軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4 特効武器

「百だと!?そんなに倒さないといけないのか?」

「二本分なので、その倍の二百です」

「どっちにしろ多いではないか。その数は間違いないのか?」

這竜でも命がけだったと言うのに、それと同等か場合によってはそれ以上に厄介な空を飛ぶ竜の相手を百回以上もしないといけないと聞き、公爵閣下は目を見開き叫んだ。

「そうですね、それくらいしないと思念の石の効果が発揮されなかったはずですし」

しかし、特効武器というのはそういう風に作るしかないのだ。

一度作ってしまえば、誰が使ってもその特効が発揮される強力な武器なのだが、問題なのは特効スキルを付与するまでの、ハードルの高い工程を抜かすことができないことだ。

「少しでも風竜や飛竜の討伐を簡単にするのなら、武器の素材を変えていくのも手ですね。後のことを考えるのなら竜特効になる思念の石を思念の宝石にするか、それよりも上の宝玉、師玉、天玉とランクアップするのも手です。後は火属性の部分である精霊石のクラスも上げるとさらに倒すのが楽になりますね」

竜殺しの武器、というよりは対特効武器はそれぞれの元となった素材のランクによって攻撃力が変わる。

それこそ大弓の素材をもっと上質な物に変えてやれば、竜に対する攻撃力はさらに跳ね上がる。

大弓の基本骨子になる素材を古代樹の幹から竜種の骨に代えるとか、魔銀ではなくさらに上の素材、オリハルコンやヒヒイロカネに代えるとか、特効のレベルを上げる素材はまだまだたくさんある。

「そんな伝説の素材が当家にあったらとっくに使っておる」

「ですよね」

ゲームあるあるだが、武器に使用する素材が希少であればあるほど攻撃力が上がる。

それはファンタジー小説であれば基本中の基本のお約束でもあったりする。

物理学に準じるのなら、武器の構造と素材でおおよその性能が決まるものだが、ここはステータスとかレベルという、科学では説明のできない価値の存在する摩訶不思議な世界。

そこには触れないのがお約束だ。

希少というか伝説上の素材を俺が口頭で並べてみても、ない袖は振れないと公爵閣下は頭を振る。

火属性が弱点の敵ならば、特効武器には火の精霊石を使うが、この火の精霊石にもクラスのランクが存在する。

最下級はクラス1、最上級はもちろんクラス10だ。

そしてその入手については当然だが、クラスが上がれば上がるほど難易度は高くなる。

「ちなみに、ここまで言ってきた中で用意できない物ってありました?」

「いえ、ございません。精霊石もクラス2の物が用意できますので問題ないかと」

「え、クラス2じゃだめですよ」

クラス10の素材ともなれば、当然だが中央大陸の最高難易度のダンジョンにでも踏み込まないと、入手することはできない。

精霊石は精霊の力が結晶化された物で、武具や魔道具を作る際にそれを使えば、その精霊の属性の付与ができるという代物だ。

これを入手できるようになるのは、クラス3以降のダンジョンからだ。

クラス3のダンジョンのボス宝箱からクラス1か2の精霊石が出て、クラス4になると2か3の精霊石が出るようになる。

あとは精霊回廊という精霊たちが行き来すると言われる特殊なダンジョンがあって、そこで採掘スキルのついた道具で採掘するか、採掘スキルで採掘すると手に入る。

とまぁ、精霊石に関して言えばそういう風に手に入れることができるのだが。

とにかく現在公爵家が保有している素材では、今回の飛竜ダンジョン攻略に必要な特効武器に使用しても、俺の想定している攻撃力を叩きだせるわけじゃない。

俺の頭の中ではクラス3くらいの素材は揃っているかと想定していたのだが。

「……ダメなのか?」

「はい、ダメです。はっきり言うと飛竜はともかく、風竜相手だと火力不足です」

公爵の依頼に応える作戦として、タンクが2名、その背中に背負われるヒーラーが2名、そして対空攻撃要員のアタッカー2名という、飛竜ダンジョン攻略とボスの風竜討伐のための専用パーティーの編成と装備の説明を終えた。そしていざ実行という段階で、作戦に必要な装備を作るために用意できる素材に関して聞いてみたら、なんと素材のランクが追い付いていなかった。

「風の精霊石と火の精霊石がクラス2ではだめです」

古代樹(エルダートレント) の幹はあって、 魔銀(ミスリル) があるのなら当然のように属性精霊石も存在してもおかしくはないと思った。

いや、正確にはあったんだよ。

存在はした。

ただ力不足なだけで、存在しないわけではない。

ただ、風竜と対峙するには些か以上に不足がある。

クラス2と3ではその能力に大きな差が出る。

「クラス2の属性攻撃力は三十パーセント増量、耐性効果も同じです。それに対してクラス3の増量は六十パーセント。この差が重要なんです」

仮に騎士のステータスをEXBP無しでクラス4のレベルが100だと仮定する。

対空付与で30パーセント。

対竜付与で50パーセント。

属性付与で60パーセント。

特効効果は加法、ようは足し算で計算する。

なので特効効果は合計で140パーセントとなる。

だけど、属性特効だけは少し特殊で弱点属性を突くと二倍になる。

となると、風属性の弱点である火で攻撃をすれば、合計で200パーセントとなる。

これが俺の想定している武具に付与してもらう要素。

そして魔銀と古魔樹木の幹で作られた大弓はクラス5を想定。

攻撃力は320だったはず。

最大まで強化すれば、プラス500は出る。

そこまで強化する素材と金を公爵家が出せるかはわからないが出してもらわないと問題だ。

弱者の証を混ぜ込むからその不壊効果で強化は問題なくできる。

よって完成するのは。

弱き者の焔魔の大弓+100という武器。

攻撃力は820とクラス5としてはちょっと低め。

最大火力を出せる大剣や大槌といった武器なら攻撃力1000は超えられるのだが。

そこに体力全振りの物理アタッカーで計算すると、体力の数値の400を加えると1220というのが純粋な攻撃力になる。

ここにスキルとかの上昇量が加算するが、ここは一旦保留として武器とステータスで出せるのがそれくらいというだけ。

風竜の防御力にスキルと言った条件が諸々乗れば、常時この火力が出せることはまずない。

むしろ、与えられるダメージも微々たるものと言えるほどに減少してしまう。

そこで重要になるのが、特効効果になる。

1220という攻撃力が200パーセント上乗せとなり、いっきに3660という攻撃力にまで引きあがる。

ここまでの火力が出れば、風竜にもまともなダメージが通るようになる。

だけど、これがクラス2の精霊石になるとたちどころに火力が下がる。

120パーセント増量が60パーセント増量に下がるのはかなりきつい。

ダメージソースが減るということは、攻撃を当てる回数が増えるということ、すなわち戦闘時間が延びる。

それすなわちタンクの負担が増え、ヒーラーの負担が増え、要求耐久時間が増えるということ。

60パーセントの低下で招くダメージソース低下は約700。

このダメージソース低下は看過できない。

「むぅ、そこまで下がるのか」

「具体的な数字をどうやって出したかは気になりますが、今は良いでしょう。リベルタの言うとおりであるのなら、この減少は避けねばならない項目です。防具でも同じでしょう。武具の強化を躊躇って失敗してしまえば元も子もありません」

羊皮紙を貰って、計算式を書き、おおよそであるがダメージ計算を出してプレゼンするとクローディアは納得、そして公爵閣下はしかめっ面を披露してくれた。

「受けるダメージが増えれば戦う者の負担も増える、道理か。だがない袖は振れん」

「精霊石の確保が難しいと?」

「ああ、隠しているわけでも出し渋っているわけでもない。もとより精霊石は出回る量が少ない。上質な物なら見つけたら買うようにしているがそれでもな」

なるほど、なるほど。

そのしかめっ面の原因はそれか。

あっさりとクローディアが察してくれて、公爵閣下は大きなため息を吐く。

「公爵家でも買えないんですか。そこまで物流が滞ってるのか?」

この世界の物流はかなりアンバランスだ。

あまり必要じゃない物があったり、必要な物がなかったりと物流が整っていない。

「東のやつがその手の流通に強くてな、目についた鉱物類は全てあやつの下に集まる」

「ああ」

東の公爵、あだ名は土豚公爵。

その名の由来はいろいろあるが、有名な物で見た目と兼ね合わせた宝石マニアというところだ。

綺麗な物は何が何でも集めると言うほどの収集家。

貪欲と言っていいほどだ。

そんな相手が宝石に近い輝きを持つ精霊石を好まないわけがない。

自身の権力を使って商人を脅して、収集ルートを確保してもおかしくはない。

実際原作でも同じようなことはしていた。

ここでも邪魔してくるのか。

「となると、素材集めからスタートしないといけませんね」

「それなのだが、リベルタ。お前にその素材集めを頼めないか?」

「自分、冒険者でも何でもない平民の子供ですよ?表向きはとつきますが」

現実とは世知辛いと心の中で嘆きつつ、それでもどうにかせねばとは思っている。

「報酬は払うぞ?」

「んー、お金はあるんですよね」

「……そうだな、私が払ったのだ。当然持ち合わせはあるか・・・・・なら今回は金銭以外でも受けよう」

「となると・・・・・」

公爵閣下の困りごとの解決は巡り巡って俺のためになりそうな予感はしている。

「あまり無理な内容にするなよ」

「わかっています。ちなみにダンジョンを自由に作れる敷地とか用意してもらうことは」

「スタンピードが起きた直後だぞ。さすがに無理だ」

「それができれば、精霊石集めも簡単なのでそこの許可が欲しいと言おうと思ったんですけど無理ですか」

しかし、しっかりと徴収する部分は徴収しないとダメだと判断した。今後ダンジョンを色々と攻略する予定がある俺としては、自由にダンジョンが作れるエリアは欲しい。

法律的にダンジョンは勝手に作っちゃダメらしいし。

モチが例外すぎる。

「簡単なのか?」

「まぁ、条件を揃えればダンジョンを精霊石を集めることに特化させることはできますし」

精霊石集めをする際に重要なことは根気と工夫だ。

ダンジョン内でいかにして効率よく集められるかが素材収集のコツと言っても過言ではない。

「それは私共でもできるようなことなのでしょうか?」

「できるんじゃないですか?コツはいりますけど」

公爵閣下の目が鋭くなった。

そしてクローディアのため息が聞こえた。

ロータスさんの質問にあっさりと答えたのは、そう簡単にマネできることではないからだ。

しかし、可能か不可能かで聞かれたので可能だとは答えた。

公爵閣下に簡単だと答えのは、準備をすれば簡単なだけであって、その準備が面倒くさいのだ。

それでも入手困難な精霊石が簡単に手に入る。

「やり方は?」

「駄賃はもらわないと子供は働きませんよ?」

その甘い誘いに公爵閣下は再びしかめっ面をさらす。

スタンピードという重大な事件のあとに、あっさりと子供にダンジョンを自由に解放できる土地を貸し出す。

それはかなり醜聞になるだろうと想像に難くはない。

だけど、こっちもやりたいことはやりたいのだ。

遠慮はしない。

「そもそもの話、さっきの特効武器の情報の駄賃ももらってないんですよ?どうにかしろというからアイディアをひねり出したのに、さらにそれ以上を求めるのはどうですかね?」

「……ここまで計算してたのか?」

「まさか、精霊石が足りていないとはさすがに思っていませんでしたよ。特効武器の話だけしてそれで終わりかなと思ってました」

そもそもこっちもかなり譲歩しているのだ。

これ以上引き下がったら足元見られているどころの話ではない。

「公爵、彼の言う通りです。彼の知識は理にかないそして誰もが知らぬ情報でした。それを対価なしで話せと言うのは筋が通らない」

保護者であるクローディアの援護が入って、公爵閣下は唸り始めてしまった。

「……わかった。私有地は無理だが冒険者ギルドに口利きをしよう。私の名においてダンジョンの生成ができる土地を用意させる」

「できれば、人目が少ないところでお願いします」

「わかった」

公爵閣下のお墨付き。

これで何か起こしたらエーデルガルド家が敵に回りかねないが、悪事をする気はないのでそれはそれで問題はない。

「それで精霊石を集める簡単な方法とはなんだ」

「精霊回廊っていう、精霊石を採掘できるのにモンスターが一切いないダンジョンが存在します。それを作る方法ですね」

「なんだ、その都合のいいダンジョンは」

ゲーム時代では散々周回したから俺にとってはごく当たり前の話。

だけど、公爵閣下からすれば非現実的な話になるのだろう。

「クローディアさんは知ってます?」

「いえ、私も初耳です」

「そうなんですか」

一応保護者にも確認を取ってみるが、生きる伝説とまで言われている彼女が知らないとなるとほとんどの人が知らないのでは?

この精霊回廊自体はゲーム時代はあっさりと見つけられていたんだけどな。

「それじゃぁ、説明しますけど。精霊回廊に行く方法は精霊に連れてってもらうだけです、簡単でしょ?」

「「・・・・・」」

「あれ?理解できませんでした?」

「いや、お前のことだから小難しいことを言うのではと思ったが、シンプルすぎて拍子抜けしてしまってな」

「そうですね。どこか難しいエリアに踏み込む必要があるのかとも思いましたが、精霊でしたら少し森に入ったところにいますからそう難しいことではありませんでしたか」

「あ、最低でも中位精霊が必須条件ですので」

「簡単ではないではないか!?」

しれっと面倒な部分を白状したら綺麗なツッコミが飛んできた。

これでオチの仕草も混ざれば満点だったのに。だけど公爵閣下って意外とツッコミ気質なのかもしれないと思うのであった。