作品タイトル不明
309.卒業ダンスパーティー
とうとう今日は卒業式。
卒業生は卒業ダンスパーティーの後、一切の猶予なく、翌日から初仕事となる。自由なのは、卒業ダンスパーティーまで。
今日の私達のドレスは、4人で色違いにした。
エレーナ先輩は、コバルトブルー。クロエ先輩は、オレンジがかった朱色。ベルは、レモンイエロー。私は、白と黒のモノトーン。
ドレスのデザインは私とグッドマン夫人。
騎士科に入って、私達はあちこちにアザや刀キズがある。だから、首元や腕は極力肌が出ないようにデザインした。
Aラインドレス、ラウンドネックに七分袖。スカート部分は太腿の所から左側だけスリットが入っている。光沢のある生地で作ったドレス全体をレースで覆っているが、首元から腕の部分、スリット部分はレースだけ。いわゆる、チラリズムを狙ってみた。
このデザイン画を見た、夫人は商売人としての目が光っていた。きっと、今後チラリズム旋風が起こるだろう。
まあ、私としてはデザイン料がいくらか入るので、有難い話だけど。
卒業式ダンスパーティーは、夕方から始まるという事で、王都のランペイル邸で湯浴みから着付け、化粧まで行う。
パーティーで軽食が出るというが、食べる時間があるかわからないため、エイブさんが一口サイズのサンドウィッチを準備してくれていた。
屋敷から学院までは、ランペイル家の家紋が入った馬車で移動。学院に着くと、いつもとは違って、バッチリ決めたブライアン先生達が待っていてくれた。
「おー、4人とも綺麗だな。こう見ると、ちゃんとしたレディーだな。」
「こう見なくても、レディーですけど?」
「ブライアン先生、酷いです!」
「奥さんにあることないこと、言ってあげましょうか?」
「あーあ、可愛い子供達にも嫌われちゃうかもなぁ。」
エレーナ先輩、クロエ先輩、私とベルに反論され固まるブライアン先生。
「すまなかった!……ところで、ジョアンとベルの言い方だと俺の家族を知っているように聞こえるが?」
「えっ?知ってますよ?」
「はい。可愛いですよね〜。キキにララちゃん。」
「な、なんで……。」
「先生ー、ウチが何処か忘れました?」
「……ランペイル家。」
「知らないはずないじゃないですかー。お父様の元部下ですし。」
「クッククク。さすがだな、ランペイル家。」
「でしょー?ヘクタール先生も早く結婚したら良いのに〜。彼女さん、待ってますよ。……パン屋で。」
「……マジか。」
先生達をイジりながら、会場に向かう。
*****
会場に入ると、各学科の卒業生とその同伴者が、ホールの中央で踊ったり、テーブルで軽食を食べたり、ドリンクを飲みながら会話を楽しんでいた。
女性陣の色とりどりのドレスで、会場は花が咲いたように見える。
「ってことで、宜しくな〜。」
ブライアン先生とヘクタール先生は、軽く言い私達の側から離れて行った。教師陣は、卒業生が羽目を外さないように監視と、来賓客の接待があるらしい。
「んー、どうする?エレーナ。」
「どうする?って、こちらから誘うわけにもいかないでしょ?普通の夜会とは違うんだから。」
私とベルは夜会に行ったことがないが、エレーナ先輩の話によると、夜会では男女関係なく婚約者のいない者達は誘い合い、ダンスをしながら会話をするそうだ。でも、今日の主役は卒業生。私達は、脇役でしかない。
そんな話を4人でしていると、先程立ち去ったヘクタール先生が何人かの騎士科の生徒を連れて戻って来た。
「おっ、良かった。まだ、ここにいたんだな。まずは、コイツらと踊ったら良い。」
ヘクタール先生が言うコイツらとは、ヴィーとノア先輩、カズール先輩、あともう1人は名前は知らない。
「一応、卒業生のトップ4を連れてきた。誰と踊ったら良いか、わからねーだろうからな。まあ、取り敢えず卒業時の成績順に女子を選んだら良いんじゃねーか?えーっと、首席は……カズールだったか?」
「はい。俺です。」
後で聞いたところ、試験ではずっと首席を死守してきたヴィーは、僅差でカズール先輩に負けたらしい。
カズール先輩と踊れたら、顔から火を吹く自信がある……。変な子だと思われたくないから、踊りたいけど踊れない。
何て俯きながら考えていると、カズール先輩は相手を決めたようだ。
「ジョアン嬢、俺と踊って頂けませんか?」
私の前で、片手を出されて誘って貰えた。
「なっ!お、おいカズール、話が違ーー」
「さっ、行こうか。ジョアン嬢。」
「えっ!?あっ!はい……。」
ヴィーが何か言いかけていたが、全て聞く前にカズール先輩にエスコートされてホールに降り立つ。
「あ、あの……私、ダンス苦手で……。ご迷惑をお掛けするかも知れない……です。」
「大丈夫、大丈夫。俺も、得意ではないから。それに、今日の靴は爪先が強化されているから、踏んでも大丈夫だよ。」
「あは、はは……なるべく踏まないように頑張ります。」
カズール先輩は、得意ではないと言いながらも、リードが上手かった。最初は緊張していたが、優しく話しかけてくれて、緊張がほぐれていった。
「ジョアンちゃん、上手いよ。」
「いやいや、先輩のリードが上手だからですよ。……あの、でも、何で私を?」
踊りながらも気になっていた事を聞いてみた。
「ん〜、何でって……。誰と踊るかは決めてなかったんだけど、俺が前に出たらジョアンちゃんは俯いて、周りの子がジョアンちゃんを見ていたから?」
「えっ?皆んな、私を見てたんですか?」
「やっぱり、気づいてなかったんだ。でも、見てるって言っても、微笑みながらね。」
エレーナ先輩達には、私がカズール先輩を気になっていることは、去年から知られていた。食堂で、カズール先輩と会って話している顔が、恋する乙女だと……。