軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14 ボスラッシュダンジョン

ボスラッシュダンジョンの特徴というか、方向性はある程度決まっている。

種族や出現エリア、あるいは属性と、様々な分類で区分した五体のボスを選出してダンジョンの鍵を形成している。

完全にランダムのボスラッシュダンジョンの鍵も存在するけど、それはクラス10の鍵で、廃課金勢でもランダム性が高すぎて手を出さない代物だ。

なので基本的にどういう敵が来るかは予想できる。

ボスラッシュダンジョンはプレイヤーからしたら美味しい狩場と言える存在。

あまり有用でないもの以外は一通り網羅するのがプレイヤーの常識だ。

それゆえに攻略情報は検証班により普通のプレイヤーでもわかりやすくまとめられ、むしろ見ない方が不勉強だと言われるくらいにはポピュラーだ。

「右からトロール3、左からトロール4。正面のサイクロプスはゴーレムで抑えて、俺たちは取り巻きを狩る!ネルとクローディアさんで右側のトロールを!」

そんなボスラッシュダンジョンをこの一週間で何度も経験し、不測の事態に備えた。

そして効率的に倒す方法も徹底的に教え込んだ。

ボスラッシュは普通のダンジョンと違ってとある裏技が使えるから、普通に攻略するのは難しくない。

何しろエリアが一種類しかない。

普通のダンジョンであれば、洞窟、砂漠、湖、山、森林などいろいろなエリアが用意されるが、ことボスラッシュダンジョンだけは闘技場というエリアに固定される。

事前にエリアが分かっているから、そのエリア情報を把握していれば色々と対策を打てるというわけだ。

「俺とイングリットで左側のトロールを狩る!」

「わかったわ!」

「かしこまりました」

「参ります」

そして裏技とたいそうなことを言っているが、やっていることはいたって単純。

ボスラッシュの舞台となる、闘技場の一角にアミナが歌うための舞台を作るだけだ。

召喚による持ち運びができて、尚且つ、防衛設備も搭載できる簡易舞台。

その正体は闇さん謹製の亀形のゴーレム。

釣り特化のアングラーと違い、今回用意したのは完全に防衛用のゴーレムだ。

甲羅の縁にマジックシールドを発生させる魔道具を設置し、遠距離攻撃に対応。

さらに亀ゴーレムの甲羅は魔鉄を使っているから、その強度は折り紙付き。舞台が移動するから敵に包囲されにくい。

敵の動きを誘導するにはかなり有能なゴーレムだと言える。

戦場での移動型舞台として重宝する。

アイドル型ビルドを使っていたプレイヤーなら一度は使うそれの甲羅の上でアミナが歌っていれば、あら不思議、モンスターたちの注目はアミナに集中してこっちには見向きもしない。

そして敵が近づいて来れば。

「この一週間で新しく手に入れた魔法の前にあなたは無力ですわ!!」

護衛のアングラーゴーレムの背中に乗り魔法を放つという、半固定砲台と化したエスメラルダ嬢の新魔法によって迎撃される。

これまでのボスラッシュダンジョン攻略の際にネルの招福招来の効果が発揮されて少なくない数のスクロールを獲得し、その中には当然だが俺たちを強化してくれるスキルもあった。

「ハウンドライトニング!!」

その中の一つが今絶賛エスメラルダ嬢の放っている魔法だ。

一対一ならほぼ外さない命中率とほどほどの射程距離にトロールを一撃で屠ることができる火力があり、燃費もそこそこの魔法。

ハウンドライトニング。

猟犬の雷の名の通り、追尾能力のある単体雷魔法。

これまではブリザードウェーブからのライトニングレインと範囲攻撃を連射してエスメラルダ嬢の魔力消費が半端なかったが、これを覚えたことで燃費の悪さは大きく改善した。

今も正面から来るサイクロプスを相手に二体のゴーレムで連携を取って一切近づけさせていない。

雷系魔法の共通効果である感電による麻痺効果が効いている証拠だ。

あのペースなら近づかせる前にエスメラルダ嬢の魔法で倒し切れる。

だけど、それだとイングリットのユニークスキル獲得条件を達成できなくなるから、その前にトロールを倒し切らないとな。

「ミラージュフェノメノン」

今日のノルマも残り僅か、それなら出し惜しみをする必要はない。

分身殺法ってね、俺の左右に現れる鏡の幻影、そして俺の手に握られる鎌槍。

「首狩り」

そこから放たれる死神の鎌。

三人の俺がマジックエッジの鎌を横一閃に振り切り、トロール三体の首を落として同時に殺し切る。

「ふぅ、いっちょ上がり」

燃費は悪いが、効率的に倒すならやっぱりいい技だな。

そして残った一体のトロールはイングリットが相手取っている。

「……」

振りぬかれたこん棒を綺麗に躱し、無言で抜刀された仕込み刀の銀閃がトロールの体に走り、怯んだ隙に返しの箒がトロールの足を払い。

転んで、低い位置に来た心臓を貫き仕留めていた。ほぼ同時にエスメラルダ嬢のハウンドライトニングがサイクロプスに止めを刺した。

サポート型とは言っても、人並み以上の戦闘技能は叩き込んでいる。

抜刀術、そして箒との組み合わせ技からのコンボ攻撃。

一撃の火力こそそれほど高くはないが、それでもこうやって取り巻きのモンスターを圧倒できる程度には攻撃力はあるんだ。

「これで第四波は終了です」

「ああ」

今回選んだボスラッシュの範囲は鬼族。

ゴブリンジェネラルから始まり、オークリーダー、オーガケンプファーときて四体目はサイクロプス。

全て体力寄りのステータスをしていて、運動能力が高いモンスターたちであるが、その反面魔法耐性が低い。

だから、こうやってアミナで惹きつけて方向性を決めてエスメラルダ嬢の手にかかればあっという間に倒せてしまう。

いかにダンジョンの特性のステータスアップが入っていようが、全部脳筋の方に傾けているようじゃ隙だらけだと言っているのと同じだ。

確かに動きも素早くなって、力も強くなってタフになっているが、それでも俺たちなら十二分に対応できる範囲。

「ひとまず、今日の分は次で終わりだな」

今日はイングリットのユニークスキル獲得のクエスト開始で、これで三つ目のダンジョンだ。

最初にやったのは、一切動けないトレント系のボスラッシュ。

隠れていることこそ真骨頂だというのに、いきなり闘技場のど真ん中に現れてしまったら意味がない。

取り巻きをイングリットを先頭にパーティーメンバーで一掃して、ボスのトレントはそのままバッサリとネルに両断されて終了。

二つ目のダンジョンは魔法使い系のボスラッシュ。

オークセージ、シャドウマジシャン、パペットトリッカー、ファントムイリュージョン、そしてリッチと魔法系統のスキルを駆使して戦うボスたちが現れるのだが、取り巻きをアミナに惹きつけられてしまえば本体は無防備。

いかに強力な魔法を放ってこようとも、こっちからすれば既知のスキル構成だからどういう風に対応すればいいかわかっている。

オークセージは補助魔法をメインに取り巻きを強化する。

そして取り巻きは脳筋のオークたちだからエスメラルダ嬢の魔法で一網打尽。

取り巻きさえいなくなってしまえば、ボスならではのタフネスで生き残っていても、エスメラルダ嬢の魔法でフラフラのオークセージなど全員で普通にフルボッコだ。

シャドウマジシャンは闇系統の魔法を使う、陽炎のようなモンスター。

陰に潜むシャドウダイブは面倒だけど、この闘技場だとどこに出るかわかっているから、小回りの利くクローディアが雷歩で回り込んで魔力を纏わせた拳の腹パンからのコンボでノックアウト。止めだけをイングリットが抜刀術の一閃で刺して終了。

パペットトリッカーはゴーレムを使うんだけど、やっていることはオークセージと同じ。取り巻きを殲滅しちゃえば本体はそこまで強くないパターンだ。

ある意味一番面倒なファントムイリュージョンだけど、ピエロの仮面とマントが宙に浮いているというゴースト系のモンスター。

本体は仮面で、そこしかダメージが通らない上に、幻を見せてかく乱してくる。

と言っても取り巻きのモンスターが居ない単体での登場なので、開始早々魔法を使う前に、全力で槍投げをして仮面にヒットさせれば問題なく倒せる。

そして魔法使い系のボスと言えばリッチ!と言わんばかりの王道系ボス。

攻撃魔法にデバフ魔法、そしてアンデッド系のモンスターを取り巻きにするのはお家芸と言えるくらいのボスなんだけど。

アミナに注目させて護衛のゴーレムたちに対魔法スキル用の盾を持たせれば、攻撃は完封できるし状態異常系の魔法はそもそもゴーレムに効かない。

そして霧系の毒ガスとかはイングリットがエアクリーンで無効化できる。

結果、魔力寄りのステータスのボスは取り巻きさえ何とかなればエスメラルダ嬢を成長させるためだけのボスラッシュとなる。

「リベルタ様。最後のボスが来ました」

「うーん、相変わらずでかい」

そしてその成長したエスメラルダ嬢の格好の狩場と化した鬼系統のボスラッシュの最後は。

『■■■■■■■■■■!!』

さっきのサイクロプスよりもさらに巨体の大鬼。

額に立派な赤い一本角を生やし、皮膚は鉄よりも硬いのではと思わせるような硬質の岩肌。

岩鬼。

ゴーレム種かと思いきや、こいつもれっきとした生物系のモンスターなのだ。

最後のボスはこの巨体ゆえに取り巻きはいない。

取りこぼしがない分俺としては楽でいい。

そんな岩鬼は見た目の通りに頑丈で、力も強そうだけど。

「まぁ、動きが遅いから魔法のいい的なんだけど」

ここは脳筋が集うボスラッシュダンジョン。

体力は素晴らしいんだけど、魔法防御が悲しいと言わざるを得ないモンスターたち。

「ブリザードウェーブですわ!!」

出現したと同時に体がカッチカチになるまで氷漬けにされて。

「続けてライトニングレインですわ!」

雷の雨をその巨体で浴びる羽目になり、範囲魔法攻撃が、単体多段ヒット型の魔法に早変わりだ。

そして多段ヒットした結果、麻痺状態になりうつぶせの状態になって身動き一つ取れなくなっているところに、詠唱が終わった吹雪が再び岩鬼を襲い、そのまま雷の雨に打たれる。

もはや、エスメラルダ嬢の必勝パターンとなったそれを遠目で見つつ、これで本日のノルマは終了だ。

招福招来はリキャストタイム待ち中だから今回は無し。

「これで無事、一日目は突破です」

「そうだな。散々やったから最早作業みたいな感じになってるけど」

「それができていることこそ最良です」

イングリットが静かに、刀を箒の鞘に戻して周囲を見渡している。

定位置に出現する宝箱。

遠目から見る限り、木の宝箱だ。

サイクロプスに続いて少し内容が渋いが、倒しているのがネルじゃなくてエスメラルダ嬢だからまぁ、納得。

「次はナメクジ系のボスラッシュやって、その次にやるのは」

「予定では亀ですね」

「亀は明後日だよな?」

「はい。明日はナメクジ系のボスラッシュの予定です」

これで第一段階は終了、明日は第二段階に突入ってわけで、今日のお仕事は終了。

明日からは動きが遅い系のボスラッシュだ。

一日一つの攻略になるのは、安全に倒せるがすべてのボスモンスターがタフゆえに倒すのに時間がかかるからだ。

安全を確保すると自然と時間がかかるから、結構大変なんだよな。

疲れた体をほぐすように体を動かし、明日の予定を頭の中で再確認していると仲間たちが宝箱を開けて中身をもってこっちに来る。

「歌った、歌った!!」

「楽しかったか?」

「うん!」

背後にゴーレムを引き連れてくるから中々迫力がある。

苦笑一つ残してアミナに話しかければ、笑顔で頷く。

「時間的にもう一つくらいダンジョンを攻略できそうですが」

「いや、今日はここまでです。撤退しましょう」

「わかりました」

朝から始めて、今は夕暮れ前。

夕食には早い時間帯と言った感じで、クローディアの言う通りもう一つくらいのダンジョンなら攻略できそうな感じだけど、こういう時に限って失敗することがある。

集中力もそろそろ切れそうだし、無理にするほど時間が切羽詰まっているわけでもない。

精霊たちからも急ぎの依頼があるわけでもなし。

無理せず、安全に、それが今の俺たちにとって一番確実に強くなれる道筋なのだから。