軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27 竜殺し武器制作RTA

公爵閣下との会談から、さらに数日。

「本当にお一人で大丈夫なのでしょうか?」

「はい、今回は俺にパーティーをフォローする余裕はないですし、クローディアさんには実際に風竜討伐に挑む兵士たちを鍛えてもらわないといけませんし」

朝日が昇りかけている早朝。

俺はロータスさんに頼んで、ダンジョンの出入り口に連れてきてもらった。

ここは現在、公爵家と冒険者ギルドが共闘して攻略に当たっているダンジョン、関係者以外は基本的に立ち入り禁止。

子供である俺が立ち寄れば殴ってでも止められるような場所だ。

一応正体を隠すため、どこかの民族衣装と見紛うようなお面と、深緑色のローブを身にまとっている。

そこに身の丈に合わない大弓とその弓用の矢筒を背負い、マジックバッグには入れられるだけの矢を入れてきた。

槍は手持ち、前半戦のデュラハンダンジョンは槍で攻略、後半の飛竜のダンジョンでは大弓に切り替えるというわけだ。

老紳士とお面の小人族と思われているのか、ちらりちらりとこっちを見る兵士や冒険者たちが通り過ぎる中、不審者かと思われているかもしれないが、公爵家の関係者がいるゆえにお咎めはない。

ダンジョンは一般公開されておらず、許可を受けた者でないと入ることができない。

エーデルガルド公爵が指揮を執っているだけあって、ダンジョンの入り口前には公爵家の騎士が常駐するテントが立てられ、人の出入りを厳重に管理している。

そこにはロータスさんが話を通して、俺をいつでも入れるようにしてくれた。

「しかし、そうなるとリベルタ様お一人でデュラハンダンジョン最深層まで下りて、そこからさらに飛竜のダンジョンに挑むことになりますが」

「時間がない今は、それしか方法がないんですから、仕方ないですよ」

ロータスさんが心配してくれている通り、問題は今回のダンジョンは俺のレベルでは安全マージンが全くと言っていいほどとれていないということだ。

危険に満ち溢れている超高難度ダンジョン。

一歩間違えれば俺の死に直結することは間違いない。

おまけに、ダンジョンボスであるデュラハンは倒してはいけないという厄介な条件付きの縛りプレイ。

とにかく敵の数が多いアンデッド系のダンジョンを踏破してから、さらにダンジョンボスのデュラハンの目を掻い潜って飛竜のダンジョンに潜入して、そこからさらに二百匹以上の竜種に挑まないといけない。

「補給と休める拠点だけよろしくお願いします」

今回やるのは、俺でも危険だと思うようなRTAだ。

正直、俺がやる必要も、やる義務もない。

だが、一人のFBOプレイヤーとしては避けて通れない道だ。

推しのためでなければやりたくないよ、こんなこと。

そして頼めばついてきてくれるだろうけど、それでもネルとアミナ、そしてイングリットは参加させなかった。

自分勝手な理由であるのもあるが、速度を重視し、ドロップアイテムも必要なもの以外は一切合切無視する今回のRTAは、俺の速度についてこれて連携のとれるような仲間でないと逆に危険なのだ。

ネルもアミナも、そしてイングリットもまだ成長途上、それを任せるには荷が重すぎる。

「……かしこまりました」

故のソロでのリアルタイムダンジョンアタックだ。

ロータスさんもイリス嬢のために体を張ってくれる俺に感謝と申し訳なさが重なっているのであろう。

体をほぐすためにストレッチをしている俺に頭を下げた。

「安心してください、今回の貸しを徴収するまで死にはしませんので」

「……ずいぶんとお高くつきそうですな」

「公爵閣下には色々と頼りにしたいところがあるので、お値段については勉強させていただきますよ?」

「ホホホ、それは嬉しい限りです」

今後とも良き関係を築くためには、ちょっとわがままを言いつつ、しっかりと線引きを済ませておく。

俺としてもせっかくエスメラルダ嬢が助かって、公爵閣下が親馬鹿になりつつ、FBOのゲーム内ではできなかった幸せが残った状態を実現できそうなのだ。

俺の推しのイリス嬢の幸せを、俺が大嫌いなジャカランに邪魔されると考えるだけで、怒りという名のやる気が湧き出てくる。

「さてと、そろそろ行きますね」

久しぶりのRTA、ゲーマーの血が騒ぐ。

制限時間は、あのバカがイリス嬢に手を出すまで。

俺のテンションが自覚できるほどに上がってくる。ああ、いいね、これは。

「ご武運を」

「待っててください、あ、帰ってきて晩ご飯が豪華であると嬉しいですね」

「ご安心を、私が腕によりをかけてご用意させていただきます」

「楽しみにしてます、では」

燃える。

ロータスさんに見送られ、ダンジョンの中にダッシュで入る。

地図は頭の中に叩き込んである。

騎士や冒険者たちが作ってくれた地図を照らし合わせると、今回のダンジョンのパターンから最短ルートを算出できる。

走る速度は落とさず、足音を消し、そしてモンスターの出現パターンを読んで、戦闘は回避するのがマスト。

ゴブリンゾンビ達にこちらの存在を気づかせず、そして群れは極力回避。

「こっちに行くと、行き止まりだから、左に行って、右と」

RTAで一番重要なのは無駄を極限まで排除することだ。

多数はもちろんのこと少数の敵でも必要でなければ倒さずスルー、そして最速で最短ルートを突き進むことを意識する。

「うーん、こっちに集まってるかぁ。運がない」

されど、思考を硬くして決められたルートをひたすら進むのもNGだ。

予定していたルートに予想していたよりもモンスターが多い。

はびこるゴブリンゾンビと、ホブゴブリンゾンビ。

倒せないことはないが、あとのことを考えると飛竜相手に体力は温存しておきたい。

敵に気づかれる前に物陰に隠れ、そして脇道を進み、ルートの先を確認する。

「こっちも、か」

三つあるルートのうち、二つにモンスターの群れ。

「一番遠回りになるけど、急がば回れって言うしな」

ゾンビ系モンスターは体力が多いし、仲間も呼び込む。

ソロでやるときはアンデッド特化の武器を持つことが必須であるが、今回は無理して戦う必要がないので俺は通常装備、少々遠回りになるが安全なルートで深層を目指す。

『ゴヒュ!?』

「失礼っと」

曲がり角からゆっくりと出てきたゴブリンゾンビはとりあえず首を狩っておいてルート確保。

スニーキングこそ真骨頂な首狩りアサシンムーブの錆を落としておいて良かった。

『フゴ!?』

「ごめんよっと!!」

道中にいる単体で徘徊していたホブゴブリンゾンビも首を落としてしまえば、仲間を呼ばれる心配もないし、首は急所だからクリティカルで防御無視攻撃ができる。

「次は、右か」

一層目は無事突破、二層目に入るのに約十分。

この調子なら、もう少しペースを上げても大丈夫か。

ダンジョン攻略は、モチダンジョンばかりやってたから感覚が鈍っていそうで不安だったが、思ったよりも覚えている。

死角になりそうな道、モンスターがたまりそうなエリア。

面倒な戦闘エリア。

二層目は、戦闘回数は三回に抑えられ、かかった時間は五分とちょっとってところ。

「うーん、冒険者と騎士が頑張ってくれているからこのペースを維持できてるけど、問題は十五階層以降か」

ここまでの道中でも冒険者や、騎士が戦っている光景は見てきた。

その恩恵でここまで順調に来れていると言ってもいい。

なので、その恩恵を十全に受けられる状態で時間短縮はできるだけしておきたい。

潜れば潜るほど、モンスターの数も強さも上がっていく。

『■■■■■■■■!!!』

しかし、その順調な道中も十二階層で止まる。

遠くに聞こえるのはいつぞやと同じ叫び声、ドラゴンゾンビ。

その近くにいるであろう、冒険者と騎士たちの怒号。

「・・・・・ここ通らないと先に進めないのにな」

ダンジョン側からすれば、ここは守りの要所と言ったところか。

枝分かれして、迷わせようとしていた道が一本に収束して少しだけ広い広場になっている。

その中央で暴れているのは守護役の中ボスとして配置されたドラゴンゾンビ、十五階層まで攻略されているということから、定期的に討伐されているはずだが今回はリポップタイミングが悪かったか。

戦況を見るように、少し遠くから見る。

騎士と冒険者の混合パーティー。

と言っても、騎士は騎士の、冒険者は冒険者のパーティーがいて、二つのパーティーでドラゴンゾンビを倒そうとしている。

「騎士は大盾持ちのタンクが一人、槍持ちが二人、回復一人。冒険者は剣持ちが二人に短剣は・・・・・斥候役か。それで弓持ちが一人か」

レベルはそこそこ、水準ギリギリといったところ。

時間はかかるが、焦らずしっかりと立ち回っているから討伐はできるだろう。

「おーい!手を貸すか!?」

だけど、今は時間が惜しい上に、相手はドラゴンゾンビ。焔魔の大弓の竜殺しカウント稼ぎの相手にはちょうどいい相手だ。

「!助かる!!弓を持っているのならそこから援護してくれ!!」

ひとまず、横殴りによるマナー違反は回避。

これまでたびたび問題を体験している身として、ここはモンスター討伐の戦闘のマナーを徹底すべきだ。

答えてくれたのは騎士の一人、てっきり手出し無用!とか言われるかと思ったがそういうことにはならなくて一安心。

子供がここにいるとは思われず、小人族だと思われているのだろう。

お面とフードという怪しい風体だけど、冒険者の中にはそういう格好をしている奴も普通にいるしな。

「了解、援護を開始する」

許可も取れた。

そして、そうとなれば、さっそく竜狩りを始めよう。

ドラゴンゾンビ相手だと、この大弓の特効効果は激減する。

地を這っている段階で、対空効果は無くなる。

ドラゴンゾンビの属性は闇属性、火属性の弓では二倍特効はつかない。

「まぁ、そこは腕でカバーしますけどね」

槍を背中に背負い、そして代わりに大弓に持ち替える。

俺のスキルに弓関連のスキルは一切ないからスキル補正もない。

だけど、応用で使うことができるスキルはある。

「持っててよかったマジックエッジ」

弓に矢をつがえ、そして矢じりに魔力の刃を付与する。

うん、手刀にも付与できた段階でこいつの利便性は理解していたけど、本当に便利だな。

エイムに補正はかからないけど、使い込んだことのある武器だ。

指先の感覚も、自転車に久しぶりに乗ってもすぐに感覚が戻るように、自然に狙いを定めることができる。

「ふぅ、ふっ!」

一度、呼吸をして息を止めてから放たれた矢は理想とは少しずれた軌道を描いてドラゴンゾンビの右肩に突き刺さった。

『■■■■■!?』

弓の火属性とマジックエッジの魔力属性が合わさり、さらに攻撃力的に問題のない大弓で射られればその矢も深々と刺さり、ドラゴンゾンビから絶叫を引き出す程度のダメージは叩きだせる。

「うーん、鈍ってる」

本当だったら、ヘッドショットを決めるつもりだったけど、タイミングと狙いがずれてしまった。

「うん、ここで錆落としをしておこう」

地を這うドラゴンゾンビでこれだと、空を飛ぶ飛竜だと無駄な矢を使うことになりかねない。

ゲームプレイヤーの指先の繊細な感覚を思い出すためには、この戦闘はちょうど良かったのかもしれない。

次の一射を狙うために、ここにいるのは少し不便だな。

棒立ちで固定砲台になるなんて、ヘイトを集めてしまえばドラゴンゾンビのブレスの餌食になるような物。

それを避けつつ、ヘッドショットを狙いやすい場所に移動する。

「うん、ヘイトはまだこっちに向いていない」

先に戦っていたパーティーがドラゴンゾンビのヘイトを貰ってくれているおかげで俺は大弓で狙いやすい。

第二射目もヘッドショット狙いだが。

『■■■■!?』

「うーん、少しずれた」

突き刺さったのは頬。

腐った肉を貫通して、そのまま突き抜けてしまった。

第三射目は。

「うーん今度は高すぎたか」

頭上をわずかに通り過ぎて、矢が彼方に行ってしまった。

「今度は鼻か」

次はもう少し下にと、狙ってみたら、ドラゴンゾンビの鼻を横に貫くような形で矢が突き刺さった。

「もう少し上か」

僅かな微調整を繰り返し、ひたすら小さな顔を狙い続けること数射。

「うん、この感覚だ」

綺麗に眉間を貫くヘッドショットに満足気に俺は頷く。

他のゾンビならこれで簡単に死ぬんだけど、さすがタフネスが売りのドラゴンゾンビ。

頭蓋骨を貫通するような形で脳の位置を貫いているんだけど、何度も顔面に射かけている所為でヘイトを貯めたからか、ドラゴンゾンビはギッと俺の方を睨んでこっちに攻撃をしたそうにしているが、奴の周りでは騎士や冒険者たちが包囲しているからこっちには来れない。

むしろ注意が俺に向いたおかげで、ガンガン攻撃ができるようになっている。

「もう少し、長生きしてくれよ」

暴れまわって、その包囲を突破しようとしているけどドラゴンゾンビとの戦闘経験がある彼らは冷静に対処している。

その隙にまた射角を確保して、もう一射。

今度は目に突き刺さり、右目の視力を奪うことができた。

それでもまだドラゴンゾンビは必死に体を振り回す。

それでいい、錆落としにはちょうどいい。

グワングワンと鈍い音を響かせ、首を振りまわすドラゴンゾンビ。

そこをヘッドショットするよりも、胴体を狙った方が効率は良い。

だが、動き回る小さい的を撃ち落とせないのなら。

「ヒット」

飛竜に当てることもまた難しい。

再び、ヘッドショットを決められ、大きく首がのけ反るドラゴンゾンビ。

その姿を見つつ、矢筒からもう一本矢を取り出し。

「あと、何射耐えられるかな?」

再びヘッドショットを狙うのであった。