軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

407.お祖母様と王太后様

「そうだわ!ジョアン、ちょっと気分転換に旅へ行ってきたらどうかしら?」

「えっ!?旅?」

俯いていた私はお母様の提案に、バッと顔を上げた。目の前に座っているお母様は、とても良い笑顔で笑っていた。

「ええ。今回の事で、きっと社交界にいると色々な噂話や誹謗中傷で、あなたが矢面に立たされる事になるわ。もちろん私もお父様もあなたに非がないこと、そして侯爵家への抗議はしますけど、それでも心無い人はいますからね。どうせ社交に出ないのであれば、この際だから色々な所を見てきたらいいじゃない?ほら、他国なんてどうかしら?アニア国、エルファ国、そうそう 東(あずま) の国なんてどう?なんだったら全部周ってきたら良いわよ。」

「でも、全部は無理ではないですか?学院始まるまで間に合いませんよ?」

「あら?休んだら良いだけじゃない?どうせ、来年度の単位は取ってあるんでしょう?」

「ま、まあ、そうですけど……。」

「気にせんで行ってきたら良いだろ。」

声のする方を見るとお祖父様とお祖母様が立っていた。

「お祖父様!?お祖母様!?いつ、こちらに?」

「さっきじゃ。ナンシーとベルデが迎えに来てくれての。わしらだけ先に来たんじゃよ。」

話を聞くと、予定ではいつも通りに馬車で明後日到着する予定だったが、私がお父様と王都の屋敷へ行っている間に、お母様がナンシーとベルデにお祖父様達を連れてくる様に指示し、ベルデの【転移】で迎えに行ったらしい。

「ピグレートの前侯爵とは学院時代の友人でな。今回のことは、わしの方からも話しておく。」

と、お祖父様。

「うふふふ、では、私も色々なところに顔を出さないといけないわね。」

「お義母様、私もお供致しますわ。そろそろ、ドライフルーツが皆様欲しくなる頃でしょうし。」

と、お祖母様とお母様。

片や、王妃様付き近衛隊として名を馳せ、騎士服姿が麗しいと当時ファンクラブのような親衛隊まであったというお祖母様。片や、魔術師団副団長として絵本にまでなったドラゴンキラーの一員、そして現在は私の作り出した商品を売り捌く敏腕バイヤーのお母様。その2人は、誰もがお近づきになりたいと毎年この時期にはお茶会や夜会の招待状が山のようにくる。でも、2人とも厳選して行くために参加するお茶会や夜会は、他の招待客も殺到するらしい。

お祖母様は、ジェネラルとファンタズモの私兵団を指導することもあり、今でも学院から是非指導者になって欲しいと言われている。しかも未だに騎士団の上層部や女性騎士からは絶大な人気がある。上層部の中には元部下もいるそうで、お祖母様に頭が上がらない人もいると前にジーン兄様から聞いた。だから、お近づきになり自分の子供も指導して貰えば、騎士団への近道だと勝手に思われているそうだ。もちろん、全て断っているそうだけど。

お母様は、魔術師としての力もあるが、今はもっぱらバイヤーとして人気だった。それもそのはず、私の作るドライフルーツを始めとした料理やお菓子を巧みな話術で興味をひき営業をしているから。しかも、私特製のドライフルーツは簡単に購入出来ないようで、私が知る限りでは、ベルのバースト伯爵家、キャシーちゃんのカッター公爵家、ノア先輩のヨシーク公爵家、エレーナ先輩のディーゼル侯爵家、カズール先輩のリバークス侯爵家、エドのレルータ伯爵家、カリムのスミス伯爵家、エルファ国のエデーン侯爵家ーーエドの母方の実家で、ソバーの取引先ーーだけだ。もちろん転売禁止なので、社交界では【幻の果実】とか【奇跡の涙】と言われているらしい。だから、それ以外の人に販売しているのは、ジェネラルで売っているよりも少し効果が高く特製よりも効果が低いもの。私の【ドライ】と干し芋農家の奥様達の【ドライ】を合わせがけしたもの。そのドライフルーツも中々購入することが出来ない。なぜなら私が帰宅しないと作れず、寮生活中心のために作れたとしても週末のみで生産量が少ないから。だから、太りやすい社交時期に売って欲しい人が続出するらしいが、そこはお母様。全ての人には売らないようで、購入出来た人は社交界でも一目置かれるし痩せていく。そして噂では、子宝にも恵まれるらしい。

「そう言えば、件の嫡男は第一騎士団だったからしら?」

「はい。でも、今は休職しているみたいですけど。」

質問に答えると、お祖母様は不敵に笑った。

「ふふふ、そう。でも、そろそろ出てこないと身体が鈍るわね。……そうね、久々にアレを開催しても良いわね。」

「開催?何をですか?」

と、私は首を傾げる。

「ん?ジョアンは知らんか?何年かに一度、近衛隊を含む騎士団が参加する武闘会を。」

と、お祖父様。

「舞踏会?」

「いや、武力で闘う方の武闘会じゃ。前回は……10年前かの?」

「ええ。そのぐらい前ね。ジョアンが知らなくても、しょうがないわ。」

確かに10年前だと、前世の記憶を思い出す前で自分のことしか興味がなかったかも。それに、闘うことも野蛮だって思っていたし……。

「それをお祖母様が開催するのですか?」

「私がというより、王家がなんだけどね。誰かが提案しないと中々腰を上げないのよ。それに、元はと言えば王太后様が武闘好きだったことから始まったわけだしね。」

「えっ!?王太后様が?」

「ええ。王太后様は私の騎士科の同級生でもあったの。先代王は文官科だったんだけどね、闘う彼女の姿を見て慕うようになったそうよ。彼女もそんな先代王を護りたいと思ったのもあって一緒になったのよ。」

男前な王太后様だったんだ。

まさか騎士科の大先輩だったなんて、ビックリだわ。

「そうだわ。彼女からも、たまには会いたいと連絡を貰ったから、ジョアンも一緒に会いに行きましょう。それから、旅に出ればいいでしょう?」

「えっ?私も良いのですか?」

「もちろんよ。先代王が没後、別荘の方で静かに暮らしているの。でも刺激が少ないと嘆いていたし、ジョアンにも会いたいと言っていたから。」

「えっ?私と?」

お祖母様、何を王太后様に話しているんだろう。不安しかないんだけど……。

よし!ここは、王妃様を巻き込んでやろう。

そうして、お祖母様は王太后様に訪問の旨を連絡すると、明日でも良いわよ〜と返信が来た。これには、お祖母様も呆れてはいたが、明日訪問する事になった。もちろん、王妃様も。

急遽連絡をしたのだが、ちょうど予定がないという事で一緒に行く事になった。嫁姑関係は良好のようで、王妃様は【転移】でよく遊びに行っているそうだ。