軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

出店計画の裏側

我は九尾狐のヨウコ。

五村の村長代行である。

……

ん?

幼い姿にはならないのかと?

十日に一度はあの姿になるとの約束はどうなったと?

知らぬ!

なんだその約束は!

捏造(ねつぞう) するでない!

……

約束しておらぬよな?

酒の勢いという可能性も、わずかに……

いや、書類仕事が多く、錯乱したため口走ったか……

捏造?

捏造か。

よかった。

あ、いや、違う。

こっちを不安にさせるような嘘はやめいっ!

気を取り直し、今日の 予定(スケジュール) だが……

洋菓子店の 試験開業(プレオープン) への参加だったな。

ふむ。

洋菓子店フェアリーフェアリ。

これまでクロトユキと青銅茶屋でしか頼めなかったケーキを新たに取り扱う店。

村長の協力と五村の資本で出店を決めてからは早かったが、苦労も多かった。

まず、出店に至る経緯だが……

ケーキが食べたいのに、クロトユキと青銅茶屋は常に満席でなかなか食べられないとの五村住人の声が高まった。

そういった個人の店のことは五村の行政で取り扱う話ではないのだが、クロトユキも青銅茶屋も村長の店だからな。

取り扱う。

そして、五村住人の声に加え、魔王国の貴族階級からの要望もあった。

平民が手に入れられるのに貴族が手にできんのは、権威の失墜に繋がるそうだ。

それぐらいで失墜する権威など捨ててしまえとは思うが、そのような権威でもなければないで治世が荒れる。

まあ、誰も彼もが力を持っているわけではないからの。

ただ、貴族なら自前で作れと言ってやりたいが、味を再現できないらしい。

そうだな、あれらはあの妖精女王すら認める至高の味。

そう簡単には再現できんか。

そういった味を、並べば口にできるこの村が変なのであろうな。

ともかく、世の中は物分かりのいい貴族ばかりではない。

金を持っている 阿呆(あほう) な貴族が本気になると、店が開店する前に関係者を並べてクロトユキと青銅茶屋を独占してくる。

幸いにして、五村には多くの貴族関係者……元貴族や、貴族の親や祖父母などが滞在しているので、そういったことにはなっておらんが……

いつそうなってもおかしくはない状況。

これに関しては、魔王に警告を出してもらうこともできん。

それをすると、逆に興味のない者に興味を持たせることになるからの。

なんとかせねばと議会で話し合い、解決案としてケーキの持ち帰り専門店を作ることになった。

もちろん、一店舗では焼け石に水をかける行為。

それは誰もがわかっている。

なので、十店舗ほど展開する。

しかし、いきなり多数の店舗を出店するのは 賭け事(ギャンブル) すぎる。

従業員も足りない。

とりあえずは一つの店舗を試験的に出店し、経営状況の判断と従業員の教育も兼ねることにした。

その大事な一店舗目をどこに作るかの話になるのだが……

クロトユキや青銅茶屋に近い場所にするか?

いや、あのあたりはすでに発展していて、まとまった場所は確保できない。

上部も無理。

中腹も無理。

空いている場所となると 裾野(すその) となるが……

山に近いほど厳しい。

となると、五村の 麓(ふもと) の 端(はし) の端。

ここしかない。

いまはなにもないが、将来的には中心部と新しい居住地を繋ぐ場所になるし、さらに先の話になるが五村とシャシャートの街を新たに繋ぐ五村 新道(しんどう) が通る予定だ。

近くには高級宿や大型食堂、劇場、乗合馬車の発着場、シャシャートの街にあるビッグルーフ・シャシャートのような大型商業施設などの建設計画もある。

場所としては問題ないだろう。

いまはなにもないが。

……

ここしかなかったのだ。

残念ながら。

将来はすごいから!

ほんとうにすごいから!

店の場所が決まったので、建物や店舗の設計は村長に任せた。

クロトユキや青銅茶屋だけに限らず、酒肉ニーズ、甘味堂コーリン、麺屋ブリトアなど、飲食を扱う店の設計には村長の指示は細かく、的確だった。

得意な者にやってもらうに限る。

そのあいだに、我は従業員を集める。

クロトユキから二人、職人や販売員のリーダーを出してもらうことで話はついている。

忙しいところ、申し訳ないが新たな職人や販売員の募集、教育もお願いする。

青銅茶屋には頼まない。

あそこはちょっと特殊だから。

いや、問題があるわけではないのだ。

ただ、常に甘い言葉で接客するからの。

ともかく、これで大丈夫だろう。

あとは建物の完成と、従業員の育成が終わるのを待つだけ。

そう思ったのは、いまから一年ほど前であったかな。

村長がやらかした。

なんだこの建物は?

大きいのはかまわない。

従業員の寮の併設も気にせん。

風呂や応接室、商談室があるのは、高評価。

問題は設備と内装というか……

魔道具の見本店かと疑うような設備と内装。

ルー殿。

村長が望んだものを、そのまま採用するのはどうかと思うのだ。

山エルフたちよ。

楽しそうに自動で開く仕組みを説明してくれても、よくわからん。

移動するための箱は、四村のあれだな。

動く階段は……ミノタウロス族や巨人族が十人乗っても大丈夫と。

さすがに耐久性のチェックはしてあるか。

安全に止めるためのスイッチも完備と。

ただ、これは乗るタイミングに戸惑う。

あー、内部は気にせんでおこう。

そんなものだと思えば、大丈夫。

いけるいける。

問題は外。

外にある大型の箱。

あれはなんだ?

洗濯するための箱?

あれに衣服を入れたら、綺麗になる?

大樹の村にないのは、鬼人族メイドたちが仕事が減ると抵抗したから。

なるほど。

あー……

ぼ、防犯の観点から、隠してもらいたい。

頼む。

警備員が必要になった。

あのような建物では、悪人を呼び集めてしまう。

周囲が発展すれば多少は安全になるだろうが……

現状のなにもない場所では、警備しなければいけないだろう。

冒険者を雇って、守ってもらうべきか。

そう考えたところで、ザブトン殿の子がやってきた。

見慣れぬ子たち。

スナイプスパイダー。

そうか。

ザブトン殿も、警備員がいると考えていたのだな。

しかし、お主たちは見る者を気絶させてしまう。

お主たちの持つスキルゆえに。

五村に潜むお主たちの兄弟のせいで、ふいに気絶してしまう症状を五村病などと呼ばれているのだが……

大丈夫?

そのスキルは進化した?

常に相手を気絶させていたが、それをコントロールできるようになったと?

おおっ、すごいではないか!

しかも、狙った相手だけを気絶させることも可能?

複数人のなかから、一人だけを狙って気絶させることができるということか?

さらに、これまで気絶させられるのは一人につき一回だけだったが、何度でも可能と。

警備員として最適だな。

射程は、ここから向こうの森ぐらいまでと。

ふむ、頼もしい。

しかし、ある程度の強さを持つものには、その気絶は効かぬよな?

その点はどうする?

ちゃんとほかの攻撃手段があると。

同じ射程で……硬くした糸を飛ばすのか。

なるほど。

これは……糸が細くて小さいから、見えん。

我も、知らねばくらっていよう。

しかも、飛ばす量がすごいな。

的が消し飛んでしまったわ。

ははははははははっ!

…………

過剰戦力ではないか?

いくら相手が悪人といえど、多少の 慈悲(じひ) は与えてもよかろう。

消し飛ばすのはいくらなんでも……

転移門がある?

え?

この建物の地下に?

我が屋敷に繋がる?

村長、その話は聞いてない!

転移門。

最初は驚いたが、少し考えれば悪くない。

我が屋敷の出入りを見張れば、我や村長の行動を追えたからの。

見張る者を 攪乱(かくらん) できる。

しかも、ザブトン殿の子らが守ると。

ふふふ。

なるほど、村長はここを五村の防衛の要にしようと考えているのだな。

村長なら五村新道のことも知っているだろうし、今後の発展を考えたら最適な場所。

防諜もできる。

うむうむ。

さすが村長。

店を出すだけで終わらぬか。

……

いや、偶然だな。

あの村長が、そんなことを考えたりはしない。

もしや、天使族が誘導したか?

店長代理も獣人族の娘に譲ったようだしな……

余計なことをせんように、言っておくか。

ん?

ザブトン殿の子らも、ちゃんと見張る?

ふふふ。

頼もしいではないか。

頼んだぞ。

洋菓子店の試験開業。

店は持ち帰り専門だが、今回は待機スペースで商品を試食することになった。

村長と子供たちを招いていたので、子供たちは大喜びだった。

もっとも喜んでいたのは妖精女王か。

味に問題はないということで、いいだろう。

そうそう、持ち帰りで話題になったのは、どのように持ち帰ってもらうかということ。

村長は硬い紙で組み立てた箱を使いたがったが、紙は貴重だからな。

一般には木製の 籠(かご) を使うことになった。

籠は使い捨てではなく、貸出。

商品の値段に籠代を上乗せし、籠を返却してもらったときに籠代を返す方式だ。

こういった方式は昔からあるので、受け入れやすいだろう。

そして、貴重なチョコや貴族に向けて販売するときに、紙の箱を使う。

紙の箱は装飾を描けるから、見栄えがいい。

試験開業に来たゴロウン商会の者たちも、紙の箱を褒めていた。

ふふふ。

今回の紙の箱に描かれた絵は、我が愛娘のヒトエが試験開業用に一つ一つ描いたもの。

もっと褒めるがよい。

そして我が愛娘のヒトエよ。

動く階段が気に入ったのはわかるが……試食もせずに、ずっと上ったり下りたりするのはどうなのかな。

いや、駄目ではないぞ。

わかったわかった、我も一緒に乗ろうではないか。

あ、ま、待て、これは乗るタイミングがなかなか取れんのだ。

わ、我を置いて行くでない!