作品タイトル不明
446.敵陣視察
「うっひゃあ、でっけぇ〜店」
「ジョア……ショウ、声が大きい」
私……いや俺は今、貴族街にあるコッカー伯爵家のリコリス商会の前にいる。どんな物を扱っているのか、接客はどうなのかの市場調査とレティ・コッカーの本音を探る為に。
ちなみに今日のお供は、ベルデとガロン・ハイロー。ティガー公爵家のゴールダーと一緒だと、警戒される可能性があるからゴールダーから頼んで貰った。ちなみにリジャル殿下に許可を取り、ガロンにも内容説明済み。
まあ、ここまで来るに一悶着あったけど……。
「はぁ〜、確かに王都を案内するって言ったけど、何でその格好なんだよ。ゴールダーからデートだって聞いたのに、騙された」
ちなみにゴールダーはそんな事一言も言ってない。私がリコリス商会に行くのについて行ってくれと頼んだだけ。ポジティブ思考のガロンの中では、ワンピースを着た私とデートする予定だったらしく、公爵家に迎えに来てくれた時からずっとそればっかり言っている。
「はぁ〜。もう、しつこい!!そこまで文句言うなら、他を当たるからガロンは帰って良いよ」
「はー!?他に知り合いなんていねーだろ?」
「別に、ティガー公爵家関係者じゃなければ良いんだから、色々と当てはあるよ」
「じゃあ、その色々って言ってみろよ」
「まずはイデアラーさんでしょ、それからウル・バートン様に、バートン辺境伯ご夫妻、宰相様に最悪ラムディール殿下?ああ、ハイロー侯爵様にお願いしてもアリよね?」
「……申し訳なかった。俺が付き合うから。……ってか、なんなんだよ、その豪華なラインナップは!しかも父上も入っているし!」
こんな事を馬車の中で、やり取りしながらもリコリス商会に到着し冒頭に戻る。
「これはこれは、ハイロー侯爵令息様、いらっしゃいませ。本日は、どの様なものをお探しでしょうか?宜しければ個室もご案内致しますが」
「ああ。今回は、知人を連れて来ただけだ。用があればこちらから声をかける、それまでは放っておいてくれ」
「……左様でございますか。では、また後ほど」
そう言って会釈をしながら、私のことを下から上まで値踏みをした視線を寄越した男性は私達から離れカウンターに戻っていった。
「アレ、明らかに俺を見下したな。まあ、人族だからしょうがないけどさ。ガロンは常連?」
「まさか。数えるほどしか来たことねぇよ。名札に支配人って書いてあったから、貴族名鑑ででも覚えたんだろ」
それでもガロンの事を即座に思い出して声をかけていたから、店員の接客は良いのか……いや、私に対しての視線があるからマイナスポイントだな。
1階はカウンターと応接セットのみ、2階は食料品や酒など飲み物。食料品は野菜から海産物まで取り揃っていたが、あまり品は良くなさそう。空調が効いている店内で、並べられている野菜はしなしな。果物は色味が悪い。ライトアップしているガラス扉の中にある肉は鮮度が悪いのか赤黒く、魚の目は濁っている。ちなみに、ガラスケースは冷蔵ではなかった。フロア担当者に聞くと、すぐ売れるから大丈夫なんだと。何が?
3階は、家具やインテリア関係。アニア国では身体が大きい人が多い為、家具もサイズが大きい。そのフロアの一角に、彫刻コーナーがあり、様々なサイズのフェンリルの彫刻があった。小さなものは掌サイズから、大きなものはパールの成獣サイズより大きく、目の部分には宝石が使われていた。
「うわ〜。パールがいっぱい……」
『パールは留守番で正解でしたね』
今回、パールはゴールダーと公爵家私兵団の頼みで、戦闘訓練をする為にロッソとメテオと留守番している。
4階は、魔道具を多く取り揃えていた。全て高額の札がついていて無駄に煌びやかな杖、ピカピカに磨き上げられた水晶玉、宝石がこれでもかとついた重そうな腕輪など、ラインナップのセンスを疑う様な魔道具が並んでいた。商品の近くには説明書きもなく、気になれば店員を呼ばなければならないシステム。
チヤホヤされながら説明を受けたい人は良いけど、ゆっくりと1人で選びたい人は困るだろうな。私も、前世で洋服を買いに行って店員が付いてくるのが嫌いだった。『あー、それ私も持っているんですよ〜』なんて言われると、欲しかった服も欲しくなくなったりすることもあった。
5階は、個室の商談室や事務所になっているそうだ。一通り見終わった私達は1階に下りて来た。私達を見つけた先程の支配人がやって来た。
「いかがでした?何かご入用の商品はございましたでしょうか?」
そう言う支配人とは、一切目が合わない。
「あの……レティ・コッカー伯爵令嬢様に会えますか?約束はしてないんだけど」
「は?あなた様はどちら様でしょうか?見たところ人族のようですが……何の紹介もない方をお嬢様と引き合わせることはできーー」
「コレ、貰ってんだけど?」
「こ、これは……。少々お待ち下さいませ」
私は、支配人の言葉を遮りレティ嬢を助けた時に家令さんから貰ったカードを見せると、支配人は驚いたように受け取り上のフロアに行ってしまった。
しばらくすると、商会の扉が勢いよく開いた。
「ショウ様!!」
入って来たのは、ふんだんにレースをあしらったドレスを着たレティ・コッカー伯爵令嬢だった。その後ろから、絵に描いたような中年太りの男性と家令さんがついて来た。ガロンがコソッとその男性が件のコッカー伯爵だと教えてくれた。
「おぉ、ハイロー侯爵令息殿ではありませんか。我が商会をご利用頂きありがとうございます。少々お待ち下さい、すぐに小用を済ませますので。……で、君がショウ君とやらかな?」
「はい。エグザリア王国で冒険者をしてますショウと言います。あっ、こっちは相棒のベルデです」
「ほお〜冒険者ねぇ〜」
先程の支配人と同じように私を下から値踏みをするチビ禿げ出っ歯なコッカー伯爵。それでも素知らぬ顔をして、微笑んでおく。
「お父様、ショウ様には私達が大変お世話になったのよ。ショウ様がいなかったら、きっとお父様に再会出来なかったかも知れないのよ!」
「おお、そうか。娘と使用人達を助けてくれてありがとう。で、謝礼はいくら欲しいんだ?」
「は?いや、いらないっすけど」
「何?いらないだと?そんなわけないだろう。ここまで来たのは、金欲しさだろ?冒険者ごときが、我が商会で買うこともできんだろうしな」
いやいやいや、金じゃねーし。お前らの情報だし。リジャル殿下に頼まれなかったら、関わりたくねーよ!!
それに、お前らより私の個人資産の方が確実にあるからな!
つうか、ガロン、笑ってんなよ!下向いたって肩がバイブ機能なってるからな!!