軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

334.初めての料理

翌日、王都の屋敷を経由して、ジェネラルにやって来たアニア国とエルファ国の皆さんは、当初の予定である診療所への挨拶を無事に終え、ランチを取る為に我が家に戻り、時間までお茶をしている。私は、ランチを作るために厨房へ来ている。

「で?ここで、あなた様は何してるんです?」

「ん?見学だが?」

私の質問に、飄々と答える男性。それは、使者の方と共にジェネラルに来たアルバート殿下。

「いやいや、見学って一貴族の屋敷の厨房に入ってくる王族っておかしいでしょう?アラン兄様もリュークさんも困ってますし。」

厨房には、私とアルバート殿下、王城の料理長とウチのチーム料理人、そして近衛隊からアラン兄様とリュークさんがいて、料理人達は固まり近衛隊は苦笑い。

「それに、殿下がいることで料理人が萎縮して作業出来ません。」

「私のことは気にしなくて良い。作業を始めてくれ。」

そうアルバート殿下に言われるも、王城の料理長もウチのチーム料理人も動けない。

「あーもー、ここにいるなら、手伝って貰いますよ。それが嫌なら、さっさと応接室へ行って下さい!!」

「「「「「「っ!!」」」」」」

アルバート殿下とアラン兄様以外の全員が、私の言葉に声を失った。下手したら不敬と言われて、処罰されてもおかしくない言動だったから。

「わかった。手伝うぞ。何をしたら良い?」

「「「「「「「「えー!?」」」」」」」」

まさかの返答に、さすがに私もアラン兄様も驚いた。

「何だ?手伝えば良いのだろう?」

「はぁ〜、わかりました。じゃあ、まず上着を脱いで手を洗って下さい。」

言われた通りに、殿下は手を洗い始める。

「えっ、ちょっ、ジョアンちゃん?本当に殿下に手伝ってもらうつもりかい?」

王城の料理長が焦って私に聞いてくる。小さい時から、王妃様にお願いされ何かと王城の厨房にも顔を出していた私は、王城の料理長アシュトンさんとも顔馴染みだった。今回は、他国のお客様が一緒ということと、私が学院に入ってなかなか王城に来ない為に、新作料理を教えて欲しいと料理長自ら出張料理人としてジェネラルにやって来た。

「だって、あの人言っても聞かないの知ってるでしょ?」

「まあ、そうだが……。」

「ジョアン、洗ったぞ。で、何を作るんだ?」

「えっと、今日はバースト領のトメットソースを使ったスパゲッティとルフバードのステーキ、コンソメスープ、メンチカツ、ピザかな。」

「「「スパゲッティ?メンチカツ?」」」

パスタとメンチカツを食べたことがなかったアルバート殿下、アシュトンさん、リュークさんが不思議そうに聞く。

「スパゲッティは、小麦粉を練って細長く切った物です。メンチカツは、簡単に言えばハンバーグのフライですね。」

「なるほど、では指示を頼む。」

「わかりました。じゃあ、殿下はタマオンの皮むきをお願いします。アシュトンさんはそのタマオンとキャロジンを微塵切りに、ケンさんはチキンステーキ、アーサーはスープ、ベンはピザを。アニーちゃんは私とスパゲッティを作ろう。」

「「「「「了解。」」」」」

スパゲッティは、強力粉、オリーブオイル、卵、塩を混ぜて、打ち粉をしながら細く切って、茹でたらトメットソースをかけて出来上がり。スパゲッティを細く切るためのパスタマシンは、今マーティンさんに作成を依頼しているので、今回は太めのフィットチーネ。

チキンステーキは、ガーニックセウユで味付け。スープは、タマオンとベーコン。ピザは、ミックスピザとカレーチーズの2種類。

「ジョアン、終わったぞ。」

タマオンの皮むきだけなのに、なぜかドヤ顔のアルバート殿下。

「じゃあ、このひき肉にアシュトンさんの切ったタマオンとキャロジンを入れて混ぜて下さい。そこに、卵、おろしガーニック、酒、塩、こしょうを入れて、さらに混ぜて下さい。」

「おっ、何とも……これは……面白いな。」

まあ、泥遊びなんて王族じゃやらないだろうからなー。

一生懸命に捏ねてるの、フーちゃんとライちゃんみたい。まっ、双子ちゃんの方が、数倍も可愛いけど。

「……ジョアン、今、失礼なこと考えたろ?」

「えっ?いやいやいや、そんなことないですよー。ねぇ〜、アラン兄様。」

「ジョアン……。俺に振るな。」

「じゃあ、リュークさん?」

「えっ!?俺?……いやいやいや。」

「で?何を考えた?」

クソーッ。誤魔化されなかったか……。

「いや〜、フーゴとライラみたいだなーと。」

「フーゴとライラとは、ジョアンの弟と妹だったか?」

「はい。今年学院入学です。」

「俺が、10才児と一緒だと?」

「いやいや、違いますよ?10才児と一緒というより、初めての料理を楽しんでいるな〜と思って。フーゴとライラの初料理はハンバーグで、同じように楽しそうに捏ねてたから。」

「……なるほどな。複雑だが、確かに初めてで楽しいのは事実だ。」

「でしょ?でも、ウチの子は可愛いですけーー」

「ジョアン!」

ビリッ「痛っ!!」カランカラーン。

話している途中で、アラン兄様が私の名前を呼ぶが、それと同時に持っていたおたまに電流が走った。その弾みで、おたまを落としてしまった。

「……痛いんですけど。」

「だろうな。……悪かったな、可愛げがなくて。」

「それは、昔から諦めてます。でも、殿下ってキャシーちゃんには甘えたりするんですか?」

「……お前、また痺れたいか?」

「遠慮します。……さっ、じゃあ、形作りますよ〜。」

「切り替え早っ。」

リュークさんが、何か言ってるけど気にしないで、メンチカツの形を整えていく。それを見て殿下とアシュトンさんも形を整える。形を整えたら、小麦粉、卵、パン粉の順に付けて油で揚げて貰う。

あー、殿下……。顔にまで小麦粉ついてる。

殿下も小麦粉まぶしたら、腹黒が消えるかな?……いや、消えねーな。