軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

貸しのつもりが、何故こんなことになったのでしょうか?②

ログロスがこのままだと留年するから勉強を教えろと来るようになったという変化があった学園生活。

実は、その前から変わり始めていたことがある。

「カミレさん、ごきげんよう」

「ご、ごきげんよう……」

廊下をレフィトと歩いていれば声をかけられ、「ごきげんよう」と言うことに慣れず、ちょっと戸惑う。

「今日もレフィト様と仲良しですわね」

「えっ? あ、はい。おかげさまで……」

以前であれば避けられるか、無反応、はたまた冷たい視線を向けられるという三択だったんだけどな……。

去っていくご令嬢の後ろ姿を見送りつつ、ため息がこぼれる。

「いちいち、返事しなくていいんだよぉ?」

「でも、無視するわけにもいかないでしょ」

「あいつらは、カミレが困ってても声一つかけてくれなかったのに?」

「…………そうだけど、だからといって……ね」

建国祭で私が『勝利の女神の会』の方々に声をかけられていたと学園で噂になり、それから一人二人と挨拶程度ではあるけれど声をかけられるようになった。

今ではマリアン派閥に属していない人たちからはまるで何もなかったかのように接してくる。

「見事なまでの手のひら返し……。ま、人生こんなこともあるかぁ……」

思わず 呟(つぶや) けば、レフィトは一瞬だけ眉間にしわをよせる。

「あるかぁ……じゃないってぇ。怒っていいところだよぉ?」

顔は笑っているのに、レフィトの琥珀色の瞳が鋭くなる。番犬モード発動だ。

「私が怒る前にレフィトが怒ってくれるから、のんきに静観していられるだけだよ。いつもありがとね」

「カミレは優しすぎるよ」

「そんなことないよ。私は、私の大切な人たちが信じてくれるから。その他大勢は気にならないってだけ」

そう言うと、レフィトはじっと私を見る。

「大切な人の一番って、オレ……だよね?」

期待するような瞳に、頬がゆるむ。

レフィトの犬耳としっぽの幻覚も健在だ。

「もちろんだよ。レフィトがいてくれるから、気にしないでいられるんだよ」

「うん。オレもカミレさえいてくれればいいからね!」

ぶんぶんとしっぽが嬉しそうに揺れている。

言葉では、私だけと言っているけれど、レフィトの世界は確実に広がっていて、これからも広がり続けていくのだろう。

「ねぇ、レフィト。ラムファ様を最近お見かけしないんだけど、もしかして体調が悪いの?」

「んーん。サボりだってぇ」

「サボり⁉」

建国祭で見た時は具合が悪そうだったから、心配してたけど良かった……。

でもサボりって、大人しくて真面目なイメージのラムファ様と結びつかないんだよなぁ。

「アグリオが 鬱陶(うっとう) しいからって、三学期に入ってからは数えるほどしか学園には来てないよぉ」

「そうなの?」

「うん。ま、王家が介入したし、婚約解消にはなるんじゃないかなぁ?」

「王家が介入かぁ」

大事(おおごと) になってるんだ……。

そりゃそうか、公爵家と侯爵家の婚約だもんね。

「リカルドのことだし、自分が王位継承に有利になるよう進めるだろうねぇ」

「……え? リカルド様が進めてるの? 国王様じゃなくて?」

「 国王(おっさん) は、本当にまずい時しか出てこないよ。息子たちがどうするのか、試してる時期だし」

「な、なるほど……」

つまり、十四歳の少年の一言でラムファ様とアグリオの未来が決まるってこと?

何それ、怖すぎるんだけど。

「問題は、マリアンがどう絡んでくるかじゃないかな。アグリオのためとか言って レオンハルト(王子) にお願いしたら、王子も動くだろうしね」

知らないところで、いろいろと動いてるんだ……。

「そんなことより、春休みに入ったら修道院に行こうか。前に行きたいって言ってたでしょぉ?」

「いいの⁉」

「もちろんだよ。話し通しておくねぇ。オレは入れないから、ネイエ嬢でも誘う?」

「……え、レフィト入れないの?」

「成人男性は入ることを禁じられているからね」

その言葉に「修道院は女性の逃げ場だよぉ」とレフィトが話していたことを思い出す。

修道院には神に仕える修道女がいて、基本的には自給自足の生活だ。皆が自分のことは自分でやり、そこで暮らす子どもの世話をする。

そこにごくまれだが、貴族の女性もやって来ることがあるのだ。

家族やその他から守られる代わりに、それまでの生活を捨てることさえできれば、誰も手出しはできない独自の場所。

王家ですら、易々と手出しはできない。

「だから、オレは送り迎えだけ」

「……自分で行くから平気だよ?」

「駄目だよ。カミレと一緒にいられる時間が減っちゃうでしょぉ?」

急に甘えたような口調で言われる。

うっ……、断れない…………。

「ありがとう」

「どういたしましてぇ。カミレ一人だと心配だし、ネイエ嬢に声かけるんでいいかなぁ?」

「あ、アザレアちゃんも誘っていいかな?」

「んー、ゼンダが嫌がらない?」

たしかに! 以前、ゼンダ様はアザレアちゃんに修道院に入るって言われてたもんなぁ。

「駄目でもいいから、声だけかけようかな」

自分だけ誘われないって、嫌なもんだしさ。

次の日、ネイエ様とアザレアちゃんを誘えば、二つ返事でOKしてくれた。

ゼンダ様は顔色を悪くしてたけど、アザレアちゃんはまったく気づかないのであった。