軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

134.王都観光 side ???

俺は、ランペイル辺境伯の王都のお屋敷で従僕として働いている。

元々冒険者だったのだが、ランクが上がらず腐っていた時に従僕の求人を見つけた。ものは試しにと面接に向かったのだが、アレは面接と言って良いのかわからない。質疑応答はものの5分で終わり、その後は冒険者ギルドのランクアップ試験のような実技。相手は、美人なメイドさんだった。俺の前のヤツなんて、鼻の下を伸ばして……瞬殺で気絶させられてた。

俺はなんとか気絶することなく、合格した。

従僕の仕事とは、屋敷の中だけではなかった。それはランペイル家の《影》としての仕事。

今日、久々に旦那様が戻って来られた。今回はお子様と一緒に。早朝にノエル坊ちゃんが白馬で、屋敷に来た時はどこの王子様が来たのかと思った。初めて来られたお嬢様は、とても可愛らしい。

そのお嬢様がジーン坊ちゃんの案内で街を観光すると言うことで、もう1人の従僕と共に《影》として護衛する。

まず、ジーン坊ちゃんの行きつけの串焼き屋。お嬢様が店主に何か渡している。

「なあ、アレ何渡しているんだろうな?」

「さあー?あっ、また追加で渡したぞ。これは、旦那様に報告っと。」

パパッとメモ帳に報告事項を記入した。

そのあとフレッシュフルーツのジュース屋、ジェットブルサンド屋梯子して、雑貨屋、本屋を巡った。報告事項はない。

最後に王都でも、人気のカフェに向かった。

俺達もそれとなく背後の席に座る。

カフェでは、偶然居合わせたジーン坊ちゃんの同級生の男の子とお嬢様ぐらいの女の子と相席されていた。

男の子は、エリック・アダムズ様。女の子は、ベル・バースト様。

こちらもメモをする。これは、きっと後々素行調査の対象だろうな。

ベル様の方は人見知りらしく、話をするのもつまりながら話している。俺だったらイライラするところ、お嬢様はそんな素振りを見せず根気よく話を聞いている。

どうやら、ベル様は趣味が鍛練することらしい。ただ、嗜む程度だろうと思っていたが、先程エリック様への素早いボディブローを見ると、なかなかの手練れのようだ。これも、報告だな。

ただ、鍛練が趣味ということを周りの令嬢達から馬鹿にされているらしい。まあ、わからないでもない。

しかし、お嬢様は馬鹿にすることもなく、自分も鍛練していると。確かに、ランペイル領の屋敷にいる冒険者の頃からの友人マイクから聞いた事があったなと思い出す。

お嬢様は、馬鹿にする奴には『言わせておけばいい』『考え方も何をするかも、人それぞれ…』と言う。

それを聞いて、同じく友人のベンもお嬢様の言葉で救われたって言ってたことを思い出す。

「なあ、お嬢様って規格外のスキルって聞いてたけど、考え方も他の令嬢とは違うな。」

と、相方がいう。

「ああ、だって使用人も私兵団も家族っていうぐらいだからな。……でも、今日見てただけでもいい子だな。」

「ああ、それは同意する。」

その後、先程会ったばかりのベル様と友達になって喜んでいる。ちょっと会話しただけで友人関係になるとは、危機管理が低くないか?

もちろん、これも報告だな。

そして、今日1番驚いたのは……

リップルパイのお代わりを注文していいかと、ジーン坊ちゃんに尋ねた時、夕食が食べられなくなるからとやんわり断られたら、屋敷まで走って帰ると言う。

いやいや、来る時は馬車で気づかなかったかも知れないが、貴族の屋敷があるエリアまで結構な坂を登る。もちろん、ジーン坊ちゃんもその事を指摘するが大丈夫だと言い張って、結局リップルパイをお代わりしていた。

あーあ、きっと実際に走って最後はジーン坊ちゃんが手を引いて帰るのだろうなと予測した。

そしてエリック様とベル様に別れを告げ、マーケットの端まで来ると、本当に走り出した。

「えっ、マジか!?馬車乗り場、すぐ目の前にあるのに?」

と相方も驚いてた。

「まあ、どうせ貴族エリアの前で失速するだろ。」

そう言って、俺達も走り出す。

しかし、お嬢様は一向にスピードが落ちない。夕暮れ時もあって、貴族エリア付近に人通りは少ない。

そこをお嬢様とジーン坊ちゃんが走っている。

時折り、ジーン坊ちゃんがもう少しスピードを落とすように言っているが、お嬢様は生返事でスピードを落とす気配がない。

「ハァハァ……お、おい……本当に6才児……なのか?」

相方が息を切らしながら言うが、俺は頷くしか出来ない。

とうとう、そのスピードのまま屋敷まで帰って来た。

門扉をくぐった所で、ジーン坊ちゃんは息を切らしながらグッタリしている。お嬢様はジーン坊ちゃんに、どこからか水を出して渡してる。

それを確認して、俺たちも裏門から敷地へと入る。入った所にある、水道で頭から水を浴びて顔を上げるとそこにはお嬢様がいた。

俺たちは驚きすぎて、声も出せず目を見開いているとお嬢様は

「今日はお疲れ様でした。はい、どうぞ。」

とタオルとキンキンに冷えた水と飴の様なものを、俺たちにそれぞれ渡して

「あっ、その飴は塩飴なのでちょっとしょっぱいけど、汗かいた時は水分と塩分取らないといけないから、ちゃんと舐めて下さいね。」

と言うと、ニコッと笑い屋敷の中へ入って行った。

「……俺たちのこと気付いてたのか?スキルに気配察知はなかったよな?」

「ああ、たぶん。色んな事が規格外すぎてわからねー。」

話しながら飲んだ水は、冷たくて美味しかった。そして、不思議と疲れが取れた。塩飴も言われた通りほんのりしょっぱかったが、美味しかった。

後々、マイクとベンに聞いたら、お嬢様はナンシーさんとリンジー様に師事しているらしい。

俺の面接官だったナンシーさん、元王妃様付き近衛隊だったリンジー様に鍛えられてるなら、あの異常な体力と気配察知は納得できる。

従僕の仕事は色々あってたいへんだが……冒険者の時よりもこの仕事が、楽しくてしょうがない。

そして、あの規格外なお嬢様がどう育つのか、この目で見ていきたいと思った。