作品タイトル不明
462.エルファ国から東の国へ
ーーー王宮内の孤児院。
あれからすぐにベルデの転移で、王宮孤児院に連れて来られたシスターと侍者と子供達。待っていたのは国王と王妃、宰相、新しいシスターそれと大勢の侍女達と侍従達。
皆んなが驚いている間に、あれよあれよとお風呂に入れられて磨きに磨かれ、子供達は夜が遅いからとベッドへ連れて行かれた。部屋に案内されると興奮していた子供達も、ベッドに入った瞬間に眠りについた。
残されたシスター達と侍者は、宰相から今後の説明を受ける。皆んな幼い頃に親から離され教会で暮らしていた人達。明日には子供達も含めて、親がいる者は親と面会できるようにしてくれたらしい。そして、自分達でどうするか一晩考えるように言われるが、5人は顔を合わせて頷いた後、王宮内で残された子供達を世話したいと言う。自分達も精霊が見えることで、周りから好奇な目で晒されてきたから、子供達の気持ちがわかると。だから側で守ってあげたいと言う。
新しいシスターも、その方が子供達の精神的にも良いと推すので5人はそのまま王宮孤児院で働く事になった。そして、今まで誰からも教えられなかったので、子供達と一緒に文字や計算などを勉強する事になった。
翌朝、王宮内の礼拝堂の前には3組の親子が会えたことを喜んでいた。この後、宰相が各家族を面談して今後一緒に生活出来るかどうか決めるらしい。
結果、家族の元に戻ったのは1人だけ。その代わり、月に一度面談をする事になったらしい。
*****
ーーーそれから2日後。
私達は、今日、エルファ国を出立する。
昨日は、王宮の礼拝堂のある庭園で、私の送別会を開いてくれた。国王夫妻、宰相、エデーン侯爵家、王宮孤児院の皆んな、精霊王達に下位精霊達。私の素性を聞いて孤児院メンバーは驚いていた。
「ジョアン嬢には、色々と世話になった。また、エルファに来る時は歓迎するぞ」
「陛下、エグザリアの武闘会で会えるではありませんか」
「おお、そうだったな。わっははは」
「ジョアン様、陛下はともかくぜひ今度はゆっくり遊びにいらして。……それから、あのドライフルーツをまたお願いしたいわ」
国王夫妻の夫婦漫才からのドライフルーツのおねだりに、私は
満面の笑みで答えた。ちなみに、密かに王妃様の自室でドライフルーツを作ったのは内緒だ。
「ジョアン嬢のお陰で教会派も大人しくなりましたし、麻婆豆腐以外にも美味しいものを色々と教えて頂き感謝致します。それに、カッカオの実も薬以外で利用可能だと教えて頂き、本当にありがとうございました」
宰相は、激辛好きだと自覚してから色々なレシピを私に聞いて来た。しかも王宮内で【激辛同好会】などというものを発足し、各地の激辛料理を食べる事にしたそうだ。その同好会には、たまにサラマンダー様も顔を出すのだという。そして、カッカオの実は、宰相の家の公爵領が名産地らしく、今まで薬としての利用価値しかなかったところ、私が前世の記憶からチョコレートを作る事に成功した。それがエデーン侯爵夫人や王妃様に大好評で、今後はチョコレートの名産地として有名にしていくという。そのお礼として、カッカオとチョコレートを定期的に送ってくれると約束してくれた。あざーっす!
『ジョアン、ありがとな。お陰で舎弟達の落とし前もちゃんとつけられた』
『ジョアン〜、今度はエグザリアにも遊びに行くね〜』
『嬢ちゃんの酒は、絶品じゃった。また所望するぞ』
『私、ジョアンちゃんについて行こうかしら?その方が楽しそうじゃない?エグザリアも全然行ってないしぃ』
『良いな、それ』『さんせ〜い』
『うむ、お主もたまには良いことを言う』
「いやいや精霊王様方、それは困ります。ようやく古代の精霊魔法を教えていただける機会ですのに……」
精霊王達の会話に、慌てて国王が縋り付く。今では廃れてしまった精霊魔法を精霊王自ら王族に教えると約束を取り付けていたらしい。結局、精霊王達はたまに私の所へ遊びに来ると言ってくれた。まあ、自由な精霊王達だから頻繁に来そう。それにしても、ウィンディーネ様の『ついて行く』が『憑いて行く』とホラーに聞こえるのは何故だろう?
そんなこんなで、昨日は皆んなから盛大に送り出された。今日は、王都の門の所までエデーン侯爵ファミリーがお見送りをしてくれた。
「ジョアン様、私、春の季からエグザリアに留学することにしましたわ」
「えっ!?本当に?」
「はい。だから、エグザリアでも仲良くして下さいませね」
「もちろん。色々と案内するからね」
「はい!楽しみにしてますわ」
「ジョアン嬢には、また色々と世話になってしまった。申し訳なかった」
「いえ、私も長い事お世話になりました」
「まあ、そんなお礼だなんて。娘が増えたと嬉しかったのですよ」
「フェニー様、ありがとうございます」
エデーン侯爵、フェニー様、ミアちゃんにお別れを告げて私達は門をくぐり歩きだした。ちなみに、エドママのアルエット様はひと足先にベルデがエグザリアに【転移】で送って行った。私も一緒に行かないのか聞かれたが、今は皇太后様の依頼を受けている途中だからと言うと納得してくれた。代わりに、エドをはじめとした友人達に私の様子を話しておくと約束してくれた。もう冬季休みが終わり、学院は始まっている。時々、文のやり取りはしているけれど、きっと会ってしまったら旅に戻るのが辛くなりそうだから。
『ジョアン〜、次は?』
「最後の国、 東(あずま) の国だよ。って、ロッソ!パールの上でクッキー食べないの!ボロボロ溢してるから」
『ん?あっ、ごめんパール』
『いいわ。でも後で、ブラッシングしてよね』
『わかった〜』
東の国は、日本と同じで島国。
アニア国、エルファ国がある大陸とエグザリア王国、ツヴェルク国のある大陸には隔てるように海があり、中心よりもエグザリア王国よりにポツンとあるのが東の国。大きさ的には、北海道ぐらい。
「で、東の国では、まずサナダ公爵家を訪ねるようにお祖母様から言われているのよ。なんでも昔からの知り合いの家らしいよ。というわけで、東の国へ Let's Go !」
『『『『おー!!』』』』
エルファ国から東の国までは、船に乗るのも合わせて1週間程。私達は、いつも通り魔獣を狩りつつ野営をしながらエルファ国の港町まで楽しくのんびり旅をした。