軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

489.メリハリ

奥の執務室に行くと、見ていられないほどやつれた宰相様が書類を睨みつけていた。でも、私が入ると疲れ切った笑顔を見せてくれる。

「ホルガーおじ様、帰っていないんですね?」

「……まだ3日だ」

「はぁ〜。ちょっとこちらでお茶しましょう。……ハイハイ、少しぐらい休憩しても仕事は逃げませんから」

ソファーに座った宰相様と控え室で仕事をしていたフロンタさんをはじめとする秘書官、そして控え室で待機していたスージーさんも呼ぶ。スージーさんに手伝ってもらい、ストレージから出したハーブブレンドを【アクア】のお湯で淹れる。ハーブブレンドは、疲労回復に効くカモミール、セージ、マテを選んだ。私の【アクア】のお湯で淹れたのは、ポーションの効果があるから。

「「「ふぅ〜」」」

ハーブティーを飲んだ宰相様達は、いくらか回復出来たようだった。聞いたところ昼食も取っていなかったらしく、ストレージから鰻とろろ丼ーー正式には、ジャイアントスネークの蒲焼きネバイモかけ丼ーーとシジミ汁。ハーブティーで胃が温められた事で空腹を思い出したのか、3人共無言で丼をかき込んであっという間に完食。

「ジョアン嬢、ありがとう。美味かった」

「どうしてそんなに忙しいんですか?」

「あぁ、武闘会に向けての準備を各部署が怠りすぎて、その後始末に追われているんだ。先程も、商業ギルドに通達していなかったことが発覚してな」

「あー、その情報は私からです。今日、明日と知り合いの食堂手伝っていてーー」

私は食堂でアルバイトしていること、マーケットの品薄の懸念を説明した。

「そうか。いや、助かった。あれほど各部署には、10年前の資料を見るように言ったのに……」

「それでも仕事を効率よくするには、適度な休憩は必要ですよ。メリハリつけないと」

「あぁ、本当だな。2人共、無理させてすまなかった」

ちゃんと自分の非を認めて、謝れる上司って貴重だし尊敬出来るわ〜。フロンタさん達は、宰相様に謝られてあたふたしているけど。

休憩用にハーブティーブレンドと焼き菓子とチョコレートを渡して執務室を後にし、私は『オアシス』に戻った。

*****

ーーーその日の夜。

「予約した者だが……あなたは、新しい店員か?」

「はい。今日、明日だけの限定ですけど」

「そうか。俺はヘイデン。6人で予約しているんだけど聞いてる?あとから他のメンバーは来るんだけど」

「はい。2階の個室にご案内致します」

先にやって来たヘイデンさんとマットさんを3つある個室の内、空の部屋に案内する。この部屋は、空色の壁に白いテーブルクロスの円卓がある。他には、緑色の壁にグレーのテーブルクロスの陸の部屋、紺色の壁に水色のテーブルクロスの海の部屋がある。

「あの……ご兄弟にショウという男性はいますか?」

「ショウ……いえ、兄弟はいますけどその名の方はいませんが」

「おいおい、来て早々ナンパか?マット」

「いくら可愛くても……あれ?ジョアン?」

「「「えーっ!?」」

マットさんと話している間に、シェルトンさんがやって来た。一緒にいるのは、予想通りヴィー。

「あっ、ヴィー。いらっしゃい」

「お前、何やってんの?」

「リキの義姉さんの代わりにアルバイト」

「あー、そういうこと」

「ヘイデン先輩もマット先輩も気付かないから、笑いそうになっちゃいましたよ。まさかシェルトン先輩も気付かないなんてショックですよ」

「ん?ジョアン、ヘイデン達のこと知ってたっけ?」

「えっ?あ、そりゃ、もちろんだよ」

「そうだっけ?」

慌てて誤魔化し、厨房へ戻るとリキから断って正解だったろ?と言われ、苦笑いしながら頷く。1階での配膳をしていると、ヘイデンさん達が全員集まったということで、料理を運ぶように頼まれた。通常なら、何度も往復しないと行けないところ私ならストレージで一気に運べるから。

トントントン「失礼します」

中に入ると、先程のメンバーに加えてカズール先輩とノア先輩がいた。

「あっ、ジョアンちゃん。久しぶり〜。相変わらず可愛いね〜」

「ふふふ。お久しぶりです、ノア先輩。もう酔ってるんですか?」

「はぁ〜。ジョアンちゃんがつれないのも相変わらずだ」

「カズール先輩もお久しぶりです」

「ああ。……そういう格好も似合ってるね」

「えっ、あ、ありがとうございます」

私は顔が熱くなるのを感じながら、ストレージから料理や飲み物を出していく。全員に行き渡ったのを確認して、個室を出て扉を閉めた後にハァーっと安堵のため息をついた。

それから閉店までは、ずっと1階のフロアを担当して個室の方にはリキやリキママが飲み物のお代わりを運んでいた。リキによると、個室のメンバーは楽しく談笑しながら飲んでいるらしい。最初のお代わりを持って行った時に、リキにもショウの事を知っているか聞いたらしいけど、リキは話したことはないけど知っていると言ったらしい。

閉店近くに、ヴィー達は騎士団寮に帰って行った。中々の酔っ払い具合で、なぜか皆んな私とハイタッチをしてきた。屋敷まで送るとヴィーは駄々をこねていたが、ベルデが迎えに来ることを言うと、帰りは気をつけて帰るように!と念を押してカズール先輩に支えてもらいながらフラフラしながら帰って行った。