作品タイトル不明
329.天岩戸作戦
「では、失礼します。【サーチ オープン】」
「「えっ?」」
レルータ伯爵夫人とエドの驚く声が聞こえるが、私は【サーチ】に集中する。
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[サエルミラ・エデーン]
エルファ国出身。エルフ族。エデーン侯爵家、四女。14才。
状態:意識不明。栄養失調。魔力枯渇。
補足:アニア国から奴隷として連れて来られた。
結界を張り続けていた為に魔力枯渇。
意識を取り戻す為には、MPポーションが必要。
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「ジョアン……。サーチの情報って表示できるのか?」
「【サーチS】だからだよ。たぶん。ともかく、MPポーション貰ってくるわ。」
そう言って、私は病室を出た。魔力枯渇が解消されたら、意識を取り戻すなら早く飲ませてあげたい。
薬師から上位MPポーションを受け取り、病室へと戻る。壁側に控えていた侍女に渡し、サエルミラ嬢に飲ませて貰う。侍女曰く、今までもどうにか水分は取れていたようだった。時間はかかったが、全て飲んだサエルミラ嬢は、ほどなくして顔色が良くなり、血色が悪かった唇も本来の可愛らしいピンクに戻った。
「良かった……。」
レルータ伯爵夫人は、サエルミラ嬢の手を握り、涙を零した。
「お父様、兎人族の女の子はどうしますか?もし、同じ状況であれば、MPポーションを飲まさないと。」
「確かに……。通常、許可もなくサーチするのは、いかがなもんかと思うが、背に腹はかえられない。頼むよ、ジョアン。」
「はい。【サーチ オープン】」
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[ラビィー]
アニア国出身。兎人族。バックス商会、長女。14才。
状態:意識不明。栄養失調。魔力枯渇。
補足:アニア国から奴隷として連れて来られた。
土魔法酷使の為に魔力枯渇。
意識を取り戻す為には、MPポーションが必要。
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「お父様、やはり魔力枯渇です。」
「ああ。グレイ。」
「はい、こちらです。」
グレイは、すでに上位MPポーションを貰って来たようだった。先程と同じように、侍女が丁寧に飲ませる。こちらも、ほどなくして顔色が戻ってきた。
「良かった……。」
「あとは、目を覚ますのを待つだけだが、いつになるだろうか
?」
意識を失ってからもそうだけど、地下牢にいた段階でもまともな食事は与えられてないだろう。だからこその栄養失調だろうから。保護してからは【アクア】の水しか口にしてない。さすがにポーションでは、栄養失調は治せないし、ましてこの世界に点滴というものがない。かと言って、無理矢理起こすのは出来ない。自分から目を覚ますように……。
「あっ、 天岩戸(あまのいわと) だ。」
「「「天岩戸?」」」
天岩戸に引き篭もった 天照大御神(アマテラス) を外に出すために、八百万の神が 岩戸(いわと) の前で宴を開いて興味を引き、天照大御神が外を覗いたところを引きずり出した伝説。
「……で、眠っている女の子達が、楽しそうな雰囲気に触発されて目覚めないかなーと。題して、『天岩戸作戦』です。」
私の説明に、お父様もグレイもエドも考えている。
「でも、その話のように上手くいくか?」
「エド、やってみる価値はあるんじゃない?このまま何も出来ずに待っているより。」
「まあ、確かに……。」
「では、やってみるか。ジョアン、用意を頼めるかい?」
「はい。」
私はストレージから、敷物やクッション、ミニテーブルを出し、侍女とグレイに手伝って貰いながらセッティングをする。ミニテーブルの上に、お菓子や料理、紅茶セットを並べる。お菓子は、パウンドケーキ、リップルパイ。料理は、唐揚げ、カレー&ナン、ジャイアントスネークの鰻もどき丼。
「ジョアン、お連れしたぞ。」
お父様にお願いして、トニー君とゲータさんも呼んで来てもらった。2人は並べられた見たこともない料理に目を奪われている。
「声が出なくても、お腹は空きますよね?女の子達が目覚めるように、良い匂いの食べ物を準備しました。宜しければ一緒に食べませんか?」
そう2人に言うと、うんうんと頷く。
お父様がトニー君達にエド達を紹介し、グレイと侍女以外が敷物の上に座る。私がお菓子や料理を説明している間に、グレイがリップルティーを淹れてくれて、侍女が給仕をしてくれた。
「では、どうぞ。」
お父様が率先してパウンドケーキに手を伸ばし、食べ始める。それを見て、他の人達も思い思いに食べ始めた。
「美味っ!やっぱり、ジョアンの作るものは美味いな。」
「まあ、エドはいつもこんなに美味しいものを頂いているの?ズルいわ。」
唐揚げを頬張るエドに、ちょっと拗ねたように言うレルータ伯爵夫人は、エルフ族と言うこともあり年齢よりも若く見える。そんなレルータ伯爵夫人が頬を膨らませながら、話すのはとても可愛らしい。
一方、トニー君は最初に口にした唐揚げが美味しかったのか、満面の笑みだった。しっぽも左右に揺れている。料理の感想を言おうと口をパクパクするが、やはり声は出なくて悔しそうな顔をしていた。私が、美味しいか確認すると、首が取れるんじゃないかと言うぐらいに頷いてくれた。
虎耳の美少年の笑顔、プライスレス。
ゲータさんは、カレーと鰻もどき丼に夢中だった。やはり獣人で護衛職もあってか、どんどん並べた料理が減っていく。私は、ストレージから追加でサンドウィッチや惣菜パンを取り出した。それも、エドとゲータさんのお腹にどんどん消えていく。
凄っ……。まだ食べるんだ。
エドのあの細マッチョのどこに入っていくんだろ?