作品タイトル不明
五村木道
新木道計画を改め、新鉄道計画。
山エルフたちは乗り気だったが、文官娘衆がストップをかけた。
「鉄が足りません」
「市場に出ている鉄を買い占めたとしても、足りません」
「足りたとしても、レールを作るだけで数十年かかります」
「鉄道ではなく、木道でお願いします」
「雨に弱いとのことですが、五村とシャシャートの街のあいだに地下トンネルを掘り、そこを通すのはどうでしょう?」
「これなら数の力でなんとかなりそうですね」
「あの、物を運ぶだけでしたらレールに 拘(こだわ) らず、大型のゴーレム馬車で十分では?
馬車が通れるように道を整備するだけですみますよ」
「それだ!
それにしてください!」
山エルフたちが強く抵抗したが、駄目だった。
新鉄道計画は不認可。
うーん、残念。
しかし、鉄ってそんなにないものなのか?
それなりに採掘していると思うのだが?
魔王に聞いた。
「えーっと……」
魔王の口が重い。
ひょっとして、鉄の採掘量って国の機密だったりするのか?
「そうではなく……
その、鉄に限らず、採掘して得られる物資の量は、わからんのだ」
……
そうなのか?
「うむ。
採掘場で採掘したら、すぐに売るであろう?」
そうだな。
「売られた場で加工され、さらに市場に出される。
国が気にするのはその加工品の量であって、なにをどれだけ採掘したかなどは気にせん」
ふむ。
採掘に関して、税金とか掛けてないのか?
「一般的な採掘場は国や領主が管理しているが、国や領主が採掘するわけではない。
採掘する権利を採掘する技術を持つ集団に販売して、採掘してもらっている形になる。
だから、税は掛からん」
採掘した鉱石にもか?
「そうだ。
契約にもよるが、採掘した鉱石は全て採掘した者のものだ。
そこに税を掛けると、小規模の採掘がされんようになる」
小規模の採掘。
冒険者たちや小さい村が独自で行う採掘か。
たしかに、税が掛かるとなればそういった採掘は減るか。
「露天掘りの採掘ならともかく、坑道掘りの採掘は危険だ。
さらに採掘場に行くまでの魔獣や魔物の危険もある。
こちらが金を払ってでも採掘をしてもらいたいぐらいだ」
なるほど。
税をかけないことで、採掘を 促(うなが) しているのか。
「うむ。
誰かにやってもらわねばならんからな」
しかし、だからと言って採掘量を把握していないのはどうなんだ?
採掘集団や仲買をしている商人なら、全体はわからなくてもその場で取り扱った量がわかるだろ?
「調査すると、税を取る準備かと疑われるんだ」
……
為政者って、大変だな。
「うん」
魔王は猫たちに癒されに行った。
ちなみにだが、ハウリン村はかなり昔に自由採掘権を購入している歴史ある採掘集団だそうだ。
ハウリン村の村長の娘であるセナが、そう言っていた。
魔王は、採掘量を知らなかったが、金とか銀なども自由に採掘できるのはいいのだろうか?
国が金貨や銀貨を発行していないから、金とか銀の価値が低いのか?
この世界。
昔、作られたお金が流通しているだけなんだよな。
経済が発展したら、貨幣が不足しないか?
ドラゴンたちが、そのあたりを調整していると聞いたが……
前々から言われている村にお金が貯まっている現状は、改めてよろしくないと認識。
もう少し、村に貯まっている金貨や銀貨を放出したほうがいいだろうか?
しかし、文化の保護育成にはすでに投資しているし、教育機関にも投資している。
無駄使いは嫌なんだけど、土地の権利や水利権を買うとかしたほうがいいのかな?
使いもしないものを買うのは控えたいのだが。
まあ、このあたりは独断で動かず、ヨウコや文官娘衆と相談して進めよう。
五村の新鉄道計画が、動いた。
不認可だったのではと思ったが、不認可になったのは五村とシャシャートの街を繋ぐ計画。
五村の南と北東を繋ぐ実験鉄道は残されていた。
短距離だが実現すれば便利だし、五村の名所になるかもしれない。
問題となっていた鉄の確保は、ゴロウン商会やダルフォン商会が頑張ってくれた。
頑張ってくれて、この実験鉄道の分がギリギリの鉄量だったから、たしかに五村とシャシャートの街を鉄道で繋ぐのは無謀だったのかもしれない。
最初は木道の予定だったしな。
さて、次に問題になったのが鉄道のレール作り。
長く、そして硬い鉄のレールを作るのは、手作業では無理と判明した。
レールの長さの基準を十メートルにしたのだが、そんなレールを作れる鍛冶場がない。
また、その量の鉄を一気に 融(と) かす 炉(ろ) もない。
そんな長い物を作った人もいない。
レールを半分の五メートルにしても、無理だと言われた。
巨大な作業場を作り、機械化してレールを作ることにしても、機械を作るために大量の鉄がいる。
……
新鉄道計画は、新木道計画に戻った。
モノレールではなく、通常の鉄道のレールにはするけど。
集めてもらった鉄は、台車のほうで使うとしよう。
わかっている。
鉄を保管する倉庫を建てるよ。
五つほど。
新木道計画は、五村の南と北東を繋ぐのだが、路線用の土地が確保されているわけではない。
なので、地面を掘って地下木道にするか、土地の確保が容易な村の外周部を使って南と北東を繋ぐか考える必要があった。
地下木道の利点は、地下になにもなければ一直線で繋げられ、さらに短距離になること。
欠点は、地下を掘らなければいけない労力がかかることと、地下用の明かりが必要なこと。
あと、駅も地下にすると、乗り降りが少し不便になることかな。
外周部を使うほうの利点は、先ほどもいったが土地確保が容易なこと。
欠点は、木道の距離が延びることと、防犯対策が必要なことだな。
「村長。
村にある大通りの真ん中に敷くのは駄目なのですか?」
五村を一緒に視察している文官娘衆が聞いてくる。
路面電車スタイルか。
現在ある道路の真ん中に木道を敷くのも手だが、それをすると馬車の通行を邪魔してしまわないか?
避(よ) けられるとは思うけど……
目の前にある五村の大通りでは、それなりの数の馬車が往来している。
「その馬車の往来ですが、木道ができれば少なくなるのではないですか?」
……
そうかな?
「そのための木道では?」
そうかもしれない。
今回の木道は単線ではなく、複線の予定。
それなりの利用があると考えてだ。
それなりの幅を取ってしまうが……
「道の選定をしてみます」
……わかった。
できるだけ拡張ができそうな道を選んでくれ。
あと、馬車の避難場所になる土地の選定もだな。
選定ができれば、ヨウコに確認してもらおう。
「承知しました」
ヨウコに確認してもらった。
許可された。
まあ、最終判断は俺に任されたのだけど。
うまくいってほしいものだ。
それとヨウコ。
次は木道が環状線になって、五村の麓を取り囲むとか予想するのはやめてほしい。
俺もそんな気がしているんだ。
何年掛かりの事業になるんだ?
今回の短距離の木道でも、それなりに時間がかかると思うぞ。