作品タイトル不明
226.私兵団との鍛練
「今日は、宜しくお願いします。」
「お、お、お願いします。」
いつも通り忍者風の演習着を着た私と、冒険者ギルドの依頼を受ける時に着ているらしい服を着たベルが、私兵団の鍛練に参加のため朝から演習場に来ている。演習場の隅にあるベンチには、ゾーイさんとサラ、そしてパールとその上に乗ったロッソが見ている。
ゾーイさんも参加するかと思っていたのに、今回はメイドとして来ているからとやんわり断られた。
「ジョアンちゃん、本当に参加するの?女の子には、なかなか厳しいと思うよ?」
ガンさんが聞いてくる。その周りでは他の私兵団jr.が頷いていた。
「大丈夫です。あ、それから私の親友のベルです。」
「よ、宜しくお願い……します。」
「人見知りだけど、ちゃんとバースト領で冒険者ギルドも登録してるから。」
「へぇ〜、それは凄いな。ジョアンちゃんも登録したんだよな?今、ランク何?」
今日の指導者として既にJr.を卒業して、正団員になったナットさんが聞く。
「入学前に昇格試験をパスしたので、ランクDですよ。」
「「「「「はーーーっ!?Dーー!?」」」」」
「マジか……。俺と同じ……。」
オミさんが呟く。
「「「「あっははは。」」」」
「あっ、ちなみにベルもバーストギルドのDですよ。」
「えっ!?バーストギルドっていやあ、ランペイルギルドの次に実力者が多い所だろ?」
マーティンさんが言う。
「こんなに可愛らしい子なのに……。」
リュージスさんが呟くのを聞いて、ベルは真っ赤になってしまった。
ベル、可愛いーー!!
真っ赤っかだわ。
「まっ、実力はありそうだから、同じ内容でいいみたいだな。よし、じゃあまずはウォーミングアップとして演習場を15周。終わった者から腕立て伏せ150回、足上げ腹筋150回を3セット、素振り左右100。」
「「「「「「はい!」」」」」」
ペースの乱れもなく走っていると、並走したマーティンさんから
「あれ?そう言えばジーンは?」
「ジーン兄様はエリック様と冒険者ギルドに行きましたよ。私たちは午後から行くんですけど。」
「は?アイツら……誘ってくれたら良いのに。俺だって鍛練よりも依頼受けたい!」
「で、ちなみにノエルは?」
ガンさんから聞かれて
「ノエル兄様は、寝てます。」
「は?アイツにしては珍しい。風邪でも引いたか?」
「ただの二日酔いですよ。カクテル飲み過ぎたみたいで。」
「はー!?マジか。ったく、生徒会の仕事が立て続いたの無理してやるから。」
「無理したんですか?ノエル兄様。」
「ああ、ジョアンちゃんが学院行って初めての週末だから、一緒に帰りたいって言ってたからな。疲れが溜まっていたところに、酒が回ったんじゃないかな?」
そうだったんだ……。
からみ酒なんて言ってゴメン、ノエル兄様。
あとで二日酔いに効く【アクア】のお水持って行ってあげなきゃ。
何なくウォーミングアップをJr.メンバーとこなしたジョアンとベルを、皆んなは褒めてくれた。何でも今年は、入団希望者がことごとく不合格だったために、入団試験の内容ーーなんと、今やったウォーミングアップを時間内に終了させることだったらしいーーを変更するか考査中だったらしい。でも私たちがこなせた事で変更はなくなりそうだと、ナットさんが話していた。
ウォーミングアップの後は、2人組になっての打ち合いを5分、インターバル1分で、他の人と打ち合いを5分を繰り返す。私を含めて6人で総当りの打ち合いだ。
まずは、ベルと。
お互いに最初は遠慮もあって模擬刀を軽く当てる程度にしていると、ナットからそれでは意味がないと指摘をされる。それからは、真剣に打ち合い5分たったところで2人は額にうっすらと汗をかいた。次々と5分ずつ入れ替わり、あっという間に最後の打ち合いとなる。
私の最後の相手はマーティンさん。
「ジョアンちゃん、よく持ち堪えてるね。疲れたでしょ。」
「人によって戦い方が違うから、最初は防ぐだけでいっぱいいっぱい。」
「あははは、確かにね。身長差もあるからね。」
「うん。でも、良い経験になるね。今回は皆んな同じ模擬刀だけど、実際は扱う武器違うでしょ?何でそれを使わないの?」
「あー、確かに慣れた武器の方が扱い易いけど、もしそれが何かの拍子で使えなくなったりしたら、近くにある棒とかで戦わないといけないだろ?それを見越してなんだよ。だから、もし打ち合いの練習中に模擬刀を落としたりしたら、隙が生まれるからその隙をどうカバーするかが大切なんだよ。」
「あー、なるほど。戦い中に臨機応変に対応出来るかなんですね。」
「そうそう。そういう事。……じゃあ、ラストいきますか。本気で来ていいよ。」
「本当に?」
「もちろん。俺、これでも騎士科のAクラスだから。」
4年生からの専攻科目では、学力ではなく実力順のクラス分けになる。魔術科は魔力量と魔術の精度。騎士科は戦闘能力など武力順。文官科はその中でも商人を目指す商人コース、執事やメイドを目指す侍従・侍女コースなど色々と分けられているらしくてよくわからない。
ちなみに、ノエル兄様は魔術科の8-A、ジーン兄様、エリック様、マーティンさんは同じ騎士科の6-Aだそうだ。
「じゃあ、遠慮なくいかせてもらいますね。」
「おう。」
「はっ!」
気合い入れの掛け声と共に、マーティンに向かって走り込み斬りつけるが、あっさりと流される。体勢を立て直し、再度打ち込むがやっぱり流される。
今度は左側から横に斬りつけるが、マーティンは後方にジャンプして下がりかわされる。クソッと思いながら体勢を立て直そうとしたところを下から切り上げられて、ジョアンの模擬刀が跳ね飛ばされる。
「っ!!……まだまだー!」
そう言って、丸腰のままマーティンに向かって走っていく。