軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11 狸皮長者

わらしべ長者という話を皆は知っているだろうか。

簡単に説明すれば、物々交換で最終的に金持ちになるような話だ。

そしてゲームにも同じようなことをするクエストがあるだろう。

俺はこれをたらい回しクエストなんて呼んでいる。

だって、一つのお使いなのに、気づいたらあっちこっちに派遣されて元の位置に最後は帰ってくるんだ。

たらい回しにされたと言われてもおかしくはないだろ。

「狸?」

「ここらへんで狸って言えば、隠れ狸か?」

「そうです」

ネルのために商人のすごさを証明するには、商人というキャラビルドを構成するのに必須級のクエスト『駆け出し商人』というクエストを攻略する必要がある。

「あー。小僧、気持ちはわかるがあいつらは弱いが見つけるのが大変だぞ?見つけても逃げられるからな」

クエストに必要なのは隠れ狸と言われるモンスターで、戦闘能力はモチ以上だけど、戦闘に入ると真っ先に逃げるという特性を持ったモンスターだ。

ステータス次第では逃走を防止できるし、逃げる前に仕留めることができる。

見た目は普通の狸で、額に葉っぱのような模様があるのが特徴だ。

「大丈夫です、任せてください!!」

「その自信はどこから来るんだよ」

暗に子供では倒すのは無理だと諭したつもりのようだけど、FBOガチプレイヤーを舐めるな。

レベルゼロの装備無しでも隠れ狸を仕留める方法など知っているわ。

「ネルちょっと」

「なに?」

今回の主役はネルだ。

俺は後でモチ狩りに精を出すけど、それは時間が余ってから。

今日と、明日はネルのクエストを手伝う。

幸いにして、隠れ狸からドロップするアイテムの毛皮は五十パーセントの確率でドロップするはずだから二、三匹倒せば出る。

なので危険回避のためにデントさんさえいれば、問題ない。

手招きして、ネルに用意していたアイテムを渡す。

「なにこれ?」

「紙鉄砲」

「かみてっぽう?これで何するの?」

それは折り紙で折られた、思いっきり振るとパンと音が鳴るおもちゃだ。

「これを、こうやって持って、思いっきり振ると」

どうやって使うかわからないのか。

なら、渡す前に一回やってみせた方が早い。

持ち手をもって、畳まれているのを確認したら振り上げて思いっきり振り下ろすとパン!!と小刻みのいい音が響き。

「わっ!?」

「おい、いきなり音を出すな! 馬がびっくりするだろ!」

「すみません」

ネルは驚いて、デントさんに怒られた。

馬をなだめて、よしよしと落ち着かせているデントさんが興味深そうに紙鉄砲を見ている。

この世界には折り紙なんてスキルがあって、そのスキルは自動で手元が動いて折り紙を折れるというネタスキルだけど、一応手動でも知識があれば作れるんだ。

「これで、木の上に隠れている狸を驚かせて落として気絶しているところ仕留めます」

「できるの!?」

「そんなうまくいくのか?」

完成度はスキルが高い方が当然いいけど、今回は隠れ狸相手だから素人つくりでも問題ない。

ネルはすごいと目を輝かせるが、ベテランのデントさんは懐疑的。

「まぁ、見ててください」

丘からさらに移動した先に小さいけど森がある。

ここまで来るとモチエリア外になってしまうので、一部だけどアクティブモンスター、相手から襲い掛かってくるモンスターがいる。

レベルゼロだと危険だから俺も本当に切羽詰まらないとやりたくはなかった。

だけど、デントさんが一緒にいるのなら安全にこの作戦が使える。

きっと、いたずら小僧のように笑っているだろう俺を疑いつつ、この近くの森なら問題ないとデントさんはついてきてくれる。

「そもそもそう簡単に隠れ狸が見つかるわけが」

「いました」

「どこ!?」

「しー」

隠れ狸は文字通り、森の中に隠れている狸だ。

それを見つけるのは少しだけコツがある。

ネルはきょろきょろとあたりを見回しているが、生憎と地面には隠れ狸はいない。

驚き見回し大声を出すネルを静かにして、唇に指を当てつつ、反対の手でそっと木の上を指す。

「????」

そこはただの木。

ネルからすればどこにでもある森の木にしか見えずに、首を傾げ、デントさんもジッと目を凝らしていると。

「良く見つけたな。ありゃ、Fランクのガキどもじゃまず気づかないぞ」

「コツがあるんですよ」

デントさんは気づいたようだ。

「どこ?どこなの?ねぇ!リベルタ!」

ポッコリと〝小さなこぶ〟があるだけでそれ以外は普通の木にしか見えない。

隠れ狸はその体色をさらに木や葉に寄せることができる擬態スキルを持つ。

カメレオンとかの一部の爬虫類系のモンスターも持っていて、これがアクティブモンスターだと結構厄介だったりするんだよな。

一人、ネルだけわからないかご機嫌が徐々に斜めになりつつある。

俺の服の裾を引っ張って答えを聞こうとしている。

「いい?あそこの木の枝の根本、ちょっと膨らんでいるとこがあるでしょ?」

「あそこ?」

「そう、そこをじっと見てて」

なので、ネルの顔の横に顔を寄せて、視線を合わせてよく見るように指示を出しておく。

素直にうなずいたのを確認し、俺はゆっくりと紙鉄砲を構える。

「せーの!!」

そしてさっきの手加減していた時よりも、さらに全力で紙鉄砲を振りぬき。

パーン!とかん高い破裂音をそこに響かせると、こぶが跳び起きて木の枝から足を滑らす。

「あ!」

そして混乱状態になっている隠れ狸はそのまま木から落ちて、頭から地面に落ちて、そこで動かなくなる。

「せい!」

そこをすかさず竹槍でつく。

耐久値はモチよりも高いけど、竹槍でも十分に攻撃は通るし、混乱状態から気絶状態になっているモンスターには確実に。

「クリティカル!!」

クリティカルヒットが出て、防御力無視の倍化ダメージが入る。

「おー、綺麗に決めたな。一撃とはやるじゃねぇか」

「どうも……ドロップは、無しか」

槍の間合いだから、落ちてきた隠れ狸に対して素早く攻撃ができる。

それでも手際がいいとデントさんは誉めてくれ、狸を貫通して地面に刺さった竹槍を抜く。

黒い灰になった隠れ狸だったけど、そこには何も残らず。

五十パーセントという高確率すらダメなのかと、若干の心のダメージを負った。

「すごい!!すごい!!ねぇ!今の私にもできる!?」

だけど、そのダメージも尊敬のまなざしを向けてくれ、興奮するネルの姿で即座に回復。

「俺は槍だけど、ネルは短剣でできるよ」

モンスターを攻撃することに対して抵抗はないのかなとは思ったが、この様子を見る限り可愛いからできないとかいうような雰囲気ではない。

「やってみる?」

「やる!」

「それじゃ、まずは狸を探そうか。大きな音を出すと起きて逃げ出すから静かにね」

「わかったわ」

なので、そのやる気をそがないように、そっと紙鉄砲を渡す。

恐る恐るそれを受け取って、開いた部分を閉じる。

「たぶん、さっきの音でここら辺にはいなくなっていると思うので移動しましょうか」

あまり紙鉄砲を力強く握ると歪むからほどほどにねとネルに注意して、デントさんに移動を促す。

「ならこっちだな」

そうすると周囲を警戒しながら、ゆっくりと俺たちの歩幅に合わせて歩き始めてくれる。

ここら辺のモンスターレベルは低いから、デントさんだけで過剰戦力だとは思うけど、こうやってこっちの意図を察して動いてくれるのは正直助かる。

店主さんもいい人を紹介してくれたな。

さっきのやり方を見て、デントさんも危険なモンスターさえどうにかすれば狸を倒すのは問題ないと判断してくれたようだし。

そして歩くこと、数分後。

ぴたりとデントさんの足が止まり。

「いたぞ」

「???」

デントさんが隠れ狸を見つけてくれた。

今度は地面じゃなくて、木の上をじっくりと探している。

「あっ」

そして小さく声を上げる。

どうやら、俺が教えるまでもなくしっかりと見つけたようだ。

ちらちらっと、俺と木の上で視線を行き来させて、目を輝かせ、見つけられたことを喜ぶネルに静かに俺は頷く。

静かにという約束をしてなかったら興奮で叫んでいたに違いない。

俺がうなずいたことに覚悟を決めたネルはゆっくりと木に近づき、そして紙鉄砲を振り上げ。

「えい!!」

可愛い掛け声に似合わず、力強いスイングで紙鉄砲は振り抜かれ。

パーン!と綺麗な破裂音を響かせた。

そして、さっきと同じように狸は木の上から足を滑らせて地面に真っ逆さま。

混乱から気絶状態になり、そこにネルは跳びかかった。

ネルは狐の獣人だというのは知っていたけど、その動きは正しく獣の瞬発力を十全に発揮した動き。

逆手に持った短剣を大きく振りかぶって、狸の体に叩き込む。

首元に深々と刺さったそれは正しくクリティカルヒット。

すぐに狸が黒い灰と化し。

「やった!!できたわ!!」

そこに残った小さな狸の毛皮を持ち上げてぴょんぴょんとジャンプした。

「すげぇな、嬢ちゃん」

「ええ、本当にすごい」

闘う才能でもあるのだろうか。

ゲームの初心者だと、この動きをできるようになるまで結構時間がかかる。

狸の気絶時間は五秒。

そこから復帰したら即座に逃走するから、戸惑うと失敗する。

だけど、ネルの動きは流れるようにスムーズだった。

「どうどう!!リベルタ!見てた!?」

毛皮片手に褒めて褒めてと笑顔で寄ってくる彼女の頭は生憎と皮帽子で保護されている。

「ああ、すごいぞ。初めてであれだけ動けるなんて」

「当然!!リベルタの手本を見てたからできたのよ!!」

なので素直に称賛したのだが、それで気分を良くした彼女は。

「さぁ!次行くわよ!!」

気合を入れて、次の獲物を探しに行くのであった。

その後しばらく森の中にパーンと乾いた音が響き、そのたびにネルは嬉々として短剣で狸を仕留める。

犬猿の仲というほどではないだろうけど、狸と狐もそこまで仲が良くなかったような気が?

結局は。

「んー!美味しい!!」

「テレサさんの料理はいつも食べてるけどおいしいね」

「嬢ちゃんたちはうらやましいねぇ。こんなうまい飯を毎日食べてるなんて」

「いいでしょ!!」

「俺には嫁さんがいないから素直にうらやましいよ」

俺が昼飯だというまで、ネルは狸を狩り続けた。

ネルも体を動かしておなかが空いたのか、俺の言葉を素直に聞いて今では元気にテレサさんが用意してくれた弁当のサンドイッチを頬張っている。

「しかし、嬢ちゃんはすげぇじゃねぇか。こんな毛皮の量、小僧のやり方があったとしても駆け出しの冒険者じゃ絶対集められないぜ?」

独身男の悲しみは子供には早いと、早々に話を切り替えたデントさんは午前中だけで得られた成果物を指さす。

そこには小山になっている狸の毛皮。

うん、俺のドロップ率の悪さと比べると天と地の差ができるっていうくらいにネルのドロップ率がやばい。

ゲーム時代にもリアルラックがやばい奴はいたけど、それに匹敵するくらいのドロップ量だ。

「ふふん!当然!」

「これが当然だったら、俺ももう少し楽な人生送れるんだけどなぁ」

「ビギナーズラックにしても、これは異常ですよね」

これが当たり前だとネルは思っているが、それが違うのはデントさんの様子を見ていればわかる。

「それでこの後はどうする?用事は済んだのなら早く帰るってのもありだぜ?」

「ええー!?この後も森に入りたいわ!!ねぇリベルタ良いでしょ!!」

いずれこの運も収束するだろうと思いつつ、デントさんがこの後の予定を確認してくるので考える。

目的は達成したので、帰ってもいいがネルはもっと楽しみたいという様子。

デントさんが俺に確認してきたのは、俺が判断してきた行動に問題がなく、ネルも俺の指示に従っているからだ。

仮のパーティーでもリーダー扱いしてくれるのは行動しやすくてありがたい。

「んー、じゃぁ、デントさん帰れるぎりぎりまでネルを連れて森に行ってもらっていいですか?」

「あ?小僧はいかないのか?疲れたか?」

「ええ!!?リベルタも行こうよ!!」

なので午後からは別行動をと考えていたが、デントさんは子供の俺を純粋に心配、ネルは不満を漏らしてきた。

「いえ、俺はここでモチを狩ってます。こいつらからドロップするアイテムが欲しいんですよ」

「こいつらから?魔石じゃねぇよな。ほかに落とすのは米水と……もしかして小僧の欲しいのは鍵か?」

「正解です」

「そいつは、なかなかレアもの狙いだな。確かにあれならそれなりの値段になるな。こいつらなら安全に狩れるだろうし、わかった。午後からは俺と嬢ちゃんで」

「むー!」

ここでモチをレベルを上げずに狩る理由を即座に見抜くとはさすがはベテランとは思ったが、たぶんデントさんからしたら、見つけられたら儲けもの程度の金策だと思われたんだろうな。

俺の考えている使い道は想像できないだろうし。

しかし、ネルは俺が午後から一緒に行かないのが不満のようで、膨れてしまった。

「いや、ネル、俺もできればやりたいことがあってな」

「いや!!」

「目的は達したし、な?」

「いや!!」

困ったな。

これは諦めるしかないと思った矢先、俺たちの飯を食べているエリアに白い物体が紛れ込んでくる。

モチだ。

別に害はないから、そのまま放置してもいいんだけど、なぜかネルがじーっとモチから目を離さない。

「あの、ネルさん?」

「かぎって言うのが出たらリベルタも一緒に来てくれる?」

「えっと?」

「来てくれる!?」

何をしようとしたか一瞬わからなかったが、どうやら俺の手伝いをして一緒に森に行きたいようだ。

「そりゃ、行くけど」

デントさんのいう鍵が出る確率は0.3パーセントだ。

そう簡単に出るわけが。

「えい!!」

ないと言おうとする前にネルは近寄ってきたモチに向かって短剣を振った。

「え」

「おいおいおいおい、マジかよ」

そして、普段ならそこからは何も出ないのが当たり前なんだが、そこから銀色の鍵が出てきて俺は目が点となり、デントさんはあり得ないと口を開けた。

「これで一緒に森に行けるね!!」

「あ、うん」

ネルのリアルラックの恐ろしさに俺は素直にネルから差し出された鍵を受け取ってうなずくしかなかった。