軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2 開き直るか?

ジャカランが本格的に動き始め、反対意見は多数あるが実績も積み始めたことによって、彼の正体を知り快く思っていない国王陛下が、藁にもすがる思いで調査部を動かして俺の存在を探り当てた様子。

しかしジャカランの上げた実績として聞かされたグルンド盗賊団の討伐で、首領のグルンドが死んだという情報に俺は首をかしげる。

FBOでは不死身のグルンドと言うくらいにしぶとく生き続け、なんだかんだ致命傷を負っても原作に復帰してくるという、アンデッドに近い存在なのではと疑われた有名人だ。

こいつどうやったら死ぬのかと検証班が動き、倒したらしっかりと死体を消し炭にしろとか討伐手順が確立されたりとか色々と対策を取られているキャラだ。

ステータススペックはそこまで高くはないが、倒すのが面倒という点では、俺が公爵閣下に調査を依頼した三狂に並ぶのではとまで言われる。

「死体は確認したんですか?」

「ああ、あの男が殺した証拠で首を持ち帰ってきたと聞いている。顔はずいぶんと変わり果てていたようだが、戦いの最中ではそうなる可能性もあるかと検分官も討伐を認定し指名手配を解除した」

座右の銘は生きていればどうとでもなる。

生きるためなら靴を舐め、椅子になり、馬にもなると豪語するような男が、暴虐の化身と言われるような馬鹿に殺されるか?

「……何かあるのか?」

「嫌な予感がするだけで確信は」

「またか」

その疑問を顔に出してみたら、嫌そうな顔で公爵閣下は俺を見てきた。

「……話せ、お前の嫌な予感は冗談では済まない」

そしてしぶしぶという感じで、話を促してきた。

俺が腑に落ちない点。

それはグルンドというキャラは生き残ることに関して言えば、FBOのNPC界隈では右に出る者はいないと言われるからだ。

問答無用で殺してもなんかよくわからないパワーが働いているとしか思えないほどしぶとく生き残る。

斬り捨て御免と首を切るような一撃や、背後から心臓を突き刺すような即死攻撃は何故か当たらず、普通の人間なら致命傷というような攻撃は当たっても生き残る。

「というのがグルンドという男のはずだったので、生きてるんじゃないかなぁと。あとジャカランの性格を考えると盗賊が賄賂を渡して、上納金にするから見逃してくれと言えば生き残ることができるのではと」

「……」

そこら辺を説明して、ジャカランの性格も合わせて推察すれば、公爵はあり得ることかと渋面を作り腕を組んで唸り始めてしまった。

「……否定はできん。だから陛下も奴に対抗できる切り札としてお前のことを調べたのだろうな」

神託の英雄としては赤点どころか、マイナス点をつけたいところなのだろうが、世間的に見れば大盗賊を倒した英雄ということになる。

その流れは国王陛下からしても良くはない風なのだ。

「だからといって噂話から俺を引っ張り出すなんてどれだけ追い込まれているんですか?」

「ボルドリンデ公爵を中心にした賛成派と、私を含めた反対派の板挟みになって一カ月でずいぶんとお痩せになられるほどだな」

「かなり追い詰められているようですが、そこまで均衡しているのですか?」

本当に藁にもすがる思いなのだろうな。

風竜がいるダンジョンを攻略した人物は間違いなくいる。

エーデルガルド公爵にその人物に褒章を与えるという名目で呼び出させようともしていたが俺が全力拒否していた。

「本来であればボルドリンデ公爵の一人勝ちという局面で他の公爵たちが黙っていることはあり得ない。だが少し面倒なことになっている。どういう取引をしたかはわからんが、残った二公爵が中立で静観を決めた。反対しているのは実質私だけだ。心情的に陛下はこちら寄りだが、あの方は我を貫くことはできん」

「・・・・・リベルタが陛下に拝謁する際に公爵家はいかほど揃うのです?」

「私を含め全員揃う」

そんなことは無礼に当たるのだが、風竜の討伐とデュラハンダンジョンの攻略に関しては、全力で成果を公爵家の物にしてくださいと念押ししてごり押しているから、表向きはエーデルガルド公爵家の配下が頑張って協力して攻略しましたということになっている。

なにか隠しているというのは把握していただろう。

だけど、まさか攻略していたのが子供だとは思わないはず。

「東のマーチアス公爵、西のマルドゥーク公爵が静観しているのにもかかわらず今回のお披露目で参加しますか。何かあったとみるべきですね」

逆を返せば、子供がダンジョンを攻略して見せたのならその子供は特別な何かを持っているということ。

すなわち神託の英雄でありえる何かがあるという証明にもなる。

「エーデルガルド公爵、他の三公爵についてなにかわかっていることがあればお教え願います。リベルタをこのまま国王陛下の元に送ればいらぬ横やりが入りますよ」

「……わかっているのは奴らの配下が密談を行っているという点のみ。そこで何かやり取りが行われたのは間違いないが、それ以上の情報はない」

そこに賭けて諜報活動が得意な面々でエーデルガルド公爵が隠している俺を見つけるとか、国王陛下を素直に称賛できる。

ある意味、エーデルガルド公爵のことを信用していないと言っているようなものだけど、俺のことを隠していた閣下にも後ろめたさという物がある。

神託の英雄と確認ができていなかったと言い訳をすることはできても、会わせないよう隠し続けることはできなくなったということか。

「やはり危険です。他の三公爵を外した場にすべきです」

「そう陛下に申し上げた。だが、陛下としてもジャカランに代わる英雄候補を示すことでボルドリンデ公爵の勢いを削ぎたいというご意志だ」

いやぁ、クローディアが聞いてほしいことを聞いてくれたので俺は黙って聞きたいことを聞けた。

「逃げたらどうなります?」

「あの男が英雄として名をはせるだろうな」

「それ、俺にとって最悪の言葉って理解してます?」

「……すまん」

公爵閣下からしても苦渋の決断だというのがわかる。

ジャカランが英雄として名をあげる。

それすなわち南の大陸終焉のお知らせなんだよな。

それを止めたいが、エーデルガルド公爵家だけでは止めることがかなわない。

だから俺に神託の英雄として名乗りを上げろとおっしゃってるわけで、それを断って逃げるのならわかっているなと言われている。

そもそも各大陸に神託の英雄が爆誕している現状が原作ブレイクしている状況なんだよ。

そのおかげで英雄を祀り上げた奴が次の権力者になれるという構図ができてしまったわけで。

公爵閣下としても頭を下げたくないだろう。

しかし、たとえ平民の子供であっても愛する娘たちの命の恩人であり、スタンピードの危機から王都を救い、ついには王国に危機をもたらしたデュラハンのダンジョンを攻略して、風竜の討伐ですらやってくれた人物である俺に向かって公爵閣下は深々と頭を下げた。

「力及ばずお前に与えられた恩に報いることすらできなかった。私にできることはこれくらいだ。もし、お前が王都から逃げ出すというのなら協力しよう。安全に別の大陸で生活できる資金も用意しよう」

そしてこの人は本当に原作の公爵閣下とは別の人だというのがわかった。

原作の状況であるのなら問答無用で俺を支配して命令していたはずだ。

「……はぁ」

元々俺は原作のエーデルガルド公爵のことは嫌ってはいなかった。

この世界に来てからはなんだかんだ言って付き合いができ、そして俺が救った命によって変わってくれた閣下なら尚更だ。

「わかりましたよ。国王陛下に拝謁します」

嫌いになれないんだよな。

苦労人であり、貴族でありながら平民にも敬意を持っている貴重な人。

ここで癇癪起こして、知らないと飛び出して縁を切ってしまったら俺はきっと一生後悔してしまう。

「感謝する」

「その代わり、手伝ってほしいことがあるんでそれに協力してください」

「できる限りのことはやらせてもらおう」

あと、この人と縁を切ったら推しと会えなくなるのも嫌だしな。

ホッと安堵する表情を見せる公爵閣下に俺は苦笑しつつ国王陛下に会うことを了承した。

「リベルタ良いのですか?」

「仕方ないと諦め半分ですけど」

貴族関連のクエストは基本的に面倒事が多い。

それに関わるのは正直気が進まない。

「ちなみに爵位とかは全面拒否の方向でお願いします。ハニートラップとか貴族とかのパーティーに出席とか、決闘騒ぎとかの面倒事も拒否でお願いします」

「……わかった」

こうなったらもう公爵閣下を盾にして貴族社会から身を守るほかない。

英雄に祭り上げられるのは正直億劫な気持ちになりかねないような話だけど、後見人にクローディアと閣下の二枚看板でどうにか渡るしかない。

「あ、英雄の仲間になりたいとか言って押しかけてきたりネルたちに危害を与えるような人も全部カットでお願いします!どうせそういう人たちって俺のことも平民上がりの子供とか思っていそうですし」

「……耳が痛いな」

「心当たりがあるからそう思うのです。ですが、リベルタの言っていることも否定できませんね」

一番面倒なのは人付き合いだ。

根回しが重要というのは重々承知しているが、そういうのに時間をかけるとこっちは強くなれないのだ。

そのくせ俺が力をつけると血筋的に見下してくるのだから本当に貴族という生き物は嫌になる。

「俺としては英雄に祭り上げられるんだから、最低限の保護をお願いしているだけですけどね!あとそっちが勝手に神託の英雄に祭り上げるんですから、英雄だから世界を救えとか、戦争に行けとか無しですよ!!そういう義務を押し付けてくるのが一番迷惑です!」

そしてそんな見下している俺に向かって英雄ならこれくらいできるよなと無茶な難題の解決を押し付けて俺の自由時間を削ってくる。

それだけは断固として拒否する。

「マジで頼みますよ!!」

英雄の自覚がない人物を英雄に祭り上げようとしているのだからこれくらいの権利は保証してほしい。

「地位はいりません!女性もいりません!!お金も自力で稼ぐのでいりません!!なので面倒事は全力拒否でお願いします」

もはやこれで英雄と名乗っていいのかわからないレベルの要求。

「それは英雄と言えるのか?」

「……ですがあなたが彼に無理にお願いしていることです。要求としては異質ではありますが、彼の立場からすれば至極真っ当な要求です」

公爵閣下自身も、英雄として何も要らないから何もしません宣言を前にして困り顔を披露し、クローディアも似たような顔であるが納得してくれている。

王様に会います、場合によっては英雄と呼ばれることはやぶさかではありません。

だけど英雄の仕事はしません。

「……むぅ、それだと他の貴族がリベルタを神託の英雄ではないと反対意見を言ってくるのは確実か」

「あ、じゃぁ、ジャカランをぶっ飛ばしますのでそれで黙らせてください。英雄候補であるジャカランをフルボッコにして格付けを済ませれば他の貴族も黙ると思うんですけど」

我ながら無茶な要求だと思う。

その要求に対して、貴族の同意を得られないと公爵閣下は頭を悩ませるが、だったらジャカランとの決闘を提案。

奴をボコボコにしたい欲求を解消できて、やつよりも強い存在がいるという証明になる。

「それもありか、だが・・・・・」

「何か問題が?」

それである程度は問題を解決できると思うのだが、公爵閣下はあまり乗り気ではない。

何故だと首をかしげてしまうが。

「リベルタ、冷静に想像してください。子供二人が戦う姿を大人の貴族たちが囲み見守るんですよ。悪趣味な決闘に見えかねません」

「あ」

クローディアに言われて、納得してしまった。

うん、貴族が子供同士を戦わせる最悪な光景だな。

俺も子供だし、向こうも子供。

大人VS子供でも絵面が悪いのに、子供VS子供の決闘となると余計に絵面が悪くなる。

「どうしましょう?」

「英雄としての義務を負ってくれれば話は簡単に進むのだが」

「あ、それは断固拒否です」

「なら、どうするか」

さすがにそれを公爵閣下に主催してくれというのは酷な話だ。

もう少し成長したらとも考えたが成長すれば成長するほど手が付けられなくなるのがジャカランというやつだ。

仕留めるのなら今なのだ。

「「「・・・・・」」」

結局三人で頭を捻っても一向に解決案が出ない。

片方は好き勝手に暴れるも一応英雄として色々と仕事を受ける気はあると見せかけているジャカラン。

もう一方である俺は、英雄と呼称されるのはいいけど、英雄の仕事は一切したくないと宣言している。

俺の方が英雄の対抗馬として弱いのだ。

そもそも俺が英雄になりたくないと言っているのに、向こうが勝手に調べて英雄だろお前!?って思っているだけなのだ。

そんなことで悩むのが馬鹿らしく感じる。

「そもそも英雄になれって言いますけど、英雄になって何をすればいいんです?そこら辺イマイチわからないんですけど」

だけど考えないといけないのであれば、しぶしぶだが真面目に考える。

まずは英雄としてどういう役割を求めているかの確認だ。

ゲームでの英雄は、主人公がメインストーリーを進めありとあらゆるクエストを突破して、神から認められた称号みたいなものだ。

最初から英雄なんてことはなかった。

「世界の悲願、中央大陸に眠る邪神の討伐。それが英雄に求められることだ」

ゲームとの差。

そこを知りたかった俺に向かって公爵閣下が重々しく教えてくれたことは。

「?そんなことでいいんですか?」

俺にとって通過点に過ぎないことだった。