軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪役令嬢にざまぁされたくないので、準備を始めましょう⑤

「次は、アグリオとラムファ嬢でいいかなぁ?」

「うん。ありがとう。お願いします!」

アグリオ様は、公爵家の次男だ。燃えるような赤い髪を一つに結び、金の瞳を持つ、一番派手な攻略キャラだった。

確か、面倒見の良いお兄ちゃんキャラだった気がする。チャラ男だと思ってやったら、ギャップ系かぁ! って、思った記憶がある。

ラムファ様は、小柄で儚げなご令嬢で、物静かな方である。声も小さいからなのか、ほとんど聞いたことがない。

だから、さっきジャスミンちゃんをかばっていた姿が、ちょっと意外だった。

「あのふたりは、兄妹みたいな感じかな。とは言っても、アグリオが一方的にラムファ嬢を妹扱いしてるだけなんだけどねぇ」

「妹扱いって……。ラムファ様って、一学年上でしょう?」

「そうだけど、ラムファ嬢は病弱で、昔から体が小さかったから、みんな、年下だって勘違いしてたんだよねぇ。本人も否定しなかったしさぁ」

「何で否定しなかったの?」

「人見知りで、しゃべれなかったんだよぉ。話しかけても、頷くか、首振るかって感じだったし。今は、ずいぶん話すようになったけどねぇ。相変わらず、人見知りみたいだけど」

それで、ほとんど話しているのを聞いたことがなかったのかな。単に声が小さいだけじゃなかったのかぁ……。

「ラムファ様は、妹扱いされることをどう思ってるの? やっぱり、嫌がってる?」

「いや。それはないみたいだけどね。ずっと昔からだし、気にしてるの見たことないかな。関係性は良好だしねぇ。ラムファ嬢は、婚約破棄を望んでるけどね」

「そりゃ、他の女の人を追いかけ回す相手と結婚なんて、嫌でしょ」

浮気野郎なんて、普通に考えて嫌だ。

それとも、他に好きな人でもいるのかな……。

「ラムファ嬢の病気の薬って、他国から仕入れてるんだけどね、伝手が必要なんだぁ。それに、驚くほどに高価でね、薬代の一部を公爵家が負担してるんだよ。婚約破棄したら、きっと今のように薬を手に入れることはできなくなる」

「…………え」

「だから、アグリオは婚約破棄を絶対にするつもりはないと思うよぉ。恋愛感情はなくても、ラムファ嬢のことを大切に思っているからねぇ」

「じゃあ、何でラムファ様は……」

薬が手に入らなくなるかもしれないのに、婚約破棄がしたいの? やっぱり、望まない結婚が嫌だから?

黙ってしまった私に、レフィトは小さく笑う。

「何でだろうねぇ。ラムファ嬢の気持ちを聞いたことはないけど、分からなくもないよねぇ。もし、アグリオのことが好きなんだとしたらさぁ」

そう……だよね。好きな相手に、好きな人がいるのって、つらいよね。それも、間近で見続けるのはさ……。

それに、自分が負担になってるんじゃないかって、思っちゃうのかも……。

「憎くもなるよねぇ」

「はい!?」

「だって、そうでしょ? 気持ちには気付いてくれない。たとえ気付いてくれても、他の人が好きだから、答えてはもらえない。そのくせ、自分の人生を犠牲にしてまで助けてくれようとする。それって、地獄だよねぇ」

うん? 今のどこに地獄があったの?

確かに、片思いで隣に居続けるのは、つらい。

でも、憎むことかな? アグリオ、いい人だと思うけど……。

「ずっと、手に入らないのに、そばに居続けるんだよ? 他の女を追いかけてるのを見てさぁ。離れたい、婚約破棄したいと言っても、聞き入れてもらえない。好きな男の手によって、生かされてるのに、心は殺されるようなもんだよねぇ」

レフィトのいう言葉の意味は、分かるようで分からない。

でも、確かに好きなんだとしたら、婚約を続けることはつらいだろう。

アグリオの重荷になっていると思うかもしれない。

自由になって欲しいと望むかもしれない。

婚約破棄をしたいと願うかもしれない。

好きだからこそ、自分から解放したいと──。

「あのふたりには、ふたりにしか分からない何かがあって、オレもあまり把握できてないんだよねぇ。だから、今のはあくまでも想像の話。想像でしか話せなくて、ごめんねぇ」

「そんなことないよ! 私の知らないことばっかりだし、すっごく助かってる。ありがとう」

レフィトはへにゃりと笑い、少し照れたように、繋いでいる手を何回かニギニギとした。

「もっと、情報集めるねぇ」

「もう、十分過ぎるくらいだよ」

「ううん。持っている情報で勝負の明暗をわけることも多いから。たくさん集めるのは、大事なんだよぉ。それに、情報は鮮度が大事だからねぇ」

確かに、情報って随時更新されていく。嘘も本当もあって、取捨選択も必要になる。それを見極めるのには、やはり信頼できる情報と量が必要で……。上手く見極められなければ、情報に踊らされてしまう。

レフィトがいなかったら、確実にざまぁされる未来が待っていた気がする。

「いつも頼りにしてます」

深々と頭を下げれば、すぐにレフィトに頭を上げさせられた。

「もっともっと頼ってねぇ」

「ごめ……」

いや、謝るのは違うな。

「ありがとう」

「どういたしましてぇ」

情報を集めるのは、私にはできない。

レフィトって、剣もすごいし、情報収集もできる。情報戦も得意……に見える。

努力で培ってきたものだと思う。でも、潜在能力も高かったんじゃないかな。

この世界で一番チートなの、レフィトかもしれない。

チートでスパダリって、最強なんじゃ……。

「いつかオレなしでは生きられなくなってくれたら、嬉しいなぁ」

「……え?」

「オレは、カミレがいなきゃ生きていく意味ないからさぁ。カミレにもそうなって欲しいなぁ」

ヤ、ヤンデレ降臨しちゃった?

琥珀色の瞳が私を捕らえて、離さない。

「アグリオとラムファ嬢については、もう大丈夫かなぁ? 平気なら、ログロスとカナ嬢について話そうかぁ」

レフィトの瞳から目が離せないまま、頷いた。