

露店の店主の話を聞いて、ネルの耳がぺたんとたたまれ悲し気な表情、エスメラルダ嬢は指で眉間をほぐし町長のやらかしにため息を吐く。

いなかったというよりはマシだけど、悠長にしている猶予はない。

まだまだ原作よりも前の時期のはずなのに、なんでもうすでに窮地なの?と俺もため息を吐く。

この世界は俺のやらかしで原作から逸脱し始めているけど、隠居しているはずのガトウですらこれなら他のネームドは一体全体どうなっていることやら。

原作では、ガトウの著書を持って本をきっかけに出会うのが本筋だけど、このクエストは発生させてから時間制限があるのだ。

時間制限を過ぎると町長の嫌がらせが進行し、町の住人に迷惑をかけられないとガトウは、財産を全て売り払いその金で町を出て行ってしまう。

そしてそれ以降は一切姿を見せなくなる。

さっきの露店商の店主と話した結果、クエストと関係なくそこまで時間に余裕は無いように感じる。

「いきなり、出向いて会えるかな?」

「手土産が必要ね。お菓子でも買っていく?」

「そこら辺が妥当か」

なので、今回はフラグ一切無視でそのまま現地に行った方がいいと判断。

「私が町長に話をつけに行くこともできますわ」

「それをやるのは最終手段だな。ここがエーデルガルド公爵家の領地ならそうしてもらうんだけど、ここ、西の公爵の派閥だからなぁ。下手につつくと俺とのかかわりを条件に出してきそう。本当にどうしようもないっていう時はそうするけど、今はまだ選択肢があるから、町長との接触は最小限で」

「わかりましたわ」

高級そうなお店に入っても、エスメラルダ嬢がいればきちんと対応してくれる。

そこでお菓子と茶葉を購入し、俺の記憶を頼りに住宅街へと足を運ぶ。

道路にゴミが落ちておらず、浮浪者の姿もない。

ならず者に絡まれることもなく、トラブルもない。

町長としての仕事はしっかりとしているのがわかるが、それならガトウにも嫉妬心を抱くなよと思いつつ、道を進む。

そして、住宅街にある少し広めの庭のついた一軒家にたどり着く。

「せい!やぁ!!」

「ほほほ、そう、そう、良いぞ」

その庭先で三人の子供相手に、木剣を構え攻撃を受ける初老の男性がいた。

「やぁ!!!」

「ほいっと」

「あっ」

その姿は楽し気で、嫌がらせを気にしていないような日常の風景。

「踏み込みは良かったが、焦りすぎたのう。今のはもうちょっと待ってから攻撃した方が良いぞ」

「はい!先生!」

「うむ、うむ、型の練習をしっかりとした綺麗な太刀筋になっている。精進しなさい」

褒めるところはしっかりと褒め、直さないといけないところはしっかりと指摘する。

教え子だろうか、指導されて成長を実感できている子供たちも笑顔で返事している。

「おや、私に何か御用ですかな?」

そんな光景を庭先から見ていると、集団で立ち止まっているからかすぐに気づきこっちに歩み寄ってきた。

初老であるが、体は鍛えられ背筋がしっかりと伸びている。

白いひげを綺麗に切り揃え、少し寂しくなった頭髪は頭の左右にしか残っていないがそれも綺麗に手入れされている。

俺が見上げるほどではないにしても、男性の平均よりは高い身長から送られる視線は最初はエスメラルダ嬢に向けられたが、俺が一歩前に出たことでこっちに向く。

「ガトウ殿で間違いないですか?」

「いかにも、私はガトウというしがない爺です」

ガトウに警戒心はないが、子供たちが貴族らしい恰好をしているエスメラルダ嬢を見て警戒している。

その不安を払しょくするように俺は笑みを浮かべ。

「自分はリベルタという者です。少し時間をよろしいでしょうか?」

挨拶をするのであった。