軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

476.帰国へ

東(あずま) の国に10日ほど滞在し、今日、エグザリア国へ帰国する。

見送りには、サナダ家や越後屋のチグサファミリーやスタッフさん、ゲンタ夫妻も駆けつけてくれた。奥方様達は、大事になるからと代わりに討伐も一緒に行った奥方様付き近衛隊の隊長とワカナ様が来てくれた。

サナダ家にはすでに送別会として豪華な夕食を用意して貰った。さっちゃんは「もう少しおったらええのに〜」と言ってくれたけど、そろそろ私も家に帰りたい。そう言うと「そらそーやろな。まっ、またファンタズモで待っとるわ」とニカッと笑っていた。

ちなみに、その送別会に無理言ってワカナ様を参加させてもらった。ワカナ様が婚約者候補から外れたことは、貴族達に城からの通達があった。中には、ワカナ様が若殿に対して不敬を働いたせいだとか色々な憶測が飛び交ったが、それを若殿ははっきりと否定した。「彼女の決意に胸を打たれ、彼女の意思を尊重したまでだ」と。それからは、誹謗中傷も減ったようだが、どこからの情報なのか、ワカナ様には昔から慕っている殿方がいるという噂が市中を賑わした。近衛隊の職務中以外、どこにも出掛ける事が出来ず、ワーカホリック気味になっていたワカナ様を気分転換と称して送別会に参加させた。ワカナ様が来ることはサナダ家三兄弟以外には伝えていたので、三兄弟は驚いていた。特にタイキさんは、婚約者候補に決定以来の再会で始めの方は2人共ギクシャクした感じだったが、次第に以前のように会話を楽しんでいた。送別会中に、2人が中庭で月を見ながら話をしているのを皆んな気付いたが、そっと障子を閉めて誰からともなく乾杯をした。

しばらくして戻って来た2人は、先程と打って変わって距離が縮まりしっかりと手を握り合っている。

「ち、父上、ワカナ……嬢と婚約をしたいと思う」

と、タイキさんが言った。隣のワカナ様は、顔を真っ赤にして俯いている。一同呆気に取られていたが、シラヌイ様はゴホンッと咳払いをすると

「遅すぎる!このヘタレ!!」

「本当に誰に似たんだか」

「シラヌイやろうな」

「そうじゃな。ワシはちゃんと早くに手は打ったぞ」

「あんたは、外堀埋めて逃げ道塞いだだけやんか」

上からシラヌイ様、リッカ様、さっちゃん、サイウン様そして突っ込むさっちゃん。

「でも、本当ようやくって感じだよな」

「そうそう、若殿からさっさと攫えば良かったのに」

「でも、待っている殿方は甲斐があるのでは?」

「けど、待っているだけではね〜」

「「「確かに〜」」」

そしてセイカさん、ケイさん、セイカさんの婚約者、ケイさんの婚約者。

一大決心をして告げたのに、皆んなにディスられているタイキさんと不安になり赤から青くなりつつあるワカナ様。

「はいはい、皆さーん。ヘタレなタイキさんに色々思う事はあると思いますけど、それは一旦おいておきましょー」

「おう、そうだったな。……タイキ、ワカナ嬢おめでとう」

「「「「「「「「おめでとう!!」」」」」」」」

ということでその翌日、早速ワカナ様の実家の侯爵家に出向いたシラヌイ様とタイキさん。無事に婚約が決まった。聞いた話では、婚約を聞いた若殿と婚約者候補の2人から、祝いの品が数多く届いたそうだ。

「ワカちゃん、今度はタイキさんと一緒にエグザリアに来てね。色々と案内するから。ってか、タイキさんなしでも良いけど」

タイキさんと無事婚約が出来たのは私のお陰だからお礼をしたいと言うので、様付けではなくちゃん付け呼びと敬語もなくした。ちなみにワカちゃんからは、ジョアンと呼び捨てで呼んで貰えるようになった。

「うん。ぜひ行きたいわ。ジョアンのお祖母様にもお会いしたいし」

「おぉ〜、そこは脳筋変わらずか〜。お祖母様が良いって言ったら連絡するね」

「あ、あの……ジョアン様、私もリンジー様にお会いしたいです!!ぜひ、私のことも宜しくお願いします!!」

「「隊長……」」

奥方様付き近衛隊隊長は、男装の麗人だが伯爵令嬢として家から再三に渡り縁談の話がきているが完全スルーの脳筋令嬢。そんな彼女が、お祖母様の話になると頬を赤らめて興奮し涙目で話すのを見ると、脳筋じゃなければ嫁の貰い手なんてすぐなのにと思う。

「じゃ、お世話になりました〜」

私は見送りの人達に、スノーの上から手を振り都の門をくぐって行く。ここからエグザリアに帰るには、エルファ国の時と同じ港町から乗船予定。

ヒノモトを出発して4日後、行きよりも1日早く着いた私達。なぜ早かったのか、それはパール達がサナダ家でぬくぬくし過ぎたせいで運動不足だから。元に戻す為に、走って狩って追いかけて狩ってをしていたら1日早く着いてしまった。

到着したのは既に夕方、もちろん今日の船はもうない。だから、夕食を前回も来た《エビス》でとって野営の予定。そう思い店の中に入ると、朝食時とは違い活気が溢れていた。いかにも海の男達というガタイが良く日に焼けた男性達が、ジョッキ片手に笑い合っている。

「いらっしゃいませ、お1人ですか?」

「はい。あっ、契約獣連れなんですけど大丈夫ですか?前はテラスが空いていたんで、そこで食事させてもらったんですけど……」

「はい、大丈夫ですよ。ちょっとお待ち下さいね」

声をかけてくれたのは黒髪のおさげにそばかすの可愛い子。その子が、テラス席にいる男性2人に近づいた。私達のために、席を確保してくれるらしい。でも、あんな可愛い子が嫌な思いはして欲しくない。何かあってもすぐ行けるように、風の下位精霊にお願いしてテラス席の声を聞こうとした時……

「おい、お客さんが来たからどけや!」

「あ?俺らも客だろうが?」

バシッ「うっさい!あんたらは客じゃねーよ。ほら、どいたどいた」

「お前、兄に対して酷くねーか?」

「俺なんか店長ですけど〜?」

「店長なら、働け!!……あっ、お待たせしました。どうぞ、こちらへ」

「はぁ……」

テラス席の2人組はのそのそ立ち上がりこちらを見ると、エルファ国からの船の船長のカツヤと店長さんだった。

「「「あー、あん時の!!」」」

「えっ?兄貴達、知り合い?」

ここで会ったのも何かの縁として、一緒に飲むことになった。そばかすの子は、カツヤさんの妹さんで《エビス》の看板娘のヨシノさんだった。

「へーじゃあ、明日のエグザリア行きに乗るんだ」

「はい。そーなんです。あっ、ヨシノさーん!同じのお代わりで」

「……強いな。それ火酒だろ?しかもロックって」

「そう?ほらほら、飲んだ飲んだ」

「うわージョアンちゃん、溢れる溢れる」

「きゃっははははは」

「可愛い顔して、絡み酒かよ……」

「まあ、嫌な気はしねーけど」

「確かに」

その後、カツヤさんと店長を引き留め朝方まで飲んだ私は、翌朝2人が突っ伏して寝ている横でパールに説教されたのは言うまでもない。

お酒は飲んでも飲まれるな。