作品タイトル不明
483.はーどっこい!
卒業パーティーでは、男性の先輩よりも女性の先輩から囲まれることが多く、フレッド殿下やファンタズモで知り合ったジョーイさん達ともダンスをしたけど、文官科のお姉様達からダンスのお誘いの声もかかり、宝塚の男役になった気分だった。
ーーーそして、翌日。
朝から騎士寮は、毎年恒例の卒業生の引っ越しラッシュでバタバタとしていた。王宮騎士団に入団する者、自分の領に戻って私兵団に入る者、冒険者になる者などだけど、誰もが4年も生活すると荷物が増えるようで、私達後輩も朝からお手伝いにかり出されている。とはいっても、騎士科の生徒はほとんどが冒険者としても活動しているので、その稼いだお金でマジックバッグを購入している。私物に関しては、マジックバッグに入れて運ぶのだ。じゃあ、なぜバタバタしているか?それは、不要な物をドンドン食堂に運ぶため。運ばれた物は、先輩達が寮から出た後に、後輩達が貰って行く。
「ジョアン、コレはそっちに置いておいて。それは、こっち」
「了解です」
「ベルゥ〜。助けてぇ〜〜」
「うわっ、クロエ先輩!持ちすぎですって!!」
私もベルも、もちろんエレーナ先輩とクロエ先輩の手伝いをしていた。的確に指示をしていくエレーナ先輩と、さっさと終わらせる為に無理して荷物を持ち、結局効率が悪くなっているクロエ先輩。引越しで、その人の性格が出るんだなぁ〜と思いながら着々と引越しの作業は終わって行った。
「じゃあ、クロエ先輩行きますか」
「お、お願い……」
「は〜い。じゃあ、いってきま〜す」シュンッ。
明日からすぐに騎士団として訓練が始まる先輩達。遠方の人は夏季の連休までは帰省できない。王都にタウンハウスを持っている貴族令息令嬢なら、荷物を預けたり家族に挨拶したりできるが平民の生徒はそうはいかない。それは、クロエ先輩も同じで荷物を詰め終え休憩している時に、ボソッと「次に帰れるのは、いつかな?」と呟いた。だから、私の【転移】による強行帰省をする事にした。ちなみに、私のスキルに関してはエレーナ先輩だけじゃなくクロエ先輩も把握済み。
シュンッ「はい、到着」
「………」
「クロエ先輩、大丈夫です?」
「う、うん。なんとか……うわ〜、マジでノルデンだ。しかも、アレ家だよね?【転移】って凄い……」
クロエ先輩の家に行くと、急にやって来た娘とその後輩に驚くが快く家に入れてくれた。クロエ先輩は自室に荷物を置きに行っている間に、私は急に来たお詫びにストレージから色々とお土産を出して行く。クロエ先輩のお父さんからは、私のお陰で乳牛の出産後にエールを飲ませる事で、仔牛の発育も良くミルクの質も上がったらしい。そして、我が家との取引もあり、領主にもその事を話したところ、領をあげて産後のエールを決定したそうだ。しかも、領主様からはお褒めの言葉だけではなく、褒賞も頂いたそうでとても感謝された。
小1刻間という短時間で、クロエ先輩の実家訪問を終えて騎士寮に戻る。騎士寮は、未だにバタバタしていた。エレーナ先輩とベルは、食堂で他の先輩達がバタついている様子を見ながらお茶をしていた。
「おかえりー」「おかえりなさい」
「ただいま〜」
「ただいま。これ、お土産貰ったよ」
ストレージから、クロエ先輩のお兄さん特製のプリン2種類。お兄さん達は、以前私が差し入れしたシュークリームからカスタードクリームにハマり、とうとう乳牛だけでなくニワトリを買い養鶏まで始めてしまった。
「んー美味しい!!」
「プリンもクリームも美味しい〜」
「いくつでも食べれる!」
「えへへ、ありがとう」
特製プリンの上には、生クリームがのってあった。程よい硬さのプリンに、濃厚生クリーム。合わないはずがない!一つはプレーン味、もう一つはイチベリー味。
騎士寮での最後の女子会は、寮の食堂で周りがバタつく中、プリンを食べながら談笑して終わった。あと数刻間でエレーナ先輩とクロエ先輩は卒寮する。そしたら、女子はしばらくベルと2人になる。寂しい……。
*****
春季の長期休暇に入ってすぐ、私は王城へ呼ばれた。理由は、王太后様の依頼の報告で。既に王太后様には報告済みだけど、他国の現状を聞きたいと陛下から直々に文が届いた。案内されたのは、王族専用の中庭。私としては、幼い頃からよく訪れていた場所だった。私が中庭に行くと、既に王妃様といつもの侍女トリオが既にいた。その後ろには、リュークさんとメルヴィンさん。
「いらっしゃい、ジョアンちゃん」
「ご無沙汰してます」
「ちょっと陛下は遅れるそうだから、お茶しましょう」
「はい。あっ、これお土産です」
私が言うと従僕ベルデが、各国のお土産の入ったマジックバッグをサイドテーブルに置いた。
「ありがとう。何が入っているの?」
「えっと、ツヴェルクの火酒でしょ。アニアのキッチン・エイコーンのミックスナッツとナッツ入りクッキー。エルファのチョコレート。東の国からは、反物と清酒」
「チョコレート!?この世界にあったの?」
「あったのは、カッカオの実。だから、作って貰ったの」
「さすが、ジョアンちゃん。普通、チョコレートの作り方なんて知らないから」
「えっ?そう?」
「うん。……わぁ〜綺麗な反物ね。でも、どうしたら?」
「着物を作っても良いし、コレでドレスでも良いんじゃない?」
「反物でドレス……アレだ。何だっけ?『はーどっこい!』って合いの手のある歌の歌手がそんなの着てたよね?」
「あー、まぁーそんな感じ」
80年代のアイドルが、おかっぱヘアーに反物を使ったワンピースを着て歌っていた。あれをイメージしてデザインをしたら、マダムがきっと素敵なドレスにしてくれるだろう。ただ、王妃様の画力が、中々の画伯並みだから私がデザイン画描く事になるんだろなぁ。
しばらく王妃様や侍女トリオと雑談をしていると、ようやく陛下と宰相様が中庭に入って来るのが見えた。