作品タイトル不明
478.まさかの再会
焚き火を見ながら思い出すのは、この約3ヶ月のこと。
嫌々ながらも行ったピグレート侯爵家で、元侯爵夫人と侯爵令息から謂れもない事を言われ飛び出したガーデンパーティー。その後、皇太后様の計らいで依頼を受けた形で、エグザリアを出国した。
ツヴェルク国では、イジョクさん達のお姉さんを助けたり、王宮では閉じ込められたり料理したり鍛練したり。モズの家族、ドゥリン公爵家の皆さんにはお世話になったな〜。結局、鍛治ギルドにおろすよりも高く購入してくれた王宮魔道具部門、特にモズの次兄のセックルさんには感謝ね。
その後のアニア国では、王族の皆様のリクエストで【大人様ランチ】を作って喜ばれたり、コッカー伯爵家の問題を解決するのに動いたり、ラビィーちゃんの所の商会でジョウ商会の商品を扱って貰うのにお母様が登場したりしたなぁ。さすがにアレには皆んな驚いていたっけ。
エルファ国では、精霊が見える子供達を助ける為に、精霊王に協力を仰いだ。呼び出す為に料理して、精霊王達の胃袋をガッチリ掴んだ。まさか料理のお陰で気に入られて、私まで下位精霊達を見えるようになるなんて驚いたけど。子供達は助かったし、エルファ国も精霊魔法を精霊王達直々に教えて貰えるって喜んでいたなぁ。私もカッカオを定期的に貰えるようになったから、チョコレートを量産する段取り考えないとなぁ。
最後の 東(あずま) の国は、前世の日本と同じような畳敷きの家屋は懐かしかったし、食事も和食中心で過ごしやすかったわ。仲良くなったワカちゃんはタイキさんとようやく思いを通わせることが出来て、私はワカちゃんの実家の呉服屋さんから着物を安く売ってもらえたからwin-winだ。越後屋でもエビスでも、たくさんの食材と調味料を買えたし、帰ったら皆んなにご馳走しなきゃね〜。
ガサッ。
追想していると近くで物音が聞こえた。ストレージから短剣を取り出し、万が一のことを考えて構える。気配から魔獣ではなく人のようだ。殺気がないから盗賊ではないと思うけど……。
ーージョアン、大丈夫?
ーー大丈夫。パール達はディメンションルームにいて
ーーなんかあったらすぐ呼ぶのよ
ーー了解
「誰だ!」
「俺達は怪しいもんじゃない。今から近くへ行くが、攻撃するなよ」
「それは、そちらの行動次第だ」
森の中から出て来たのは、男性が4人。全員が帯剣していたが両手を挙げて近づいて来た。そして、焚き火の明るさで全員が見たことのある軍服を着ていることがわかった。そして、顔まで見えると私は目を見開いて固まった。まさか、こんな所で再会するなんて……。
「俺達は、王宮第二騎士団第3班。怪しいものじゃない。俺は、第3班班長のカズール・リバークスだ」
以前、ジーン兄様から魔物討伐団は魔物を捜索する際に少人数の班に分かれて行動すると聞いていた。だけど、まさかカズール先輩が班長だなんて知らなかった。
カズール先輩にはショウver. を見せたことはないし、表情や言動を見るに、私には気付いていないからそのままにしておこうかな?説明がややこしいし、男装のことは色々とバレたくない。あーあ、久々に会えるならジョアンとして会いたかったなぁ〜。
「要請を受けて、この辺りで目撃されたホワイトアウルベアの親子を捜索している。見たところ、君1人に見えるが?」
「あー、俺だけっす」
「ソロの冒険者か?ギルドカード見せてもらえるか?」
「……ショウ、ランクBー!?マジか?」
「嘘だろ、何才だ?」
「16っす」
質問をするのはカズール先輩以外の3人。カズール先輩は、辺りに注意を払いながらこちらの話に聞き耳をたてている。
ぐぅ〜〜っ。
ちょうど会話が途切れた所で、誰かの腹の虫が鳴った。誰だ?と見回すと、そーっと手を挙げる騎士。
「すんません。俺です」
「ヘイデン、お前緊張感なさすぎ!」
「あの……良かったら、何か食います?」
「いいのか!?」
「「ヘイデン!!」」
カズール先輩ともう1人の騎士に怒られたヘイデンさんは、チラッとこちらに助けを求めるように視線を寄越した。
「えーっと、その、俺も小腹空いてきたところで何か食おうかな?と考えていたんで、よろしければ……」
「……申し訳ない」
王宮第二騎士団、通称魔獣討伐団の第3班の4人は班長がカズール先輩。その他メンバー、まず腹ぺこのヘイデンさんは、赤い髪にオリーブ色の瞳のお調子者っぽい人。先程、カズール先輩と一緒にヘイデンさんを怒っていたシェルトンさんは、肩まで伸ばした濃灰の髪に薄紫の瞳で、マイペースらしく今も焚き火に薪をくべつつ剣を磨いている。そして最後のマットさんはスラッと背が高く青いサラサラ髪に紫の瞳をした礼儀正しい人。平民を装っている私に対しても、丁寧に接してくれるし率先して手伝ってくれた優しい人。
夜食の時間なので簡単に出来るものと考えて、ショートパスタ入りのミネストローネにした。最後に粉チーズと黒胡椒をかけて出来上がり。
「お待たせしました」
「うっわ、美味そー」
「あんな短時間で、これが?」
「ありがとう」
「悪いな、俺達の分まで。後で、料金は支払う」
「いえいえ、いつも皆んなを守ってくれているんですから代金なんていりませんよ。一王国民からのお礼だと思って下さい」
何とか料金の支払いを断り、お代わりを促すと全員が空の器を出してきた。それでも足りなそうなので、ストレージから作り置きのランペイルドックを取り出して渡した。
「あ、それってランペイルドック?」
「はい、この前ダンジョンに行った時に買い置きしてたのっすけど。知っているんすか?」
「ああ、俺らの副隊長が差し入れで持って来た時があってな」
「そうそう。何でも妹さんが考案したってな。そういやあの人、妹大好きでまた釣書破ったらしいぞ」
「あー、ヴィーから聞いた。あっ、ヴィーってのは副隊長の従兄弟でさ、そいつも一緒にその妹さんの釣書を確認してるんだぜ」
マジか。まだ、釣書の確認してんのか〜。しかも、騎士団の人も知れ渡ってるって……。
「あは、ははは。その妹さん、嫁行けないっすね」
「まぁな。でもその妹さん、ここだけの話、あの “食の女神” なんだってよ。だから、下手な所に嫁がせたくねーんだと」
「”食の女神” って言ったらすげぇけどさ、どれだけの器量なんだろうな」
「ホントだよな。噂だと、絶世の美女とも地味な子だとも聞くし、すげ〜巨乳だとかただのデブだとかも聞くな」
噂、怖ぇ〜。
もう、その妹本人だって名乗れねーじゃん。