軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4 プチクレイゴーレム

「は?」

進化したというのにもかかわらず、あっさりと倒されてしまった指揮官機(仮)埴輪を見てデントさんが間抜けな声を上げる。

「良し、別のパーツが出たぞ。次に行くぞ」

「おー!」

「腕が鳴るわ!!」

「ちょ、ちょっと待て待て、護衛の俺を置いてけぼりにするな。まずは説明しろ!あれが何でああなって、なんであんなことをしてるかって話だ。危険がないと判断しないと俺もどうすればいいかわからん」

構わずそのまま次の埴輪を標的にして、羽っぽいアイテムが出たからそれをスリングショットにつけて飛ばそうとしたけど、デントさんが止めに入ってきた。

「えー」

「えー、じゃない。正直俺がついて行けてないんだよ。ネルの嬢ちゃんもそんな目で睨まないでくれ」

ここで止める?とアミナがブーイングをして、邪魔をするなとネルが睨んでいる。

「お前ならわかるよな?」

「わかりますけど、このタイミングは……」

「空気読めなくてすまんな!!だけど、護衛としては正常な判断だからな!!モンスターが進化してるっていうのはかなり異常なことだからな!?」

埴輪の経験値的に、次の埴輪を倒せば俺たち三人のレベルは一緒に上がる。

カガミモチで確認したけど、この世界のレベルの経験値配当は、攻撃を行うことによって均等に配当される。

要は一体のモンスターを複数人で攻撃したら、ダメージ比率じゃなくて、攻撃した人数で分配される。

これはゲームと同じだ。

ただ、一つ注意するのは攻撃した後に一定の距離を置く、この場合モンスターが攻撃対象を認識しなくなったら経験値は入らないようになっているということ。

すなわち、攻撃してそのあと全力疾走で安全圏まで逃げて誰かに倒してもらっても経験値は入らないってことだ。

それを利用して、埴輪で経験値を三等分して、EXBP確保条件を満たすように立ち回っていたんだ。

「ええーと、お前の話をまとめると、ああやって進化させて別個体にすると少しだけもらえる経験値が増えるって?それであれは進化しても強さはそこまで変わらないのか?」

EXBPに関してはネルの進言で伏せている。

代わりにああやってアイテムを使って進化させると埴輪からもらえる経験値が増えると説明した。

「ほとんど変わりませんね、与えるアイテムの種類と量を間違わなければあれはほとんど強くなりませんし」

「量ってどれくらいだ?」

「全部で三段階あって、埴輪が落とすアイテムは全部で十四種、一つは魔石でもう一つは鍵です。だからその二つは関係ないです。問題なのは残り十二種で、四種類で一段階アップ、八種で二段階アップ、全十二種を与えると完全体が生まれます。一種だけだと強くなった?って疑問が思える程度の強化にしかなりません。二種類でああ、強くなったかもって違和感を感じて、三種類で違いが判る程度ですね。段階アップするとそもそもクラスアップするから見た目からして違います」

埴輪ことプチクレイゴーレムを含めてゴーレムには合体というスキルが標準装備されている。

ただこれを発動するためには条件がある。

「……理由はわかった。ただ、なんでスリングショットで打ち付けないといけないんだ?」

「それが合体スキルの発動条件ですから」

「合体スキル?」

「ゴーレム系のモンスターが共通で持っているスキルです。ゴーレムが合体するためのスキル発動条件はいくつかあって、その中の一つでパーツを射出して体に当たると自動的に合体するっていうのがあります」

合体させて進化させるなら、アイテムを遠くから当てる必要性なんてないと思われるが、スキル発動条件が少々特殊で、ゴーレム同士が互いに合体する意思があるか、射出装備でアイテムを打ち出してドッキングさせるか、上位ゴーレムに無理やり徴収される形で合体するかの三つのパターンがある。

「なんだよそれ、いや、ゴーレムがたまに大きな個体になるっている話は聞いたことはあるが、そういうことだったのかよ」

プチクレイゴーレムこと埴輪は百パーセントいずれかの合体アイテムをドロップする。

売値はゼロ、装備品と合成不可、武器としてもアイテムとしても使用不可。

正しく、こうやってEXBP獲得条件を満たすためにだけ存在しているようなアイテムだ。

「問題ない、戦ってみたが本当に強くなったかわからないくらいだった」

「そうかよ」

埴輪の進化状態の強さを確認するためにピッドさんが試しに俺の言う通りの手順で進化させて闘って戻ってきた。

結論危険ではないとのことがわかって、頭を乱暴に掻くデントさんは大きくため息を吐いた。

「次からこういうことをするときは事前に相談してくれ、寿命が一か月は縮んだぞ」

「はーい。あ、ちなみに三段階進化した埴輪って、クラス4相当のボスになって周りの埴輪を吸収してさらに進化するんですよ。一か月くらい放置すればクラス6くらいのボスになりますよ」

「絶対にやめろよ。こんな首都の近くでそんな化け物呼び出されたらシャレにならん」

結果的に問題はないと判断されたが、報告しなかったことを注意されぐりぐりと頭に拳を当てられ若干痛い思いをした。

問題ないと勝手に判断したのは俺だ。

確かにデントさんの言う通り伝えられる部分は伝えないといけなかったな。

秘密にしないといけない部分があるせいでそこら辺の判断が上手くいかないな。

「はい、気を付けます」

「ならいい、ほれ、レベル上げるんだろ?」

「はい」

反省して、今後に生かそう。

素直に頭を下げて、デントさんに許可をもらってレベル上げ再開。

さっき拾った羽型のパーツをスリングショットにセットする。

「それじゃ、気を取り直して行こう!」

「おー!」

「まぁ、いいわ」

元気に返事を返してくれるアミナは本当にいい子だな。

水を差されてネルは少しだけご機嫌斜め、けれどレベルがあげられるならいいかとスリングショットを構えなおしている。

羽型のパーツを撃ち出し、そして再び発光。

今度は埴輪の背中に翼が生えた。

かといってそれで飛べるわけもなく、普通に今までと変わりなくこっちに来て。

「当てたわ!」

「最後は僕だ!!」

ネル、アミナの順で攻撃が当たり。

『レベルが一上がりました。クラスが解放されます』

「お」

「上がった!!」

「やったぁ!!」

脳に響く、アナウンス。

ようやくレベルをゲットした。

「お、上がったか。おめでとう」

「おめでとう」

「ありがとうございます」

「ありがとう!」

「嬉しいわ!」

初のレベルアップ、デントさんもピッドさんもさっきのことがあったにもかかわらず祝福してくれた。

そこは素直に感謝せねば。

「よし!このまま次のレベルまで行くぞ!」

「ん?ステータスを確認しなくていいのか?BPを体力に振ってやった方が戦いも楽になるぞ」

ステータスを確認せず、そのまま次のレベル上げに勤しむ俺たちにデントさんが首をかしげるので。

「もう少し経験値テーブルを上げてからステータスをいじった方が効率がいいので」

俺はきっぱりとまだいじらないと宣言して埴輪退治に勤しむことにする。

今度も一緒だ。

埴輪にパーツを俺が当て、ネルの石礫を当て、アミナで仕留める。

これをひたすら繰り返すだけ。

時々出る魔石はしっかりと拾って皮袋へ。

デントさんとピッドさんに護衛されて周囲への警戒を怠らず、レベルアップのアナウンスを何回か聞いたタイミングで。

「おーい、そろそろ野営地に戻るぞ。これ以上やったら野営地に戻る前に日が暮れちまう」

タイムアップが来た。

夢中でレベル上げをしたから時間が経つのが早い。

昼飯は干し肉と水で済ませていたから味気なかったけど、それ以上にレベル上げが楽しくてしょうがなかった。

「ねぇねぇ!リベルタ!いっぱいレベル上がったわね。これは明日はもっと上げられるかも」

「そうだな、コツもつかんできたし、経験値テーブルにも余裕が出てきたから、そろそろソロで行ってもいいかもしれないな」

「ソロかぁ、大丈夫かな?」

帰りの道は今日でレベルがどれくらい上がったか、そして戦いに慣れてきて明日はソロでレベルを上げてもいいかもと判断するかどうか。

「ソロは止めてくれよ。俺たちの目の届く範囲でも個々で動かれてたら対応できなくなるかもしれんからな。それに、大丈夫だって過信したときが一番危ないんだよ。今日の連携でうまくいってんだ。焦らずそのままやればいいさ」

経験値効率を考えるのならソロの方が断然いい。

だけど、デントさんの言うことも一理ある。

俺の安全基準と、デントさんの安全基準なら間違いなくデントさんの方が高めに設定している。

アミナの不安もある。

それだったら無理してパーティー行動を崩す必要性はない。

デントさんの指示に、アミナも安堵しているし、ネルも不満はなさそう。

「わかりました」

「利口な奴は長生きするぜ。俺が保証してやる」

「お前が言うと説得力があるな」

「褒めるなよピッド、生きることには定評のあるデントさんってね」

一定の成果が出ているのならそれ以上を望むのは危険か。

ゲームと違って死んだらゲームオーバーかもしれないんだ。

慎重に動いた方がいい。

「褒めていない」

「そう言うなって、照れ屋め」

少し疲れも残ったが、寝れば回復してるだろう。

この後野営地でステータスのチェックも待っている。

その時ステータスも振り分けする。

「ステータス♪ステータス♪」

「リベルタ、あとで相談したいんだけど」

「あ、僕もお願い!」

「良いけど」

ついでに彼女たちの分のステータスチェックもしないとな。

強くしてやると約束したからには最高のステータス割り振りをしないと。

「初々しいねぇ。俺も初めてレベル上がった時はあんな感じだったなぁ」

「老けたな」

「うるせぇ!!お前も似たような物だろ」

「俺はまだ三十だ」

「俺はまだ二十代だっての!!」

「来年は三十だろ、変わらん」

それにしても年長者の叫びがうるさい。

ガヤガヤと騒いでモンスターを引き寄せないかと心配になるが、ここら辺には音に反応して襲い掛かってくるモンスターはいないはず。

〝流浪〟がいたらかなりやばいけど、首都近辺に出る可能性は限りなく低いし目撃情報は常に冒険者ギルドに共有されているはず。

そのギルドに所属しているデントさんとピッドさんが騒いでいるということは大丈夫ということだろう。

俺たち子ども組はステータスをどうするのかの話題で盛り上がり、アラサーの二人はまだ若いと過去と現在を比べている。

ステータスの話題は俺にとっては確認作業なのだが、デントさんとピッドさんの話はレベルを上げれば肉体的衰えは軽減されて、さらに高レベルになればピークを維持できるみたいな話も出てきた。

だけどそれはハイクラスの話だな。

最低でもクラス7の後半まで上げないと意味ないみたい。

そこまで上げても微妙に老化は進むみたいだしな。

そこまでして若さにこだわってレベリングしている人はいないのかぁ。

クラス7の後半レベルくらいなら完全に老化を止めることができるとこの場で言ったらどんな反応が返ってくるだろうか?

少なくともろくなことにはならないだろうというのはさすがにわかる。

「ネルは体力寄りで、アミナは魔力よりかな。今後のスキル構成を考えるとそこら辺がベストなんだよ」

なので俺はデントさんとピッドさんの会話は聞きつつスルー。

ネルとアミナの二人のステータス構成を考える。

「そうなのね、今回上がった分は全部体力に振ればいいの?」

「いや、ステータスは比率が重要でな。体力寄りでもスキルを使うために魔力は必要だし、魔力寄りでも体を動かすから体力が必要なんだよ。偏りすぎるとどっちみち後悔するからね」

ステータスの割り振り、そして今後の展開。

それを考えると今の今からこだわっておくに越したことはない。

「そうなのね。私ならどういう風に振り分けるの?」

「ネルは商人だから、体力3を振ったら魔力が2くらいか。偏らせて体力4の魔力1だね」

「僕は?」

「アミナは体力2の魔力3がベストだ」

「私が二つあるのはなんで?」

「平均寄りなのがバランスタイプで安定してスキルも使うことができる商人で、偏ってるのは一撃必殺を考えているタイプだ。それはこの後野営地でゆっくりと話し合おうか。ステータスの振り方でスキルの構成もガラリと変わるし」

「そうね、一生ものだもの。しっかりと考えるのは大事ね」

「それだと僕はダメみたいじゃない」

「安心しろ、アミナの方がスキル構成に幅が広すぎて悩むことが多いから」

「それは、それで嫌だなぁ」

大人と子供、ともに悩みはあれど話は別。

ひとまず言えるのは、今日の俺たちは楽しく無事に一日を終えられそうであった。