軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13 駆け出しアイドル

「もう一曲、いくよ!!!!!!!」

『『『イエエエエエエエエエエエ!!!!』』』

ここはどこだ?

答え、閑散とした静かな山奥の温泉地のはずだった。

バレーボールコートが少し増えているけど、もとは静かな温泉地だったんだよ。

「リベルタ君!!」

「はいよ!」

だけど、今は精霊たちの声援に溢れるライブ会場になっている。

低位の精霊から上位の精霊まで、数多くの精霊が自分の属性の色の光をペンライトのように手の先に灯して振ってくれている。

なんで精霊たちがそんなアイドル会場でのパフォーマンスを知っているのかというと、俺が教えました。

精霊たちに楽しんでもらいたい、そして会場の一体感を味わわせたら嵌るのでは?と魔が差しました。

反省はしている、だが後悔はありません!!

アミナには俺の知っているアニソンとか邦楽のアイドルソングを教えて歌ってもらっている。

この世界にはない、ノリの良い独特な曲。

ストックはたくさんあるから、新鮮な曲で精霊たちも大興奮というわけだ。

俺が最初の曲をリュートで弾き始めて、そして次にネルがカホン、箱を叩いて音をだす楽器でリズムを取る。

その音に合わせて、なんとクローディアが横笛を奏でる。

異世界でまさかこんな曲を披露するとは思わなかったが、やるからには真面目に楽しむ。

すでに十曲以上歌っているが、ポーションって便利だよね。

アミナの喉は常に状態万全。全力で歌って、そして曲の途中で踊りもいれる。

まだまだ歌も、踊りも不完全だが、全力で楽しもうという雰囲気は精霊たちにも伝わっていて、熱気がすごいことになっている。

『『『『フォオオオオオオオオ!アミナちゃぁああああああん!!』』』』

上位精霊の方々がなんだか、熱烈なファンになってくれているような気がしなくもなく、その上位精霊が全力で楽しんでいるから中位、下位の精霊たちも全力で楽しめている。

間違いなく、駆け出しアイドルの称号は獲得できただろう。

そんな手ごたえを感じつつ、今の曲を歌い切り。

「アミナ、次でラストだ」

「ええ、もっと歌いたいよ」

「日が暮れるぞ、さすがにそろそろおしまいだ」

汗を拭い、そしてポーションを飲んでいるアミナに次がラストだと伝える。

「うー、わかった。みんな!!!次が最後の曲だよ!!」

『『『『えええええ!?』』』』

「うん!僕ももっと歌いたいけど日も暮れちゃうからね!!でも最後まで全力で歌うから応援してね!!」

『『『『イエエエエエエエイ!!!!!』』』』

本当、ノリがいいなぁ。

アンコールも教えているが、日が暮れるとさすがにそれに応えることはできない。

締めはアミナが好きな曲で終える。

五分にも満たない短い時間だが、山を越えて聞こえるのでは思うほどの大歓声が響き渡り。

「みんな!ありがとう!!!」

『『『『『アンコール!アンコール!アンコール!!』』』』』

アミナの感謝の言葉に対して、まだまだ物足りないと精霊たちがペンライト代わりの精霊の光を振るが、アミナはちらっと俺を見て、俺が首を横に振ると残念そうに仕方ないかと笑い。

「ごめんね!!今日はもうおしまい!!」

『『『『えええええー!?』』』』

「でもね!今度、王都のトプファ様の分神殿で歌うんだ!!そのときは衣装もちゃんとして舞台ももっと派手にして、一杯歌うよ!!」

ここで宣伝を入れる。

王都という単語を聞いて、精霊たちがざわめきだす。

人のいる場所には滅多に現れない精霊だが、神の領域である神殿なら行ってもいいかと言い合う声がちらほらと。

『ボクらが来たら嬉しい!?』

「うん!!!皆が来てくれると嬉しい!!」

そこで意を決して、一体の精霊が大声でアミナに問いかけるとアミナは満面の笑みで頷いた。

『もっと歌ってくれる!?』

「うん!!たくさん!たくさん歌うよ!!」

観客へ全力で応える彼女の姿は正しくアイドル。

『じゃぁ行くよ!!』

アミナに問い掛けた精霊のこの一言で会場は一気に沸き立ち、俺も、私も、僕もと声をあげて参加表明をしてくれる。

「ありがとう!!ありがとう!!みんな当日は全力で楽しもうね!!!」

そういって盛り上がりながら、ライブは終わった。

舞台から降りるアミナに近づこうとする精霊もいたが、上位精霊たちがスッと間に入って止めた。

あらかじめ頼んでおいた故の行動。

ここで精霊たちにもみくちゃされて、次のライブができなくなったら大変だと説明してからの今回の盛り上がり様。

それを経験したから上位精霊たちは、この楽しみを長く楽しみたいので一時的に我慢してくれているのだ。

舞台はそのままにして帰っていいと彼らに言われている。

この舞台は地の大精霊が作ってくれた舞台だ。

戻すのも彼がいれば問題ない。

最後まで手を振りながら、集結して転移のペンデュラムで帰還。

そしてホームの家に戻ってきたら。

「ぷはぁ!!疲れたけど楽しかった!!」

笑顔でアミナはソファーに倒れ込んだ。

「またやりたいね!!」

「次は王都でやるからな」

「え、すぐにやるの?」

「んや、精霊たちを呼ぶのとは別のやつ。宣伝用のミニライブだな」

「んー。たくさんの人が聞いてくれるかな?」

「こればっかりはわからん」

ぶっ通しで歌い続ければそりゃ疲れる。

「お疲れ様です、アミナ様ひとまずお水をどうぞ」

「ありがとう!!」

冷えた水というのは疲れた体に良くしみる。

一気に飲み干してぷはぁとおやじ臭い仕草をするが、彼女がやると可愛らしく見えるんだよな。

「それで、アミナ、称号は取れたか?」

「あ」

そして一息付けたのなら、ここで称号を取れたかを確認する。

習得条件が間違っていなければ取れている。

ジンクさんの商会に作った真新しいアイドル部門。

アミナ以外にメンバーは俺とネルとイングリットに、クローディア。

マネージャーは俺。

それで精霊たちにゲリラライブを実行した。

ライブを楽しみすぎて、称号のことを完全に忘れていたアミナに呆れつつも、慌ててステータスを確認して。

「取れてる!!ほら!!」

「うし、問題ないな」

俺の方にステータスを見せてくれれば、アミナのステータス項目に称号が追加され『駆け出しアイドル』と表記されている。

数百体の精霊がいたというのに、駆け出しとはこれいかにと思わなくはないが、この称号を進化させるには何度も何度もライブを繰り返す必要があるから時間がかかる。

動員人数ももちろん経験値に入るけど、駆け出しアイドルから次のアイドルに進化するために必要なのは人数より回数なのだ。

駆け出しアイドルで、熟練度マックスまで持っていくと歌系と踊り系のスキルに5パーセントの補正が入る。

次の段階の称号のアイドルは、駆け出しアイドルの効果に加算する形で、カンスト時にそれぞれ10パーセント上乗せ。

三段階目の煌めくアイドルになるとさらに15パーセント加算される。

そして最後の一等星のアイドルになると20パーセントの加算が入る。

うん、この時点で歌系と踊り系のスキルに限定しても何もせずに効果が1.5倍以上になるのはやばいよな。

バッファー界隈最強の職業は伊達ではないかぁ。

「それで次だけど、親方のところに行って舞台設営のお願いと、衣装を作っておくことと、ダンジョンの鍵を手に入れるという三つのミッションがある」

将来的には戦略兵器になりかねないアミナだけど、それはFBOのカンスト勢が大なり小なり似たような存在になっていたので気にしない。

「どれから手を着けるべきかと言えば、間違いなくダンジョンの鍵を手に入れることから始めるべきだ。これがないとレベリングができないからな」

そしてひとまず、アミナのジョブ獲得の段取りがついたのなら全員のクラスアップに動き出す。

ネルのジョブ獲得に関して言えば、正直アミナの準備とトイレットペーパーがあれば一回分は確保したと言っていい。

なんとなく、ネルならその一回でものにしそうな気がする。

「それもそうね、でも手に入れる当てがあるって言ってたわよね?」

「言ったし、実際に物は確認できているんだよね」

となれば、一番重要なのはレベリングするためのダンジョンの鍵が必要ということだ。

一人で行動する時にもしばしば、その暇を利用して調査して目的の物は確認できた。

「確認できているって、珍しいわね。リベルタならすぐに手に入れてきそうなんだけど」

「そうなんだけどね、今回の持ち主さんは商人じゃなくて一般の人なんだ。祖父が冒険者だったらしくて、そのおじいさんがくれたアイテムなんだよ」

「それって、形見って言うことよね?」

「んや、その持ち主さんのおじいさんは今も元気に酒場で酒をかっくらっているらしいよ。たまに子供相手に剣術道場みたいなことをして酒代を稼いでいるらしい」

『夢語り爺さん』というクエストがあった。

この爺さんは貧しい村が嫌で、冒険者で一旗揚げて有名になるっていうどこにでもありふれた夢を抱いて上京してきたという語りから始まるクエストだ。

その鍵の持ち主はそのおじいさんのお孫さん。

「鍵を譲ってもいいって約束は貰っているけど、条件としてそのおじいさんの夢を叶えてほしいってお願いされていてね。それを達成しないといけないんだよ」

「夢って?」

お酒を飲み、そして剣術を子供に教えている。

冒険者を引退して長いが、それでも剣を置かなかった理由。

何か幻想的な目的でもあるのかと思いきや。

「剣からビームを出したいらしい」

「は?」

「うん、ネル。ガチトーンで訳が分からないって声を出さないで、あと顔。それとアミナ、あーってわかったような顔をするな。あれだな、兄弟の誰かが言ってたんだな?」

「ちがうよ~お父さんと兄さんたち全員が全力で話し合ってた」

「まさかの全員だった!?」

ただ単純にいつまでも少年の心を忘れない男の夢を叶えたかった、それだけの話。

接触した際にお孫さんにも祖父の夢を叶えてくださいと両手を掴まれて必死にお願いされたということはお孫さんもその夢に一定の理解があるのだろう。

俺も気持ちはわかる。だけど、女性陣のネルやアミナ、そしてイングリットとクローディアには共感できなかったらしく、少し場がしらけた。

いいじゃないか剣からビーム、かっこいいし。

実際スキルの中にはそういう物もいくつかある。

実用性もあると言えばある代物。

手っ取り早くスキルスクロールを持ってきて、そのおじいさんに渡してクエスト達成と行きたいところだけど、生憎とそのスクロールをドロップするモンスターが近場にいないのだ。

「となると、ドロップアイテムでそういう機能のある武器を手に入れる必要があるんだけど」

「伝説の武器でも持っていけって話なの?」

代りに用意するのは所謂、魔道具と呼ばれる物だ。

ネルが想像している物も間違いではないけど、そんなものを手に入れるにはもうちょっと上のランクのダンジョンに挑まないといけない。

最低でもクラス7の確かゴーレム系のやつが落としたはず。

「いや、消耗品で一度限りだけど、そういうスキルをブッパできる武器があるんだ」

しかし、実用性度外視、一度きりの消耗品であれば近場でも手に入れることができる。

「へー」

「興味なさそうだけど、ネルにこれを手に入れるの手伝ってほしいんだよ」

「私に?」

それがどんな敵かと言えば。

「ハニワを覚えているか?クラス1の時レベリングで世話になったゴーレムだ」

ハニワだ。

何を隠そうあのハニワ、レア武器でビームをぶっ放すことができる剣を落としてくれるのだ。

「ええ、覚えているわって、まさか」

「ああ、あいつがその武器を落とすんだ。正確には派生進化させた状態のハニワの中でレアな個体がいてそいつが低確率でドロップしてくれる」

攻撃力も少なく、実用性は皆無だけど。

見た目だけはかなり派手な武器なんだ。

それこそ男のロマンを達成することくらいはできてしまう程度の価値はある。

「へー、あのハニワが」

「手っ取り早くやりたいから、明日はみんな総出で行こうか」

「久しぶりね」

「お弁当をご用意いたします」

「あ!僕卵サンドイッチがいい!」

「かしこまりました。ほかにご希望はありますか?」

「私は少しボリュームがある物がいいわ!」

それをやればひとまずはクラスアップの目途はたつ。

そうなったらアミナとネルのジョブを獲得して、イングリットのジョブを獲得して・・・・・

「?リベルタ様いかがいたしました?」

「いや、自分のジョブが無事に取得できるか不安になっただけだ」

そして自分の順番が来たとき大丈夫かとふと思った。

この世界に来てから俺のリアルラックは低迷しているというか、上下の乱高下が激しすぎるような気がする。

ネルが一発、アミナとイングリットがちょっと苦労して、そして俺がだいぶ苦労してどうにか達成する未来がチラっと思い描かれてしまった。

クエスト的には何ら不安はないんだけど、何故だろう、こと俺の運という方面だけは不安がよぎるのは。