軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7 夜会の結末

「傷の方は大丈夫だったか?」

エスメラルダ嬢がジャカランを雷で黒焦げにし、騒動は収束。

流石にそのまま夜会を続けるわけにもいかず、夜会は主催者である国王の指示でそのまま解散となった。

俺はジャカランに殴られて怪我をしたことにして、王城の別室に治療を受けるという名目で待機していた。

ジャカランはあれからエスメラルダ嬢の雷で完封され、黒焦げにされて虫の息のところを捕縛された。

僅かでも抵抗しようものなら雷が飛び、最後には意識を取り戻そうとすると雷が飛び……と、「殺してもかまわない」と言った騎士団長も、彼女の無慈悲としか言い様のない魔法攻撃でジャカランが徹底的にやられていることに少し腰が引けていたほどだ。

一応殺してはいない。

後遺症云々の可能性はわからないが、少なくともジャカランが人間離れした肉体を持っているとしても、そう簡単に動けるようにはならないし、確実に雷に対するトラウマを植え付けられただろうということはわかる。

最後の方は稲妻が迸るだけで悲鳴を上げていたしな。

暴神のスキルのせいでなまじタフになっているために生命力だけはあり、全身が焼け焦げても死ぬこともできず、そう簡単に気絶もできない。

そしてこの後に待っているのは拷問かあるいは処刑台、もしくは拷問の後の処刑台という流れだろう。

ジャカランの処罰と、彼を会場に連れてきたボルドリンデ公爵の処遇を決めるために、国王陛下と共に会場を去ったエーデルガルド公爵が俺たちが休んでいる部屋にやってきたのは、二時間ほど時間が経過してからだ。

「まぁ、あいつ程度の攻撃、受け流せますし」

部屋に入っての公爵閣下の第一声は俺の怪我の心配だったが、ジャカランの殺意の籠った拳がもろに直撃した頬ですら全くの無傷。そしてぴんぴんしているのを見て、わずかに驚愕したようだった。

「その割には派手に吹き飛んでいたな。あれは驚いたぞ?」

「あそこでただ倒れただけでは『それほど強く殴ったつもりじゃない』と言い訳されそうだったので、だったら『人一人殺してもおかしくないような威力で殴りました』とアピールした方がいいと思いまして」

俺のアドリブの演技に対して、「話が違うぞ」とでも言うように苦笑していた。

思ったよりもジャカランの拳が弱くて、ついそのまま受け止めようかと迷ったのはここだけの話だ。

「結果だけで言えばその通りだな」

そしてスタントマン顔負けのアクションで見事に吹っ飛び、そのままテーブルに直撃して薙ぎ倒したわけだが、もちろんジャカランだけの攻撃じゃそこまで吹っ飛ばないので、当然だが俺が床を蹴って跳んだ勢いが加算されている。

「役者にでも転職するか? 知り合いの座長に声をかけるぞ?」

「んー、それはそれで面白そうですけど、とりあえずこの世界でやりたいことがすべて終わってからのやり込みコンテンツとして覚えておきます」

今のステータスなら、ハリウッドのアクション映画にもCG無しで出演できそうな気がするが、それを言う必要もない。

「本題に入る。ジャカランの処刑が決まった」

冗談からの本題。

エーデルガルド公爵が国王陛下や宰相たちと話していた内容の一端を開示してきた。

「すぐにですか?」

「いや、今回の件に合わせボルドリンデ公爵の領内での怪しい動きに関しても陛下にご報告してある。ジャカランはその一端を白状させてから処刑することとなった」

「大丈夫ですか? 暴れれば牢屋なんて簡単に破壊できますし、拘束具も引きちぎれますよ、あいつは」

「その点においては陛下と協力して、少し特殊な結界のある部屋で監禁することが決まった」

「特殊な結界・・・・・」

「その様子では知っているようだな」

「さて、何のことでしょう?」

ジャカランを尋問することは予定通りだったが、その方法に少しほころびがあるのではと思い指摘すると、国王陛下は思ったよりも本気でジャカランを調べる気だというのがわかった。

この城の地下にある、特殊な結界のある部屋。

英雄の子孫に伝わる古の部屋は、過去に倒せなかった悪魔を封印していた実績がある。

遥か昔、この王都が作られる前。

特殊な能力を持つ悪魔がおり、そう簡単に倒せる存在ではないゆえに、その悪魔を封印した遺跡があった。

その遺跡が創世の時代の産物で、その遺跡の上にこの城が築かれたという歴史を俺は知っている。

さらに言えばその結界の強度とか弱点も知っているわけで、呆れたような目線で俺を見る公爵閣下が「大丈夫だ」と言う根拠に納得する。

「まぁ、いい。変なことを知っているのは今に始まったことではないしな」

あの結界ならジャカランは何もできない上に、外部から救出することもできない。

ならばそのまま拷問の後に絞首刑か、断頭台が確定した。

となれば。

「ボルドリンデ公爵だが」

「はい」

「客分の責任を取らせるために、爵位を没収といきたかったが、それが叶わなかった」

「国王陛下のお命を危険に晒したのに?」

「うむ」

今最も対処しないといけないボルドリンデ公爵はどうなったか。

十中八九、ジャカランをスケープゴートにするだろうが、それでも公爵を公的に処罰できればこちらの行動はかなりしやすくなる。

爵位を没収できれば、当然だが領地は一時的にでも国の物にできる。

となれば一気に北の領地を調査し、アジダハーカの遺跡を制圧できる。

「マーチアス公爵が反対したのだ」

その流れこそ最良であったのだが、この世界がそんなご都合主義で進むわけがない。

そしてあの城蛇公爵がそう簡単に爵位を手放すわけがないと思っていた。

「やっぱり両公爵は繋がりがあったんですね」

「色々と理由は述べていたが、おそらくそうだろうな」

エーデルガルド公爵の話を要約すると。

爵位の没収を公爵閣下が提言。規定通り他の公爵の意見を聞くと、マーチアス公爵が反対し、マルドゥーク公爵が賛成も反対もしなかったため、意見がバラバラになった。

そうなれば国王陛下の鶴の一声が欲しいところなんだが。

「陛下としては私に賛同したいが、下手に他の公爵の機嫌を損ねたくないといったところだ。ここでボルドリンデ公爵を処断してしまえば国が分断される可能性もある。ゆえに、沙汰を下すまでこの城に軟禁するという形になった」

「ジャカランの証言次第というところですか?」

「証拠能力という点で言えば、ついさっきまで扶養していた食客だ。ある程度の効果は見込めるだろうが、流れで言えば爵位剥奪まではいけない」

「となると?」

マーチアス公爵が反対したせいで、国王陛下の判断が鈍っている。

あと一要素欲しいといった感じで、エーデルガルド公爵の目つきが変わる。

「何でもいい、ボルドリンデ公爵の謀反の決定的な証拠が欲しいのだ。それをお前が見つけてきた奴らにやらせたい」

「なるほど」

裏取りをするために暗部を動かすのはいいが、当然ボルドリンデ公爵もその辺は警戒しているはず。となればエーデルガルド公爵の勢力に属さない第三勢力の行動により攪乱が必要になるということか。

「それと、私見でいい。アレが復活するまでの猶予はどれくらいある?」

そしてその攪乱をして情報を得るまでの時間がどれくらい必要かわからない。

とにもかくにも時間が欲しいが、悠長に情報収集している間にアジダハーカが復活してしまえば目も当てられない。

「予想では最短で二カ月、最長なら三カ月ってところですね」

「それ以下になる可能性は?」

「領民の大虐殺のような大量殺戮でアジダハーカの復活に必要な生贄を与えたり、無理やり封印状態のアジダハーカを倒そうとするなど、短縮される要素はありますね」

一見のんびりしているように見えるが、精霊界では着々と対アジダハーカ決戦兵器が作られている。

最悪の最悪まで想定して動いている。

しかし、わざわざ最悪の状態で戦う必要はない。

「リベルタの意見を聞きたい。ここで奴の地位を剥奪して奴は諦めると思うか?」

「諦めませんし、シンパが黙っていませんよ。国を恨み、アジダハーカを使って国家転覆を図り、国を滅ぼした後からの再生活動とか始めかねませんね」

現状を見れば、俺たちはボルドリンデ公爵の勢力との戦いの盤面で、ジャカランという一つの駒を取ったに過ぎない。

謀反の疑いをかけ、ボルドリンデ公爵の身柄を拘束できたまではいいが、彼の支持基盤が領地にある状態では話にならない。

表向きの行動制限をかけられただけでも御の字といったところか。

「そうか」

「公爵閣下、ボルドリンデ公爵の身柄を拘束できる時間はどれくらいですか?」

「伸ばして、二週間だ」

「承知しました。ジャカランの処刑は?」

「尋問次第だな」

ボルドリンデ公爵がアジダハーカという存在を把握していないと考えるのは、希望的観測を通り越し、愚かとしか言いようがない。

となればボルドリンデ公爵はアジダハーカを逆転の切り札と考えているはず。

それをマーチアス公爵に教えたか?

いや、そんなことをあの慎重なボルドリンデ公爵がするはずがない。

「一週間で彼らを仕上げます。その後一週間で作戦を実行しますので、その間に情報収集を」

「わかった」

どうにかして北の領地に王命の調査団を送り込む算段をしないと、最悪ルートでの攻略になってしまう。

となればあとはどうにかして状況改善に努めるしかない。

「それとリベルタ。いい知らせと悪い知らせがあるが、どちらから聞きたい?」

「このタイミングでですか?」

「ああ、このタイミングでだ」

頭の中ではジュデスたちの促成プランを考えようとした矢先に、眉間に皺を寄せて「これだけは伝えておかないといけない」と前置きをして公爵閣下が二つの話題を振ってきた。

「この話の流れだと、どっちもいい話とは思えないんですけど・・・・・とりあえず嫌な話からで」

「わかった」

大体こういう時の話の流れは、いい話であってもいい話とは限らない。

どんな厄介ネタが飛んで来るかと身構えていると、公爵閣下も苦笑気味に伝えるしかない。

「本来であれば夜会の途中で陛下が周知なさる予定であった内容だ。神は東、西、北の英雄にこう神託を下したそうだ。『南の大陸に集い、南の英雄に教えを乞え』と」

「・・・・・」

そしてその厄介な内容に俺は頭を抱えた。

南の英雄、神が指す存在は間違いなく俺のこと。

「なんで見ず知らずの輩の世話を俺がしないといけないんですか」

「そこからいい話に繋がる。神託ではまず南の英雄を見極め、もし認めるに値すれば弟子として教えを乞え、と言われているらしい」

「・・・・・つまり、ぶちのめして弟子にして戦力にしろと?」

「そういうことだ。神に力を与えられし存在が味方になるのは、この上ない戦力の補充ではないか?」

「・・・・・」

厄介ごとに厄介ごとが重なるとはこのことかと、本気でため息を吐いた。

戦力が足りない今、ネームドキャラを一から探す時間もない。

となればヒーローユニット的な存在が一時的にでも仲間になるのはいいことだ。

「いつ来るんです? 決戦前日とかに来られても迷惑なんですけど」

「西は一週間後、東は十日後、北は半月後だ」

「順番にシバいて、育成して・・・・・できるかぁ?」

激務の予感というか、激務にしかならない予感と、果たして素直にこっちの言うことを聞いてくれる方々なのかという不安が、クラス8まで強化したはずの肉体に頭痛を走らせる。

「公爵閣下的に、俺の強さの根幹を他国に知られていいんですか?」

「良くはない。いや、したくないと言うべきか」

そして俺が教えるということは他国の戦力を強化するということだ。

正直言って、それに関してはあまり乗り気になれない。

アジダハーカという眼前の危機がない限り、そんなことはしたくはなかったんだけどなぁ。

「では、教える情報はできるだけ少なくしますよ」

「それでこの世界が滅んでは本末転倒だぞ?」

「大丈夫です。被害は最小限で勝ちますから」

この知識は俺のアドバンテージだ。

となればこのアドバンテージを守るために、他の英雄に開示する情報を制限した状態でもアジダハーカに勝てるようにしないとなぁ。

今日は眠れないかもと思いつつ、その日を過ごすのであった。