軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12 城蛇親衛隊

FBOでのボルドリンデの戦法は取り巻きを伴ったパーティー戦と言える。

「地下遺跡の最奥で最後の抵抗か」

「はい。一緒に連れてきた世話係であるメイドや執事など非戦闘員は既に確保、抵抗していた騎士や暗部の大半は倒しました」

「騎士や暗部の捕縛はゼロ、忠誠心が高すぎて怖いなぁ」

「リベルタ殿が言いますか?ゲンジロウ殿たちは、すでにそのような域になっていると思いますが」

ボルドリンデは魔法の中でもデバフを愛用するから、こうやって取り巻きの数を減らせているのは相手の戦力を削れていると思える。

ボーグルのゲンジロウたちの評価は聞こえないフリをして、手描きした遺跡のマップをじっくりと見る。

ゲームではランダム要素のあったアジダハーカが封印されている遺跡の構造パターンは記憶しているが、今回のパターンは少々面倒な部類の遺跡にあたったようだ。

罠が張りやすく、守りやすく攻めにくいという籠城向きの構造。

ボルドリンデのデバフや闇魔法が活躍しやすい空間だと言える。

ただ、さすがのボルドリンデであってもすでに落城寸前で勝ち筋はほぼゼロ。

僅かな希望に縋って戦っているという性格ではないから、十中八九アジダハーカ復活に全精力を注いでいるのだろう。

「このままアジダハーカを復活させられても面倒なので、そろそろ俺たちが動きますね」

「不甲斐ないですが、よろしくお願いいたします」

アジダハーカの復活をこっちに有利なタイミングまで遅らせられるように今回の作戦を決行しているのだ。

ボルドリンデの都合でアジダハーカを復活されてはたまらない。

遺跡の中の敵の掃討はほぼ完了、罠も解除済みということで最高戦力である俺たちが出張っても良い頃合いだろう。

「クローディアさん、反動は収まりました?」

「ええ、天拳はまだ使えませんが通常戦闘は問題ありませんよ」

「イングリットはパーフェクトクリーンのリキャストタイムは過ぎたか?」

「はい、いつでも使うことが可能です」

「エスメラルダさん、魔力の回復は?」

「万全ですわ、ポーションの方も補充済みです」

「ネル、貯金の計算は大丈夫だな?」

「ええ、使っていい金額は頭に入ってるわ!」

できれば、クローディアの天拳のリキャストタイムを待ちたいところだけど、少し嫌な予感がするので行動を起こす。

実際、天拳のリキャストタイム以外は万全なので、ボーグルに言って、遺跡の中に入り込む。

「結構広いのですね」

「戦うことを前提にした遺跡のようにも見えますわ。前に建物が入り組んでいるのは敵を迎え打つ時に用いる建築に良くあると聞いたことがありますけど、それによく似ていますわね」

あちらこちらに戦闘痕が残り、赤黒い何かが付着した壁や地面、生臭い匂いと、布をかぶせ騎士たちが外に運び出すモノを見るとここで凄惨な戦闘があったことがわかる。

クローディアは想像を超えた遺跡内の広さに感心し、エスメラルダ嬢はこの遺跡が戦うことを前提とした建築なのだと別視点で感心し、それを聞きつつ慎重に遺跡の奥に向かう。

道中では騎士が見張りにつき、残敵がいないかを確認しているから接敵は無し。

そして唯一戦闘音がする遺跡の奥についた。

「ええい!!奥からちまちまと攻撃しおって!正々堂々戦わんか!!」

同時に、ゲンジロウの激昂が聞こえ、遺跡の奥に進めないというのがわかった。

「てこずっているみたいだね」

「御屋形様!?申し訳ございません。思いのほか敵方もやるようでして、いまだ攻略の目途が立っておりません」

「良いよ。この遺跡の構造的にここが最後の難関になるっていうのはわかってたから」

「はっ」

俺が姿を現し、攻略が難航していることに申し訳なさを感じてゲンジロウが頭を下げてくるが、ここを攻略するには少しコツがいる。

真正面から挑みつつも、人的被害を出さないという判断をして慎重に攻略しようとしたゲンジロウの判断は正しいと俺は思う。

「やっぱりボルドリンデの構えは結界による迷宮作成とデバフ付与か。戦いの基本パターンは敵が隠れていることによる不意打ちね。表に出て来るタイプじゃなくて、迷宮の裏通路から小さな窓を使って弓や魔法の遠距離攻撃。壁は結界で補強しているからそう簡単に壊せる物じゃないし、無理して壊そうとすると地下遺跡を倒壊させる危険性があるか」

ゲンジロウの脇を通り、行き詰っている場所を覗き込んでみるとそこは一見ただの広間。

しかしよく見れば、うっすらと結界による見えない壁のようなものが展開されているのが分かる。

結界は不可視に近い色合いで見えづらいが、結界の壁によって迷宮が構成されているように見える。

ジッと見つめれば、壁のようなものが認識出来るのがなんともいやらしい。

この見えなさそうで微妙に見えるという色合いがまた厄介なのだ。

集中すれば結界が見えるということでそっちに意識を割いた際の隙に壁際に設置されている穴から弓矢や魔法を発射して攻撃しているのだろう。

「足元には感圧タイプのトラップとマジックワイヤーによる不可視のワイヤートラップ、最終手段は釣り天井から槍を生やして串刺しか」

おまけにあちらこちらと罠だらけだから、ここを通って進むのは難しい。

そっと、広間に手を差し出すと、わずかに魔力が吸われるような感覚もある。

「魔力吸引のデバフに、他には・・・・・酸素濃度低下のデバフかぁ。これ、状態異常じゃないから騎士たちの耐性も意味ないか。おまけに無味無臭の毒霧に、あとは、うわぁ。地面に摩擦係数を減らすデバフとか。俺たちに物理ダメージが効きにくいからって殺意高すぎでしょ」

それによってこの空間にデバフトラップ魔法を仕掛けているのがわかって、そのやり方からボルドリンデ本人が仕込んだ物だと察する。

悪辣極まりない、デバフの数々。

対処しにくいということを考慮しての配置は原作準拠というわけか。

「横穴を掘るにも、さすがに本拠地には対策を講じているか」

そんなデッドスポットと化したエリアを踏破するには、少々どころではない手間がかかる。

それならさっきみたいに横穴を掘って迂回すればいいかと思いきや、壁をノックしてみれば岩とは違う硬質な感触を感じる。

「おそらく、アジダハーカの封印を応用した防御結界だな」

「壊したら、アジダハーカも復活して大変なことになりますわね」

重要なエリアを囲う結界は、アジダハーカの封印も兼ねているから俺たちから壊すこともできない。

横穴を掘って、その際に結界を破壊してアジダハーカの封印が解けて復活とかシャレにならない。

魔法分野に関しては、日夜勉強をしているエスメラルダ嬢がこの手の話には詳しい。

そっと壁に触れてなにやら調べている様子から察するに、結界の本質を探っているのだろう。

そういえば、FBOの時もスキルとかではなく魔力を流して結界を調べるという手法があったな。

プレイヤーはスキル外スキルとして着目していたが、戦闘には役に立たない代物として結論が出された技術だ。

「たしか」

それでも、こういう解析や探索と言ったケースの場合重宝するから俺も一応覚えているので、エスメラルダ嬢に続く。

ゲームの時には薄く広く魔力を流す感覚と言われ、日本人であったころはそんなもの分かるわけねぇだろ!?とキレながらゲーム内のMPを消費するイメージで使っていた。

「うーん、やっぱりアジダハーカの封印と連結してるなぁ。となると壊すわけにはいかないね」

壁に手を触れ、今度こそ魔力を流すイメージで結界に干渉してみたが、感触的に中身を抑え込むように覆っている系統の結界だとわかった。

僅かな可能性で、アジダハーカの封印とは関係ない結界かもしれないと淡い期待を抱いたがそう都合よくいくわけないか。

「となると、この広間を突破しないといけないのだが」

素直に正面突破するしかないという結論に至り、問題はこのトラップゾーンと、そのトラップゾーンを覗き込んでいる暗部たちをどう対処するかという話になるが。

「イングリットのパーフェクトクリーンで一掃するっていう手もあるが、下手すると結界ごと消しかねないからとりあえず保留で」

手段がないわけではない。

手っ取り早い方法はイングリットのパーフェクトクリーンで結界ごとすべての物を消し去ればいい。

イングリットのステータスならボルドリンデの手製の結界程度は余裕で消せる。

欠点としてはアジダハーカの封印に影響が出ること。

「なら、こっちの方がいいか。エスメラルダさん頼みます」

「承知しましたわ」

となれば、別の方法がベター。

広場の前の入り口、角度的に言えば中から狙撃できる場所にエスメラルダ嬢が立つと、間髪入れずに広間の中から矢が飛んできた。

「マジックシールド」

その矢を見て、そっと杖を振り矢を防ぎ。

「殺すつもりがあるのなら、殺されても文句は言わせませんわ」

悪役令嬢っぽい笑顔を浮かべたエスメラルダ嬢が、魔法を発動させる。

「ブリザードウェーブ」

戦闘モードに入ったエスメラルダ嬢の表情はSっ気満載だ。

静かに冷徹に、魔法を使い、相手を圧倒する。

エスメラルダ嬢から発せられる魔法の冷気は、広間を瞬く間に凍らせて迷宮の結界を浮き彫りにし、さらに小さな窓から侵入して隠し通路にいる暗部たちにも冷気が及ぶ。

「こんな感じでいかが?」

「完璧です」

そしてほんの数十秒冷気の波を広間に流し込んだ結果、広間は業務用冷凍庫と言わんばかりに凍結している。

見えにくかった結界は霜が降り明確に白い壁になっている。

矢や魔法が飛んで来ていた小窓は全て氷で塞がり、罠も凍結によって動作不良を引き起こす。

「おや、罠がダメなら普通の戦闘で対処しようって魂胆か」

残すはボルトリンデが用意したデバフだけだが、そのデバフを発生させる魔道具もこの冷気によってダメになったのだろう。

広間の奥に、うごめく黒い影。

手に持っている魔道具。

「うわ、とりあえずみんな広間の入り口の外に避難して。顔を出すなよ」

それを見て顔をしかめ。

金がある権力者はこれだから嫌だと思いながら、エスメラルダ嬢の腰を優しく引き寄せ、そのまますっと入り口まで下がり、影に隠れる。

そして遅れること数秒、銃声を響かせ俺たちがいた場所に弾丸が降り注ぐ。

ここで、銃を持ち出してくるか。

そしてそれを持っているということはボルドリンデの親衛隊が姿を現したということになる。

魔道具を買いあさっているボルドリンデのコレクションの中にある古代の銃。

その威力は、運用コストの高さに目をつむれば十二分に格上を殺傷できる威力を持っている。

現に、俺たちが避けた先にあった壁がどんどん削れていく。

「しかも、よりにもよって持ち出してきたのがガトリング砲か。こういう場面って普通は拳銃タイプから始めるのがお約束だろ」

ちらっと一瞬だけ顔を出し、すぐに引っ込めた後に顔を出した場所に降り注ぐ弾丸。

弾の口径が大きいことと、一瞬だけ暗闇の中から見えた砲身から、どんな武器を使っているかはわかった。

広間の結界を打ち砕いてくれているのはいいけど、今度はあの銃弾をどうにかしないといけないわけか。

「まぁ、トラップを相手にするよりかは楽か」

いずれ相手にしないといけないとは思っていた。

「さてさて、ここで一つ勉強会を始めよう。みんなよく見ててな」

「御屋形様、一体何を?」

「どうするつもり?」

「今から、誰でもできる銃砲の攻略の仕方を見せるからしっかりと見ているように」

なればこそ、ここはひとつボルドリンデ親衛隊の皆さんには教材になってもらうとしよう。

ゲンジロウとネルが、ふらりと弾丸が飛んで来るであろう入り口に踏み込む俺を見て首をかしげるのであった。