軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

メレオの飼育場での戦い

ハクレンに乗って、メレオの飼育場に向かう。

道中、ガラの悪いワイバーンたちに絡まれたが、ワイバーンの長がなんとかしてくれた。

優れた長だ。

ああいった統率力は見習いたい。

殴って従えるのは俺には無理だけど。

ちなみにだが、ガラの悪いワイバーンたちはシルキーネさんが落ちた滝に流された。

俺に対する謝罪らしい。

このあたりの謝罪は独特だなぁ。

ああ、わかっているわかっている。

大事(おおごと) にはしないよ。

だから二回目の滝落としは不要だぞ。

メレオの飼育場に到着すると、飼育場は戦闘中だった。

飼育員や雌のメレオたちは土や木の壁を盾に、遠距離攻撃で森にいるなにかを攻撃している。

なにを攻撃しているかわからないのは、逃げ出したからだ。

ドラゴン姿のハクレンが近づいたからな。

「すみません。

助かりました」

飼育員が状況を説明してくれる。

「森の魔物の縄張りに大きな変化があったらしく、魔獣の一団が飼育場に押し寄せてきました」

なるほど。

そして、別行動だったダガ、ガルフ、ビーゼルはすでに到着しているらしく、シルキーネさんと一緒に森に入って魔物退治をしている。

魔物はそれほど強くないらしいが、数が多いのがやっかいだそうだ。

まあ、ダガやガルフなら問題ないと思うし、ビーゼルやシルキーネさんもなにかあれば転移魔法で逃げるだろう。

ならば俺たちは雄のメレオや飼育場のメレオたちを守ることを優先すべきだな。

……

メレオたち。

再会を喜ぶのはいいが、いちゃつくのはちょっと控えないか?

変な空気になるから。

戦闘は終わったみたいだけど、まだ安全というわけじゃないんだから。

とりあえず、土と木の防壁を修理しようか。

防壁は急いで組んだというか魔法で出したみたいだな。

メレオの飼育小屋を守るようにあるが、何か所か壊れている。

ハクレンの到着が遅れたら、危なかったかもしれない。

と、ダガとガルフ、ビーゼルが戻ってきた。

怪我はなさそうなので、よかった。

「森の中の魔物たちも逃げ出しましたので。

村長が到着したと考え、戻りました」

ダガがそう言って俺に敬礼してくる。

敬礼は必要ないぞ。

あー、ガルフ、すまないが飼育場を見回ってくれ。

魔物が隠れて残っているかもしれない。

「承知しました」

ビーゼルは従業員たちを。

怪我はしていないみたいだけど、俺に言いにくいだけかもしれないから。

「わかりました」

あとシルキーネさんは?

「まだ森です。

魔物がどこから来たのかを調べています」

大丈夫か?

「そこらの魔物には負けませんよ」

そうか。

わかった。

それじゃあ、ダガ。

報告を頼む。

「はっ!

転移魔法で我々が到着したあと、すぐに魔物が襲ってきました。

どこからという感じではなく、全方向からの襲撃でしたが……西側から襲ってくる魔物が多いように感じました」

どれぐらいの数が来ていたんだ?

「ミノタウロス族の大人ぐらいの大きさの魔物が五十ほどでしょうか。

あとは子供ぐらいの魔物が無数に。

種族はわかりませんが、複数種類いました」

ふむ。

「我々の参戦で魔物たちは逃げ出し、それを追ったのですが……別の群れが飼育場を襲ったようで。

すみません。

追った判断は間違いでした」

いやいや、シルキーネさんが追うと判断したんだろ?

聞いてるよ。

「それでも、施設の防衛を考えれば誰かを残すべきだったかと」

まあまあ、それで魔物が逃げた方向は?

「ばらばらに逃げていましたから正確には。

ただ、大きい群れは南に向かっていました」

そうか。

追いかけたほうがいいかな?

「ここに戻って来るとは思えませんが……

ハクレンさんが常駐するわけではありませんからね」

そうだな。

のんびりする予定はないが……

とりあえずはシルキーネさんが戻るのを待とうか。

ああ、ぼーっと待つわけじゃないぞ。

防壁の修理をする。

ハクレンと一緒に防壁を修理していると、陸亀の魔獣であるネットタートルがやってきた。

この飼育場にいるネットタートルたちは、メレオたちと共存している。

なにをどう共存しているのだろうと疑問に思ったら、飼育員がネットタートルの卵を見せてくれた。

このネットタートルの卵、メレオの卵とそっくりなのだそうだ。

ネットタートルはメレオの卵にそっくりな卵を産み、その世話をメレオにさせる。

まあ世話と言っても鳥のように卵を温めるわけではない。

卵は土の中に産むので、その土の湿度管理をメレオにやってもらうわけだ。

もちろん、世話をするメレオにも利点はある。

ネットタートルの卵のある場所にメレオは産卵し、紛れ込ませることで外敵から卵を守る確率を上げることができる。

また、その外敵が近づいたとき、メレオは透明になって隠れるが、ネットタートルは攻勢に出る。

ネットタートルにメレオの卵も守ってもらうということだ。

卵さえ狙われなければネットタートルは温厚な性格だそうだが、今回の襲撃に際してはメレオのそばで頑張っていたと飼育員たちが褒めていた。

メレオの卵はなくても、ネットタートルの卵は飼育場にあるからな。

ちなみにだが、ネットタートルたちがこの飼育場にいるのは、自然と集まったわけではなく飼育員たちの手によるもの。

メレオのためではなく、メレオの卵と思ってネットタートルの卵を購入してしまった結果だ。

たぶん違うだろうとわかっていたけど、希望を持って買わざるをえなかったらしい。

それだけ雄のメレオを求めていたということだな。

それで、そのネットタートルが俺になにか用事か?

ん?

俺に客?

違う?

ハクレンに客?

近くの森で待ってる?

ネットタートルに案内され、俺とハクレンが向かった場所には見覚えのある獣がいた。

前回、ハクレンに挨拶に来た獣だ。

彼がハクレンの客か。

「ご、ご 尊顔(そんがん) を 拝(はい) し……」

「あー、そういうのはいいからいいから。

目的は?」

ハクレン、丁寧に挨拶しようとしているんだから聞いてあげないと。

「長くなるだけよ。

ほら、手短に言っちゃって」

「えっと、このあたりの魔物の騒動に関してです……」

「貴方が原因なの?」

「い、いえ、そ、その……ハクレンさまへの挨拶が必要ないとわかった途端、縄張り争いが活性化しまして……」

なんでだ?

「これまでは広い縄張りを持つと、挨拶に行く必要があったので……」

挨拶に行くのは面倒だから 自粛(じしゅく) していたけど、その面倒な挨拶に行かなくてよくなったから広い縄張りを求める者が出て騒動になったと。

「す、すみません。

私の力不足で、そちらにご迷惑をおかけしまして……」

「たしかに迷惑ね。

で、それを報告に来ただけなの?」

「いえ。

縄張り争いをした者は私のほうでなんとかしました。

こちらにご迷惑をおかけすることはもうないかと。

それで、その……」

「はっきり言いなさい」

「縄張り争いには私の息子も関わっておりまして……

見逃していただければと」

獣がちらりと後ろを見ると、若い獣がいた。

ハクレンは俺にどうすると目で聞いてきたので、許してやれと合図。

「そっちで好きにしなさい。

わざわざ口を出したりはしないわ」

「あ、ありがとうございます」

獣が深々とハクレンに一礼する。

これで話は終わったし、飼育場の危機も去った。

よかったよかったと俺は思ったのだけど、若い獣は違ったようだ。

「親父、なんでそんなやつにペコペコしてるんだ!」

「こら!

ハクレンさまになんてことを言うんだ!

まさかハクレンさまの力がわからないわけじゃないだろうな!」

「女の力はわかるが、男はただの男だ!

見てたぞ!

この男が女に指示を出してたのを!」

……

あー、失敗。

動物はこういった上下関係にうるさいんだった。

迂闊(うかつ) なことをしてしまった。

反省している俺の横で、ハクレンは頭を 傾(かたむ) けた。

「それで?」

あ、こらハクレン。

挑発するんじゃない。

「挑発じゃないわよー。

不満があるみたいだから、解消してあげるのよ。

で、どうしたいの?

かかってくる?」

「しょ、勝負だ!

だが女とじゃない!

男とだ!」

俺?

獣が止めているが、若い獣は止まらない。

「ということで、村長のすごいところ見たいなー」

えー。

とりあえず、若い獣が滝から落ちるのは見た。

俺がハクレンの夫だと知った獣が、この世にあらざるものを見る目を向けて怯えたのは、ちょっと納得いかない。