軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

冬の村でのあれこれ

村でまったりしていると、エルダードワーフのドノバンが新しい酒を持ってきた。

それは 真っ黒な(ブラック) ワイン。

実際は濃い赤なんだけど、真っ黒に見える。

「渋みが強いが、悪くはないと思う」

そうだな。

悪くない。

ただ、これだけで飲むのはちょっと厳しいと思う。

なにかしらの 肴(さかな) がほしい。

ほら、一緒に試飲している酒スライムもそう言ってる。

普通の赤ワインを飲むときと同じく、肉系がいいんじゃないかな。

鬼人族メイドが、小さく切ったスモークビーフ……あ、兎の肉ね。

スモークラビットを持ってきてくれたので、ありがたくいただく。

うん、なにかと一緒に飲むならいいな。

「ふむ。

これは外部への販売用として生産したのだが、扱えるだろうか?」

五村で売ることになるだろうけど、エルダードワーフ産だとどれだけ高値をつけても、味も見ずに買い占められる。

こちらとしては助かるが、作り手としては不満があるらしく、ヨウコに頼んで酒造専門の店を作ってもらい、そこに密かに酒を卸している。

当然、エルダードワーフ産だとは表示しない。

まあ、ゴロウン商会とかにはバレているんだけど……一応、こちらの意図を理解して遠慮した購入数にしてくれている。

それゆえ、客に見つからずに数年、店の倉庫で 埃(ほこり) を被ることもあるわけで。

ドノバンが心配するのは、そういった場合の負担。

味のわかる者に買ってほしいと店まで作らせたのに、売れないのはちょっと……となるらしい。

でも、その心配は不要。

熱心な酒好きが多く常連になっているらしいので、不良在庫になることはないだろう。

それに、この味なら酒肉ニーズとかで扱えるしな。

「そうか。

では、今後の生産計画に組み込む。

大樽三つ分をビンに詰めて村で飲めるように。

残りを五村に運ぶよう手配する」

大樽三つ分?

そんなに村で飲む必要があるか?

酒がこれだけなら、それぐらい村で飲むだろうけど、ほかの酒も山のようにある。

「あー、ルー殿やフローラ殿から、そう頼まれた。

血のような黒さが気に入ったようだ」

なるほど。

承知した。

たぶんだが、ルーとフローラはドノバンたちが管理する酒の保管倉庫に忍び込み、この酒を知ったのだろう。

二人にはあとで注意しておかないとと考える俺の横で、酒スライムはドノバンに真っ黒なワインのお代わりを要求していた。

氷の魔物、アイス。

彼は夏場で大活躍だったが、実は冬場でも大活躍。

その秘密は、彼は冷凍だけでなく解凍もできるから。

夏や秋に収穫した傷みやすい食材は冷凍保存され、それを即座に解凍できる氷の魔物は鬼人族メイドたちや子供たちから引っ張りダコだった。

妖精女王なんか、凍った果物を持ってアイスを追いかけまわしたこともある。

また、五村での食品輸送にも冷凍と解凍は需要が多く、協力してほしいとよく呼ばれている。

迷惑ではないだろうか?

「いえ、求められるということに喜びを感じています。

こんなに充実した日々は初めてのような気がします」

そ、そうか。

それならいいんだが、無理は駄目だぞ。

「もちろんです。

のんびりとやらせてもらっています。

あ、村の南側に氷の迷路を作る話ですが……」

聞いているよ。

子供たちも楽しみにしている。

「今回は文官娘衆さんたちに手伝ってもらって、謎解きを追加する予定です。

ライメイレンさまたちの作る雪山には負けませんよ」

そっちも人気だからなぁ。

でも、やりすぎないように。

「安全対策は万全にします」

よろしく。

俺の前に奇妙な道具が置かれた。

大きさは……自動販売機ぐらい?

実際、取り出し口があるので自動販売機と言っても支障はないだろう。

これを制作したのはヤーたち山エルフ。

取り出し口からなにが出てくるのかなと思ったら、まずはそこにコップをセット?

そして山エルフが道具のスイッチを押すと……

力強い機械音がして、コップにジュースが注がれた!

「どうぞ、 搾(しぼ) りたてです」

ヤーがコップを取りだし、俺の前に置く。

おおっ!

ジュース自販機か!

「さすがに自動販売機能はありませんが……

こちらに果物をセットし、スイッチを押すとジュースになります」

すごいぞ!

「欠点は、一回使うと清掃が必要なことでしょうか」

ヤーが道具のカバーを外すと、内部に果汁や皮が飛び散っていた。

……

俺の前に置かれたコップのジュースだが、飲んで大丈夫か?

「大丈夫です。

ちゃんと清掃しています」

そ、それならいいが……

内部の搾る仕組みは、よくできていると思う。

搾る果実の大きさが違っても大丈夫なようにしているのは高評価だ。

まあ、ちょっと大掛かりなのが気になるところだが。

「あらゆる果実に対応しようとすると、こうなりまして」

わかるわかる。

それで、コップには皮などが入っていないことから、最後に布で 濾(こ) しているんだな。

「はい。

長い濾し布を用意して、スライドして使うようにしているのですが……

ほかの部分を毎回洗う必要があるので、スライドする意味がなくなっています」

なるほど。

まだまだ改良が必要だな。

「はい。

頑張ります」

……

あー、ハクレン。

手で搾ってジュースを作らないように。

今じゃなくていいだろう。

山エルフたちが落ち込むじゃないか。

ハウリン村から数人、やってきた。

ガットのところで鍛冶をするためだろう。

万能船や飛行船で移動が楽になり、また多くの素材を運べるので、冬場はハウリン村で鍛冶を行なわず、大樹の村で鍛冶をする者が増えた。

ハウリン村で作られる鍛冶製品の多くを大樹の村が買ったり、販売を代行したりしているので、大樹の村で作業するほうがいろいろと便利らしい。

こっちも細かい注文をするからな。

来てくれるのは助かるので、俺は滞在許可を出す。

ガットの作業場の近くには、ハウリン村から来る鍛冶師のための簡易な宿泊施設も建てられている。

簡易ではなく、ちゃんとした宿泊施設をと提案したのだが、そうなるとハウリン村に帰りたくなくなるからと断られた。

あと、金をかけるなら宿泊施設よりも鍛冶施設にと。

なるほどと思いつつも、大雪対策はしっかりとさせてもらう。

ここって、油断すると冗談じゃないほど積もるからな。

「この道に敷かれている石畳は、ガルフの息子が作ったものか?

なかなか綺麗に加工しているな」

「加工のクセから、そうだと思うが……

雪が石畳に積もっておらん。

どうなっておるのだ?」

それは石畳の裏に、ルーが描いた魔法陣を刻んでいるからだ。

ガルフの息子が泣きながら頑張った。

ちなみに、魔法陣の効果は雪を感知すると熱を与えること。

動力らしきものはない。

魔法陣だけで効果を発揮する優れものだ。

「石畳の裏に刻んでいる?

え?

ここの石、すべてに?」

大通りだけだがな。

そのガルフの息子は、ルーからさらなるむちゃぶりが来ると予想し、同じ図柄を効率的に刻む方法の研究をしている。

「そうそう、村長。

ルーさまに伝言をお願いしたいのですが」

ん?

ルーがなにか頼んでいたのか?

「いえいえ。

そうではなく、鉱山 咳(せき) に関してです」

鉱山咳。

発病したら鉱山から遠ざけないと死ぬと言われる病だ。

鉱山の採掘で鉱物を得ることを収入の基本としているハウリン村では、その鉱山咳に悩んでいたがルーが治療や予防を行なっていた。

「鉱山咳はここ数年、誰も発病していません。

ハウリン村一同、改めてルーさまに感謝をと」

そうか。

それなら俺が伝言するより、直接言ったほうがルーが喜ぶだろう。

ルーを呼んでこよう。

「いえ。

ルーさまは研究で忙しいと聞いております。

直接はお暇なときでかまいません。

それに、その、まだ……」

ん?

ルーに贈る感謝の品を作ろうとしているが、まだ完成していないらしい。

「あと少しで完成なのですが」

ちらりと見せてもらったが、調合道具のようだ。

無理はしないようにな。

「ありがとうございます」