作品タイトル不明
302.護衛
季節は巡り、秋。
芸術の秋、読書の秋、スポーツの秋、行楽の秋……など、秋と結びつく言葉はたくさんあるよね。でも私は、もちろん食欲の秋、一択!
「「「ん〜美味しい〜。」」」
入寮してから何度目かわからない、女子会。今日のお菓子は、旬の食材を使って、リップルパイと甘露芋チーズケーキ。
あれから毎月1度、週末に王都のランペイル邸でお祖母様による特訓を受けている。だからなのか、4人はとっても絆が深まった。
「はぁ〜、相変わらずジョアンのスイーツは美味しいわ。この前、実家にお土産として渡されたシュークリーム。あれ、お父様が独り占めしたのよ。その後、お母様が怒って家の中が凍ったわ。物理的にね。」
エレーナ先輩のお父さん、ドミニク・ディーゼル伯爵。私のお父様の魔物討伐団の時の元団長。スキンヘッドで身体の大きい人だったはず。見た目によらず甘党だったんだ……。そして、お母さんのレティ小母様はお母様の魔術師団の時の元師団長。物理的に凍るって……さすがです。
「私の家は、弟と妹達が喧嘩始めちゃって、大変だったわ。しょうがないから、私に貰ったクッキーもあげる羽目になったのよ。」
クロエ先輩のお家は、酪農家で4世代13人の大家族。クロエ先輩の上にお兄さんが2人、下に弟1人、妹2人らしい。それに姪っ子が1人いるそうだ。
一応、シュークリームを25個渡したんだけど、足りなかったか〜。
「でも、喜んでもらえたみたいで良かったです。それに、お礼に頂いた紅茶とチーズ、嬉しかったです。今回、早速使わせて貰いました。」
エレーナ先輩のお家から、紅茶を。クロエ先輩のお家からは色々な乳製品を貰ったから、今、飲んでいるリップルティーとチーズケーキは、2人からのお土産を使わせてもらった。
「ウチのチーズがこんなに美味しいケーキになるなんて……。また、弟達にズルいって怒られるわ。兄達は喜ぶだろうけど。」
クロエ先輩のお兄さんたちは、酪農家をしながら乳製品も作っているらしい。
「クロエ先輩、羨ましいですよ〜。美味しい乳製品が食べ放題なんて。」
「えー、そう?でも、飽きるわよ?あっ、もし良かったら、今度我が家に遊びに来る?」
「えっ?良いんですか?行きたいです!」
「あっ、私も行きたいです!」
私とベルが身を乗り出して言う。
「あっ、でも2人とも貴族令嬢でウチに泊まらせるのは失礼になるんじゃ……。」
「「大丈夫です!」」
「えっ、あっ、そう?じゃあ、ウチに連絡しておくわ。」
「「やったー!!」」
「でも、本当に周りに何にもないわよ?ド田舎だからね?」
「「楽しみです!!」」
遠方ということもあり、冬季休みにクロエ先輩のご実家に行くことが決定した。もちろん、私もベルも自分の両親から許可は貰った。
でも、その際にお互いの父親から「2人で行くと、何かやらかすんじゃないか心配だ。」と言われたのには、納得がいかない。
*****
待ちに待った冬季休み。
「うわーっ。景色最高ー!白銀の世界だ。」
「うん、寒いけど、綺麗だね〜。」
私とベルが、目の前の景色に感動していると、御者のおじさんから話しかけられる。
「おっ、なんだ。嬢ちゃん2人は、ノルデン領は初めてかい?」
「「はい。初めてです。」」
「そうかい。今は、雪ばかりだが、秋の紅葉の見頃には観光に来る貴族様も多いんだぜ。まぁ、そんな貴族様達はこんな乗合馬車になんか乗らねーけどな。あっははは。」
「あっははは、違いねー。」
「「……。」」
そんな乗合馬車に乗っている、貴族令嬢がここに2人もいますけど?何か?
念願のクロエ先輩のご実家があるノルデン領に行くのに、お父様からは馬車を出すと言われたけど、丁重に断り、ベルと共に乗合馬車に乗っている。しかも、客としてではなく護衛として。ただ乗合馬車に乗るよりも、護衛としてお金を稼ぎながら行こうと言うことになり、冒険者ギルドで依頼を受けた。
当日、乗合馬車の乗車場に行くと、御者のおじさんは私たちを見るなり、ハズレを引いたと言わんばかりにガッカリした顔をする。
「嬢ちゃん達と犬が護衛……。本当に大丈夫なのか?」
「おいおい、逆にこっちが守ってやらねーといけないんじゃねーか?」
「「「あっははは。」」」
先に乗り込んでいた乗車客が、ヤジを飛ばす。
まあ、そう言われるとは思ってたけどね〜。
「申し訳ないが、念のためギルドプレートを見せてくれないか?」
御者のおじさんは、ヤジを飛ばす乗車客達を宥めながら私達にギルドプレートの提示を求めた。それに応じて、首元からギルドプレートを出す。
「えっ!?ランクB?しかも……ランペイル。こっちは、バースト……。」
「「えっ!?」」
御者のおじさんと先程までヤジを飛ばしていた乗車客は、態度を一変して平謝りに謝まった。
乗車客は、ヤジを飛ばしていた青年2人と行商人のおじさん1人、おばあさんと孫らしき男の子と女の子、20代後半の綺麗な女性。
王都からノルデン領までは2泊3日かかる。
私達の腕が発揮されたのは、2日目の夕方だった。もう少しで2泊目となる経由地の街に入る手前、ゴブリンの群れが襲って来た。
「6ゴブかぁ〜。ベル、お願いできる?私はあっちを……。」
「了解〜。行ってくるね〜。」
ベルが馬車から飛び降りてゴブリンと対峙している頃、馬車に忍び寄る男達がいた。
「はい、皆んな下がって!」
馬車の後方からは逃げられない。とりあえず御者台の方へ皆んなを押しやる。皆んなは、不思議そうにしているが一応指示に従ってくれる。
移動してすぐにバッと馬車の幌が開けられる。
「おっ、いいのもいるじゃねえか。おい、全員金目のもんを出せ!女と子どもはこっちに来い。」
馬車を覗いたのは、ナタを持った頬に傷がある男。その後ろにさらに数人いるのが分かる。野盗だ。
勇敢にも2人の青年が前へ出るが
「男には用がねーんだよ!」
と、ナタで切り付けられそうになるところを、パールの《水弾》が野盗を弾き飛ばした。
「ここは、私達に任せて下さい。私が出たら幌を下げて絶対に外には出ないで。」
御者のおじさんも中に入れて、私はそう言うと馬車から飛び降りた。
馬車の外には、ナタを持った男以外に3人。それぞれナイフや剣を所持している。
私は、男達を見ながらディメンションルームにいるロッソとメテオを呼び出す。ストレージと同じようにディメンションルームにいる契約獣は、ストレージを展開しなくても呼び出せるようになっていた。
ベルの方も片付いたようで、こちらに向かって走って来ているのが気配でわかる。
「みんな、早期解決!」
『『『了解。』』』