作品タイトル不明
幕間:エイブの結婚式
春の季の、ある晴れた日。
今日は、エイブさんとスージーさんの結婚式。
場所は王都の大聖堂。ここは王族の結婚式も挙げることで有名で通常は3年待ちの人気の教会。今の陛下と王妃様が身分差があるにも関わらず、今もなお仲が睦まじいことにあやかる為にこの大聖堂で挙式したい人が多いそうだ。
でもそんな中、王妃様付き侍女と陛下の命を守り貴族となった者の結婚式。しかも王族が参列すると言う事で、あっさりと予約が取れたらしい……。恐るべし、王族パワー。
私はと言うと、フラワーガールをお願いされ白いワンピースに花冠をつけてスタンバイ中。足元にはリングガールとしてパールが私と同じ花のリースを首にかけてちょこんと座っている。
「パ、パール、大丈夫?」
『うん。あたちはだーじょーぶよ。ジョアンは?』
「す、凄い緊張してるよ。」
昔からガヤでうるさかった私は、人前に立って目立つのが苦手なのよねぇ〜。転んだりしないと良いけど……。
「今日はありがとうな、お嬢。パールも。」
「エイブさん!今日はおめでとう。」
『おめでとー。エイブしゃん。』
「ああ、ありがとう。結婚できるのもお嬢のおかげだな。」
「そんなことないよ。2人とも片想いが長かっただけで。」
「でも、きっかけを作ってくれたのはお嬢だ。本当に感謝してる。お礼はどうしたら良い?」
「お礼なんて……あっ、私が学院に入学して王都に行ったら、スージーさんに案内してもらいたいから、その時まで2人で私の好きそうな所探しておいて。」
「そんなんで良いのか?」
「うん。それに、それを口実でデート行けるでしょ。ふふふ。」
「あっははは、さすがお嬢だな。」
新郎のエイブさんとリングガールのパールが、先に神殿の中に入って行き大きな扉の前でスージーさんとスージーさんのお父さんを待つ。
しばらくすると、2人がやって来る。
「ジョアン様、本日は私たちのためにありがとうございます。」
「私はスージーの父、マイケル・フォックス男爵と申します。ジョアン様のことは王妃様とスージーから伺いました。本当にありがとうございます。この子がエイブ殿と結婚できるとは……本当に……うぅ〜。」
「お、お父様、泣かないで下さいまし。」
「スージーさんのお父様、本日はおめでとうございます。私はただ機会を作っただけですし、2人の想いが通じただけですので……。」
「皆様、宜しいでしょうか?」
神殿の人がやって来る。
「「「はい。」」」
扉を開けると、大勢の参列者が座っている。陛下、王妃様、2人の王子、私の家族、侍女トリオの2人、我が家の料理人代表のアーサー、エイブさんの同僚だった魔物討伐団の方、そして新郎新婦の家族。
緊張しながらも、私が花びらを撒きながら先導し祭壇の所のエイブさんの所まで来る。スージーさんがフォックス男爵からエイブさんの腕を取り、式が行われた。
無事に式が終わり、私もパールも大役を果たした。
そこへ王妃様が小声で話す。
「今からブーケトスよ。」
「えっ?こっちでもその習慣あるんですか?」
「いいえ、私が広めた。だって、一生に一度はやりたいじゃない?」
「あ〜そういう事ですか。」
「じゃあ、行きますよ〜。」
スージーさんの掛け声で、独身の女性たちが真剣な眼差しでブーケの行方を見る。ブーケトスを初めて見る男性たちは、その気迫に若干押されていた。
「せーの……。」
スージーさんの投げたブーケが、アーチを描いて落ちて来る。女性達が手を伸ばしキャッチしたのは侍女トリオの1人、セーラさんだった。
「やった〜。きゃっ……。」
喜びのあまり、バランスを崩し倒れる所を近くにいたアーサーが支える。
「大丈夫?」
「あ、ありがとうございます。……やだ、恥ずかしい。これだから相手が見つからないってよく言われるんです。」
「そんな……。あなたのような可愛らしい人が?皆んな目がおかしいんじゃないか?」
「えっ?……あっ、ごめんなさい。」
アーサーに抱きしめられていることに、ようやく気づき身体を離そうとすると足元がおかしい。よく見ると倒れた拍子にヒールが折れていた。
「これじゃあ、歩けないよね?……ちょっと失礼。」
「きゃっ。」
アーサーは、セーラさんをお姫様抱っこしてベンチの所まで移動する。
「「あららら、これは落ちたな。」」
その状況を一部始終見ていた王妃様と私は、偶然にも声が揃う。
「次は、セーラさんかな?」
「そうねぇ〜。……見て、ジョアンちゃん。セーラの目、ハートだわ。」
「ホントだね。……ちなみに、セーラさんの出自は?」
「あの子は城では異例の平民の子よ。私の幼馴染の妹だったから、私付きにお願いしたの。」
「じゃあ、問題なさそうね。」
「ええ、あの子の実家は王都で食堂を営んでいるわ。幼馴染はすでに結婚して跡を継いでいるし。あとは、あの男性がどんな人なのかね。」
「あー、それなら大丈夫。ウチの副料理長よ。」
「あら、そうなの?じゃあ、心配いらないわね。」
「うん。あとは……お若い2人にお任せしましょ?」
「ジョアンちゃん……。あなた、今は6才だからね。その見た目で、お見合いババアみたいなこと言わないで。」
「あっ……忘れてたわ。」
式の後、披露宴はランペイル領でやることになっており、エイブさんとスージーさんはブライダルカーならぬブライダルペガサスに騎乗してランペイルの王都の屋敷へ向かう。
スノーちゃんは 常歩(なみあし) をし、羽を広げる。
「「「「「「「「「「おぉーーーー。」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「おめでとーー!!」」」」」」」」」」
皆んなの歓声を聞きながら、大聖堂の上空を2回ほどゆっくり回りお屋敷の方へ飛んで行った。
ランペイル領での披露宴に参加する、両家の家族、魔物討伐団の代表、侍女トリオからセーラさんは馬車で、お屋敷へ向かいそこから転移扉でランペイル領へ行くことになっている。
陛下や王妃様も行きたかったようだったが、城から宰相様が直々にお迎えにきたので不貞腐れながらも帰って行った。
もちろん抜かりのない王妃様に、後で披露宴の料理を持ってきて欲しいと頼まれた……。それと、侍女トリオの最後の1人ピアさんからセーラさんのことを頼まれた。でも内容は、セーラさんがアーサーと仲を深めるかどうかだった……。
ちなみに、新郎新婦がペガサスで飛んでいるのを見た人々から大聖堂には結婚式をするとペガサスのオプションがあるのかという問い合わせが殺到したのは、この時誰も知らない……。
そして、これを聞いた宰相様にブライダルペガサスを提案した陛下と王妃様はこっぴどく怒られたらしい。