軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7 ジョブ厳選

御前試合が終わって、三日経った。

てっきり戦った後は陛下との懇談でも待っているかと思ったが、エーデルガルド公爵がしっかりと断ってくれたらしく手出ししないように取り計らってくれたらしい。

余程のことがない限りは、向こうから直接接触してくることはないだろうとお墨付きをもらい、日常に舞い戻ることができた。

こういうパターンだと帰り際にジャカランとかに会って、そのまま戦闘に突入とかがゲームでのお約束だったけどそういうのもなくて胸を撫でおろした。

トラブルが一段落したと言えば聞こえがいいが、大きく助走がついているような気もしなくはない。

そんな嫌な予感を振り切るためにやることとなれば、最近停滞気味の育成の再開だ。

「やっと出たぁ!!!!」

そして俺は絶賛ガッツポーズをしている。

いままで暇さえあればコツコツとやってはいたが、人数分となれば集めるのが大変なスキル昇段オーブ。

モチなんかもう見たくないと思いつつも、ネルという豪運の持ち主のおかげでどうにか俺、ネル、アミナ、イングリットの四人分のスキル昇段のオーブを確保できた。

「長かったわ」

「うん、本当に長かった」

「このまま、もうオーブが出ないのではないかと思いましたが、クローディア様のおかげで周回の効率も上がり無事に手に入りましたね」

「強くなるためには必要だとは聞いておりましたが、私が経験してきたどの修行よりも無心になる必要があるものでした。貴重な体験でしたが、二度とやりたくないと思ったのはこれが初めてです」

女性陣にはお疲れ様と心の底から言いたい。

「クローディアさんがレベルリセットしたら、俺たちが総出で手伝いますんでそこら辺は安心していいですよ。そのころにはここよりもドロップ確率の高い場所で周回ができるようになっているでしょうし」

カガミモチから黄金の鍵を出して、そこからさらに宝箱でドロップさせないといけない。

スロットやパチンコでも良くある、当てても更にとあるゾーンに入れなきゃいけないという、二重の幸運をひたすら求めるという苦痛を味わい続けた俺たちのストレス値は、きっとやばいことになっているだろう。

「でも、クローディア様の分も用意しなくていいの?」

「アミナ、私は一度すべてをリセットする予定ですので気にしないでください。むしろここで私の分も確保しようとすれば時間がかかり私の番が遅くなりますので」

机の上に並ぶ、四つの昇段のオーブ。

すでに俺たちからすれば見慣れた物なんだけど、見たことのなかったイングリットそしてクローディアからすれば、伝説級のアイテムがなんでここで手に入るのかと疑問符が浮かぶ代物だ。

それを手に入れると最初に伝えた時、二人はまず頭に疑問符を浮かべ、そして一個また一個とドロップさせていくのを見ると、困惑が諦めへと変わり、そして最後にはこういう物だと納得した。

その片割れであるクローディアが笑ってアミナに大丈夫だと伝えている。

「さてと、スキルを上げよう。この後も予定が詰まってるし」

オーブが出た時の興奮は冷め、あとは淡々と使うのみと、スキル昇段オーブに手を伸ばす。

「アミナは歌唱術を上げてくれ、ネルは斧術を斧豪術にして、イングリットは・・・・・」

俺自身上げる物は決まっている。

槍の火力を上げることが最優先である故に、槍豪術を槍聖術に昇格させる。

『リベルタ クラス2/レベル100

基礎ステータス

称号 かくれんぼ巧者

体力240 魔力160

BP 0

EXBP 0

スキル5/スキルスロット7

槍聖術 クラス1/レベル1

マジックエッジ クラス10/レベル100

鎌術 クラス10/レベル100

隠形術 クラス7/レベル77

首狩り クラス6/レベル89 』

使い慣れているからあっさりとスキルを上げ、あとは沼竜でも狩ってスキルをカンストさせればスキルスロットの確保は終わる。

そうなれば次のクラスに上げることができるようになる。

「・・・・・刀術を刀豪術に上げてくれ。あと、生活魔術のスキルスクロールを使って生活魔術も覚えてくれ」

「かしこまりました」

だが、クラス3は別名キャラクリエイトの登竜門と言われ、ライトユーザーの心をへし折りに来る厳選要素が出てくる。

「リベルタ、できたから確認してもらっていいかしら?」

「ああ、いいぞ」

その登竜門を超えた先にこそ、挑戦する者に最強になる資格が与えられるのだ。

最初にスキル昇段オーブを使い終えたネルがステータスを見せてくれる。

『ネル クラス2/レベル100

基礎ステータス

体力320 魔力80

BP 0

EXBP 0

スキル5/スキルスロット7

槍豪術 クラス10/レベル100

斧豪術 クラス1/レベル1

断裂戦斧 クラス10/レベル100

パワースイング クラス7/レベル8

水鎧 クラス2/レベル3 』

「うん、問題ないな。後はこの斧豪術を沼竜でカンストさせてやればクラス3に進める」

「ようやくね」

「待たせてすまんな」

「いいわよ、リベルタが私たちのこと考えて方針を決めてくれているのはわかっているわ」

ネルはある程度形になっているけどまだまだ発展途上。

ジョブを取得すればこの空けてあるスキルスロットはほぼほぼ埋まる。

戦闘型商人が化けるのはジョブを獲得してからだ。

だからこそ、クラス2まで必要最低限のスキルで抑えている。

「リベルタ君!僕もできたよ!!」

「おー、見せてくれ」

アミナはできるだけスキルを成長させていたが。

『アミナ クラス2/レベル100

基礎ステータス

体力160 魔力240

BP 0

EXBP 0

スキル5/スキルスロット7

杖豪術 クラス10/レベル100

錬金術 クラス10/レベル100

歌唱豪術 クラス1/レベル1

喝采の歌 クラス10/レベル100

追い風の歌 クラス10/レベル100 』

スキルスロットの空きをもう少し埋めておきたかったと思う。

精霊術や召喚術、錬金術のスキルであるゴーレムクラフトも取っておきたかった。

しかし、この三つのスキルスクロールが本当に手に入らない。

公爵閣下も持っていなくて、ショップにも並ばない。

頼みの綱のオークションにも出てこなくて、本気でクエストを攻略して手に入れるしかないのかと悩む始末。

「うん、大丈夫だな」

「よかったぁ、あれだけ苦労して手に入れたアイテムを間違って使ったらって心配になっちゃうよ」

「その時はまた取ればいい」

「ええー、しばらくモチは嫌だよ」

幸いにして、クラス3でジョブ獲得に挑む下地が揃っているから何とかなる。

クラス3で新たにスキルを追加すればより一層、アミナの安定性が増す。

バフも二種類だけじゃなく、もっと多く使用すればパーティーの戦闘力が上がって、クローディアをあわせた戦力なら安定して風竜にも挑める。

「そういうなって。イングリットも終わったか?」

「はい、使わせていただきました。確認をよろしくお願いします」

そして最後にイングリットだ。

『イングリット・グリュレ クラス2/レベル100

基礎ステータス

体力200 魔力200

BP 0

EXBP 0

スキル7/スキルスロット7

杖術 クラス10/レベル100

刀豪術 クラス1/レベル1

調理術 クラス10/レベル100

解体 クラス10/レベル100

エアクリーン クラス6/レベル58

サーモコントロール クラス6/レベル58

生活魔術 クラス1/レベル1 』

現状うちのパーティーの中で唯一スキルスロットが全部埋まっている。

成長過程に関しても、予定通りに育っていると言ってもいい。

「うん、イングリットも問題ないな。あとは二、三日沼竜でスキルをあげれば次の段階、クラス3に昇格することができる」

全体的に、手に入らないスキルの所為で育成が遅れている感が否めないが、それでも許容範囲内には収まっている。

「となれば、次の予定に関しても説明を始めないといけないな」

「次はクラス3だよ!これって、僕たちも一人前って認めてもらえるって言うことだよね!!」

「そうね、そう思うと意外とすぐにできたってイメージね」

俺たちの成長速度は、この世界の基準で言えばだいぶ早いと言わざるを得ない。

「私からすれば、一年も満たないうちにクラス3まで成長出来ていること自体が驚きです。見習いの頃の私ですらそこまで成長するのに5年ほどかかりました」

「私はもしかしたら生涯その領域にたどり着けるかも怪しかったでしょう」

この世界で上位勢と言える実力者であるクローディアも認める速さ、貴族の界隈を知っているイングリットからしてもこの成長速度は目を見張るものがあると認めている。

「クローディア様でもそこまで時間がかかったんですか?」

「はい、戦いというのは常に万全の状態で挑めるわけではありません。生と死をかけた戦場は精神を削り、訓練で培ったことを百パーセント発揮させてくれません。ですので想像したよりも自身の成長が遅く感じ、挫折してしまうこともあります」

ゲームのようにコンティニューができない環境で、検証班という効率を追求するための情報を集めてくれる集団もおらず、インターネットという情報を共有できる場もなく、常に本当の死というゲームオーバーと隣り合わせの状態で戦い続ける苦痛は計り知れないだろう。

何もない状態で、情報源も乏しい環境だったら俺もモチベーションを維持できなくて、レベリングを妥協して平凡な人生を送っていただろうな。

「ですので、ここまで順調に成長できていることは素晴らしいことですよ」

「だって、すごいねリベルタ君」

「まぁ、褒められてうれしくないわけじゃないけど」

こういうことができるのはFBO全プレイヤーの努力の成果を俺が盗用しているからだから、素直に喜んでいいか悩ましい。

だけど、否定するのもなんか違うのでちょっと微妙な笑みになってしまった。

頭を掻き、気まずさをごまかし。

「ただ、クラス3に上がったらかなり大変なことをしないといけないんだよね」

「大変なこと?」

「うん、クラス3になったらジョブが解放されるだろ?」

「ええ!ついに私が商人になれるの!」

「僕は歌手になりたい!」

「私は、メイド、ですかね?」

「まぁ、俺も暗殺者になるんだけど」

ひとまずは話を進めることにした。

商人に、歌手、そしてメイドと穏やかなジョブが並ぶ中、暗殺者というジョブを提示して一人だけ異質な感じがするが、そこは気にしない。

神託の英雄が暗殺者でいいのかと思いつつ、だって強いんだから仕方ないだろと心の中で言い訳をする。

「ただ、ジョブを取得するだけじゃないんだよね。しっかりとジョブを厳選しないといけないんだよ」

FBOの中でアタックホルダーは商人だけど、他に強いと言われるジョブは数多く存在する。

そのうちの一つが、暗殺者と言われるジョブだ。

そのジョブ補正と得られるジョブスキルが優秀なのだ。

「げんせん?ネル知ってる?」

「厳選、しっかりと念入りに選ぶって言う意味よ。もしかして商人になるかどうかしっかりと考えろって言うの?」

聞き覚えの無い言葉にアミナは首を傾げ、ネルは意味は分かるがこのタイミングでなんでその言葉が使われるのか訝し気に俺を見てくる。

「そういう意味じゃ無くてな。商人は商人に、歌手には歌手になるときにな、一定の手順を踏むと条件が解放されて確率で特殊な二つ名を持つジョブになるんだ」

決して商人になるなという意味じゃなくて、商人の中でしっかりと厳選しろと説明する。

「二つ名持ち?」

「ああ、例えばネルのなりたい商人だと、武器売買に補正がかかる武器商人、食料品に補正がかかる食物商人、多種多様な物に小さく補正のかかる雑貨商人。こういった感じで二つ名を持ったジョブだと、元来持つ商人の補正に加えてプラスアルファで補正がかかるんだよ」

「へぇー、二つ名持ちのジョブの方が強いってこと?」

「そう言うこと。これはある程度まで意図的に狙うことができるし、ジョブ獲得に関して言えば試練を受けて達成をしてジョブを獲得するところで与えられたジョブを拒否すれば、何度でも二つ名ジョブを狙うことができるんだ」

リセットマラソン、所謂リセマラと呼ばれる行為をここでしないといけないのだ。

いや、いけないのだと言いつつ、弱くなってもいいのなら普通にジョブを獲得してそのままレベリングをすればいい。

だけど、この二つ名持ちかどうかで補正の差が結構出る。

「特に、各ジョブに設定されている最高峰の性能を誇る二つ名があるんだよ。これを取れればそのジョブのスペックはほかの二つ名持ちよりも頭二つは抜きんでることができる」

さらに各ジョブで設定されている破格の二つ名ジョブを獲得することができればより補正によるスペック差は広がる。

「それは、目指さないわけにはいかないね」

「うん!最高峰なんて、すごいじゃない!」

「そうか、そうか。一緒に目指してくれるか!」

しかし、その最高峰の二つ名が簡単に手に入るものかと言えば、当然ながら簡単には手に入らないんだよなぁ。

「リセマラに下手したら数か月くらいかかると思うが一緒にがんばろうな!!」

「りせまら?」

「数か月?」

ゲーム時間で二カ月、現実世界だともろもろ手間がかかるから下手したらそれ以上の時間がかかるかもしれないが、二人にサムズアップをして、あ、まずい決断しちゃったかもと若干の後悔を見せるネルとアミナを沼に引きずり込むのであった。