軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1 風竜リターン

クラス5のレベリングが終了し、そしてネルの豪運と精霊たちの協力もあって当初の計画通りにスキルスクロールを獲得できた。新たに取得したスキルで全員スキルスロットを埋めて、スキルの熟練度を上げたあとは速攻でクラス6のレベリングに移行する。

新たに取得したスキルの熟練度上げが本当にきつかったが、日常会話や一緒に励まし合いながら修行をするという、仲間がNPCだったゲーム時代にはできなかった体験が良い気分転換となり、その苦しさを紛らわせてくれた。

「風竜かぁ、久しぶりだな」

心身ともに充実。そんな状態で挑むのは、クラス6ということで前回戦ったプレイヤーと同じランクになり経験値効率は下がるものの効率的にEXBPの条件を満たすのに一番優れたモンスターである、この風竜のダンジョンでレベリングをするしかない。

見上げて、空を舞う存在を目にすると俺は苦笑を浮かべる。

風竜の住まうダンジョンは、飛竜と同じ渓谷型のダンジョンだ。

だが、その規模は飛竜ダンジョンの比ではない。

断崖絶壁の続く広大な大自然。

その絶壁に人が一人通れるだけの細い道が延々と続く。

所々に点在する休憩所のような広場はあっても、満足に戦えるような広さのエリアではない。

そして空を飛ぶモンスターたちは飛竜ではなく、エメラルドグリーンの鱗を持つ風竜だ。

このダンジョン空間のポップモンスターがすべて風竜。ボスエリアに足を運ぶまでに相手取るモンスターのすべてが風竜なのだ。

カカカカと乾いた笑いを響かせるほかない。

本来であれば飛行ユニットのモンスターとの戦闘は避けた方が戦闘効率がいいのだが、クラス6のEXBPの獲得条件と照らし合わせると下手な格上のモンスターに挑むよりも同格の風竜に挑んだ方がいいのだ。

前回の俺の無茶なソロ攻略と違って事前にレベリングして来ているから大丈夫だとは思うが、念には念をと俺、ネル、クローディアにイングリットと前衛で戦うことになるパーティーメンバーにはしっかりと竜殺しの武器を装備して今回のレベリングに挑んでいる。

防具はサンライトシリーズだから、風竜の魔法やブレスにも十二分に対応してくれる。

「ここじゃゴーレムが出せないよ」

しかし、すべて万全というわけではない。

「ゴーレムの召喚は目的地の狩り場まで我慢してくれ。それまではアミナも徒歩での移動だな。迂闊に飛ぶなよ?風竜たちが一気に襲ってくるから」

「う、うん」

まず挙げられるのはアミナの普段の戦い方ができないという点。

道の狭い系統のダンジョンだと、大型のゴーレムが使えない。

アングラーも亀型ゴーレムも使えないから今回はアミナは徒歩での参戦で歌のバフも最低限になる。

「先頭は俺、次にイングリット、アミナ、エスメラルダさん、クローディアさん、最後尾の警戒はネル頼む」

「任せて!」

そして本来であれば火力の高いネルとクローディアは前の方に置いておきたいけど、今回のダンジョンは後方からも敵が空中経由で回り込んでくるから、前衛で警戒と索敵が出来てある程度風竜の攻撃に対処できる俺が先頭に立ち、中央にバフと魔法を展開できるアミナとエスメラルダ嬢を置く。

そして背後からの奇襲に対応でき、尚且つ迅速に追いつくことができるネルとクローディアが後方の対処。

目的地に着くまではタンク無しの戦闘になるから、空中の風竜を撃ち落してくれる遠距離攻撃役のエスメラルダ嬢は貴重な戦力というわけだ。

「道の途中じゃ碌なレベリングはできない。まずは安全に戦える場所まで一気に行く」

そして途中ではドロップ品もすべて無視して速攻で突き進む。

今の俺たちはクラス5であるが、風竜を倒せばクラス6の仲間入り。

そして戦闘も一定の条件さえ満たせば普通に風竜を倒しても問題はない。

掛け声を掛けて、そこから順次ダンジョンの奥に足早に進む。

ダンジョンの出入り口から見える渓谷の光景を見れば、どのパターンで来ているかはおおよそわかる。

たまに、フェイントみたいな感じで似たような景色で別パターンのルートを置いてくるが、今回目指す場所はどのパターンでも必ず存在する行き止まりに向かっている。

「やっぱ、すぐに見つかるよな」

エンカウント回避アイテムは使っていない。

というか、使えない。

クラス6の今回からはEXBPの獲得前提条件の方にエンカウント回避アイテムの使用を禁ずるという項目が追加される。

そして前回と同様にスキルクラス合計値に基準が設けられ、その数値は100と設定され、前回の倍だ。

プレイヤーの心理的に、クラス5だから50だと推測して、なら次は60かと勝手に判断してレベリングしたら一切上がらないという結末を迎えるというFBOではおなじみのトラップ。

ただここまで育成が進んでいるとFBOの意地悪さに慣れて、60?何か違和感があるぞ?と疑心暗鬼になるプレイヤーもちらほらといて、あっさりと合計値を100まで持っていくことも珍しくはない。

「こんなところで戦えるの?」

「空歩の回数と、リキャストに気を配ってれば問題ない。次の広場まで走って、そこで一回迎撃。倒したら即座に移動だ」

「わかったわ」

そしてそんな猛者たちが、効率よくこのダンジョンを攻略する方法を編み出さないわけがない。

「開幕ブレスパターンかぁ、一番面倒だな」

道が細いところで、空中から風竜たちが遠距離攻撃で襲ってくる。

その中で最大火力のブレスをぶっ放してくるあたり、自分たちの長所をよく理解してらっしゃる。

ただそのパターンは、FBOプレイヤーたちに親の顔よりも見たと言わしめるほど既知の行動。

目の前でチャージされる風竜たちのブレスをのんびりと待つわけもなく、背後ですでにスキル発動を始めているエスメラルダ嬢が動いた。

「リボルバースペル起動しますわ!!そこからハウンドライトニング!!」

追尾性能が高い雷が放たれるが、それは一発ではない。

空中に大口を開けてブレスを放とうとする恰好で三体の風竜が待機していた。

本来であれば一体しか標的にできないハウンドライトニング。これではすべてのブレスを止めることはできないはずなのだが、雷音が響いたのは三回。

それも、リキャストタイム的にできないような連射速度で放たれた。

光速で飛来する、三つの稲妻。

それは見事に風竜たちの頭に当たり、ダメージによってブレスが中断され、一瞬の痺れで飛行能力が阻害されて風竜たちの高度が一気に下がる。

「ミラージュフェノメノン」

そして空中に向けて空歩を使って駆け出した俺は、空中で三体に分身する。

「「「首狩り」」」

前回の俺では何度も攻撃しないと倒せなかった。

だけど、こっちの火力は当時の比じゃない。

三体に分身した俺の鎌は、綺麗に風竜の首に当たり。

「ちっ、即死は一体かよ」

左側に分身した鏡の俺によって一体の風竜が黒い灰へと化した。

首の七割以上を切り裂いても生きていることに、思わず舌打ちしてしまうが。

俺に続くような形で空に舞い上がった二人の姿を見て大丈夫かと思い、そのまま風竜たちとすれ違い着地態勢に入る。

「断空戦斧!!」

「竜滅殺掌!」

背後から聞こえる、ネルとクローディアの声。

そして直後に聞こえる斬撃音と打撃音。

ちらりと振り返ってみれば。

その軌道がはっきりとわかるくらいに、ネルが横にハルバードを振りぬいている姿と、空中で空歩を使って思いっきり踏み込んだ掌底を放っている格好のクローディアが見えた。

右の風竜にめがけてハルバードを大きく振り上げ、そして切断に特化したネルの一撃が俺が切り裂いた首の傷をさらにえぐりそのまま首を両断したのか。

中央の風竜は、首のダメージではなく、その首の根元にある逆鱗を綺麗に貫くように放たれた竜に特効ダメージを与えるクローディアのスキルアタックによって仕留められていた。

巨体だからこそ、その分舞う黒い灰の量も多い。

せき込みたくないから、そっと口元をマントの襟元で覆って着地し、後続を確認したが上空で旋回している風竜がいるだけで、こっちに来る様子はない。

「あ!鱗が!!」

「あとで腐るほど拾うから気にするな」

そして空中で倒したということは、ドロップ品も当然空中に発生する。

三人同時に空歩を使ってそのリキャストタイムを考慮すれば全員使うことができず、ドロップ品は真っ逆さまに渓谷に落ちていく。

俺は手を伸ばし拾おうとするネルに苦笑を向けた。唯一空歩を使っていないイングリットは俺の指示を守り、周囲を警戒して空歩を温存している。

このダンジョンの攻略の鍵は、空歩と言った空中で行動できるためのスキルだ。

アイテムとかでもそれを代用することができるが、そのアイテムはほとんどが消耗品だ。

魔力充填式の空中浮遊マジックアイテムなんてクラス9からの領域で、今作ることは土台無理。

いずれは大陸間移動用の乗物で作る予定だけど、一体いつになることやら。

転移のペンデュラムは一度行った場所じゃないと登録できない上に、登録個所数にも限界がある。

そろそろ複数個確保したいんだけど、あれ、ドロップしないんだよねぇ。

闇さんなら作れるかな?

いや、素材がないか。

「次が来る前に拠点に移動するぞ。今日はそこまで行ってキャンプ地を作る」

今はそんなことを考えるよりも、足を進める方が大事か。

黙ってここに突っ立っているとさっきと同じように風竜が襲い掛かってくる。

スキルを使ってやれば淡々と倒すことはできるが、足場の悪い状況で戦うのは効率が悪い。

ちらりとステータスを表示させたが、経験値が足りないのか、クラスは未だ5。

三体の風竜は絶対にプレイヤーよりも経験値が高いはずなのだが、クラスの格上ボーナスが無くなってプレイヤーを倒して経験値を稼いだ時よりもレベルアップが遠くなっている。

サクサクと上がっていたあの時が懐かしいよ。

そう思いつつ記憶をたどり、一体、また一体と襲い掛かる風竜を、狭い道や少しだけ広い踊り場で迎え撃つ。

「どんどん下がっていくわね」

「目的地って渓谷の下の方って聞いてたけど、どんどんお空が遠くなってるよ」

「暗いですわね」

「このダンジョンのボスが近づかないエリアに向かっているからな」

俺たちは渓谷を下りる道を進んでいる。

オープンフィールド系のダンジョンはボスが徘徊することがあるが、その全てのエリアに出張してくるわけではない。

ボスが見回る場所はエリア選定が行われ、行かない場所はしっかりと存在する。

「これから一か月スパンでこのダンジョンに籠るんだから、その間にボスに来られると困るからな。安全にレベリングできる場所に行くのは必須ってわけだ」

「でも、こんな場所に風竜が来るの?下りれば下りるほど戦闘の回数も減ってるけど」

俺たちはそこを穴場と呼んでいて、今回行くのもその一つだ。

「ちゃんと来るから安心しろ。アミナの歌で呼び寄せなくても一定の数はいるだろうしな」

渓谷の下に下りれば下りるほど、空を飛ぶモンスターが近寄ってこないのはわかる。

渓谷は下におりるほど、狭くなり自由に飛べなくなる。

渓谷の壁が、飛行をしづらくして行動範囲を狭くする。

そんな不利なエリアにわざわざ敵が来るかと言えば。

「ここに入るぞ」

「洞窟?もしかして風竜の巣じゃ・・・・・水の匂い?」

「それはもっと奥の方にある。こんな場所にはないよ」

渓谷を下って、半日ほど日陰によって薄暗い道を進み、そしてたどり着いたのは一つの洞窟。

人が通るにはかなり大きく、ネルはここから風竜が出てくるのではと獣人特有の嗅覚で洞窟内部を確認するが風竜の匂いは当然だがしない。

俺は迷わず中に入り込み、彼女たちも続く。

鞄からランタンを取り出して、その灯りを頼りに洞窟を進むこと数分、距離にして百メートルあるかないかくらいの距離を進むと。

「あ、出口だ」

進む道の先に光が見え、そこが目的地に繋がっていることを知っている俺はそのまま進む。

「わぁ!すっごい広い!!」

そして抜けた先を見て、アミナが歓声を上げる。

「ここが、今日から狩りをする穴場だ」