軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

121.どうしてこうなった?

「お嬢さん、クラーケン獲って来たぞ。」

ファンタズモの私兵団の団長ジムさんが、それはとてもとても良い笑顔で言った。

遅かった……。

どうしてそうなった?

昨夜、お祖父様たちと話しててロッテンマイヤーさんが『そろそろ、こちらの私兵団もそうなるかと』って言ってた…。それを聞いて、ダイさんとキラさんにクレームを言うつもりが……えっ、未来予知?エスパーなの?

バッとロッテンマイヤーの方を見ると俯いて肩が震えている。その横ではジーンとザック、サラが苦笑い。

ロッテンマイヤーさん……バイブ機能搭載?

「えっとーー、なぜに?」

ジムさんに聞く。

「いや、ダイとキラに聞いたら魔獣を狩ってくるとお嬢さんが美味く料理してくれるって聞いて。」

何〜!?やっちまったなぁーー。

誤情報を言った犯人はどこだ!!

ダイとキラを探すと、私兵団の皆んなの後ろに大きな身体を小さくしている。

いたーーっ!!しかも、隠れてる。頭にきたから驚かしてやる。

(キラの背後、キラの背後…【テレポート】)

シュン…。

「「「あっ。」」」

「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」

ジーン兄様、ザック、サラは、コイツやりやがったと思い、初めて転移を見た私兵団メンバーは、いきなり目の前で私が消えたことに驚いた。

ダイさんとキラさんの背後に転移をすると、すぐにしゃがみ込み回転し足払いをする。

「「うわーーーっ。」」

2人が背後に気配を感じた時には、既に倒された後だった。何が起こったのかわからず、目の前に青い空が広がっているだけ。そこに影がかかる。2人を見下ろしているのは、足払いをかけた。黒い笑顔で、正座しろと指示をする。

「ねぇ〜、ダイにキラ。もう、さん付けなくて良いわよね?何、勝手な事言ってるわけ?誰が料理するって?……ランペイル領でも、たまに魔獣の肉を差し入れてくれるわよね?私は知らなかったけど、アレって肉の為にわざわざ狩りに行ってるみたいね?何、考えてんの?討伐が必要ならまだしも、肉を食べたいが為に危険を顧みず狩りに行く?馬鹿じゃないの?怪我したり、下手したら死ぬこともあるのに。……そんな理由で、皆んなに何かあったら私は嫌だ。」

「すみません。ジョアン様。」

「俺もすみません。怪我とか、あまり考えてませんでした。」

ダイとキラが謝る。

「大人なんだから、もう少し考えろー!!馬鹿ダイ、馬鹿キラ!!」

シュン…。

「ジョアンちゃん……泣いてたな。」

キラが呟き、ダイが頷く。

未だ正座のままの2人に近づくジーン達。

「ホント馬鹿だよ。ジョーは私兵団が傷ついてまで食材を求めてないのわからなかった?誰より使用人や私兵団の身体を気遣っているのに…。私兵団で料理を教えたり、料理を振る舞っているのは何の為だよ。酷い食事だと怪我しやすくなったり、疲労回復しないからだって言ってただろ?」

「「あっ…。」」

ダイとキラはジョアンが私兵団で料理する経緯を思い出し、顔色が悪くなる。

「それにジョアンがあんな性格だから忘れてるかも知れないけど、あなた達の妹でも使用人でもないんですよ?領主様のご令嬢ですよ?それを勝手に食材獲ってきて、料理しろ?間違っていませんか?」

ザックが冷静に言う。

「しかも、ジョアン様を泣かせましたよね?覚悟はあるんですよね?」

サラが追い討ちをかける。

「「も、申し訳ありません。」」

パンパンパン。

手を叩く音が聞こえた方を見ると、そこには先程までいなかったリンジーがいた。その両脇にはロッテンマイヤーとナンシー。その後ろには、挙動不審になっているテリーとドリー。

「ジーンもザックもサラも、そこまでにしなさいね。

さぁ、テリーとドリーはクラーケンを受け取って厨房へ。

………さあ、私兵団は私達と訓練しましょうね。準備してくるから、先に演習場に行っててくれるかしら?

間違っても……逃げるんじゃねーぞ!!」

「「「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」」」

「あーあ、自業自得だな。」

リンジー達が去っていくのを見ながら、ジーンが呟く。

「俺…あの3人とは対峙したくない。」

とザック。

「ええ、同感です。1番敵にまわしたくないお三方ですもの…。」

サラの言葉にジーンもザックも、うんうんと頷く。

【火】属性で元王妃様付き近衛隊、愛用のレイピアに炎を纏わせて戦うリンジー。

【水】属性で、女性ながら元魔獣討伐団の隊長、ランペイルギルドのSランカー、双剣の使い手のナンシー。

【雷】属性で、実は元王妃様付き近衛隊でリンジーの部下だった。片手剣と鞭の両刀使いだが接近戦以外では使用せず、雷槍での遠方攻撃を得意とするロッテンマイヤー。

この3人と戦うなんて、どう考えても勝てる気がしない。3人は私兵団を憐れみながら、ジョアンを探すために屋敷の中に戻った。

*****

一方、そんなことが起こっているとは知らないノエルとネイサンは、屋敷のリビングで学院の課題に取り組んでいた。

シュン…。

「「うわっ。」」

いきなり私が現れ、ノエル兄様とネイサンは驚く。

「うーー、ノエル兄様ーー。」

ノエル兄様に抱きつく。

前世の記憶持ちということもあり、普段、自分から甘えることはない。にも拘わらず、こうして抱きつきよく見ると泣いている。

「ど、どうしたの?ジョー。どこか痛いの?」

ノエル兄様が優しく聞くが、私は首を横に振るばかり。どうしたら良いかわからず、ともかく優しく頭を撫でる。対面に座っていたネイサンも隣に来て、背中をリズムよく叩く。

その内、泣き疲れノエル兄様に抱っこされたまま小さく寝息を立てた。

「……寝ちゃった。ジョーに何があったんだろ?」

「俺、ちょっと確認してくるわ。あと何か掛けるもの持って来る。」

そう言ってネイサンはリビングを出て行く。

ノエルは、ジョアンが寝やすいように3人掛けのソファーの方へ移動し、寝かせようと試みるがジョアンがノエルの服を掴んで離さない。自分だけではどうする事も出来ず、諦めてそのままジョアンごと仰向けになる。

その状態で、自分の上にいるジョアンの頭を撫でる。

「はぁ〜。ホント、どうしてこうなった?」