軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14 小さな決闘

「~♪」

思わず鼻歌を歌ってしまうくらいに今の俺は上機嫌だと自覚している。

「そんな嬉しかったの?」

「ああ、嬉しいさ!待ちに待ったこれが手に入ったのだから、ようやくレベリングの準備ができたって言っても過言ではない!」

弱者の鍵、それは弱者の証とダンジョンの鍵を合成することによって消耗品から脱却させ、何度もダンジョンに挑めるようにするというチートアイテムだ。

クラスによって再使用時間、リキャストタイムに差がでるけど、最弱のクラス1のモチダンジョンにそれはあってないような物。

「でも、それってモチのダンジョンなんでしょ?」

「そうだぞ」

「それじゃ、それでレベル上げても良くないんじゃ」

「ふふふ、よくぞ聞いてくれた」

驚異のリキャストタイムが五分。

他のダンジョンの鍵とは比べ物にならないほどの最速リキャストタイムだ。

それ以外にもメリットは存在する。

「これはな」

「おい待て!!」

その説明に水を差すのはどこの誰だ。

ここからが本番だというのに、しかし声をかけてきて無視するのも礼儀知らずだ。

しぶしぶと言った感じで、振り向いてみると。

「げ」

「あー何か御用で?」

さっき帰ったはずのダッセ何某とその取り巻きがいた。

店でのトラブルを避けたのはお利巧だけど、ここで待ってたら一緒だろうに。

せっかくこの鍵のチートの話をしようと思ったのに、それに水を差されて俺もいささか不機嫌気味に返事をしている自覚がある。

そんな高圧的な態度で話しかけても女の子が振りむいてくるわけがないのに。

「お前はどうでもいいんだよ!!おいネル!」

「名前を呼び捨てにしないで!!私はあんたなんかに用なんてないのよ。リベルタ行きましょ」

そのまま話しかけても、さすがにうんざりしたのかネルも俺の手を引っ張って立ち去ろうとする。

俺も関わるのが面倒だと思って、そのまま立ち去りたいんだけど。

「待てって言ってるだろ!!」

こういうやつらって走ってきて俺たちの前に立ちふさがるんだよな。

ゲームとかでも強制エンカウントになってそこから戦闘がはじまる的な展開がよくあるよなぁ。

今回はその手の話か?

「なによ!邪魔しないで」

「お前が俺の話を聞かないのが悪いんだろ!!」

いや、ゲームと現実を一緒にするのは良くないな。

これは現実で、痴情のもつれで別れたカップルみたいな会話をしているけど、完全に嫌いな男子から逃げようとしている女の子の構図だよねこれ。

「はいはい、手は出すのはだめだよ」

前に立ちふさがって、そのままネルを捕まえようとしたので竹槍で前を塞ぐ。

「女の子相手に暴力はだめだよ暴力は」

ダッセ何某の装備は短剣とさっきのアクセサリーくらいだ。

ステータスがあるかないかで少し面倒さが変わるけど、そこまで気にするようなステータス差ではない。

「さっきからお前邪魔なんだよ!!これが見えないのか!!」

「天下の往来で、それを抜いちゃいけないって」

苛立ちがマックスになって、ダッセ何某が鞘から短剣を抜き放ち、微妙に手入れされていなくて鈍い色の刀身が露になる。

脅すために抜いたんだろうけど、周りがざわめくのがわかる。

「うるせぇ!!前からお前のことは気に食わなかったんだ!!なんでお前はいっつもネルと一緒にいるんだよ!!冒険だって!本当だったら俺が!!」

子供であっても、ステータスを持っていれば立派な暴力になる。

それがこの世界の常識。

遠くで衛兵を呼べとか声が聞こえてきている。

「リベルタに絡まないでよ!!さっきから訳が分からないことばっかり言って!何がしたいのよ!!」

もうしばらくすれば大人の兵士が来てくれると思っているんだけど、ネルさんやできればここで火に油を注がないでくれるかな?

このままいけば彼だけがしょっ引かれて立ち去って終わりなんだけど。

彼の心を察せとは言わないけどさ。

興奮して情緒不安定になっている子供に正論パンチをかますのは簡単だけど、感情を制御できない子供にそれを言っても意味がない。

ネルが理由を言えと言っても、その心うちを明かすことが難しい現状で理路整然と言えるわけがなく。

ネルの言葉を聞いて、あ、とか、う、とか言葉を濁して口をパクパクと開閉するしかない彼は一体どうするつもりなのかと様子を見ていると短剣を持っていない方の手で俺を指さすと。

「け、決闘だ!!お前!!俺と戦え、それで俺が勝ったらネルに近づくな!!」

たぶんさっきまでの数秒間、頭の中で必死に考えて俺のことを排除すれば万事解決するっていう結論が出たんだろうな。

「は?」

そしてネルさんや、そのわけわからないって顔で見ないであげてよ。

俺が精神年齢的に彼の情緒がわかってしまうからより一層いたたまれなくなる。

「ええ、と」

しかし、しっかりと指さしで指名されている俺はどういう対応をすればいいのだろうか?

PVPであるのならしっかりと断る権利があるのだが、この現実で断ったら何かデメリットがあるのだろうか?

困ってネルを見てみると、わかってると言わんばかりに頷いてくれた。

良かった、ここら辺常識の違いはちょっと判らないのだ。

ヒントでもいいから教えてくれ。

「だったらあんたが負けたら金輪際私の前に現れないで!!」

ちゃう、いや、違うぞネルさん。

なんでのし付けて返す勢いで決闘を受ける方向に傾いているの?

いや、もしかしてこの世界じゃ決闘はしっかりと受けないとダメな感じな世界なの?

これは俺の知らない常識なんだが。

どや顔で偉いでしょと言わないでほしいが。

「なんでそんなこと」

「あら?怖いのかしら?自分から決闘を挑んでおいて尻尾巻いて逃げる?」

「そ、そんなことあるか!!」

恋心的に金輪際会えなくなるのはデメリットがありすぎて、一瞬日和ったが、仕掛けてきた手前、そしてネルから挑発されて覚悟を決めた様子。

「ダッセさん!大丈夫ですよ!この前だってその短剣でゴブリンを倒してレベルが五に上がってたじゃないですか!!」

「そうですよ!!ダッセさんは剣術スキルだって持ってるし、あんなヒョロガリなんてあっという間に倒せますよ!!」

おまけに取り巻きのやつらがこれでもかって言うくらいに太鼓持ちしている。

「そ、そうだな!!俺が負けるわけがない!!」

よいしょされたダッセ何某が偉く息巻いて鼻息を荒くしているが……

「ネル、ここでやるの?めっちゃ店の中から睨まれているんだけど」

店の中から迷惑そうに睨む店員の視線が痛い。

「大丈夫よ!決闘するための広場があるから。そっちに行きましょ!!」

「あるんだそんな場所」

その視線から逃げるために、ネルの先導の下、ゲームではないはずの広場に連れていかれる。

後ろからガヤガヤと勝ったら何かするかとダッセ何某と取り巻きの声がうるさいが。

俺からすれば今の装備で、短剣装備の初期キャラに負けるとは思っていない。

取り巻きのおかげでダッセの強さはわかった。

俺が想像する最高ステータスだと仮定しても、その編成では槍には勝てない。

「ここよ!」

「ここって、冒険者ギルド?」

連れてこられたのは、俺も知っている建物だ。

ゲーム時代も、冒険者になったらここでクエストを受けていた。

オフラインでもオンラインでも共通でお世話になる場所で、親の顔よりも見た場所だといえる。

「すみません!!決闘の駒を借りたいんですけど!!」

決闘の駒?

ここで決闘ができるのか?

そんなシステムがあったか?

わからん。

ここで差異が出てきたか。

「お、なんだ決闘か?」

「って、ガキじゃねぇか」

「なんだよ、つまんねぇ」

「でもよ、片っぽはドンドンのところの倅じゃねぇか?」

「ああ?あのむかつくドンドンのやつのガキだ?」

ネルがギルドの受付に向けて、大声で呼びかけると周りにいる冒険者たちがざわめき始める。

装備は、そこまでいい物ではないな。

今の俺じゃ勝てない人も結構いるけど、それでも絶対に勝てないって言われるような人はいなそう。

基本的に皆荒くれ者って感じの風貌で、俺たちが決闘することに興味がわいたが子供同士の決闘ということですぐに興味が逸れるかと思いきや。

「ふふん!」

自信満々に胸を張るダッセ何某のおかげで注目が集まりつつある。

いや、お前の親父さんかなり嫌われているぞ?

いい意味で有名じゃないのは確かだ。

「どっちに賭ける?」

「戦うのは、あの嬢ちゃんとドンドンのガキか?」

「いや、嬢ちゃんは武器を持ってないぞ、だったらあの竹槍をもったガキか?」

「……武器的には竹槍のガキの方がいいけど、あの体格じゃレベルもそんなに高くないだろう?あんなんでも兵士隊のガキだぜ?俺はドンドンのガキに賭ける」

「バッカやろう、それじゃ賭けにならねぇじゃねぇか!」

「俺はそっちの竹槍のガキに賭ける」

「「乗った!!」」

この世界じゃ、子供の喧嘩も娯楽のうちってか?

ガヤガヤと騒がしくなりながら、どんどん話が広がり終いには俺たちで賭けすら始まった。

「リベルタこっちに来て!」

「はいはい」

もう、どうにでもなれってんだ。

ネルに呼ばれていけば。

「彼が戦うの?」

「そう!さっき話した内容で決闘神様の誓いの下やりたいの!!」

何やらもうすでに手続きが終わっていたようで呼ばれていけば、こんな風来坊が集まりそうな空間には似つかわしくない綺麗な女性がそこにいた。

「……イタっ!?」

「デレデレしない!!」

綺麗な金髪を結った少々では済まない豊満なお山をもった綺麗と賛美するしかないエルフの女性に思わず見とれると頬をつねられてしまった。

「すみまへん」

ギルドの受付嬢だろう女性にはクスクスと笑われ、ネルのご機嫌は斜めになる。

頬を摘ままれたまま、そっと横目でネルを見てみれば怒っている以外の何物でもない顔をしている。

「……私だって」

「?何か言った?」

「なんでもない!!」

よそ見はしてはいけないってこのことなのか。

何か言ったような気がしたが、これ以上踏み込むなと言われたので深入りはしない。

一瞬、ネルが自分の成長途上の平原を見下ろしたような気がするけど、気の所為だ。

「うん、じゃぁ、君たちの決闘は冒険者ギルドが立ち合いで受理されました。これより、決闘の神の下、戦ってもらいますね」

大人なエルフの受付嬢さんは、そんな俺たちのやり取りは華麗にスルーしてくれ、ここに来た目的を進行してくれる。

「あ、はい」

「おう!!」

子供が決闘することに対して何か言うことはないんだろうか。

いや、強さがすべてのこの世界では子供でも決闘するのが常識になっているのか?

ここら辺は日本の常識が足を引っ張ってるな。

ダッセ何某は気合十分、となれば非常識なのは俺の方か。

「三番訓練場が空いていますので、そちらの方に向かいましょう。立ち合いはこのまま私が務めます」

会場を聞いたとたんに、外野はそれぞれ片手に酒やつまみの入った皿を持ち移動をし始める。

野球観戦かと突っ込みそうになったけど、そこは堪え、俺たちは受付嬢さんに連れられて移動する。

連れられてきたのはテニスコートほどの広さの場所。

左右に広がるように長く、周りが木の塀で囲われている。

入り口の真正面には天秤を左手に、剣を右手に持った美しい女神像が立っている。

「同行者の方はここまでです。ここから先は神が裁く決闘場、闘士の方以外は何人たりとも入ることは許されません」

簡素なつくりであるが、受付嬢を含めて、ここにいる全員がこの場は神聖な場所だと認識している。

「リベルタ頑張って!!」

ネルの同行はここまで、受付嬢によって開かれた入り口から中に入り、ネルの応援に手を振ってそのまま中央に行く。

「ダッセさん、そんな奴ぼこぼこにしてやってください!!」

「そんなほっそい奴に負けないでくださいよ!!」

ネルの声援とは違って、向こうは物騒だな。

「当然だ!!見てろよ!!」

むしろこうやって静かに手を振るだけに納めている俺の方がしょぼいのか?

「さぁさぁ!未来の冒険者になりえる〝かも〟しれない少年たちの決闘だよ!!オッズはドンドンの子供ダッセ坊が有利!!もうすぐ締め切るよ!!」

「ダッセに二百!」

「俺はダッセに三百だ!!」

「対抗の小僧に千」

「「「「おおおおおお!!!」」」」」

あのぉ、ここって神聖な決闘なんですよね?

あの像は神様を象っているんですよね?

そんな場所で堂々と賭けをしていいのか?

「リベルタに五百!!」

ちょっとネルさん?あなた子供でしょ?

賭け事……いいのか。

子供でもギャンブルオッケーなのね。

だから負けちゃだめって目でこっちを見ないでほしい。

止める人がいないって言うことはいいんだよなぁ。

見世物になるのは、気持ちのいい物ではないけど、この世界に来て初めてのPVPだ。

そこはちょっと楽しみなんだよな。