作品タイトル不明
174.初接触
シュン。「はい、到着〜。戻りました〜。」
「おかえり、ジョアン。来たな?モーガン。……まずは座れ。」
「えっ!?スタンリー?……はっ!!リンジー様。ウィル様も。一体何が……。」
「転移して、ギルドから屋敷に連れてきただけだ。それより、ジョアンから聞いた。何故、報告しない!」
「いや、その……報告は証拠を集めてからと思っていて……。申し訳ない。」
「ねぇ〜モーガン?まだ、あなたの立場がわかってないのかしら?報告、連絡、相談は必要よね〜?そうでしょう?」
「は、はい。お、おっしゃる通りで……申し訳ありません。」
モーガンから改めて説明を聞き、全員が苦い顔をする。
恐る恐る手をあげて
「あの……それで、私が囮になろうかとーー」
「それは、ダメだ!ジョアンに何かあったらどうする!!」
お父様が大きな声で言う。
「スタンリー、まずはジョアンの話を聞こうじゃないか。ジョアン、お前の考えを話してごらん。」
「はい、お祖父様。私はちょうど新人ですし、小さい女の子なので置いてけぼりにするにしても、人攫いにしてもちょうど良いと思うんです。だから、囮になってその現場を魔道具で映像に残そうかと……前に、ノエル兄様が使っていたヘアピンの魔道具ありましたよね?それを身につけてギルドに行きます。すると、犯人がやって来て私に声をかける。置き去りにするか、売るのかわかりませんが、映像には残り証拠になります。」
「いや、じゃがそうなるとジョアンはそのまま危ないではないのか?」
「もちろん、私だけでは危ないと思います。ですのでナンシーにお願いしたいのです。」
「私ですか!?」
「うん。ナンシーのスキルの隠密で、私と共に行動して欲しいの。私の力だけではどうにもならない時に手伝って欲しいんです。」
「なるほど、さすれば現行犯としても捕まえられるな。」
「確かに……しかしナンシーだけでは手が足りないでしょうから、あと何人か出しますか?父上。」
「いや、そうなると犯人にバレる恐れがあるじゃろ。パールもおるし、大丈夫じゃろ。」
「確かに……よし!モーガン、それで良いな。」
「ああ、もちろん。でも、本当にお嬢……様を囮にして大丈夫なのか?まだ10才なんだろ?怖いだろうに。」
「あー、その点は大丈夫だ。お前には言っておくが……ジョアンは、前世の記憶持ちだ。」
「は?マジか?」
「はい。前世の記憶持ちで、精神年齢20代。契約獣が3頭いて、スキルが9個。だ・か・ら梨の子って言われても、なーんとも思いませんよ。」
「あはは……確かに普通の属性持ちより、お嬢の方が凄いな。」
「でしょ〜。でも、私みたいなのは例外だとわかってます。だから【無】属性の子に対して、梨の子だって揶揄うなら私が相手になりますからね?」
「相手になるって……ヒィッ。」
脅し程度にモーガンさんの足元にクナイを投げる。
「ね?」
ニコッと笑い首を傾げる。
それに対してモーガンさんは、ブンブンと音がしそうなぐらい首を縦に振っている。
「じゃあ、明日から獲物が食いつくまでギルドで依頼受けますね。あっ、でも初回の依頼は上のランクの人と行かないといけないんですよね?」
「じゃあ、サラと行ったらどうかしら?」
「あっ、確かに。サラ、お願いできる。」
「はい、もちろんです。」
お祖母様の提案を聞き、サラにお願いすると快諾してくれた。
*****
翌日、サラと共にギルドに行き受付の方を見るとリリーさんが、犯人達の存在を視線で知らせてくれる。視線の先にいた冒険者たちは4人。周りを物色しているようだった。
髭面のクマのような大男、目が垂れ目のポッチャリ男、小柄で耳の大きな猿のような男、切長の目でアゴの出ている男。
「あれね、クマとタヌキとサルと……シャクレ。」
「ぷっ……。ど、どうして最後がキツネとかではなく、シャ、シャクレなんですか。」
『えっ?でも、当たってるよ。』
「パールまで……。」
私たちが小声で話していると、サルが近づいて来た。
「あれれ〜、見たことない子だね〜。」
「あっ、こんにちは〜。今日が初めてなんですぅー。」
「あっそうなんだ。だからか〜君たちみたいな可愛い子たち初めて見たからさ〜。もし良かったら、一緒に依頼受けようか?」
「えーっと、今日は薬草の採取に行こうって決めたんで……。」
「そう?でも……痛っ!!なにすんだよ〜。」
「お前こそ、何してんだよ。」
サルの頭を叩いたのは、シャクレだった。
「ごめんね〜。ウチのバカが。嫌なことされてない?」
「うん、大丈夫でーす。あはは、仲良いね〜。」
「まあねぇ〜。コイツとは幼馴染ってやつかな?さっき、採取行くって聞こえたけど、終わったらさ初依頼のお祝いしてあげるよ。まあー、アソコの酒場だけどね。」
「えー!いいのー?」
「いいの、いいの。先輩冒険者だからね。あっ俺、ジャクール。で、コイツがシャル。アソコにいるのが、俺らの仲間でデカいのがベアード、小太りがキヌタ。……じゃあ、4刻ぐらいにね。頑張って〜。」
そう言って、シャクレ……じゃなくて、ジャクールはシャルと残りの2人の元に戻り、ニヤニヤ笑っている。
「ともかく依頼を受けて、ここを出よう。」
薬草の採取の依頼票を持って、受付に並ぶ。ちょうど、リリーさんの所が空いて、依頼の受理をして貰いながらギルマスへの伝言を頼む。内容は、5分後に部屋に行きますと。
ギルドを出て、ジョウ商会の方へ歩いて行く。
「あーやって、人良さげに新人に接触するんだろうねぇ〜。」
「でしょうね。私、あのシャクレ男の値踏みをするような目を、その場で潰したくなりましたよ。それにしても、ジョアン様の初々しい演技素敵でした。」
「ホント?精神年齢バレてない感じだった?」
「はい、いかにも10才の新人冒険者でしたよ。」
「えへへ、良かった。」
ジョウ商会に着き、また2階の住居部から転移する。