軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3 星屑の糸RTA

「ゲートが出るダンジョンですか。初めて見ますね」

「ダンジョンの隠しギミックみたいな感じで実装されている物ですから。クローディアさんが初めて見るのも無理ないですね」

本来であればボスを倒さないと出ないはずの転移ゲート。

だけど、俺が倒したのは通常のモンスターだ。

「このダンジョンは、次の階層のモンスターを出現させるとその階層に行けるゲートが出るギミックが発動するんです。他にもこういう感じのギミックを持っているダンジョンはありますし、挑んでいきますよ」

「他にもあるんですね」

ライズコクーンを仕留めて、星屑の糸のドロップは一個。

確率三割を珍しく引けて満足しつつも、これ一個じゃ衣装を作るのには到底足りない。

いそいそとドロップアイテムを拾ってマジックバッグに放り込み立ち上がる。

「次からはスピード勝負になりますんで、俺が先頭で走ります。見つけた奴はかたっぱしから倒してください」

「スピード勝負ですの?」

「このゲートに最初に人が入った時から、エリア内にいるライズコクーンの羽化タイマーが動き出すんですよ。一体でも羽化すると次のゲートが出現してボス戦までが確定してしまうので、それを避けるためにはエリア内のライズコクーンを一気に掃討する必要があります」

この次の階層は一切攻撃をしてこないノンアクティブモンスターのライズコクーンしか出てこない。

それは一見楽そうに見えるかもしれないけど、そこでのんびりしていたらクラス5のモンスターであるスターリーバタフライが大量に発生する事態になる。

何故急ぐのかと首をかしげるエスメラルダ嬢の疑問はもっともだ。

まだゲートをくぐっていないからタイマーは起動していないので説明できるところは説明しておく。

「モンスターの配置箇所はパターン制で、五パターンありますけど最初のライズコクーンの位置でわかるからそこは問題ないです。次の階層にいるライズコクーンの数は全部で三十三体。それを一時間以内で一気に片付けます」

羽化までの制限時間は一時間。

ダンジョンの広さは東京ドーム四つ分くらい。

それを配置パターンごとに既定のルートに従って攻略していけば、俺の予測なら五十分ほどで全部掃討できるはず。

「アミナ」

「なに?」

「悪いけど、精霊が操作するゴーレムの一体の肩に乗って追い風の歌を切らさないように頼む。空を飛ぶのは万が一を考えると危ないし、追い風の歌が切れるのは避けたい」

「わかった!任せて!!」

「あとエスメラルダさんもゴーレムに乗せてもらってください。行軍速度的に走るよりもそっちの方が安定して戦えると思うんで」

「わかりましたわ」

今回の攻略では行軍速度こそこのダンジョン階層の肝。

アミナの追い風の歌はこのダンジョン攻略において最も適応しているスキルだと言っても過言ではない。

全体の進撃スピードの維持がなによりも大切だから、全体を体力強化してくれる追い風の歌の恩恵は大きい。しかも相手は動かないから歌で惹きつける心配もない。

胸を叩いて頼り甲斐のある姿を見せてくれるアミナに俺は頷き、次にこの中では一番体力ステータスの低いエスメラルダ嬢に対応を指示しておく。

このダンジョンで行軍速度がばらけるのは致命的だ。

RTAを意識するのなら、全員の行軍速度をある程度一定にして、尚且つ攻略の効率を計算しやすいようにメンバー配置するのがいい。

「ネルとクローディアさんは基本的にコンビで動いてください。俺は防御無視攻撃があるので基本的にソロで行動するけど、二人の場合はクローディアさんが防御力を下げてそこをネルがフィニッシャーとして仕留めるコンボ攻撃をしてください」

「わかったわ」

「承知しました」

そして相手は倒すこと自体はできるが、倒し切るのに時間がかかるモンスターだ。

レベル的には相手が下でステータス的にも勝っているが、それでも防御力特化型ステータスは舐めたら痛い目を見る。

ライズコクーンはスキル構成が防御特化になっていて、ひたすら耐えることで次の進化に備えるようなモンスターだ。

精霊たちに任せられないのは、配置関係を記憶して対応しないといけないことと、その耐久性で倒し切れない恐れがあるからだ。

俺たちなら防御無視の即死攻撃の俺と、防御力を下げられるクローディアと火力型商人のネルがいる。

「同時に攻略する必要のあるポイントが何ヵ所かあるから基本的に一撃で屠れる俺はソロで動く。イングリットはアイテムの回収に専念してくれ。それと、俺たちが倒したライズコクーンの数のカウントも頼みたい」

「かしこまりました」

そして今回のようなダンジョンだとイングリットの活躍の場所はないと思われがちだが、こういうRTAで時間勝負の場合はドロップ品を回収するのも重要な役割になる。

さらに討ち漏らしを回避するためにカウントをしてくれる要員を用意しておくと安全性が増す。

細かいところに気が回るイングリットならそれを問題なく達成してくれると思い、任せた。

「最後にエスメラルダさんですが、一ヵ所、十体前後で集中している群生地がありますのでそこの掃討をお願いします」

「任せてください。しっかりと役割を果たして見せますわ」

「今日は何周もするので、魔力管理は徹底してくださいね。群生地一ヶ所につき放っていい回数はブリザードウェーブとライトニングレイン合わせて四回までです」

「わかりましたわ」

そして一番時間のかかる群生地帯の対応は範囲攻撃ができるエスメラルダ嬢に任せる。

ライズコクーンは魔法耐性も高いが、ブリザードウェーブで弱点属性を強制的に作って、そこからライトニングレインを叩き込めば今のエスメラルダ嬢のステータスと装備なら二回の波状攻撃で一掃できる筈だ。

配置的に攻撃範囲から漏れる個体は俺とネル、クローディアの三人で対応すればいい。

「さて、ここまでで何かわからないことはあるか?」

こういうRTA攻略はパターン組みをするのが一番手っ取り早い。

誰がどの行動を担当するのか決めておき、それを戦場ごとに臨機応変に組み替えて攻略する。

そっちの方が体力と魔力の消耗も少ないし、高速で周回もできる。

それぞれの役割を指示し、そして確認した。

「はい!」

「なんだアミナ?」

「ゲートをくぐる前に歌っておいた方がいいかな?」

「そうだな・・・・・階層変化が起きてもアミナの歌は効果が持続するから、先に歌っておくか。エスメラルダさんも先にゴーレムに乗り込んでください」

「わかりましたわ」

『乗る?』

「ええ、フーちゃんよろしくお願いいたしますわ」

『任せて!!』

『アミナは私のところ?』

「うん!じゃぁミーちゃんお願いね。ピーちゃんはどうしよう?」

その際にアミナの質問にも対応し、最後に残った三体目のゴーレムの役割には。

「アタッカーをして貰うのと、道中でショートカットしたいポイントがあるから道づくりで活躍してもらうよ」

『わかったー!』

このRTAを達成するための重要任務を与える。

ピーちゃんの乗るゴーレムには両手に斧を装備してもらう。

「他に聞きたいことはないか?」

もう一度見落としがないか確認して、そしてメンバーの疑問もないようなのでここからRTAを開始する。

「よし、それじゃアミナ始めてくれ」

「うん!」

そして、アミナの歌をBGMにして体が軽くなった感覚を皮切りに俺たちはゲートをくぐる。

「夕焼け」

そしてくぐった先は同じ森の光景であるが、空の色が青から茜色へと変化している。

ネルが空を見上げその変化に気を取られている間に、俺は周囲を見回しライズコクーンを探し。

「ネルとクローディアさんは左側の個体を!俺は正面をやる!イングリットは俺の方に!」

そして入り口付近の木の幹に寄り添うように付着した二体のライズコクーンを見つけ、その数と配置から素早く指示を出す。

「かしこまりました」

「わかった!」

「では、一番槍を頂きましょう」

二人は瞬時に反応する。

クローディアは雷歩で一気に目標まで近寄り、そこから防御力を下げるスキルの崩拳を発動させる。

さすがに速い。

それに追走するネルをしり目に俺も正面に見えるライズコクーンを仕留めにかかる。

「心臓打ち!!」

何百回と繰り返してきた、心臓へ打ち込む技は的確にライズコクーンに死を叩きつける。

「一つ目。次に参ります」

黒い灰になった場所に何も落ちていないのを確認すると、イングリットは即座に走る方向を切り替え、ネルたちの方に走り出した。

俺もそれに追走し、入り口に待機しているメンバーの方を見る。

「こっちだ!全員ついてきてくれ!!」

アミナは歌いながら了解だと軽く頷き、ゴーレムを動かす精霊たちに頼むとピーちゃんのゴーレムを先頭に三体のゴーレムが追走してくる。

ここからは走りっぱなしなんだよなぁ。

俺が追い付くころに、防御力を下げに下げたライズコクーンの繭をネルが全力で叩き割り、そしてその中にいた羽化前のスターダストキャタピラーを倒した。

黒い灰になったそこにはさっき見た糸玉が転がり、それをイングリットが手早く拾い上げそのまま俺に続く。

ネルとクローディアはそのままイングリットを追い越し、俺の背後につく。

「この先は左右に分かれている!左側にネルたちが行ってくれ!そっち側は行き止まりで小さい広場になっている!いる個体は正面に一体、広場入り口近くの左側の木々の死角に一体の合計二体!イングリットはネルたちについて行ってくれ!倒したらこっちに合流してくれ!」

「わかった!」

「では、私は先行しましょう」

「承知しました」

頭の中にダンジョンの地図を思い浮かべ、その中で最高効率の経路を描き突き進む。

「残りは全員右に!ピーちゃん!早速出番だ!!」

『わーい!がんばる!!』

左が行き止まりというのなら右が正解と考えるかもしれないが、本ルートは最初の入り口付近の広場を右のほうに進む道が正解だ。

こっちの右側もしっかりと行き止まり。

だけど、ちょっとした裏技をすれば抜け道が誕生する。

アミナの歌を聞きながらゴーレムを動かすのが楽しいのか、ピーちゃんのご機嫌はかなりいい。

本来であれば、俺の指示など契約者でないので無視してもいいのだが、アミナが歌いながらピーちゃんにウインクして、そしてサムズアップしたのが見えた。

それによってゴーレムが一気に俺の背後まで迫る。

「俺はライズコクーンを相手にする!ピーちゃんはそっちの木を切り倒してくれ!!」

「ダンジョンの木は倒せませんわよ?」

「本来であればね!!」

ダンジョンのオブジェクトは全て破壊できない様にできている。

風竜のブレスを耐えられる岩があるように、本来の耐久値からは考えられないような不壊の物体がダンジョンの中のオブジェクトだ。

だけど、一部例外は存在する。

俺の指さした方向にピーちゃんは素直に突き進み、両手の斧を振り上げるとそれを勢いよく振り下ろす。

「木が倒れましたわ!?」

「その調子で突き進め!」

『わかったぁ!』

本来なら壊れないはずの木が倒されたことにエスメラルダ嬢が驚いたが、その方向で間違いないと確信した俺はライズコクーンに襲い掛かりながらピーちゃんに指示を出すと。

全力でゴーレムの剛腕を動かし、次から次へと木々が伐採されていく。

倒れた木はそのまま残るがどんどんと道が出来上がっていく。

「心臓打ち!!」

そしてその間に、俺はこの広場にいるライズコクーン三体を相手にする。

一体はわかりやすいところにいたのでサクッと倒し、糸玉が出たのでそれを拾いあげ、心臓打ちのリキャスト時間までに少し幹の陰に隠れたライズコクーンを見つけマジックエッジで強化した刃先で突き上げる。

ガチンと硬い感触を手から感じるが、わずかに刃が食い込む。

後は重点的に同じ場所を狙い続けるだけだ。

どれくらいのタイムを叩きだせるか計算しながら、久しぶりのRTAを楽しむのであった。