軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

十九年目秋の収穫

大樹の村にも現金つかみ取りの箱がある。

五村で実行するまえに、大、中、小の箱のサイズをどれぐらいにするか、村で試行錯誤をしていたからだ。

最初は現金つかみ取りを下品だと否定する天使族もいたが、やってみると楽しかったらしい。

箱の取り出し口を絞り、あまり取り出せないようにすべきではないかとの意見を出してくれるようになった。

ありがたい意見だが、五村では多く渡したいからな。

取り出し口は広め。

箱の天井をなくしてもいいぐらいだ。

子供たちも興味を持ったが、現金つかみ取りには母親たちがいい顔をしなかったので、飴のつかみ取りを用意した。

飴を一つずつ包装するのは手間だったが、子供たちが喜んだのでよし。

ちなみに、飴を一番つかんで喜んだのは妖精女王だ。

みんなに分けていたから文句を言ったりはしないけど。

大樹の村で、秋の収穫が始まった。

武闘会に向けて訓練をしていた者たちも、訓練を中断して収穫作業に集中してくれる。

あ、ダイコンはドライムに任せるから、先にニンジンとタマネギを頼む。

一村、二村、三村の収穫は終わったようで、こちらに手伝いに来てくれていた。

ありがたい。

四村は収穫がまだ終わっていない。

すみませんとクズデンから連絡があった。

まあ、四村は浮遊庭園で作地面積を増やし、【万能農具】で耕したからな。

収穫量が激増したので、大忙しなのだろう。

万能船の乗組員まで動員しているらしい。

こちらとしては武闘会までに終わっていればいいので、慌てず丁寧に収穫するように言っておいた。

おっと、ザブトンの子供たち。

今日、収穫する畑はわかっているな?

文官娘衆たちが看板を立てた場所だぞ。

ははは、ジャガイモ、サツマイモは任せた。

南のダンジョンからラミア族、北のダンジョンから巨人族が手伝いに来てくれた。

両種族の収穫作業は手慣れたもので、一気に収穫が進む。

助かる。

そういえば東のダンジョンのゴロック族は、どうしているかな。

ゴロック族の存在を知ってからそれなりに経つが、俺はいまだに会えていない。

なにかしら邪魔が入る。

運命だろうか?

いや、まあ、そんな壮大なものではなく、ただ巡り合わせが悪いだけだろう。

いつかは会えるはずなので、焦らずに待ちたい。

とりあえず、いまは収穫優先。

山エルフたちも手作業で収穫をしているが、その横でゴーレムの姿がある。

ゴーレムの外見は大きな人型だが手がクワの形になっており、土を作物ごと掘り起こして収穫を手伝っているようだ。

腕を取り替えてカマにすることも可能?

ただ、作物を押さえることができないので、収穫には向かない。

草刈り用と。

なるほど。

そして、ゴーレムを操っているのは四千五十一番の 箱(インテリジェンス・ボックス) 。

箱の見分けがついたのではなく、ゴーレムの側面に大きく書かれてあったから。

自己主張が激しいな。

いや、箱はゴーレムの背面に背負われているというか、埋め込まれているからな。

書いていないと、存在をアピールできない。

仕方がないところだろう。

できれば、もう少し字の上手い人に書いてもらえば……え?

トルマーネが書いたの?

トルマーネって、まだ二つぐらいだよな?

コローネの娘だ、そのはず。

二つでこの字を書いたと考えれば、うちの娘は天才ではなかろうか。

そして、見れば見るほど味があるというか、なんというか……素晴らしい。

ゴーレムを飾っておきたい。

わかっている。

収穫優先。

汚れるのは仕方がない。

今度、トルマーネに頼んで、しっかりした紙に書いてもらおう。

米、小麦、大麦、トウモロコシ、大豆などの穀物類が次々に収穫されていく。

なかなかの豊作。

やはり、【万能農具】は凄い。

収穫が終わったら、しっかりと手入れするとしよう。

まあ、暇をみつけたら手入れしているのだけどね。

「村長、こっちの新しいのは収穫して大丈夫でしょうか?」

ハイエルフの一人が俺のところに走ってやってくる。

彼女が言う新しいのとは、ライ麦のことだ。

正直、俺はライ麦の存在を忘れていた。

しかし、パン屋さんなどで使っている材料を見たときに思い出し、耕してみた。

今回が一回目の収穫になる。

なので、俺に聞かれても適切な収穫時期かどうかわからない。

すまない。

ちょっとずつ収穫して、知識を蓄えていく段階だ。

「わかりました。

では、少量を……あの、ドワーフのみなさんが、一気に収穫しちゃってますけど」

え?

「これ、クロムギであろう?

いまぐらいが収穫時期で間違いない」

ドワーフたちが、ライ麦のことを知っていたようだ。

助かる。

「ほかの地域で育てているクロムギとは、全然違うがな」

おい。

「ははは。

ワシの知っているクロムギよりも、ここの畑にあるクロムギのほうが身が太くて重いということだ。

酒になったら、きっと美味いに違いない」

そうだといいけどな。

全部、酒にするなよ。

「わかっておる。

パンにする分はちゃんと残す」

ドワーフはそう言って、遠くにいた鬼人族メイドのもとに走っていった。

パンにする分の収納場所を確認するのだろう。

あ、残す割合で揉めている。

手振りから察するに……

鬼人族メイドとしては、通常 挽(び) きのライ麦粉と、 粗挽(あらび) きのライ麦粉を確保したいようだ。

つまり、倍欲しいと。

ドワーフが抵抗しているが……負けたな。

俺(こっち) を見ても、ひっくり返せないぞ。

収穫の最中、クロの子供たちも忙しい。

収穫物を狙う魔獣や魔物が来るかもしれないので、その警戒を頑張ってくれている。

そして、収穫が終わりに近づけば、冬に食べる肉を備蓄するため狩りに励む。

以前は収穫に合わせて狩りに行っていたのだが、狩ってきた肉を処理するのにも人手が取られるので、ちょっとタイミングをずらしてくれている。

とても助かる気づかいだ。

そういえば、狩った魔獣や魔物の肉と魔石はちゃんと消費できているが、皮と骨の消費があまり進んでいない。

消費と言っても食べているわけではなく、村の外への販売だ。

最初は全部、【万能農具】で耕していたけど、村の外に売れることが判明してからは貯めるようになった。

しかし、売れるのは売れるが、量を 捌(さば) けない。

値を下げれば捌けるのだろうけど、それは困るとマイケルさんやランダンに止められた。

ルーやティアもマイケルさんやランダンに賛成だったので、値を下げるのはやめている。

最上級の品の値が下がると、それにともなって下級の品の値も下がる。

すると、魔獣や魔物を狩って生活をしている冒険者たちが困ることになるらしい。

納得した。

しかし、だったら【万能農具】で耕しては駄目なのだろうか?

ルーからは、もったいないから耕さないでと泣かれたので貯めているが……

すでに、大樹の村や五村の倉庫は皮と骨が溢れている。

どこかで一掃しないとなぁと思うのだが?

まあ、収穫が終わったら考えよう。

収穫をしているある日。

魔王がやってきた。

「手だけでつかもうとしてはいかん。

手首を曲げて自分の腕と手で挟むように持ち上げるのだ。

箱の取り出し口が広いからできる方法だな」

魔王は子供たちを相手に、現金つかみ取りのコツを語っていた。

……

やったのか?

五村で?

チケットはどうした?

捕まえたと。

そうか。

そして納税したと。

三位?

魔王が五村の現金つかみ取り納税のランキングに入っていいのだろうか?

魔王が気にしていないようなので、気にしないことにした。

あー、子供たちよ。

やる気満々なところ悪いが、飴のつかみ取りは三十日に一回と決めただろ?

文句は、飴を食べすぎてご飯を食べなかった過去の自分たちに言うように。

その日の夜。

五村で、《魔王の手》と呼ばれる技が噂になっているとヨウコから教えてもらって吹いた。

知らない人が聞いたら、恐ろしい技と思うんだろうなぁ。