作品タイトル不明
132.王都観光②
そこは大きな川沿いにあるカフェだった。テラス席は水上に設置されていて、いわゆる川床になっていた。
私はリップルパイのクリーム添えに紅茶、ジーン兄様はチーズケーキに紅茶を頼んだ。
「へぇ〜こんなオシャレな所知ってるんですね。デートでよく来るの?」
「ばーーか。違うよ。王都に行くことが決まった時に、グレイが教えてくれたんだよ。ぜひジョアン様を連れて行ってあげて下さいって。なんでもナンシーと良くデートしてた所らしいぞ。」
「えっ!?そうなの?じゃあ帰ったら感想言わなきゃね。」
ジーン兄様と談笑しながらケーキを楽しんでいると、そこへジーン兄様ぐらいの男の子と私ぐらいの女の子が近寄ってきた。
「あれ?やっぱりジーンじゃん。お前、実家に帰ったんじゃねーの?」
「おう、誰かと思ったらエリックじゃん。俺は父上の用事に付いて来ただけ。お前こそどうしたデートか?」
「ああ、俺も似たようなもんだな。母上の社交の付き添い?父上と兄上が領の仕事で行けないから、お前が行けって。んで、デートじゃねーよ。コイツは従姉妹だよ。ジーンこそ、そちらの可愛い女の子は誰なんだよ。」
「ああ、妹だよ。王都が初めてだから案内してたんだ。」
「へぇ〜。あれ?もしかして、料理の上手いあの妹?あっ……初めまして、俺はエリック・アダムズ。ジーンとは同級生で寮では同部屋なんだ。たまに妹ちゃんのお菓子貰って食べてるよ。マジで、美味くて驚いてるよ。妹ちゃん、これからもよろしくね〜。」
ジーン兄様の友達かぁ〜。マーティン以外は初めてね。
赤茶色の髪に、緑の瞳で端正な顔立ちねぇ。口調がチャラいけど、本能的に裏がある人を避けているジーン兄様の友達なら、きっと間違いはないわね。
「初めまして、ジョアン・ランペイルです。えっと…6才です。エリック様、兄がいつもお世話になってます。私のお菓子で良かったら、また作ります。」
「いやいや、ジョアン。お世話なってないし、お菓子は俺の分だけで良いから。」
「えっ!?してるだろ。それに、俺もまた食いたい。あっ…ほら、お前も挨拶。」
「あっ……あの、わ、私……ベル・バースト…です。わ、私も6才……です。」
可愛いーー!!
ねずみの国のプリンセスにいそうな感じねぇ〜。
エリック様と同じで赤茶色の髪に、濃緑の瞳はちょっと吊り目で意思が強そうな感じなのに、緊張して小動物のように震えてるわ。
友達なれるかしら?
「ベル様ですね。同じ6才なので、仲良くしてもらえますか?」
「あっ……はい。よ、よろしく……お、お願い…します。」
「ごめんな。人見知りで、打ち解けると真逆な性格なんだけどな。うっ……。」
「「えっ?」」
あれ?今、かなりのスピードでエリック様にボディブローが入ったけど……。
「大丈夫か?」
「あ、ああ、なんとか。慣れてるから……。」
「……そうか。あっ、良かったら相席するか?」
「お、おう、助かる。ベ、ベル、お前はジョアンちゃんと座れ。俺らで話があるから。なっ。」
「えっ……あっ……ジョ、ジョアン様……と、隣……よ、よろしいですか?」
「はい、もちろんです。あっ、何食べます?さっき、リップルパイ食べたら美味しかったですよ?」
「あっ、じゃ、じゃあ……それで。」
「ジーン兄様、私もお代わりして良いですか?」
「は?夕飯食べれなかったら怒られるぞ?」
「大丈夫です。こっから走って帰れば。」
「マジかよ〜。結構あるし、最後坂登るんだぞ?」
「大丈夫!!」
なんとかリップルパイのお代わりをゲットして、ベル様と食べる。
「ベル様、どうですか?」
「おっ、美味しい……です。」
「良かったです。あの、ベル様って何がご趣味ですか?私は、読書したりお料理したりすることです。」
「……が……です。」
「あっ、ごめんなさい。ちょっと聞こえなくて、もう一度良いですか?」
「鍛練。……鍛練が……好き……です。」
「えっ?本当?」
「あの……やっぱり……変ですよね?」
「何がです?」
「貴族令嬢が武術や体術をするの。」
「えっ?どうして?」
「……よく周りの貴族令嬢から、笑われるから。」
「じゃあ、言わせておけば良いですよ。それに私もやってますよ。鍛練。」
「えっ!?……ほ、本当に。」
「はい。だから、気にしなくて良いんです。考え方も何をするかも、人それぞれじゃないですか。誰が何をやったって良いし、誰かに合わせる必要ないと思いますよ。私は。」
「……人それぞれ。」
「はい。そうです。双子だって考え方は違うと思いますよ?」
「ふふっ……そうですね。私……気にしないようにし……頑張ります。」
「もし、また何か言われたら『気にしない、気にしない、一休み、一休み』って心の中で呟けば良いんですよ。」
「『気にしない、気にしない、一休み、一休み』?」
「はい、言われた事を気にしないでリラックスするって事です。」
某小坊主アニメの名セリフ『あわてない、あわてない、一休み、一休み』をちょっと変えてみたけど、言霊って言うのもあるから、良いわよね?
「……そうですね。なんか気にしないで……リラックス出来そう……です。」
「えへへ、良かったです。……あの、いきなりで申し訳ないんですけど……。」
「……はい。」
「お友達になってくれませんか?」
「えっ?……わ、私と?」
「はい……ダメですか?」
「い、いえ……私で良かったら……お、お願いします。」
「やった〜。貴族のお友達、初めてです。」
「そ、そうなのですか?」
「はい。王都に来たのも今日が初めてで……。だから、ベル様が貴族では初のお友達です。」
「……私なんかで良いのですか?」
「あっ、ダメですよ。自分のことを『〜なんか』なんて言っては、自分で自分の価値を下げたら、自信もなくなるじゃないですか。それに、私はベル様が良いんです。ってことで、私の事はジョアンって呼んで下さいね。」
「……では、私のこともベルとお呼び下さい。」
「うん、ベル。これからよろしくね。」
「……ジョ、ジョアン、これからよろしくお願いします。」
「はーい。あっ、敬語もそのうち、なくなったら嬉しいな〜。」
「は……うん、が、頑張る。」
初めて貴族の友達が出来たわ〜。
ベルともっと仲良くなれたら、一緒に鍛練出来るかしら?楽しみねぇ〜。
その後、しばらくお茶した後エリックとベルと店前で別れ、屋敷へと戻った。もちろん、走って……。