作品タイトル不明
128.現実逃避
私が固まったのを心配したノエル兄様から声を掛けられる。
「ジョ、ジョアン。大丈夫?」
「はっ!?ごめんなさい……現実逃避してました。」
「あー、うん。そうだね。そうなるよね……。」
「えーっと、スノー。君に羽はあるのかい?」
『羽?あっ、コレ?』
お父様の問いに、スノーちゃんは羽を広げた。
どこに収納されているんだろ?全然わからなかったわ。
「お、おう。本当にあるんだな……そっか……そうだよな。サーチに間違いはないよな。うん、そっか。現実なんだな。夢じゃないな。うん、あっ、しまっていいぞ。羽。」
『はーい。ねぇ、ジョアン。お腹空いちゃった。もっとキャロジンある?』
「あっ、うん。あるよ。水もいるよね。イアンにお願いしてくるね。」
『うん。待ってる〜。』
イアンと共に馬房に戻ろうとすると、お父様が厩舎の入り口で待っていた。
「イアン、驚かないで聞いて欲しい。実はーーー」
イアンにもスノーちゃんの進化について話をし、他言無用だと念を押した。
「かしこまりました、旦那様。このイアン、この命に代えても誰にも申しません。」
「宜しく頼む。じゃあ、スノーが待っているから戻るか。」
「スノーちゃん、持って来たよ。」
『ありがとう、ジョアン。イアン。あっ、イアンとは初めて話すよね?これから、宜しくお願いします。』
「お、おおー本当に喋ってるっすね。嬉しいっす!馬の声なんて聞けないと思っていたから……。」
『えへへ、でも先輩たちもみんなイアンとアダムに感謝してるよ。入厩した時に、2人には迷惑かけるなって言われたから。』
「「「「えっ!?」」」」
「スノーちゃんの先輩って?」
『えっ、先輩は先輩だよ。アイン先輩、ツヴァイ先輩、ドライ先輩とか、全員。』
「あいつたちが俺らのこと、そんな風に……うぅーー。良かった、良かったっす。馬場担当で良かったっすよ。」
「お、おう。良かったな。……スノー、良ければイアンとアダムの為に、馬と人間の間に入ってくれるか?」
『うん、もちろんだよ。パパさん。先輩達も色々話したいみたいだから。ねっ?先輩。』
スノーちゃんが他の馬達に声を掛けると、他の馬達は気まずそうに顔を背ける。
でも、どこか嬉しそう。……知らんけど。
「良かったな、イアン。あとで、アダムにも私の所に来るように言ってくれ。」
「かしこまりました。」
「まずは、執務室に戻ろう。色々と考えることが……。」
「はい。じゃあ、スノーちゃんまたね。」
『うん。バイバーイ。』
*****
執務室には、私とお父様、ノエル兄様、ジーン兄様、グレイ、ナンシー、エイブさん、エルさんが集まった。
お父様は、スノーちゃんのことを一通り皆んなに説明した。
「「「「「………。」」」」」
あっ、みんな固まっちゃった……。
まぁ、しょうがないよねぇ〜。馬が進化するなんて聞いたことないものねぇ〜。
「あのさ、ペガサスって伝説の生き物なんじゃねーの?実際にいるなんて、ありえるの?」
ジーン兄様がお父様に聞く。
「確かに、伝説上の生き物だが……実際にうちの厩舎にいる。」
「なんというか、ジョアン様らしいと言うか……。」
「まあ、お嬢だからな。」
「ええ、さすがジョアン様です。」
「えっ!?ちょ、ちょっと私なの?私のせい?」
グレイ、エイブさん、私のせいにしてるー。違うでしょ?そして、ナンシー、何がさすがなのー?
「そりゃあ、どう考えてもジョーでしょ?スキル重複って書いてたんだから。」
ノエル兄様に至極真っ当な事を言われて、何も言えなくなる。
「はぁ〜、さすがにここまで来ると。アイツに連絡しないといけないかなぁ〜。」
「旦那様、諦めましょう。あちらの予定確認して参ります。」
「あっ、ついでにジュリーにも連絡を。後日報告などしたら文句を言いかねない。」
「確かに…。かしこまりました。」
そう言って、グレイは執務室を出て行った。
アイツ?誰かしら?
ノエル兄様とジーン兄様も首を傾げているわね。でも、エイブさんとエルさん、ナンシーは苦笑しているから、昔の知り合いかしら?
「アイツとは、元魔獣討伐団の方ですか?」
「ん?ん〜、まあ、討伐団にも少し在籍はしていたな。まあ、私の幼馴染?学院の同級生だな。」
「そうなのですね。」
「ともかくスノーのことは、緘口令を敷く。皆んなにもそう伝えてくれ。」
「「「かしこまりました。」」」
「ノエル、ジーン、ジョアンもそのつもりでいてくれ。」
「「「はい。」」」
「あっ、そうだ。ジョー、ズルいぞ!兄上だけ転移しただろ?それにスノーとも喋って。俺もやりたい!」
「あー。じゃあ、スノーちゃんの所行きます?」
「行く、行く!!」
「あっ、ジョアン。僕も行きたい。さっきはいきなりだったから。」
「あはは、そうでした。じゃあ、ノエル兄様も行きますか。じゃあ、お父様失礼します。」
「「失礼します。」」
「じゃあ、行きますよ。厩舎へ【テレポート】。」
シュン…。
「お嬢も慣れたもんだな。転移に。」
「いや、でもアレは便利でしたよ。転移も驚きましたが、まさか騎乗したまま転移できるなんて……。すごいですね、転移って。」
「ああー、エル?一般的には騎乗したまま転移はできないらしいぞ。」
「えっ!?じゃあ、あれは……。」
「たぶん、また ジ(・) ョ(・) ア(・) ン(・) な(・) ら(・) ってやつじゃないか?」
「ぶっ、あっはははー。お嬢らしいな。」
「さすがジョアン様ですわ。」
「はぁ〜。モグモグ……色々とやってくれるよ。ホントに。モグモグ…。」
「旦那も、ドライフルーツが手放せねーな。」
「コレを……モグ……食べると、本当に……モグモグ……疲れが取れる…モグ。」
「ですが、旦那様。食べながら話すのはいかがなもんでしょう?」
「……すまん。」
エイブとエルはナンシーに怒られるスタンリーを苦笑しながら見ていた。