軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

402.貴族は大変

飴ちゃんの一件も落ち着き、本格的な社交シーズンが始まった。日中であればガーデンパーティー、夜は夜会と様々な家での催しがある。デビュタント前であれば、出なくても周りからも何も言われないが、デビュタント後は成人ということで、ある程度は参加するべきだとお母様からも言われている。それでも、学院を優先して構わないと言われているだけ私は恵まれているのかも知れない。クラスメイトの貴族令息は、嫡男ではない者が多いが、それでも婚約者を決める為だとか交流を通じて人脈を広げ、社会的地位の向上を狙う絶好の機会の為に有無を言わさず参加させられているようだ。その場合、授業を欠席する為に補講が設けられている。もちろん例に漏れず、エドやカリムも。

「大丈夫?」

私の前にいる2人に聞く。

「「ダイジョバナイ……。」」

ランチを食べずに、エドとカリムが机に突っ伏している。どうやら昨夜も夜会があったらしい。それでも頑張って授業に出たのは、補講でギルドに行ける時間が削られるのが嫌だからだと言う。

「2人共、酒に強いだろ?なのに、そうなるってどんだけ飲んだんだ?」

と、いつものメンバーで酒に弱いブラッドが聞く。

「……酒に、何か混ざっていた。」

顔を上げずに、エドが言う。

「「「「「「は?」」」」」」

夜会の出された酒に混入されているといえば……媚薬が1番可能性が高いよね?

いつも皆んなとランチをとるのは食堂のテラス。テラスなら契約獣を連れていても良いという許可が出ているから。ちなみにテラスの上にも屋根はあるので、天気の悪い日でも大丈夫。

周囲を見ると、他の生徒は既にランチをとり終わりテラスにいるのは私達だけ。腕のバングルの盗聴防止と認識阻害を発動させる。

「エド、カリム、【サーチ】して体調不良の原因見る?」

「その手があったか。頼む。」

「あっ、俺も。」

「じゃあ、エドから。【サーチ オープン】」

----------------------------------------------------------------------

[エドラヒル・レルータ]

ハーフエルフ。レルータ伯爵令息、三男。

状態:昨夜の酒に混入された媚薬、興奮剤の副作用で疲労感、脱力感。

補足:【アクア】の水で回復可能。

----------------------------------------------------------------------

「「……。」」

「「「「「「うわぁ〜。」」」」」」

エドのサーチ結果に、全員がドン引き。固まっているのは、被害者の2人。ちなみにカリムのサーチも同じ結果だった。

「はい。まずは、コレ飲んで。」

「「悪い。」」

「毒ならある程度慣らしているから大丈夫だけど、さすがに……モグモグ……今回は無理だった。」

ようやく回復したエドが、遅めのランチをとりながら言う。

「俺もだ。んまっ……状態回復の付与の魔道具準備しないとかな。……ジョアン、お代わりあるか?」

「あるよ。……はい。」

エドはカレーライス、カリムはパンケーキ生クリーム添えを食べている。相変わらず、カリムは甘味好きで生クリームの上からプルーベリーのジャムをたっぷりかけて満面の笑み。

「モグモグ……毒慣らすって……貴族は大変だな。ジョアン、俺もお代わり!」

「「「俺も!」」」

カレーの匂いテロによって、さっきランチを食べたはずのソウヤ達もカレーライスを食べている。その身体のどこに入っていくんだろ?

*****

「ランペイル辺境伯令嬢、ジョアン・ランペイル様、並びに、スミス伯爵令息、カリム・スミス様、レルータ伯爵令息、エドラヒル・レルータ様、バースト伯爵令嬢、ベル・バースト様、ご入場。」

今夜はカッター公爵家、つまりキャシーちゃんの家の夜会に招待され、私はカリムにベルはエドにエスコートされている。私以外は良い相手を探すように言われているらしいが、本人達は全く興味がなく、しかもエドとカリムは前回の夜会で薬を盛られていることもあり警戒して探すどころじゃない。ということで、4人共に婚約者がいない為にこういう形になった。もちろん、ペアは組んでいるがお互いの色の物は、決してつけないのが暗黙の了解。変に噂されていても困るからね。でも、なんなら騎士科の制服で行く?と言った私の提案は、即座にぶった斬られた。

私達が入場すると、既に集まっていた人々の視線が集中する。

「うおっ。」

「馬鹿!見られただけで動揺してんじゃねーよ。」

と、視線そのままにカリムから小声で怒られた。

「ご、ごめん。」

だって、入場した瞬間にタイミング同じで皆んながコッチを見るし……。それに、カリムとエドがいるからハイエナ令嬢達の目が怖い。そりゃ容姿端麗、成績優秀、家格が揃ってたら誰だってお近づきになりたいでしょうよ。なのに、私とベルが邪魔。ってことは……つまり、この2人から離れたら私は大丈夫。

「カリム、入場終わったら解散しよう。」

「は?」

「いや、だってあそこら辺の令嬢達の目がーー」

「……離さない。」

そう言うと、カリムの腕に添えていた私の手をギュッと握る。

「へ?」

何?その胸キュンフレーズは。

遠くで黄色い声が聞こえますけど?

「ジョアンとベルが離れたら囲まれる。俺達の盾となってくれ。」

ハイ、前言撤回。ただの防波堤代わりでした〜。

「いいじゃない。あそこら辺から嫁探せば。」

「無理、無理、無理。それなら一生独身で構わない。」

カリムは、褐色の肌に黒色の髪の毛、瞳は黄色でエキゾチックな色気で騎士科。色んな令嬢達が、私を守ってくれる素敵な殿方と思っている。と、レベちゃん情報。でも、実際は大の甘党で私でも胸焼けする様な生クリームをこよなく愛し、自分が守れるなら私とベルを盾にしようとする。意外と腹黒令息だ。

「いらっしゃい、皆んな。ごめんなさいね、ある程度呼ぶ人間は厳選したんだけれど……。」

と、キャシーちゃんが言う。その後ろには、キャシーちゃんの両親のカッター公爵と公爵夫人が微笑んでいる。

「お招き頂きまして、ありがとうございます。」

「ランペイル嬢、色々とキャシーの為に動いてくれた様で、本当にありがとう。心から感謝するよ。」

と、カッター公爵。

「いえ、キャ……サリーヌ様の為なら。私を友と言って貰え、こちらこそ感謝しております。」

「うふふ。いつも通り、キャシーと呼んで構わないのよ。娘が気を許している証拠ですからね。ベル様も。」

と、公爵夫人。

「「ありがとうございます。」」

「では、皆んな楽しんでいってくれ。」

そう言って、3人は他の招待客の方へ行った。

私達は、それから軽く飲んだり食べたり、ダンスしたりして過ごした。なぜか、私もベルもいつの間にかカリムとエドに腰に手を回されて……。