軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7 多忙型アイドル

寝る前のメインイベントステータス振り。

ネルの将来を決める最初の一歩を踏み出したのなら次はアミナの番。

「それでそれで、僕はどんな風になるの?」

「アミナなら歌姫になるのかしら?」

期待を込められた目で、俺を見て、ネルもアミナがどんな形で成長していくのか気になるのか自分のステータスを閉じてこっちに集中している。

「アミナが目指すその最終形態、それは――」

「「それは?」」

その期待の声に応えましょうと俺はわざと少しだけためを作る。

「多忙型アイドルだ!!」

そして堂々と言い放つ。

「たぼうがた」

「あいどる?」

だけど、意味は全く通じなかった。

「ネル、僕はわからないんだけど」

「私も知らないわよ」

「あれー?」

この反応は予想外だ。

しかし、言ってしまったものは仕方ない。

「えっと、アイドルっていうのは歌って踊れてみんなからすごいって言われる人のことだ」

「すごい人だ!」

「踊り子と吟遊詩人が混ざった感じかしら?」

「それをめちゃくちゃ手広くしたのが多忙型アイドルっていうアミナの目指すものなんだ」

とりあえずアイドルの概要だけ説明して、アミナのやりたいことの方向性だけはずれてないこと伝えておかないと。

最初に宣言したときなんて、なにそれ?っていう顔の中に何か理想と違うかもという疑惑の眼差しも混じっていた。

期待の視線からの温度差にちょっとだけ寒気がしたんだよな。

「アミナの目指す役割としては、戦って、歌って踊ってバフかけて、注目浴びてモンスターを惹きつけるという三拍子揃ったとんでもパックなのです!」

「すごい人だ!!」

「アミナ、あなたさっきと同じことしか言ってないわよ」

「だって、戦えて歌って踊れてモンスターを……あれ?それかなり危ないんじゃないの?そもそも僕、モンスターの前で歌って踊るの?」

「そうだけど?」

「えええー!?危ないよ!!」

その疑惑の視線は免れたけど、今度は何を無茶なことを言うんだと言わんばかりに驚愕の声がテント内に響く。

『おーい、なんか嬢ちゃんたちの叫び声がさっきから聞こえるけど変なことはほどほどにしとけ』

「あ、はい!すみません」

アミナの声は歌うことが得意だから特に響く。

デントさんからの注意が入りそこからは少し声を抑えめにする。

「一応これも最強の一角に数えられるスタイルだから、完成すればほとんどのモンスターを完封できるようになるし、大群戦では無類の強さを誇るんだよな。完成までの道のりがネルよりも段違いに難しいけど」

「え、私よりも?」

「ああ、俺やネルと違ってパッシブスキルの量がけた違いに多いんだよね。全部最終段階に持って行かないといけないから、その苦労は二人とも知ってるだろ?」

危険だからいやだと言えばそれまで、戦いながら歌うことを拒否すればそもそも成り立たないスタイル。

「「ああー」」

パッシブスキルの育成のためのモチデスマーチを思い出して二人は遠い目になる。

「一応、アミナの希望をかなえつつこれからも一緒に冒険できるなかで最高の編成を考えたんだけど、嫌なら純粋に歌姫編成を考えるけど」

そのリアクションからアミナ的には無しかな?

「それって、戦える?」

「純粋な戦闘能力はないかな。後ろで歌ってパーティーの補佐って感じになるかな。あとは七割を戦闘用にして、趣味用で歌スキルを取る方法もあるな」

このビルドも結局は俺の知識と経験からくる最強ビルド。

ただ好みの問題もあるし、嫌なことを推し進めるのは俺的にもNGだ。

ステータスの振り方は結論その人次第。

こうなりたいという願いがあるなら、それを叶えるのを手伝うやり方の方がいいだろう。

「うーん」

悩んでいる。

当然か。

ゲームみたいに一からキャラクリエイトっていうわけにもいかないし、時間をかければ育成をやり直すことはできるけど、その時間は取り戻せない。

最強になりたいというのは俺の願望でしかないんだ。

アミナが一緒にいてくれれば嬉しいというだけのこと、そこを強制してしまえば俺のわがままでしかないんだ。

「強くなれば、危なくないんだよね?」

「え?ああ、ある意味じゃ一番堅牢な守りも手に入るしな」

「ネルとリベルタ君と一緒にいたいし、良いよ。その、たぼうがた?っていうのになってみる。歌えるんだよね?」

「嫌って言うほど歌わせるよ」

「嫌になるまでは嫌かなぁ、歌っていうのは楽しむものだしね」

しかし、少し悩んだ後のアミナは何故かニコッと笑ってやると言い出した。

「それに、リベルタ君は言ったよね。僕を最強の歌姫にしてくれるって。それが本当か確かめないと」

「約束は守る」

「ならいいよー、とりあえず、これからの僕がどんな感じになるのかだけ教えてほしいよ」

「もちろん!」

女の子の心はコロコロと変わりやすいモノとは良く言ったものだ。

不承不承というわけじゃなく、率先してやると言っているようだ。

なら、俺も知識を出し惜しみするつもりはない。

「多忙型アイドルは、歌唱術、舞踏術、錬金術、召喚術、精霊術の五つのパッシブスキルを基盤として、バッファーとタンクを兼任するスタイルだ」

「うわー、そんなに覚えて大丈夫なの?」

「削る部分は削るから大丈夫。パッシブは全部最終段階までもっていくけど、錬金術、召喚術、精霊術のアクティブスキルはパッシブ込みで全部合計しても十個になるようになっているから大丈夫。歌唱術関連は二十五、舞踏術関連が十五、残り十っていう感じの割り振りだ」

多忙型アイドル、ネルの戦闘商人が最高のアタックホルダーなら、こっちはレイド戦の申し子と言うべきスタイルだ。

「へぇ、でもさ、なんで召喚術とか錬金術を覚える必要があるの?あと、精霊術だっけ?」

「アミナ自身は歌って踊るのがメインでやるけど、歌って踊ってる最中は無防備になるだろ?残り三つでその守りを固めるんだ。守りって言ってもアミナの歌と踊りでバフをモリモリしたやばいスタッフが周囲を固めているから普通に相手を殲滅できるんだけどな」

多忙型アイドルの基本行動はバフを振りまくこと。

歌唱術で習得できるバフの効果範囲は支援スキルの中で随一の面積を出すことができる。

歌うことが必須になるけど、FBOにはガチの歌手がこのビルドで一時、ゲーム内で有名になり一躍時の人となったくらいだ。

どういうシステムを流用しているかは知らないけど、歌が上手ければうまいほど効果が高くなる。

技術力を求められる形態のスキルだ。

この多忙型アイドルユニットが乱立した、レイドバトルイベントなんて、通称がアイドルライブコンサートなんて呼ばれていたくらいだ。

また歌唱術スキルの共通効果で惹きつけ効果というのが付属している。

これがタンク系のスキル並みの効果量で条件次第では純正タンクのターゲット収集能力を上回る。

さらにタンクでできない、バフも振りまいているからさらにヘイトも集まる。

アイドルの性と言われればそれまでの集客率。

それでモンスターを一方的に集めている間に、ほかのユニットキャラが一方的にモンスターに攻撃できるという純正タンクが涙目になるくらいのヘイト集中率を誇る。

「やばいスタッフ?ってなによ」

「それこそが錬金術と精霊術、さらに召喚術の組み合わせなんだよ。錬金術のスキルの中にゴーレムクリエイトっていうスキルがあってな。それでゴーレムを作って、召喚術で出し入れして、精霊術でBGMを作ってバフ効果マシマシの上にゴーレム操作までオートでやってもらうっていう、相乗効果がやばいスタッフ」

しかし、この多忙型アイドルには欠点がある。

それは純粋なタンク職と比べると圧倒的にタフさがないということだ。

スキルの回転率を上げるために魔力寄りのステータス構成になるのでそれは仕方ない。

それを補うために錬金術でゴーレムを作る。

ネルが聞いてきたやばいスタッフというのはこのゴーレムだ。

召喚術で出し入れするゴーレムは味方判定を受けてバフの恩恵を受ける。

しかしプレイヤーメイドのゴーレムは自動的に動くことができず、自前で動かさないといけない。

いや正確に言えば自動で動かすことはできるけど行動がワンパターンになるのだ。

そのデメリットを解消するのが精霊術だ。

精霊術は精霊と契約したり、精霊のポテンシャルを引き出すために精霊用のバフを使うためのスキル。

ゲーム時代の設定で、精霊は歌と踊りの奉納を喜ぶというのがあった。

それゆえにこの多忙型アイドルスタイルとは相性がいい。

そして契約した精霊の好感度が上がると、バンドを組んでBGMを出してくれたり、ゴーレムに憑依して無双してくれたり、歌唱術と舞踏術のポテンシャルを引き上げてくれるというやばい相乗効果を発揮する。

精霊術はゲーム時代では単体では使い物にならない、いやかなり使い難いスキルだった。

なにせ精霊のAIに好感度システムというものが導入されていて使用するたびにその好感度が下がって、威力も効果範囲も下がってしまう。

しかし、歌唱術と舞踏術に対して援護を求めるとその好感度は下がらずむしろ上がるし協力的で、あまり好まれない戦闘も率先してやってくれる。

ようは、精霊が楽しいと感じることが重要なシステムだということだ。

「へー、精霊さんとゴーレムってそんなにすごいんだ」

「すごいぞ、特に最下級の小精霊から最上位の特異精霊にまで育て上げると、向こうも恩義を感じてくれるのかとてつもなく頑張ってくれる」

だからこそ精霊との関係も重要になる精霊術はなんとしても最高段階にまでもっていきたい。

「精霊を育てるって、簡単に言うわね。そもそもどこにいるかわからないし、精霊って何千年もかけて成長するって聞いたことがあるわよ?」

「それは野生の精霊の話だな。居場所に関しても大体の見当はついているし、成長に関してもそう難しいものでもないぞ?アミナだったら結構簡単かもしれん。一緒に歌って、踊って楽しんで美味しい物を食べてとその繰り返しだからな」

「それならできるね」

しかし、ネルの認識だと精霊と契約すること自体難しい上にどこにいるかわからない。

さらには成長するのに何千年という時間がかかる。

その点はゲーム時代の知識でどうにかなると思っている。

むしろ現代人の常識によって、この精霊の育成という分野が多忙型アイドルをやる上での鬼門とも言われていた。

精霊の好む部分は楽しむこと。

物で釣ることもできるけど、基本的に歌と踊りを何よりも好む。

相手はAIだと思い手を抜くと、意外とそこら辺の機微を悟って好感度が下がってしまう時がある。

やるときは友達と一緒に遊ぶくらいの感覚で思いっきり楽しむことこそ最高効率と攻略サイトに書かれるくらいだ。

大の大人が、小さいファンタジーな精霊と一緒に歌を歌ったり踊ったりする。

相手がAIだとわかっているとたとえかわいいアバターを使っていたとしてもお察しの心境だ。

一部では羞恥心を捨て去るための戦いなどと揶揄されるくらいだ。

その点、アミナは一緒に歌ってくれる子がいる程度の感覚だし、精霊もこの世界なら生きているという認識だから問題ないだろうな。

「とまぁ、最後におおざっぱにまとめると、アミナは精霊が憑依しているゴーレムに守られながら精霊の伴奏に合わせて歌って踊って仲間を強くする。召喚術はその会場設営のために覚えるっていう感じだな。わかったか?」

「うん、わかった!」

この多忙型アイドルの最終形態になれば、裏ボスですら特異精霊の入ったゴーレムに囲まれ集団リンチになってしまう。

ボスの取り巻き?アイドルに引き込まれて警備ラインに入って一気にミンチになりますよ?

状態異常?精霊のBGMが防いでくれます。

範囲攻撃以下略と何人たりともアイドルのライブを妨害する存在はデストロイ的な方法で防いでくれます。

「そうとわかったらステータスを振ろうか」

「はーい!って僕計算できなかった。リベルタ君教えて!」

「アミナ、前に教えたじゃない」

「今度、冒険休んで算数の勉強するか」

「ええ!?」

その最終形態なんて想像もできていないだろうな。

アミナは無邪気な返事と一緒に翼の羽先でステータスを操作し始めようとしたが、ピタッと止まってニヘラと困ったように笑った。

比率の計算なんて普通、子供はできないか。

でも、覚えておいた方が便利かなと思ったので今度ネルと一緒にアミナと勉強する機会を設けようとネルとアイコンタクトで誓った。

「できたよ!」

「よし、確認するな」

『アミナ クラス1/レベル9

基礎ステータス

体力7 魔力11

BP 0

EXBP 0

スキル1/スキルスロット3

杖豪術 クラス2/レベル83 』

ひとまず俺に指示されつつ、ステータスを振り終わったアミナが元気いっぱいに見せてきた。

これでアミナも最初の一歩を踏み出したのであった。