軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

洋菓子店フェアリーフェアリ 後編

私の名はロロネ。

洋菓子店フェアリーフェアリの店長代理です。

従業員の採用者は決まっているのですが、開店前のこのお店にいるのは私と補佐役の天使族のみなさんだけ。

おっと、ザブトンさんのお子さんたちを忘れていました。

ザブトンさんのお子さんたちは、この店の護衛です。

村長とザブトンさんが特別にと派遣してくださった、ちょっと特殊な子たち。

どう特殊かというと……

隠れるのがすごく上手なのです。

この子たちは大きなお鍋ぐらいのサイズなのに、なぜか目の前にいても気づけません。

向こうがわかるように行動してくれないと認識できないのです。

そして、この子たちは短い糸を硬くして、針のようにします。

その小さい針のような糸を、すごい勢いで連続して投げるのです。

その威力は鉄の的に穴を開けるほどなのですが、投げる音が無音なので的に穴が勝手に開いていくように見えます。

頼もしい。

特殊な子たちの種族名は、スナイプスパイダー。

糸の扱いが上手な首吊りスパイダーの進化種だと、ヴェルサさまが教えてくれました。

この子たちもお店の一員です。

そう紹介すると天使族の一人が、質問がありますと手をあげました。

なんでしょう?

あと、手をあげる必要はありませんよ。

……お店にいるスナイプスパイダーの数ですか?

えーっと、この子たちは大樹の村と交代で勤務しますが、お店には常に六~八匹はいるそうです。

攻撃の射程?

かなり遠くまで正確に攻撃できると聞いてますが……

あ、ほら、実演してくれました。

お店の入口から、遥か向こうに見える森の……小さい朽ち木に命中していますね。

ほら、朽ち木が溶けたように見えるでしょ。

すごいですね。

ええ、そうです。

この子たちには申し訳ないですが、活躍するような事態はないにこしたことはありません。

従業員たちが、お店にやってきました。

職人が男性三人、女性七人。

販売員が男性一人、女性四人。

合計十五人。

来るのが遅くなったのは、それぞれが引っ越しの準備をしていたからです。

このお店は五村の 麓(ふもと) にあり周囲になにもありませんが、従業員たちが寝泊りしている場所から 通(かよ) えないわけではないのです。

実際、通えない場所だとお客さんが来るのが厳しくなりますからね。

ただ、従業員のみなさんは通う時間も仕事がしたいと村長に訴えたので、建物に従業員用の寮が内包されました。

建物の三階と二階の一部がそうです。

あまり大きくはありませんが、二階にはお風呂が二つあります。

これは男女別で、一度に全員は入れないのでそれぞれ交代で使ってもらう予定です。

さらに二階には従業員用の食堂もあり、私もここで食事することになっています。

食事を用意するのは職人たちで、交代で担当してもらいます。

専門の料理人を用意するかどうかで悩んだのですが、職人たちが息抜きでやるそうです。

……

仕事でケーキなどを作って、息抜きで料理ですか。

厳しいようなら早めに言ってくださいね。

私だって作れますし、いざとなれば料理人をなんとかしますので。

あと、基本的に働きすぎは駄目ですよ。

従業員を過労で倒れさせると、私が村長に叱られてしまいます。

従業員が揃ってきたので、職人には商品の試作と試食、販売員の販売実習や接客実習を行ってもらいます。

一番はここでの生活に慣れてもらうことですけどね。

この建物の周囲にはなにもありませんが、五村方向に向かってしばらく歩けばスタジアムやラーメン通りがあります。

退屈することはないでしょう。

そう思っているのですが、職人たちは常に厨房にいます。

「気をつけろ。

砂糖を使えばいいというものではない。

下品な甘さにするな。

上品な甘さを目指せ」

「卵を割るときは、殻に注意。

言われなくてもわかっているだろうが、一つずつ小さいボウルに出して中身を確認、それから大ボウルに入れるように」

「くっ。

理想の味にはまだ遠い……」

「クッキーをどれだけ焼いてもいいなんて……ここは楽園かしら」

「新しい型はこっちで使っているわよ。

新しいのはまだまだあるから怒らないで」

「プリン……もう少し硬くすべきね」

「カラメル部分は、もう少し苦くていいんじゃないか?

苦さと甘さのバランスが大事だろう」

「チョコは温度管理が大事!

ふふふ……こうすればツヤがでるのだ」

「この窯、いい……もっと欲しい」

「こっちの冷凍庫のほうがいいだろ?

氷がいつでも手に入るんだからな」

休んでと言っても、休んでもらえません。

ケーキやクッキー、プリンにチョコレートなどを次々と作っています。

楽しいのでしょう。

クロトユキで修業していたときも、ここまで自由には作れなかったそうですから。

ですが、無理は駄目ですよ。

「完成した商品は、店長代理のもとへ!

味を見てもらえ!」

「店長代理!

お願いします!」

……

えーっと、私は試食を続けたので口の中が甘く、もう受けつけません。

しょっぱい物が食べたいです。

あと、試食は外で並んでいるお客さまに手伝ってもらいましょう。

トイレや場所を貸しているのです、それぐらいは協力してくれるでしょう。

お金を取ってはダメですよ。

その代わり、味の感想はしっかりと聞いてください。

職人だけでなく販売員も常に販売スペースで実習を続けています。

「はい、ケーキ一つですね。

中銅貨十枚になります」

「こちら、イチゴという果実を使ったケーキになります。

とても美味しいですよ」

「ありがとうございます!

またのお越しをお待ちしております」

問題ないように思えるのですが……

「聞け!

ケーキはお前の命より重い!」

いえ、そんなに重くありませんよー。

「ケーキを崩した愚か者には、死を!

なので、いまから死にます……」

あー、死んでもらっては困ります。

崩したら反省して、やりなおしてください。

あと、崩したケーキは自分で処理すること。

それは駄目?

ケーキ目当てにわざと崩すかもしれない?

はぁ……

私は貴方たちを信用しています!

そのような下らない理由で、こんなにも綺麗なケーキを崩す者はいません!

わかりましたね。

わかったら、崩したケーキを処理してください。

そして、休憩です。

ずっと実演練習をしていますよね?

だから崩してしまうのですよ。

罰だと思って休むように。

とは言いましたが、休めと言われて休んでくれるなら問題はないのですよね。

私だって、大樹の村に行った直後は、頂いた仕事をずっとやってましたし。

セナさまに休めと言われても休みませんでした。

うーん、注意は続けるものの、解決には時間がかかると考えましょう。

私もそうでした。

さて。

この洋菓子店フェアリーフェアリですが、地下があります。

大半は倉庫ですが、ほかに店長代理である私とその補佐役である天使族のみなさまの仕事場と、それぞれの私室があります。

地下ですので窓がありません。

仕事場や私室にするには向いている場所ではありません。

ですが、防犯を考えて地下になりました。

お店の売り上げ金などを管理するわけですしね。

そして、その仕事場や私室の奥の奥には転移門がありますから。

この転移門の先は、五村のヨウコさまのお屋敷の倉庫です。

そう、大樹の村に繋がる転移門が設置されている場所です。

私や天使族のみなさん、ザブトンのお子さんたちの通勤路として。

いざというときの避難路として。

村長がルーさまにお願いして設置してくれました。

感謝しかありません。

この転移門のお陰で、私たちはいつでも大樹の村に戻れるのです。

村長のお屋敷まで、走ればすぐです。

ふふふ。

おっと、ですが存在は極秘。

大樹の村の関係者以外には知られてはいけません。

それゆえ、地下の奥の奥にあるわけです。

定期的にヨウコさまのお屋敷に向かう姿を見せておかないといけないのが、ちょっと面倒なところ。

そんなことを呟いたら、天使族のみなさまが豪華な馬車を用意してくれました。

あはは。

歩いて行きますので、馬車は遠慮します。

そんな豪華な馬車に乗れる身分じゃないので。

乗らないったら乗らないの。