軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9 レジスタンス結成

「さて諸君、気分はどうだ?」

パワーレベリングの最優先事項は何か。それすなわち時間短縮だと思う。

一週間でクラス5のカンストまで持っていき、尚且つスキルやジョブも厳選もしないといけないとなると、とにかくすべてを効率重視でやらないといけない。

「最高だ!って言うわけあるかぁああああああああ!!!!なんだよこの1週間は!!地獄はここにあったよ!!食事も睡眠もすべて管理されて、それ以外の時間をすべてレベリングさせられて!!死んだほうが楽だなんて思いをするとは思わなかったよ!!」

「でも強くなれただろ?」

「なれたよ!?今でも夢かって思うけど、ちゃんとステータスがクラス5になってるのがすごいって思うよ!!」

となれば、人権?何それ美味しいの?と言わんばかりのゲーム脳全開な無茶ぶりを敢行するほかなかった。

そんな『訓練?いや拷問でしょ!』と言えるような経験をさせられてしまえば、この世界では並みの人間に到達できないはずのクラス5になっても素直に喜べる者はここにはいなかった。

「ナイスツッコミ。クラス5になってさらにキレが上がったな」

「こんな上がり方したくなかったよ!!」

朝起きればダンジョン、昼飯を食べればダンジョン、夕飯を食べたらダンジョン、風呂に入る前にダンジョン、寝る前にダンジョン。

基本このローテーションで訓練を施していたからな。

「全部が全部格上のダンジョンばかり!!一体何回死ぬかと思ったか!?」

「百は超えてないと良いなぁ」

「そんな発想だからキレてんの!!わかる!?」

ジュデスがキレるのも仕方ないとは思うが、これが必要だったんだから仕方ないだろ。

「うるさいぞぉ、ジュデス」

そんな環境下でツッコミの精度が上がったジュデスに、何か覚悟が決まったような表情をするようになった男たち。

なにより変わったのは。

「そんなに怒ると顔に皺が残るよ?」

「お前が一番変わりすぎなんだよぉオオオオオオ!!俺は男だって!!いっつも言ってたじゃないかぁ!!!」

シャリアが原作通りに、女装に覚醒したことだろう。

女顔にコンプレックスがあったシャリアであったが、この一週間のダンジョンラッシュの所為でストレスがたまりまくった。

一応ストレス発散用に、酒や食事に関してはかなり気を使って、寝床も上質な物を用意した。

パワーレベリングは、準備が一番重要と言っても過言ではない。

それは武器や装備だけでなく生活環境も一緒だ。

「そんなこと言ってたっけ?」

そんな贅沢な生活環境であってもストレス発散は必要なわけで、各人色々な形で発散する術が生まれた。

一番多かったのは、休憩時に露出が増えた男どもだ。

まずは筋トレするときに服が邪魔だ!と言っていたが、そのうち上半身裸のパンイチが日常の当たり前になり、酒が入ると全裸になるのももはやお約束だ。

魔法の秘薬を使ってからという物、解放感に味を占めた男どもの一番のストレス発散が服を着ないことだった。

それを注意するとあからさまにモチベーションが下がったし、戦闘中はしっかりと装備を着てくれるから、プライベートならいいかと放任した。

そうしたら全裸で酒盛りがデフォになって、メイドさんたちから苦情が入ってしまった。

なので酒盛りの相手は執事さんに変更した。

日々鍛えられる肉体に酔いしれることで、ほんのひと時の休息を楽しんでいるわけだ。

「言ってたよ!!」

「でも全裸の君には言われたくないよ?」

「はっ!?いつの間に」

その中で、ツッコみながらも気づいたら脱衣しているという妙な技術を身に付けたのがジュデスという男だった。

原作ではなかったが、魔法の秘薬の解放感に一番はまっていたのはもしかしてこいつだったかもしれない。

美少女と言っても過言ではないシャリア(男)に指摘されて、自分が無意識に脱いでいることに驚くジュデス。

そして、最初のオラオラ口調だったシャリアは今では立派な僕っ娘になっている。

シャリアに関して言えば、ストレス発散というよりは、女装を実際やってみたら嵌ったというか沼ったと言うべきか。

疲れて何もやる気が起きないと言いつつも、俺の作った化粧品を使って肌をケアするとどんどん美しくなる自分がいる、ステータスが上がるとその効果がさらに上がる、そして美しくなる自分に見惚れる。

そういうサイクルが出来てくると、どんどん凝っていくのがマニアの世界。

「シャリアも立派な淑女になっちゃって」

「もう!こういう道に引きずり込んだのはリベルタ君でしょ?責任取ってよね」

「責任を持って、しっかりと育成したじゃないか」

次第に口調、仕草と気を配るようになって、今では立派に小悪魔系というべき男を惑わす魔性の女と化している。

なんというか、元々男だからこそ、男が魅力的と思うような仕草が想像できるのだろう。

今も俺に向かってウインクしてくるが、シャリアという存在を知らなかったらドキッとしてた。

ジュデスを除いた男どもはすでに篭絡済み。ただしアイドルみたいな形で触れることは決して許されない神聖な存在としての扱いだ。

なんというかアミナとは違ったカリスマ性を持っているな。

「もう、そういう意味じゃないんだけどなぁ」

「そういう意味で雇っているのはわかってるだろ?」

「はーい。それで?僕たちはこれからどうするのかな?」

「とりあえず、他のやつらは服を着ろ。仕事の時間だ」

思ったよりも変な方向に仕上がったなぁと心の中で思いつつ、急ごしらえならこんなものかと納得する。

最悪、覆面以外は全裸な集団が爆誕しかねないと焦っていたが、そんなことにはならなくて一安心。

脱ぐのも早ければ、着るのも早い集団が身支度を終えて一斉に並ぶとなかなか様になる。

「さて、こうやって育成が終わったがこれはあくまで準備期間。ここからが皆の本番になる」

そしてここからが始まりだと言えば一斉に表情が引き締まる。

良いね。

この一週間の苦難を共に乗り越えてきたから連帯感が生まれている。

「標的は北の都ホクシ。そこにはびこる悪徳貴族や商人だ」

そんな彼らに依頼するのは、公爵閣下に頼んで調べてもらっている怪しい貴族や商人たちに向けてのいやがらせ工作だ。

いよいよかとニヤリと笑う面々に俺は頷き、そしてリストをこのメンバーの代表であるシャリアに渡す。

「これが対象者リスト。ここでこいつらの資金源を根こそぎ奪うことができればボルドリンデ公爵の動きも制限できる」

怪しい集団が動き回って、それの対処にリソースが割かれれば当然だが通常業務に支障が出る。

孤高を貫くボルドリンデ公爵が元から下の存在を当てにしていないという可能性もあるが、それはそれで下の方から足を引っ張ってもらおうと言うのが今回の算段だ。

そのためにジュデスたちをレベリングして実力もつけさせたのだ。

称号とジョブの二つ名もしっかりと厳選して完璧なキャラメイクをした自負がある。

「多いな」

「仕方ないだろ。これでも厳選したんだからな」

リストは羊皮紙で十枚分。

これで終わりじゃないし、まだまだターゲットになりそうなやつはいる。

ジュデスが渋面を作ってみているあたり、自分が住んでいた場所の治安があまり良くない自覚があったのだろう。

「そしてこれが演出の台本だ」

今回の作戦は、ただ貴族や商人の屋敷に潜入して金銭を奪ってくるだけじゃだめだ。

目立ち、そして世間を騒がせることが一番重要になる。

「話には聞いていたけどさぁ、本当にこれをやるの?」

「一番高笑いの演技が様になっていたジュデスがそれを言うか?」

義賊と言いつつ、やっているのは泥棒だ。

奪った金銭は全て貧しい家に配布するという貴族や商人からしたら迷惑千万な行為を、公爵閣下が影で支援していることは中々おかしなことではあるが、アジダハーカ復活目前の緊急事態なので仕方なしと割り切ってもらっている。

「うっ、だって楽しかったし」

そしてその義賊をやるにあたってキャラづくりが重要になる。

ただ盗んでお金を配るだけでは民衆は受け入れづらい。

必要なのはダークヒーローだ。

悪を以て悪を征する的な立場の存在だ。

本来であれば国王陛下が主導して国の捜査機構が悪事を見つけ、裁きを下すというのが理想的だがそれができれば苦労はしない。

しかし、国が今の生活を変えてくれるわけでもないので、希望を見いだせていないのが民衆だ。

となれば、そんな民衆たちに希望を与える存在が必要と言うことになる。

それを完璧にこなせたのはジュデスだ。

もとから原作での彼を知っているから、役者のような才能を持っているキャラだとは思っていたが、実際にやらせてみてここまでいけるとは思っていなかった。

演技指導を監修する身として俺が持つキャライメージを伝え、こんな感じかなと酒が入っている状態とは言え恥ずかしげもなくそれを演じて見せた。

「えーと僕は、このままでいい感じ?」

「今のシャリアなら下手にキャラを作らなくてもそのままでいいと思うぞ」

次点で覚醒シャリアがいい感じに仕上がっている。

元々自分で男っぽさをイメージして行動していただけあって、演じると言う分野の下地があった。

今は女性としての可愛らしさをイメージして行動している故に、その姿が民衆受けしやすくなっている。

ジュデスとシャリア、この二人がメインで、他の面々もバラエティ豊かにキャラ作りをしてサポートメンバーとして活躍できるようにしている。

それぞれに台本を渡してどんなキャラにするかイメージしてもらっているが、やはりメインの二人と比べると他の男たちは大根役者と言わざるを得ない。

「いっそのこと俺たちは仮面を着けて全裸で走った方がいいんじゃないか?」

「お前、天才か?」

「人災になるから止めなさい。何をどうしたら民衆が全裸の男に感謝するんだよ。むしろ配った金すら使われなくなるわ」

インパクト重視で行くなら、演技が苦手でどうしようと悩んだ末の全裸選択も悪くはないが、そんなダークヒーローは嫌だ。

屋根の上を全裸で走り回る男を追いかける兵士たち。

うん、何のコントかな?

「ダメっすか?」

「絶対ダメ。セリフとかはジュデスとシャリアに任せるから君たちはキメのポージングの練習をしなさい」

「全裸で?」

「服を着ろ」

こいつらの全裸思考はどこから来てるんだよ。

あの魔法の秘薬にそんな効果があるのか?と最近では思うようになったよ。

「!?」

「いや、なんで驚いたような顔になるの。当たり前だろ」

たった一週間でこんな人格の変化、誰が想像できるか。

ため息とともにちょっと先行きが不安になるけど、動き自体は完璧なんだよね。

なんなら、逃げることに徹すれば俺でも捕まえるのに時間がかかる。

そういうスキル構成にしているから、戦闘職の俺よりも機動能力の伸びしろは高いのだ。

鍵開けとか罠外しとか、さらにはサイレントウォークとかを追加しているから見失ったら見つけるのも一苦労だ。

「シャリア、お前だけが頼りだ。何が何でも脱がすなよ」

「まかせて!」

「僕は!?」

「お前は自分の右手を見ろ。すでに服に手をかけて脱ごうとしている奴をどうやって信用する?」

「いつのまに!?」

「数秒前の行動だよ」

そんな集団の一割が女装男子で、残り九割が脱衣症候群に掛かっているとかどんな変態集団だよ。

流石の俺もこんな形の集団になるとは思わなかった。

「リベルタ君」

「なんだ?」

「ちなみに僕たちの組織名ってどうなってるの?前に提案した解放軍はダメって言うことになってたし」

そしてこのメンバーの総称を決めるにあたっても少し問題があった。

流石にこの変態まがいの面々で解放軍はまずいと言うことで真剣に考えた結果。

「ああ、それは大丈夫、しっかりと考えた」

皆の注目を集めながら、俺はこのレジスタンスの組織名を発表する。

「エンターテイナー。今日からお前たちの組織の名だ」

その名が後にとんでもないことを引き起こすとは、今は知る由もないのであった。