作品タイトル不明
125.クリムゾンウッズ
「お世話になりました。」
「「お世話になりました。」」
ノエル兄様の言葉に、ジーン兄様と声を揃えて挨拶をする。
「気をつけて帰るんじゃよ。」
「また、いつでも遊びに来てね。」
「「「はい。」」」
お祖父様、お祖母様、使用人や私兵団の皆んなに別れを告げて、いざランペイル領へ。
今回は来た時のメンバーに加えて、なんと白馬のスノーちゃんが一緒。
元々、私の為にスノーちゃんを調教していたらしく帰りに連れて帰る予定だったらしい。これで家に帰っても練習出来る。お兄様達ばかり愛馬がいて、羨ましかったから本当に嬉しい。
往路と同じで途中の街で一泊をし、後は難所の《クリムゾンウッズ》と言う森を抜けるだけ。秋になると紅葉で燃えるような紅の森になるから、そんな名前らしい。鬱蒼とした森は昼間でもちょっと薄暗い。いかにも魔獣出そう……。なんて考えたのがフラグだったのか、ただ今魔獣に囲まれている……。
ジーン兄様曰く、ワーウルフ。1匹ならDランクの魔獣らしいが、群れだとCランク。そして目の前には、10匹……Cランク。でも、Sランカーのナンシーと私兵団がいるので、あっという間に片付いた。
ダイとキラが倒したワーウルフの素材を回収しているところへ、ワーウルフの血の匂いを嗅ぎつけてウォーグウルフの群れがやってきてしまった。1匹ならBランク、群れなら数によるけどAランク以上。しかも、毒牙を持っている。
ナンシー、ダイ、キラだけでは分が悪い。でも残っているのは、ノエル兄様とジーン兄様、ネイサン、アニーと私だけ……。どうしよう……。あっ。
「ノエル兄様、私が転移で助けを呼んでくる。」
「いや、距離があるよ。ここで転移して、下手に近くに転移してしまったら危ない。たぶんクリムゾンウッズを抜けないと屋敷までは転移出来ない。」
「じゃ、じゃあスノーちゃんに乗ってクリムゾンウッズを抜けて転移ーー」
「そんな危ないことジョーにさせられない!それなら俺が行く!!」
「ジーン兄様……でも、転移でもしないと間に合わなくなる!!お願い、行かせて!!」
「……わかった。でも絶対無理はするな!いいな。」
「じゃあ、僕とジーンの魔術で隙を作るから。ジーン、僕は火槍、おまえは風刃でウォーグウルフの動きを止めるよ。」
「わかった。」
「じゃあ、ジョー気をつけて。」
そう言ってノエル兄様は私をハグする。その上からジーン兄様もハグをする。
「頼むぞ。でも、無理はするな。」
「はい、兄様達もご無事で。」
ウォーグウルフのいない方の扉を開けて、スノーちゃんの手綱を持つ。
「スノーちゃん、森を抜ける所まで全速力でお願い。皆んなを助けたいの。」
「ブルゥ。」
「よし!じゃあ行くぞ。」
「はい。」
「《火槍》」
「《風刃》」
ウォーグウルフが兄様達の攻撃に怯んだ瞬間に駆け出す。
「うおっ。」
今までで1番の速さに驚く。
ウォーグウルフの1匹が、それに気付きスノーちゃんを追いかける。
「お願い、スノーちゃん。頑張って!」
クリムゾンウッズの出口まであと少しの所で、スノーちゃんがウォーグウルフに臀端部を噛みつかれた。それでも、スノーちゃんは走るのを止めない。ストレージから胡椒を取り出してなんとか蓋を開け、ウォーグウルフに投げつける。胡椒はウォーグウルフに命中し、胡椒によって噛み続けることが出来ず落下する。
なんとかウォーグウルフを振り切りクリムゾンウッズを出る。
「(アシストちゃーん。スノーちゃんも一緒に転移出来る?
A:騎乗してれば馬も含めて1人の換算です)。
よし、行くよスノー。屋敷へ【テレポート】」シュン…。
門扉の前に転移した。
そこには、ちょうど街のパトロールに出ようとした、エルさん、ウーサさん、アッシムさん、エリーさん、ナットさん、マーティンさんがいた。
「「「「「「うわっ。」」」」」」
「ハァハァ……お願い……助けて。」
「ジョアン様!?どうした!?エリー、水を。」
エリーさんから水筒を渡され
「ゴクッ……。クリムゾンウッズでウォーグウルフに襲われてて、私だけ助けを呼びに来たの。」
「「「何!?」」」
「おい、ナット。旦那様に報告。」
エルさんがナットさんに指示を出しながら、何かの魔道具を出して機動させる。それは音花火のような物でパンパーンッと鳴り、他の私兵団へ魔獣が出たと言う合図だった。
ナットさんが屋敷に駆け出す。
「クリムゾンウッズの入り口近くまで2人ずつ転移させるから、馬乗って。」
「わかった。ちょっと待って。」
エルさんとウーサさん、アッシムさん、エリーさん、マーティンさんが馬場に向かって走って行った。
「スノーちゃん、大丈ーー。スノーちゃん?」
さっきまで頑張って走ってくれたスノーちゃんを確認しようと、後ろを向くとそこには呼吸を荒くした横たわるスノーちゃんがいた。私はウォーグウルフには毒牙があるのを思い出した。
「【ファーストエイド】【ファーストエイド】。どうしよう。スノーちゃん、スノーちゃん。あっ、そうだ。【アクア】スノーちゃん、飲んでお願いだから。毒に効く水だから!スノー!!」
私の叫びに、スノーちゃんがなんとか出された水を飲む。念のため、噛みつかれた傷跡にも【アクア】の水を掛ける。
呼吸が安定してきたスノーが 眩(まばゆ) く光りだす。
「えっ!?えっ!?何?スノーちゃん?」
「ジョアン?どうした?何があった。」
私が驚いてオロオロしている所へ、お父様がグレイ、ナットさんと共にやって来る。
「わからない。スノーちゃんに【ファーストエイド】と【アクア】の水飲ませたら光った……。っていうか、まず助けに行かないと。」
「お、おう。そうだな。」
そこへ馬を連れたエルさん達が戻ってきた。合図を聞いた他の団員たちもいる。
「スノーちゃん、ちょっと待っててね。まずはお父様とグレイで良い?」
「ああ、いいぞ。」
「行きます【テレポート】」シュン…。シュン…。
「次、行きます【テレポート】」シュン…。シュン…。
テレポートを何度か繰り返して、私だけ屋敷に戻ってきた。
そこには光っていない、スノーちゃんがいた。
「ハァ、ハァ…。よ、良かった……無事だった…スノーちゃん。ハァ、ハァ……本当に良かっ……。」
『ジョアン!?』
その言葉を最後に、私は意識を失いその場で倒れた。
さすがに連チャンで転移しすぎたわね……。
誰かに呼ばれた気がするけど……。周りには誰もいなかったから気のせいね。