作品タイトル不明
177.事の顛末
私が目を覚ましたのは、翌日だった。いつもの起床時間には遅い、6刻半。
うう〜んと大きく伸びをし、横を見ると仔犬サイズのパールが丸くなって寝ていた。その柔らかな白いモフモフを撫でると
『ふわぁ〜う。あ、ジョアン起きたの。』
「うん、昨日はありがとね、パール。」
トントントン。「ジョアン様、失礼します。」
入って来たのはいつものサラだった。
「どうですか?痛いところとかはないですか?」
「うん。大丈夫。サラは?」
「私も大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
湯浴みをし着替えを済まして、リビングへ向かう。
リビングにはお父様、お祖父様、お祖母様、グレイ、ギルマスがいた。
「おはようございます。」
「ああ、おはよう、ジョアン。体調はどうだい?」
「はい、ゆっくり寝たので大丈夫です。」ぐぅ〜。
「わっははは、お腹が鳴るぐらいなんじゃから大丈夫そうじゃな。」
「ふふふっ、本当ね。」
「えへへへ。」
「お嬢のメンタル強すぎだろ……。にしても、昨日は本当に助かった。ありがとな。」
「あっ、そうだ。あの後、どうなったんです?」
私が意識を失った後、ナンシーをはじめとした我が家の使用人達があの空き家に雪崩込み、犯人グループの4人を捕縛した。その後、私兵団による事情聴取にて、人身売買グループのアジトを吐かせた。その情報を元にアジトへ行ったそうだ。
「で、そのアジトはどこだったんですか?」
「ああ、ランペイル領から王都方面に行く途中の森の中に、今は使っていない木こり小屋があって、そこを占拠していたんだ。」
「まあ、今はもうないんじゃがな……。」
「は?お祖父様、どういうことです?ないって、アジトなんですよね?」
私は意味が分からず、キョロキョロするとナンシーが
「失礼ながら、私がご説明致します。
アジトに向かったのは、リンジー様、トム一家と私、そしてスノーにブラウでございます。アジトでは、運良く冒険者から聞いた人身売買グループ13人全員がおりました。まずはトム、スノー、ブラウによって木こり小屋の四方を土壁で覆いまして、逃げ道を塞ぎました。そして、私とケント、ユーミ、マイクが先陣を切り犯人達を捕縛していきました。全員を捕縛した後、情報を持っていない8人と小屋は、きれいに処分して参りました。」
「「「「………。」」」」
「……えっと、きれいに処分とは?」
「焚き火でございますよ、ジョアン様。ご安心下さい。トムたちの作った土壁で森には一切被害は出ておりませんので。」
「それは、その……まさか、8人も?」
「いえいえ、さすがにそこまで非道ではございません。ただ、反省の為に木にぶら下げて来ただけでございます。ちょっと、ぶら下げる途中でぶつけたり切れたりで、何人か出血をしておりましたので魔獣が来なければ良いのですが……。」
「「「「………。」」」」
火炙りの刑になるか魔獣責めなのかの違いで、どちらもエグいわ……。
そして、ナンシーの非道の定義って何?聞きたいような、聞きたくないような……。
「あ、あの、ところでなぜスノーとブラウが?」
「あの2頭は、ジョアンが危ない目に遭わされたことでかなり怒っていたのよ。なんでも、パールから聞いていたということでね。だから、連れて行ってあげたの。とても賢い子達よね、2頭とも。よーく燃えるように送風してくれるから、短時間で燃えたし、犯人達の血の匂いも遠くまで届くように森の方に向かって風を起こしていたから。」
「あははは……。」
「ジョアンからも、2頭にお礼を言っておいてね。」
「はい……。」
「じゃあ、俺はそろそろ……。」
ギルマスが帰る為に立ち上がると
「モーガン、朝食を食べて行け。朝から報告しに来てくれたんだ、それぐらいはさせてくれ。」
「いや、しかし……。」
「あら?モーガン、好意は素直に受け取るものよ?」
お祖母様に言われては、断れないギルマス。
そろそろ、ダイニングに移動しようとした時、リビングの扉が開いてお母様と双子ちゃんが入って来た。
「「おはよーござーます。」」
「おはよう。フーゴ、ライラ。」
「「「おはよう。」」」
「姉様、頭痛いない?」「姉様、身体痛いない?」
「フーちゃん、ライちゃん、ありがとう。どこも痛くないわ。」
「「良かった〜。ねー?」」
双子ちゃんなりに、心配したらしい。
今朝の朝食は、我が家としては至って普通だった。ミートオムレツ、サラダ、ベーコンとしめじのバター炒めとフレンチトーストのワンプレート。でも、ギルマスにとっては驚くものだったらしい。特にフレンチトーストは口に合ったようで、2回程おかわりをしていた。
そんなギルマスが帰るのを見送り、厩舎へ向かう。
「スノーちゃん、ブラウ。」
『おはよう、ジョアン。どう?大丈夫?』
『おはようございます。お嬢様。』
「昨日は、色々とありがとうね。お祖母様とナンシーから聞いたよ。頑張ってくれたって。本当にありがとう。」
『いいのよ、パールから聞いて私たちも何か出来ないか考えてたら、アジトに行くって言うから連れて行ってもらえるようにお願いしたのよ。』
「そうなんだ。心配かけたね。」
そう言って、スノーちゃんとブラウを撫でる。
*****
確認したいことがあり厨房へ向かう。
「おはよう。」
「「おはよう。ジョアンちゃん。」」
厨房にいたのは、アーサーとアニーだった。
「ジョアンちゃん、体調はどう?」
「うん、ぐっすり寝たから元気だよ。ありがとう。」
「良かった〜。私、昨日は待機組だったから心配で心配で。」
「で、どうしたんだ?」
「あっ、そうそう。タイキさんって次いつ来るか、知ってるかなと思って。」
「ん〜、どうだろ。もしかしたら、グレイさんの方が知っているかも。いつもグレイさんに来る予定教えて貰ってるから。何?何か欲しいモノあるの?」
「うん。餅米と小豆がね〜。」
「「餅米?小豆?」」
「餅米って、普通の米とは違うのか?」
「うん、何て説明したら良いかわからないけど、餅米は蒸して潰すの。そうすると粘り気が出るんだ。」
「あー、だから前に食べた磯部焼きが伸びたのか。なるほどな。」
「じゃあ、グレイに聞いてくるー。」
「あー、行っちゃった……副料理長、小豆って何ですかね?」
「さあ?でも、ジョアンちゃんのことだから美味いんだろうな。」
「ですねー。」