軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18 縛りプレイ

さていきなりだが、RPGを含め戦うという要素を組み込んだゲーム作品は多々ある。

そうなってくると色々と作品ごとに戦闘システムで個性を出してきてプレイヤーを楽しませてくれようとするのだが、これはいいと神システム認定されることもあれば、これはダメだろとクソシステム認定されることもある。

そんな中で割とポピュラーというか、こういうことがあるから戦略性が生まれるとか言われる物がある。

それは。

「やはり、鉄は硬いですね」

「それでも砕けるんですね」

「防御力を下げてしまえばどうと言うことはありません」

相性と呼ばれるものだ。この言葉だけ聞けば恋愛とか人間関係の話かと思われがちだが、要は攻撃と防御の相性ということだ。

FBOにも一応地水火風の四元素循環弱点システムと、雷氷、光闇の相互弱点システムが存在するが、それ以外にも相性が存在する。

それが物理耐性と魔法耐性と言われる物だ。

前者は物理攻撃に強く、後者は魔法攻撃に強くなる。

そんなシステムだ。

「いや、一応ゴーレムは物理攻撃には強いんですけどね」

「ステータス的には私の方が強いので負ける要素がありませんが」

「確かに、アイアンゴーレムまでならそうですけど・・・・・もしかしてこの調子でミスリルと、ダマスカスゴーレム行けそうですか?」

本来であれば、魔法で倒すことが定石であるはずのゴーレムを素手で砕いているクローディア。

岩石のロックゴーレムはいとも簡単に粉砕し、そして今、アイアンゴーレムダンジョンのボスである鉄の塊のアイアンアーマードゴーレムを素手で叩きのめし、拳の状態を確認している。

怪我はしていなさそうなことに安心しつつ、物理耐性の権化とも言うべきゴーレムのダンジョンをステータスのごり押しによる素手で突破するというクローディアの闘い方は、まぁ縛りプレイ好きのゲーマーである俺としては憧れるスタイルではあるが、心配でもある。

ロックゴーレムのダンジョンはクラス2、そしてアイアンゴーレムのクラスは3、次に来るミスリルゴーレムのダンジョンはクラス4だ。

クローディアのクラス4のステータスはEXBPを含めて完全に育成済みで、アミナのバフがあればかなりのスペックを誇る。

「問題ありません。次のミスリルゴーレムは素材的に比較的物理耐性が低めのモンスターですので、アイアンと同じ要領で行けます」

ヒーラーとは何ぞやと言いたくなるほどの格闘センスがあるからこそ、ここまで順調にボスを攻略出来るというか、クローディアだからこそできるというか。

本来であれば対策に対策を重ねて、それでようやく攻略できる難関の筈なのだが、問題ありませんという一言であっさりとダンジョンを二つ踏破してしまったのは、純粋なプレイヤースキルの高さがステータスによるごり押しを許しているのだ。

対策会議もたった一日ですませ、それよりもイングリットのパーフェクトクリーンの訓練を優先した方がいいと自分の訓練時間を割くほどの余裕を見せた。

大人の余裕というか、過去のゴーレムとの戦闘経験の蓄積が身体に染み込んでいるのか。

俺に各種ゴーレムの特徴を聞き、さらに相手の行動パターンを確認すると座禅を組んでイメージトレーニングに入った。そして今、実戦でそれを見事に成し遂げつつある。

「やっぱりクローディア様はすごいわ」

「うん、あんなに大きいゴーレムを相手に一回も攻撃を受けずに倒し切っちゃった」

ゴーレムは鈍重だが、それでも倒しやすいモンスターではない。

魔法耐性が低いから、地属性の弱点である風属性の魔法で攻撃すれば岩石と鉄のゴーレムはあっさりと倒すことはできる。

しかし、これが剣や槍などの斬撃系、刺突系の武器による物理攻撃となると途端に倒しにくくなる。

一応ゴーレム対策として挙げられる物理攻撃としてはハンマーなどの打撃系が有効だとされるが、それでも魔法よりは効果が薄い。

それが武器無しの素手での格闘戦となると、どれだけ縛りプレイなのかは想像に難しくない。

防御ダウン系のデバフスキルがあるからと言って、簡単に倒せる相手ではない。

「間合いをしっかりと把握して、相手の動きを完璧に読み切って、的確に急所を攻撃できるクローディアさんだからできる芸当だな」

しかも今はクローディアの切り札である大技スキルがない状態だ。

パッシブスキルでダメージ補正が入って昔よりも攻撃力が出る状態だと言ってもさすがに最大火力技がないのはきついはず。

「いや、本当、せっかく準備した小道具を一切使わないとか・・・・・」

そんな火力不足を補うための小道具を用意したはずなのに、ここまでの使用は一切なし。

なんというかクローディアは縛りプレイと決めたらとことんまで何も使わないことにこだわるゲーマー体質というか、自分の技がどこまで通用するか確かめるがごとくマジで自分の体一つでどうにかしている。

俺が用意した小道具というのは、一時的にステータスをアップしてくれる補助アイテムや、攻撃力を増量してくれるアクセサリーとか、相手に投げつければ防御力が下がるデバフアイテムだったり。

ダメージ判定を伴わないアイテムの数々。

ダンジョンの道中の雑魚敵を俺たちが倒して彼女の体力や魔力を温存出来ているとはいえ、それらのアイテム無しに相性の悪いボスモンスターを倒すのは少し、いや、あまりにこだわりが強すぎるのではないか?と思ってしまっている。

しかもこのまま次のミスリルゴーレムのダンジョンに挑もうとしている。

「いかにクローディア様とはいえ、ミスリルゴーレムはともかくとしてその次のダマスカスゴーレムは難しいのではないでしょうか?」

本来であれば、無謀というか、一部のやり込み勢くらいしかやらなさそうな偉業をこれから見せられると思うと、用意したアイテムを使われなかったという不満よりも、達成する瞬間を見たいという欲求の方が勝り始めている。

それほどまでに洗練されたプレイヤースキルでゴーレムを圧倒するのは、見ていてなんとも気持ちがいいのだ。

この勢いであれば同格のミスリルゴーレムであれば普通に倒せてしまうのだろう。

連勝しないといけないという不利な条件は有りつつも、そこに不安を感じさせないクローディアの見事な立ち回り。

ベテランゲーマーの俺から見ても無駄が一切ない!

「いや、もしかしたらもしかするかも?」

そんな動きを見ているからこそ、エスメラルダ嬢の言葉に同意するよりも、否定するような言葉が出てしまった。

「ダマスカスゴーレムの防御力は今まで戦ってきたゴーレムとは比較にならないほど高いんだが、ダメージは通らないわけではない」

ダマスカスゴーレムダンジョンのボス、フルアーマーダマスカスゴーレムのクラスは6。

ミスリルナイトゴーレムのクラスが5。

当然、その分強くなっているから防御力も高く、いかにEXBPをカンストしているクローディアでもダメージを通すのは難しい。

だが防御ダウンスキルを駆使し、弱点部位に攻撃を集中させればダメージを通すことはできる。

「安全性を度外視するなら、倒せないことはない!」

「いや、普通に攻略した方がいいですわよね?」

「まぁ、うん。つい、ノリでクローディアさんのジャイアントキリングを見たいなとは思ったけど、普通に弱体化させて倒した方が安全ですね」

危険性を度外視しての小ダメージを積み重ねる系の縛りプレイ。

そこにはハラハラする光景と、達成したときに大歓声が待っているとどこかのドキュメンタリー番組みたいな文言を思い浮かべてしまったが、普通に命がかかっているので、次のミスリルゴーレムからでもしっかりとデバフアイテムを使ってもらおう。

「と、言うことでクローディアさんアクセサリーです。ガンガン装備しましょう」

「せめてミスリルゴーレムだけでも駄目ですか?」

「ダメです。普通に同じクラスのモンスターですし、さらにボスは格上なんですから」

「沼竜と同じくらいの敵です、それに魔法耐性が高いモンスターなので物理ダメージは通りますよ?」

ちらりちらりと俺の方を見て、そしてシャドウボクシングの要領で演武を見せて戦えることをアピールして来てるけどダメです。

「それでもアイアン以上の防御力は有りますし、物理耐性は沼竜以上です。おまけにミスリルナイトゴーレムは魔法も使ってくるので、この魔法封じの護符と、撃たれたときの防御用のタリスマンも使って完封しますよ」

「一度だけ、一度だけでいいんです!!久しぶりにチーム戦ではなく、個人戦で中々いい勝負ができてるんです。こんな機会は少ないんですよ!!」

「バトルジャンキーの血が騒ぐのはわかるんですけど、ここじゃなくてもいいじゃないですか。ユニークスキルを取った後にやればいいじゃないですか」

普段俺たちの保護者をしているから忘れがちだったけど、この人責任さえなければ修行のために世界中渡り歩いて戦うというバトルジャンキーだったわ。

今回は一人で戦うことを主軸としたクエストだから、久方ぶりに保護者という枠から外れてはしゃいでいるんだろうなぁ。

「それだといざという時は大丈夫だという安心感があるではないですか!!」

「いや、負けたら危ないですし、最初っからやり直しで手間がかかるんですよ」

「問題ありません!岩と鉄の行動パターンは掴みました。次はもっと効率的に倒せる自信がありますので」

キラキラと瞳を輝かせて強敵と戦えることに興奮している彼女を見て、一瞬許可を出そうかなぁとはとは思ったけど流石に危険すぎる。

しかし、だからと言って頭ごなしにダメだといえば、今後の関係に支障をきたすとは思えないが我慢させることになることには違いない。

「……はぁ、わかりました。とりあえずアクセサリーとアイテムは持っていてもらって、ピンチになるか時間制限が来たら使うってことでいいですね?」

「妥協点というわけですか、わかりました。でしたらアミナさんの歌も制限してもらえれば」

「最初からアイテムフル活用コースでいいですね?」

なので、さすがにボーダーラインは設定してある程度自由にさせるということに妥協点を見つけようとしたが、逆にもっとギリギリを攻めたいと言い出し始めたので、こちらも慌てて食い気味に強制アイテム使用コースに持っていく。

きっとアミナのバフが無ければちょうどいいギリギリの戦いになると思っているのだろう。

流石にそれは許可できないので、にっこりと笑って確認すれば。

「アミナさんのバフありでお願いします」

「わかりました」

クローディアの頭も少しだけ冷えて了承するのであった。

いや、本当に意外だったとしか言いようがない。

嬉々としてミスリルゴーレムに挑みかかるクローディアが、ここまで縛りプレイで戦うのを好むゲーマー体質とは思わなかった。

いや、思い返せばそうでもないか?

強者と闘い、自分を強くすることを望んでいる彼女からすれば、わざと制限をかけて自身に試練を課すような闘いをすることは好みの戦闘スタイルともとれる。

軽快に打撃音を響かせ、物理耐性があるはずの白銀に輝くミスリルの巨体を蹴り飛ばして汗を流す彼女は、闘いながら工夫をしてどうすればダメージを通せるか試行錯誤している。

その表情はいつもの冷静な顔とは少し雰囲気の違う真剣な表情で、どこか楽しんでいるようにも見えた。

自分にとって相性の悪い相手であっても全力で挑む、その姿勢はすごいと思うんだけど。

「こうすれば砕けるのですね!!」

少しの休憩を挟んで、ミスリルゴーレムが歩き回るダンジョンに入って最初に出会ったミスリルゴーレムめがけてダッシュ。

奇襲から相手に防御デバフをかけながら、自分よりも大きくそして重いゴーレムを吹き飛ばす彼女の笑顔はとても楽しそうに見えて。

「うーん、ストレスたまってるのかなぁ」

普段から俺たちの保護者役を任されているが故に、ストレスを貯めこんでいるのではないかと不安になり。

「もうちょっと、クローディアさんが楽しめるダンジョンを選ぶかぁ」

パーティーリーダーとしてどうするか考えるのであった。