作品タイトル不明
185.神のペガサス
お腹がいっぱいになってホッとしたのか、商人のお嬢様はメイドにもたれかかり寝息をたてている。
「あらら、寝ちゃったね。」
「はい。お嬢様もホッとして気が抜けたんだと思います。……本当にありがとうございました。ルーさん達も、ありがとうございました。」
「いや、俺らは結局捕まってしまって……危ない目にあわせてしまって本当にごめん。」
「ごめんなさい。」
メイドさんに、謝るルーとデニス。
「いえ、とんでもないです。森は危ないと言ってくれたのに、無理に行きたいと言ったのはこちらですし……。」
「あの〜ちなみに、どうして森に行きたいと言ったの?」
「はあ、なんでもお嬢様が旦那様とお客様が話していた、ペガサスを見たかったようで……。」
「「「「「ペガサス!?」」」」」
「ええ、そのお客様も冒険者の方から聞いたそうなんですけど、ランペイルの森の近くにペガサスがいると。しかも、小さな女の子を乗せてくれるんだとかで……。それと、王都で貴族様の結婚式でペガサスの馬車がランペイル領の方に飛んで行ったこともあって。きっと乗れば幸せになれると。それで、旦那様がランペイル領に買い付けに行くと聞いたお嬢様が一緒に行くと。そこでペガサスに乗るんだと言いまして……申し訳ありません。こんな理由で。」
「ジョー?」「ジョア〜ン?」「「ジョアンちゃ〜ん?」」「「ジョアン様〜?」」
全員からジト目で見られる。
「えーっと、その女の子って私です。」
「えっ?」
「ペガサスは私の契約獣です。4年前ぐらいにダイヤウルフの討伐があった時に、他所の冒険者たちがいっぱいいたからその時だと思います。それと、王都の結婚式はウチの身内の結婚式ですね。」
「じゃあ、本当にペガサスはいるんですか?」
「はい。いまーー」
「今、外にいるぞ。」
「ジーン兄様、スノーちゃんで来たの?」
「いや。ゼクスできたんだけどジョーのこと心配でついて来た。
「あっ、なるほど……。ということで、乗れますよ?」
「ほ、本当でございますか?お嬢様、お嬢様ー!」
「ん〜、何?もう朝?」
「違いますよ。ペガサスです。ペ・ガ・サ・ス。」
「ペガサス!いたの?どこ?」
「えーっと、私の契約獣なんです。」
「えっ!?冒険者さんの。」
「はい。良かったら、街まで乗って行きます?」
「はい!!乗りたいです。」
マックさんたちに依頼の完了のサインをもらって、街へ戻る前にふと気になったことを聞く。
「さっき、2人ともペガサスのこと聞いて驚きませんでしたよね?」
それどころか、兄様たちと一緒にジト目で見てたわ……。
「いや、だってなぁ〜。ランペイル領ではペガサスのことは有名ですよ。昔からよく飛んでたでしょう?」
「あっ……。」
「それに、最近はこっちの犬のことも。」
「えっ、パールのことまで?」
「そりゃあ、大きくなれる犬なんて他にいないでしょうよ。それに乗ってるのがジョアン様だし。」
「そうですよ〜。ジョアン様なら大きくなる犬も乗るよってみんな言ってますよ。」
「あははは……。」
理解のある領民の皆様で何より……。
外へ出ると、スノーを撫でている女の子と撫でやすく頭を下げているスノーがいた。
ーースノーちゃん、ありがとう。
ーーいいのよ。パールから話は聞いたわ。街まで行けば良いのね?
ーーうん。お願いね。パールもありがとう。
ーーいいよ〜。
「そろそろ行きますか?あっ、でも、この人数だとどうしよう?」
「んじゃあ、ジョーはその子とスノーに。えっと、メイドさんが俺とゼクスに。マーティンは、そっちのデニスだっけ?で、ルー?はパールでいいんじゃね?」
「あっ、申し訳ありません。名前も名乗らずに、こちらはアリーシャお嬢様で、私はジヤと申します。」
「改めて、私はジョアン。よろしくね、アリーシャちゃん。」
「はい。ジョアンお姉ちゃん。」
「じゃあ、ジーン兄様。ジョウ商会で。」
「了解。」
ーーパール、ルーをお願いね。
ーーりょ〜か〜い。
スノーは 常歩(なみあし) から翼を広げてフワリと飛ぶ。マックさんの家の上を、ゆっくりと旋回する。下ではジーン兄様たちだけじゃなく、マックさんや周りの甘露芋農家の皆んなが私達を見つけると手を振ってくれる。
「キャ〜、飛んでる。私、飛んでるわ。」
「大丈夫?怖くない?」
「うん。すごい、お空飛ぶのってこんなに気持ちいいんだね。」
「ほら、アレが街だよ。」
「うわぁ〜、上から見るとこんな感じなんだ。」
街の上まで来ると、皆んな上を見る。でも、驚いているのはきっと他の所から来た観光客や商人の人で、領民たちは和やかな笑顔で眺めている。
マックさんが、言ってたこと本当だったんだ……。
さすがに街の中で下りることは出来ないので、ちょっと離れた所まで移動して下りる。ジョウ商会に向かっていると恰幅のいい男性から声がかかる。
「アリーシャ!?」
「あっ、お父様。私、ペガサスに乗ったのよ。」
「やっぱり、お前かと思って追いかけて来たんだ。……えっと、こちらは?それにジヤは?」
「冒険者のジョアンお姉ちゃん。このペガサスは、ジョアンお姉ちゃんのなんだって。」
恰幅の良い男性は、アリーシャちゃんのお父さんのダッシャーさんだった。王都でお茶問屋を営んでいて、ランペイル領には紅茶を買い付けに来たらしい。
私は、待ち合わせとしているジョウ商会に誘導しながら、アリーシャちゃんと出会った経緯をダッシャーさんに話した。
「な、なんとゴブリンに。それは、本当にありがとうございました。それに、神のペガサスまで乗せてもらえるとは……。」
「神のペガサス?」
「はい。だいぶ前の話ですが、王都の結婚式でペガサスの馬車に乗った方は、幸せな結婚生活を送れると。神のペガサスの加護を頂けると噂がありまして。」
「あははは……マジですか……。」
実は…と、結婚式は身内ので披露宴の為に、移動するのに便利だったからと事実を伝える。
「わっはははは。そうでしたか。そんな経緯が……わっはははは。」
「なんか、すみません。」
「いやいや、アリーシャを乗せて飛んで頂いただけでありがたいです。」
しばらくして、ジーン兄様たちが合流した。
ルーとデニスはダッシャーさんを見ると、走り寄り頭を下げて謝る。でも、ダッシャーさんは一切2人を責めることなく、喜んで依頼完了のサインをしてくれた。それだけでなく報酬増額までしてくれた。